花が咲く。
雪の降る夜に、花が咲いた。
ひそひそと、こそこそと、花は咲いた。
それは片手で数えられるほど、小さい花だった。
どこにでもあるような、飾り気のない花だった。
やがて時が経つにつれ、花はどんどん個性を生み出した。
数多の宝石をその身にまとい、花本来の姿がみえなくなるにつれ、人々の心はその花に揺らぐようになった。
やがてその花は、たくさんの人の心に住まうほどに大きく、立派な大輪になった。
それから、ひとときだけその花は魅力を放つのだ。
どんなものにも負けない、この世で唯一の極上の蜜で人々を虜にするのだ。
でもそれは、ほんの一瞬だけ。
やがて花は輝きを失い、跡形もなく朽ちていき、人々の心からも姿を消していくのだ。
そしてまた、花は咲く。
ひそひそと、こそこそと、何の変哲もない花が。
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………噂話に?