1話 愛の目覚まし
皆さんこんにちは!直江 志です。
処女作では有りますが、皆さんに楽しんで頂ければさいわいです。
~~~~~~~~~
「ここは……」
青年が気がつくとそこは、地平線まで見渡す限りまっ平な草原だった空気は極限にまで澄んでおり、空は蒼一色で覆われている。不思議と太陽は出ていない。青年は何故か気分が落ち着いていくのを感じる。く
頬に撫でるような優しい風が通り過ぎた時である。
後ろから急に優しい綺麗な女性の声が聞こえたのだ。後ろを振り返っても誰もいない。
更に次は真上から
『私は、主様の●●●』
『主様は、私の●●●で、私は主様の●●●』
大切な部分が聞き取れない、それが自分のせいであると直感的に理解できてしまう。聞き取れないもどかしさに青年は声を上げる。
「お前は一体何者だ!」
その言葉に答えるように女性は丁寧に言い返した。
『私の●は●●●●。主様の●●●……』
やはり、核心的部分が聞き取れない。青年が声を発しようとしたときだ、強風が平原に襲いかかる。
『まだ……無理なのね。』
女性の寂しげな声を最後に視界は暗転し、体が自由落下するような感覚がする。
~~~~~~~~
目を開けると見慣れた天井だった。カーテンからは日差しがこぼれており、部屋は真夏の熱気で蒸し暑い。
目覚まし時計に目をやると、短針が五の数字を指している。目覚ましが鳴り始めるまで後、三十分以上もある。二度目の睡眠を決意した真は冷房の電源をつけ、ベットに横になった……
瞬間である。
ドアが乱暴に開けられ。
「お兄ちゃん、おっはよ~~~~」
という言葉と同時に真の妹、絢音は、ベットで眠る真の腹に向かってダイブする。
あろう事かダイブした絢音の膝は真の 鳩尾に減り込み、ぐふぅ、という苦しみの声が響く。
痛みと驚きで悶絶している真に絢音は天真爛漫な笑顔で楽しそうに質問する。
「ねぇねぇ、どうだった私の愛の目覚ましの、あ・じ・は?」
馬乗りで身をよじりながら話す絢音に
「なーにが愛の目覚ましだ、さっさと上からどかないとねぇ?」
「やばっ!」
身の危険を感じた絢音は逃げようとしたときだ。真は絢音の頭をわしづかみにして少しずつ。
「お、お兄ちゃん、お、落ち着いて、落ち着いて。ドードー、お願いだから手を離して動けないから。痛い!痛い!」
真は黒いオーラを纏いながら先ほどの妹と同じような笑顔で言い放った。
「俺は暴力には暴力で返す主義なんだ」
「キャーお兄ちゃんのイケメンスマイルいただきましたー」
更に力が増し、骨の軋むような恐ろしい音が絢音の頭から奏でられ、絢音は更に焦った声で言う。
「お兄ちゃん、今変な音、変な音でたよ……ごめんなさい!許して!許して!これからは普通に起こすから。」
真はよろしい、と呟き絢音を解放する。絢音は解放されるやいなや頭を抱えてのたうち回る。真はそれを傍目に着替える。
着替え終わった頃にはアイアンクローの痛みが落ち着き、朝ごはんできてるから早く来てね、といって階下へ降りていく絢音。
一階へ降りると朝ごはんの香りと
『真や見てくれ!儂の筋肉美を』
Vパンツを履いた、筋肉隆々の白髪白髭の爺さんがポーズをとって筋肉を見せびらかし。
『あらぁ、真君遅かったのね。中一の妹の方がしっかり者なんて笑い者よ、ププ!』
眼鏡をかけた黒髪ロングのお姉さんが兄である真に皮肉をかまし。
リビングのソファーでは中年のオッサンが耳障りな鼾を轟かせながら寝ている。
「うるせぇ……」
真の呟きは賑やかさに掻き消され少し離れた絢音にしか聞こえなかった。
端的に言おう、この三人は人では無く幽霊だ。真は、母方の祖母に似て生まれつき普通の人には視えない生きている人の魂魄や幽霊が視えているのだ。
一般的にホラー映画やホラー小説の幽霊は透けていたり、足が無いように描写さている。しかし、どういう訳か真には幽霊すらも普通の人間と同じくらい鮮明に見えているのだ。
閑話休題、机には二人分の朝食、焼き魚にみそ汁、納豆、サラダ、そして白ご飯だ。後ろのリビングからは、三人の声が聞こえる。
「いつも悪いな、朝ごはんと弁当作って貰って。普通ならどっちか俺が変わらないといけないのに。」
「いいのよ、お兄ちゃん今年も受験生だから絢音が変わりに作るのは当たり前。それよりも家事する暇有るなら勉強でも鬼術の訓練でもしたら?去年は霊気コントロールのせいで落ちたんでしょ?」
「……まぁそうだな。今年は爆発とかしないから安心しろよ。」
「爆発って、お兄ちゃん……去年のあれ凄いニュースになったんだからね!それにお兄ちゃんの命にも関わるんだよ!」
そう、真は絶望的なまでに霊気のコントロールが苦手だ。
鬼術の発動には喉に霊気を込め言霊にし、それを意味の持つ呪文にしなければいけない。また、詠唱が完了した後に適切な量の霊気を与えなければ、少なければ効力が出ず、多過ぎれば霊気枯渇等の危険を伴う。
特に真の場合は詠唱中に爆発してしまい。その爆風で昨年試験会場を半壊させてしまった。
そのような背景があったためか絢音は真に抗議する。真はそんな絢音に宥めるように言った。
「まぁまぁ今年は、龍牙のお墨付きも貰ったから安心しろって。」
「龍牙くんのお墨付きが有るなら……まあ大丈夫かな?」
「あいつの名前使ってまだ半信半疑なのかよ……」
「だってつい最近やっと爆発させずに詠唱できた人が爆発させずに鬼術発動できるなんて、いくらお兄ちゃん大好きな絢音でも信じられなーい。それにお兄ちゃん、確か魂換師って鬼術で狂魔って言う魔物?……と戦う危ない仕事でしょ?大丈夫なの?」
「ま、まぁ合格してしまえばこっちのものだからな、それに俺はアイツらに干渉できるから霊体も敵じゃ無いさ」
「まったく……お兄ちゃんの楽観主義にも困ったもんよ!」
真は絢音を安心させるように行ったのだが、絢音は呆れたような顔をして肩をすかせる。
暫くして、朝食が食べ終わった頃に忘れかけていた事を思い出し、はっとした顔をして真に聞いた。
「そうしえばお兄ちゃん、最近幽霊さん何か変わったことないかな?」
「いや、いつも通りうるさいけど。」
「違う、そうじゃなくて……何だろ、なんか強くなった?てゆうか、最近勝手にテレビがついたり、気がついたら洗濯物が畳まれてたりするから、何か変化あったのかなーって」
絢音の言葉にビクッとする三人。真はそれを見ながらニッコリ笑顔で楽しそうに聞いている。
「いつから、あいつらが物質に干渉しだしたんだ?」
真の体から殺気が溢れ出す。
『『『ひぃっ!!!』』』
真から溢れる圧倒的霊気と殺気に飛び上がる三人組。
「ええーと、一週間位前からかな?で、でも幽霊さんたちこれっぽっちも絢音に迷惑かけてないからね?」
『そうじゃよ、儂らはこれっぽっちも人様の迷惑をかけとらんぞ!』
『魂を喰らうなんて死んでこの方一回もないわ!!!これだけは、神にも誓えるわよ!』
『俺は人間と同族だけは襲わないそんな幽霊だ。』
彼らの必死な弁明と絢音のフォローがあったためか真は力を抜き誰もいないリビングに向かって言う。
「まぁ、なんで今になって幽霊が持ち得ない狂魔の物質干渉能力が使えるかは詮索しないが……」
『『『ほっ』』』
胸を撫で下ろし安心するのは束の間、真から先程からは比較にならない程の殺気と霊気が溢れだし空間を凍てつく霊気で飽和させる。
「もし、その能力を悪用したり絢音を傷つけたら……長年世話になった責任とってお前らを跡形も無く消すからな」
冷たい調子と相手を今にも殺すような目付きで言い放った。霊感がこれっぽっちも無く、危険察知や霊気コントロールに長けていない絢音ですらも兄の変化に戸惑う。
これに対し爺さんは、ニヤリと不敵に笑いかけながら
『 そんなことするはずが無いと真が一番しってるじゃろ?』
と聞き。
真は納得した顔で
「それもそうだな。」
ニヤリと笑い先程までの張り詰めた空気が嘘のように無くなる。絢音はその変化を感じ取り真に怒り出す。
「もう、お兄ちゃん凄い怖かった!もう、こんな変なことしないでね!だからよく不良に絡まれるのよ!」
「いや、それは関係無いと思うぞ。」
「関係あるわよ!だってお兄ちゃんの目付き凄い怖いもん!妹じゃなきゃ警察呼んでいたねぇ。」
「お前なぁ」
真の呆れた呟きがこぼれる。
そうこう、していると不思議と時間は過ぎていくもので気がつけばもう家を出ていないといけない時間になっている。
真と絢音は急いで身支度をして玄関へ走る。
「あ、お兄ちゃんポーチ忘れてるよっ!!」
「ありがと、絢音。夏は上着無いからこれがないとダメなんだよな……はぁ、めんどい……」
「なら、持って行かなきゃ良いじゃん……」
呆れたように言う絢音に困った笑顔で返事をする。
真は、すこし重みの有るポーチを装備し扉を開き
二人は大きく、
「「行ってきます」」
『『『いってらっしゃい』』』
……非日常が始まる
狂魔……人の魂魄を好んで喰らう魂魄生命体人を襲う理由は……
読んで下さり有難うございます!
感想、ブックマーク、評価は作品の質の向上やモチベーション向上に役立ちますのでよろしければお願いします。