婚約者を亡くし従妹を慰めるために私と交流をしなくなるので婚約を解消しようとしたら行き違いだと嫌がるあなたは最低
耳元に触れる口実をつけ始めたのはいつからだろう。婚約者とのお揃いのイヤーカフ。高級店で有名ジュエリーデザイナーから買い上げた至高の一品。
耳を触る癖を母が嫌がると話した時、彼はそれなら耳ではなくて宝石を触っていることにすれば、婚約者のことを思い出しているように見えて品がない行為と見られないのではないかと淡く笑った。
それが今から三年前。一年前からの家の中に従妹という少女が住むようになった日から、彼の婚約者に会う足が向かなくなった。
最初はまだ家に馴染んでないから仕方ないわと思っていたものの、肺の病かもしれないからと彼女にベッタリ張り付くようになってしまう。
浮気ではないのか。妹のように思っているなんて彼の歳で言った場合、メミーは彼を即刻見放すのに「亡くなった婚約者に似ているらしいから」と彼を頼る従妹とやらの理由が不信を胸に生む。
遠縁でもない男のどこに似た要素を見出だしたのか、考えてみたもののかわからない。彼は日に日にまんざらではない顔を浮かべてメミーに茶会の延期を伝える。
直接伝えにも来ない。三百六十五日ある中で、たまたま会う日に肺の病が悪化するとは奇妙な偶然だ。目を細める。
他にも理由をつけて二重に絡める手腕だ。病だけではないらしい。亡くした女のかつての婚約者がヘイブルに雰囲気が近くて、重ねてしまうのは悪いけれど嬉しくて何度も呼んでしまうらしい。
正直「は?なんですその理由」と言いたくて仕方ない。
なんてことを思い出し、どうせ従妹キャルメリーはメミーからヘイブルを引き離して、己が婚約者のポジションにあやかろうとしてるに違いない。父と母に婚約解消を頼み、他の男の人を婚約者に選んでもらわないと。
キャルメリーの死んだ元婚約者がメミーの婚約者に似ているからなんだというのだろう。人の予定をぐちゃぐちゃにする理由に当てはまる、許されることはあり得るのだろうか。
どれだけ人恋しくても人の婚約者の時間を奪う理由になりはしない。そもそも、向こうの家から婚約して欲しいと頼んだくせに、事情も管理もできないとは。
現当主には失望させられ続けている。どうしてそうなるのかわからない。そもそも思春期の子息がいる家に居させるのはどういう了見なのだ。別邸でも別荘でも、山間の空気が美味しい施設にでも入れればいいでしょ。
婚約者がいる家に居させるのは不貞を推奨しているのと同じではないか。親ならもう少しなんとかならないのか。お揃いの魔道具を揃えた時の熱意はどこに行ったのだろう。
メミーはイヤーカフのボタンをカチッと押して、ため息を深く吐く。近くにいるメイドが心配そうな顔で紅茶に入れる角砂糖を勧めてくる。疲れているからもっと入れた方がいいと言われ「そうね」と苦々しく笑う。
「今度もキャンセルでしょうか」
婚約者のこともキャンセルしてはなにも埋め合わせしないことも、全て知り得ている専属の使用人は確信を得ている顔で伝えてくる。
「婚約者をなくした女を眺めるのが楽しいんでしょうね」
秘密のノートに彼女のことでも書かれていたって驚かない。婚約者は後回しでも怒らなかったちょろいとでも書かれているのかも。
仮に書かれていてもおかしくない。なんせ、己は心の中で暴言を言い募っているから。なので彼も気に入らないとか冷たいとか、態度を棚に上げて思っている可能性はなくもない。
先に約束をほっぽり出したので非はあちらに大有りなのだが、彼はきっと善行でも積んでいると思ってそうだ。今日の交流会もたかがお見舞いで潰してもいいと思っている。
これはお互いの家がお互いの婚約者たちを、適性か否かを判断する合理的な評価が下される材料の一部。簡単に許されない。
お金をそれなりにかけられている。それなのにお金をかけたものが無価値に成り下がるかもしれないのだから、親たちも慎重に見極めるのだろう。愛がないわけでない。
しかし、貴族は家を継続させる必要があるので、自分勝手に動いて断絶を回避せねばならない。そんなものは基礎だ。それを相手の家は自ら危うくしているわけで。なぜそんなあやふやな状態で居させているのか。
おまけに聞いた話では貴族ではなく平民で、貴族籍から抜けた次男が共働きなので一時的にいい医者がいるからと通院させるために通わせたい、という希望で婚約者の家に逗留しているのだとか。
体が弱いというより、婚約者を亡くしたから精神的に疲れているというニュアンスだ。それもなんだか怪しい。人を亡くして他の人を代わりにしているのは一目瞭然だ。
しかし、好きな人を亡くした後に初めて会う人を近くに呼んで嫌悪はないのだろうか。首を傾げる。
家族に寄り添われるのならわかるが、赤の他人で異性は普通に気持ち悪く思うと思ってしまうんだけれど。これはメミーが変なのかもしれない。
「お父様、お母様。話したいことがありますの」
調査をお願いしていたから、何を話したいのかすぐわかったらしい二人は婚約をなかったことにしたいという提案に頷く。
世の中には同じことをし返すという方法があるが、婚約者が居ても異性に会う時間を取ることをするのならすっぱり縁を切り、別の相手に行った方が健全だ。
一度やった人間にチャンスを与えて、二度目が起こる可能性を危惧し続ける生活なんてごめんである。
メミーとヘイブルの婚約の話し合いはすぐに行われて、すり合わせも伏せて行われた。メミーもヘイブルも同席しており大人しく見ている。しかし、話し合いが婚約白紙のところに向かうとヘイブルはスッと手を挙げて、うちの両親たちに白々しい目を向けられる。
「すみません」
気付くと彼の両親が困ったような顔をしていた。こちらの両親がなんでしょうかと聞くとヘイブルは立場を忘れたような興奮した声音で、捲し立てる。
「行き違いがあるんです」
「行き違い?」
月光を溜め込むことで夜道だけ道案内をしてくれる、ランタンのブローチを触りながら息を吐く。まだわかってないのかこの男はという呆れだ。
「行き違いどころか最近は顔合わせにも来ないのに、どこが行き違いなのですか?知りませんでした。話もしないのに行き違いってできるんですね」
冷ややかな声音で問いかけると彼はムッとした顔をして、叱りつけるように甘く声を出す。それだけでお互いの親は顔をしかめた。
「なにか酷く勘違いをしている」
「行き違いの次は勘違い」
反芻させ、頭も痛くなりかけた。イヤーカフを外して見せつける。
「あなたは知っているのか忘れているのか……このイヤーカフは魔道具です。お互いの声を伝え合う他にもギミックがあるんですよ」
イヤーカフをテーブルに置き、別の箱型の伝達用の魔道具を取り出す。
「これを持つ人と周囲の声を一方的に拾うというものです」
「……え」
ヘイブルは数秒呆気に取られたが、キョロキョロと周りを見回してメミーを見た。
「そんなの個人の侵害じゃないのかっ」
「ええそうですね。私も嫌と言ったのですが、あなたが店員におすすめされてやけにやりたがったので私は許可を必ず取ってやることを条件にしました。お忘れでしょうね……あなたがつけたいと先に決めたんですよ。漸く今になって侵害と理解するなんて本当に身勝手ですこと」
メミーの発言にヘイブルの親が「お前がやったんじゃないか」と小さく罵る。肩身が狭くなったのか椅子の上で窮屈そうに肩を内側にして、見つからないようにコンパクトになろうとしていた。
まだ何もしてないのに負けそうになるとは。音が出る機械をテーブルの上で鳴らす。
衣擦れの音がした後、ヘイブルは病弱な従妹を見舞ったようで帰って来たことを嬉しそうに語る。婚約者のところに行かずどこに行って来たのだとメミーも疑問に思ったが、ケーキを買って来たと言うのでびっくりした。
メミーの面会をほっぽりだした男は初めから行くつもりなどなかったのだ。それなのにもう出席しないとは言わず毎回断りの文面を届けている。
メミーが面会の日に用意をしなければならないことすら想像できないのだ。女の支度には時間がかかる上に貴族相手となれば、何時間も前に外行きのドレスを着ながら不便な思いもする。飲むのも食べるのも好きな時にできず我慢しなくてはならない。
お腹を空かせても時間が来て動かないといけないし、小腹に一つも入れられないのに。もし食べてしまえば唇や化粧をし直さねばならず長い時間ドレッサーの前に座り続ける。
慣れてしまってはいるが好きなわけではない拘束される時間。毎回来ない婚約者のためになぜここまでしなくてはならないのか。疲れてしまうのも納得してもらわないと。
『君のためにケーキを買って来たよ。フェレレド・サンのケーキ。クリーム入りのレーズン味だ』
高級菓子店の名前。メミーには待ちぼうけというプレゼントを渡して、婚約者でもない居候でもないゲストには高級菓子。
逆ではないのか。せめて、待ちぼうけさせた詫びにその買った方の菓子を自分の寄越した使者に持たせなかったんだ?
その時、ぷつりと切れた音が内側から聞こえた。情や義務や配慮。気遣いに物分かりのいい自分。面会時間を待つという気持ち。
一つ残らず残ることはなかった。その後、一方的に聞ける機能を応用して聞いているとお互い少なからず言葉遊びをしていた。
婚約者さんに悪いとか、あの子は君よりしっかりしていて気を遣わなくていいとか。やだ、そんなの酷いと絶対に酷いと思っておらず優越感の滲む声音で会話される内容を箱にコピーした。
「これを聞いて婚約を続けることはできないと思いました」
どう聞いても、よく聞こうとせよ悪く聞こえても繕えないほど二人は仲睦まじい様子。メミーと従妹の違いを出して露骨に愉悦に浸りマウントを取る。女だけの特権ではない、マウントは。
婚約者もメミーを褒めていたりとよく言っているように一見聞こえるが、その実内情を思えば、好きな子にいいかっこをしたくて好きな子と居たいがために都合の良い君ならわかってくれるよね、と身勝手な押し付けをメミーにしているのだ。
二人ともどっちも行き着くところは、メミーが我慢することによって成り立つ隠れ蓑を利用して病弱で婚約者を亡くしたばかりの女の子の近くに居るための、いいカモフラージュ扱いしているだけだ。
婚約者がいる男ならお互い周りから怪しく思われない。そのためだけにヘイブルはメミーとの面会をずっと、ドタキャンし続けているのではないかと疑う。断りの回数が証明している。
「メミーさん。申し訳ないわ」
相手の母親が深く頭を下げ、父親も失望を息子に向けており頭を下げさせる。
「許しますとは今は言えません。すみません」
「いえ。許しなど求めません。やったことが悪質です」
ヘイブルらの父が首を横に振り、こちらの意図を理解する。
『天気がいい日にあそこのカフェテリアに行こう』
『まあ、メミーさんと行った方がいいのでは?』
『メミーはいつだって一人で行ける。君はか弱いから補助が必要だ』
『カフェのものだって残してしまいますし』
『そうしたら僕が食べてあげるから』
『メミーさんに悪いわ』
『そうだ、そしたらメミーにお土産を買おう』
そうすれば面会をキャンセルしたことも挽回できるし、一石二鳥ではないかと二人とも幸せそうに笑う声が部屋に響き渡る。
ヘイブルも彼の親たちも悪魔たちの笑い声を死にそうな顔色で聞いていた。メミーが一人で聞いた時より分散されると思うのだけれどね。
「誠に申し訳ございません」
「なぜ他の家の女子を家に入れたのですか?」
父が向こうの父に問いかけるとグッと喉が締まる音が聞こえて、観念した様子で説明してくれた。彼らの従妹は肺を弱くし、婚約者まで失って命を断とうとしたことを手紙で知り、こちらで療養できるようにと手配して欲しいと頼まれた。
平民なので屋敷に入れるのはどうなのかと話し合うと、最初は土地の奥まったところにある離れだったのにヘイブルが来てしまい、離れなんてダメだと指摘した。
別に彼個人が看病するわけでもない。医者の免許があるわけでもない素人がなにを勝手に判断しているのだろう。彼女と話して庇護欲が出てしまったのだろうかと笑ってしまう。
笑止千万とはこのことか。馬脚を表したと表現した方がもっと早いかもしれない。親の指示ではない子息の指示に添えるわけもなく使用人は聞いたはずだ。当主か女当主に。
移しても良いのかと。本館においていいのかと。彼らの中には婚約者がいる子息の住むところに若い女を置いて、縁談に障りが出てしまうのではと予期した者だっていたはずだ。
その空気を当主夫妻は無視した。見なかったふりをした。鈍感ゆえに気付かなかった。羅列してみたらいかに彼らが貴族として付き合いたくない部類に相当するのか、よくわかろうものだ。
父も父で友人であったはずの男の態度や、過去を慮ることがなかったと理解しないまま認めてしまっているのを聞き首を緩く振る。交友もここまでだな。
メミーだけが思ったものではなかった。向こうの夫婦たち以外は全員思ったこと。無縁になることが決まった瞬間。
それでも納得できない者が若干名いた。メミーに向けて平然と面会をキャンセルし、待ちぼうけを食わせていた間にしていたことは他の女を喜ばせることに夢中になっていた、恥知らず。
彼は何が悪かったのかわからないままなのだ。親たちは謝ったが、何故謝るんだという顔を困惑させて見ていたからわかる。そんな間抜けだからたかが平民に操られるんだろう。
軽い頭で次期当主を支える立場になろうなど、片腹痛い。ハニートラップにもならない程度のことにすら簡単にハマり、まんまと女に会いに行く婚約者など足かせどころか毒にしかなるまい。
「待ってください。皆様は大きく間違っています」
娘だけにではなく元義父当主にも意見を言う息子に顔を青くして「黙れヘイブル」と声を小さく強く叱声。
「今度は、間違っているときたか」
最早父も母も薄ら笑っている。娘との交流回数よりも単語のレパートリーの方が多いでのはないのではと、二人は目を細めて射殺す瞳をヘイブルに向ける。
冷めた目にも気付かず戯言を続ける相手。父親がやめろと言ったのに止まらない。それを見るだけで操作できていないのだと丸わかりだろう。
彼の父は項垂れた。息子がもう親の声では止まらないと初めて知ったような態度だ。前から自分勝手に考えて、勝手にしていたのに何を今更、である。
息子程度の行動も操作できなくて当主ぶるなぞ笑われてしまうだろうなと他人事に見ていく。息子は勘違いやすれ違いにしたいみたいだが、そう思っているのは本人だけだ。
こちらは一切そう思っていないし取る人間はいない。味方は肉親でも居ないかもしれないことに気付かないと、あっという間にブチッと切られるだろうな。
キャルメリーは屋敷の外にでも放り出されるんだろうか。死んだ婚約者云々は怪しいが、肺の病であることは確かみたいなので無責任だ。
家に入れたのなら責任を取って馬車に詰め込み、送るのが必要最低限のこと。とはいえ、憤慨するだろうからそんな思考は彼方に吹っ飛んだろう。
顔を見ていると先行きは不透明で無責任なことを簡単にやりそうだ。息子も従妹の女の子も両方把握できなかった、無能のレッテルは避けられなそうだ。うちにはもう関係がないけど。
婚約者だった男はまだなにかを取り戻せると思っていて、こちらに見えるように顔を向けるが目を合わせるのが煩わしくて不快に目をキュッと細めた。
すると、睨んだと思われたのか首を傾げるので悪いと思っていないことは明白だ。そんなんだから今こうなっているのに。鈍い男だ。
いいことをしているのに、怒られる空気になっていることがわからないとでも言いたげ。息子の教育が足らなかったのか、元々深く考えない性格なのか。
簡単に婚約者との交流を放棄する相手なので、人を見下すことを自然とする人間なのはわかっている。今後二度と会うこともないと思えば精々していく。
「キャルメリーをうちから出します」
「えっ、ち、父上?何を言うのですか?」
ヘイブルは父親を悪魔でも見たような、信じられないという引き攣った顔で見上げたがうちはもう決めているので父が首を振り再考はないので、と断言した。
家からいなくなっても婚約相手が考えなしとわかった今、再婚約を検討する理由がない。無能に領地は任せられない、バカに付き合う気はない。
言外に告げると相手側の当主はげっそりした顔で項垂れながら契約書について再度破棄をすると言い、息子に「立て、行くぞ」と声をかける。
今は落ち込んでいるが、息子と二人きりになれば怒鳴りつけたり責めたりして、三割以上ある責任転嫁の言葉を投げつけそう。バカだなぁと知らんぷり。
なんてことももう無関係になるので、うちとは縁が切れるのだ。何を言っても構わないし、今後に影響がないと思えば好きに思えるので鬱憤を放てる。
「申し訳ございませんでした。メミー嬢、非常識なことばかりしてしまい、本当にすまなかった」
「終わったことですので」
許しではなく見放している声音に義理の父になる予定だった男は、何か他に言う気力も無くなったらしく息子を連れて出ていく。
最後なのにキャルメリーを外に出すなんて何を考えているのですか!と今も喚く元婚約者。たった今婚約者じゃなくなりそっちの方が大問題なのに、居候の方が余程気になるらしい。話を聞いてなかったみたいだ。
居候などにかまけて婚約を台無しにした子息を、父親がただで許すとは思えない。居候の進退について案じている場合じゃないのだけどな。相変わらず人を軽く見る男だ。最後まで幽霊扱いというか後回しにする。
挨拶もなく父親についていくヘイブルに親子で呆れた目を向けたがそれにすら全く気付くことなくドアの向こうに行く。執事が見送りをしたが、馬車に送るまでもずっと言い合っていたらしい。
言い合っていたというよりかは一方的に言っていただけだと言われて、そうなるよと思う。当主はどう思っているのだろう。
放置したけどここまで酷いと思ってなかったのに、どうしてこうなったのかと後悔しているのかも。後の祭りではあるが。手遅れ。
「とんだ者たちと関わらせてしまいすまなかったな」
「まあ、もう終わったから気にしていたとしても無駄でしょう」
父に話しかけられ、手を振る。今更謝られても婚約者選びをミスした事実は覆らない。今は次に行ってほしいところだ。婚期は待ってくれやしないから。
うかうかしていると良い人が婚約してしまうから、早く相手を探してほしい。キャルメリーという女がたまたま居たから露見したけれど、結婚した後に露見してしまえばもっと大掛かりなことになっていただろう。
三日後、なんと驚いたことに噂のキャルメリーがうちに来たのだが、門前で騒いで外の警邏に使用人がサクッと引き渡して、事件はすぐに終わる。使用人によるとあなたのせいで追い出されたと言われたがメミーはそもそも会ってもなかった上に、婚約はなくなっているので自分が原因ではないとはっきり言える。
「私のせいではなくて、世話になってる家の息子に色目を使ったからでしょう?」
「そうでございますね」
使用人らは理解できないと頷く。素直に療養しておけば追い出されることなどなかった。欲を出すから。帰る家はあるのだから別に追放されたわけではない。
しかし、しこたま娘の父親は叱責されて縁も切られるようなことをしたから、帰っても療養しに行く前より家族の対応は悪化していることくらい予想できるだろう。
それが嫌だから帰りたくないのかも。やはり、粉をかけたから。婚約者持ちに毎回話しかけて仲良くしたなど、親はなにをしているのかと周りからも白い目で見られる。
キャルメリーは婚約者を亡くしたとそれも加味して療養したのだ。はしたないと嫌悪の目で見られても自業自得。実際、婚約状態の仲を壊したし。
音声を録音したものを元婚約者の家から貸してほしいと言われたら、高値で貸そうかな。なんて思いながらイヤーカフを触った。
最後まで読んでくださり感謝です⭐︎の評価をしていただければ幸いです。こんな婚約者嫌ですねえ




