表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
辺境のギルドマスタークロウ  ~ 目指すはスローライフ! でもどうやったらライフはスローになるんだ? ちょっと忙しくなってきたんだけど ~  作者: 咲良喜玖
クロウとの絆とロクサーヌ襲撃事件

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

30/34

第30話 盛り上がる

 大会一回戦。

 フランの相手は、リアスドルー家の代理人ノスバル。

 地方の警備兵の隊長で、魔法使いだ。

 この国は基本が魔法である。

 それは、王太子のライドが言っていた事と合致している。

 魔法に対抗する手段が魔法となっているためもある。

 


 貴賓席の端。

 部屋の中央から離れた位置で、二つ並んだ席に彼らがいる。


 「く、クロウ殿。だ、大丈夫でしょうか」

 「ライちゃん、ここでそんなに緊張すんなって。もう始まるんだよ。腹くくりな。なあ、エルリ君」


 緊張しているライドの隣にクロウはいた。

 そして、二人の後ろで、エルリが立っている。クロウはエルリを見るために、後ろを向いた。


 「は、はい・・そ、そそそうですね」

 「あちゃあ。こっちもかよ。つうか。こっちの方が重症だな。ライちゃんの方がマシじゃねえか」


 ライドの緊張なんて、まだまだだった。

 エルリは大緊張で、声が上手く出なかった。


 「二人とも信じなって、フラン君。めっちゃ強いからさ」


 クロウはいつも通り。

 なぜなら、フランの強さをよく知っているからだ。

 それは体ももちろんの事だが、心も強く成長しているからだ。


 ◇


 「試合開始!」


 銅鑼が鳴り、戦闘開始となる。

 フランは、相手の出方から窺う。

 開始位置から動かない。

 だから。


 「そっちからいかないなら、俺からいくぞ」

 

 先に敵が動き出した。

 魔法が主体の大会だから、ノスバルは魔法から入る。

 ステッキ型ソードと呼ばれるマジックソード。

 剣の柄が、杖と同じ素材だから、魔法が強化されるのだ。


 「ファイアーボールだ」


 剣の柄が魔法を強化して、剣の先から魔法が出る。

 武器により強化された火の玉が、フランを襲う。


 ◇


 「クロウ殿。まずいのでは。魔法がいきなり直撃しますよ」


 慌てるライドは、席から立ち上がった。


 「まあまあ、落ち着きなさいって」


 慌てないクロウは、椅子の肘掛けを使って、頬杖をした。


 「弟が危な・・・・。クロウ殿!」


 後ろにいたエルリはもっと慌てている。

 ライドの護衛のはずなのに、クロウの隣に来ていた。

 

 「いやいやいや、心配し過ぎだって。俺がそこを教えないって、ありえんでしょ。まったく。信じてよね。俺も彼の事もさ」

 

 俺を信用してよね。クロウはそんな事を言っていた。


 ◇


 魔法が直撃する前まで、フランは目を瞑っていた。

 研ぎ澄ませたのは集中力と闘気。

 穏やかで静かな闘気の流れは、彼本来の性質だ。

 二つの力が全身を回っていく。


 「いきます!」

 

 ここで目を開けて、火の玉を見る。

 相手の火魔法の魔力を捉えていた。

 

 「はい!」


 フランは闘気を纏った拳で、火の玉を殴った。

 向かってくる火の玉の下部を殴ったので、火の玉は真上に移動する。

 打ち上げ花火のようになった火の玉は、フランの闘気で殴られたので、霧散していった。

 彼は魔法のコアを打ち砕いたようだ。


 「な!? なに、俺の魔法が消滅!?・・・あ・・・ありえない。つ、次だ」


 敵は魔法の展開を早めた。


 ◇


 「「え!?」」


 開いた口が塞がらない。エルリとライドは、前のめりになった。 

 しかし、これも仕方ない。彼らだけじゃなく、観客も同じような態勢になっているからだ。

 誰もが目の前の光景を信じられないのである。

 魔法が殴られる。

 そんな現象は見た事がないのだ。


 「うんうん。まあまあいいね。でもまだまだ。君ならもっとできるはずだ」


 クロウだけが、フランのやってることに驚いていなかった。

 彼の成長を楽しんで試合を見ている。


 ◇


 「な。何なんだお前は。こ、これは・・・」


 ファイアーボール乱れ撃ち。

 計十発の魔法を放ったノスバル。

 全てをフランに当てた才能は素晴らしい。

 だが、その全てが宙に行くとは誰も思わない。


 「そろそろMP切れですかね。さすがにこの量を放てば、効率化されていなければ、尽き欠けてもおかしくないはず」

 

 魔法の弱点。

 それが、MP切れだ。

 遠距離で強力な魔法。

 それは矢などとは違って、距離が遠くなっても威力が落ちないのが利点。

 放出時と着弾時の威力が同じであるのもっとも使い勝手の良い部分だ。

 だが、その強力な攻撃である反面。

 MPが無ければ、魔法は作り出せない。

 空になってしまえば、あとはただの人となる。

 それが、魔法使いの難点と言えるだろう。


 「でもあなたは戦えそうだ。油断せず行きます」


 マジックソードを手に持っているのなら、近接戦闘も出来る魔法戦士型の人。

 容姿から判断したフランは、距離を詰めるにしても気を付けていた。


 「ふん! その移動こそこっちの思うつぼだ。俺の剣技で、倒れろ」


 自信があるのはこっちだ。

 そう言わんばかりのノスバルは、懐に入ってきたフランを見下ろした。

 身長差が若干あるので、剣を真上から振り下ろすには有利。

 狙いを肩に定めて、ノスバルは振り下ろした。


 「なるほど。やはり魔法はない。だったら、ワンツーで」


 ワンツー。ワンワンツーのリズムで行こうと、一番最初のジャブを出したフラン。

 いつもの練習通りに、肩口から真っ直ぐ前に伸ばしたジャブは、相手の剣が落ちてくるよりも先に相手の顎に当たった。

 感触はあり。

 だから次の右ストレートを準備した。

 

 「何も出来ずに終わりだ。せっかくここに来ても、ここで終了だ!!」

 「え? 何もって? 僕は今・・・あれ? ジャブを当てたんですけど」


 何もしてないなんてありえない。

 フランはすでにジャブを出している。

 それに当たっているのだ。顎に・・・。


 「終わりだあああ」


 なぜか敵は勢いづいている。

 自分の攻撃が効いていないのだと間違った解釈をしたフランは、次の右ストレートに力を込めて準備をした。


 「ああああああ・・・・ああ・・・あ・・・ああ・ああ・・あ・あああああ」


 ああの雄叫びがおかしな方向に向かっていく。

 剣を振り下ろす作業もおかしくなり、真っ直ぐ落とせずに左右に揺れて落ちている。

 

 「あれ?」


 そこに戸惑うフランは相手の目がグルグル回っている事に気付いた。


 「な・・何が起こった・・・んだ・・俺の体に・・・自由に動かねえ・・・」


 剣を最後まで降ろせずに、ノスバルは途中で手放した。

 前のめりに倒れると危ないので、フランは彼を支えた。


 「ん? なぜでしょう。一撃しか当たってないのですが・・・しかもジャブで?・・・え?」


 軽めの攻撃が当たっただけなのに。

 相手が倒れたの?

 自分の強さに気付いていないフランである。


 「勝者は、フラン選手だあああああ!」


 静寂だった観客席。

 アナウンスの声が、会場中に響くと、一気に大歓声が湧く。


 「「「うおおおおおおおおお」」」


 フランは頭を下げて、会場を後にした。


 ◇


 「お、俺の弟が魔法無しで。あんな圧勝劇を。ええええ」

 「凄い。これが今のフラン君の実力なのか。素晴らしい」


 二人が驚く中で、クロウは言う。

 

 「うん。でもまだ本気じゃないな。つうか、勝ってるのにフラン君が戸惑ってるわな。あっさりしすぎてさ」

 「え。あれで弟が戸惑っているんですか。え??」

 「ああ。あれさ。本当は次に右ストレートを相手の顔面に入れる所だったんだけどさ。ジャブだけで、相手の脳が揺れちゃったからさ。手ごたえが無いんだろうな。自分の拳を見ちゃってるし、納得してるような雰囲気じゃないな。あれ」


 クロウは、遠い場所にいてもフランの表情まで見えている。

 不満そうな顔で、何度も首を軽くひねっているのも見えていた。


 「まあいいか。あの子は理想が高い・・・いや、違うな。真面目過ぎて、やろうと思ったことをやれないと納得しない子だから、まだまだ強くなるよ」


 クロウは人の本質を見抜くのが上手い。

 実際にフランは、納得がいってない。それに、勝っても油断や慢心がないので、ますます強くなるのである。


 ◇


 その後順当に勝ち進んだフラン。

 常に圧勝劇により、観客席は常時大盛り上がり。

 勝負が、一瞬で終わるためか。

 観客は彼の行動の一挙手一投足を見逃させなくなった。


 目を離したら終わる。そんな事になるから、彼の前の試合では、観客たちが勝手にトイレ休憩が入ってしまう。

 それくらいに、フランは勝ち進んでいく内に大会注目の選手となった。


 それでも。


 「僕なんかが、この声援を・・・貰ってもいいんでしょうか」


 毎度観客席の盛り上がりを見て、感涙していた。

 そして。


 「ありがとうございます。クロウさん。僕って応援が貰えることがあるんですね」


 親から、同僚から、温かい声をもらったことのない男は、この力を授けてもらえた事に感謝した。

 クロウと出会って変わった事に感謝したのである。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ