表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
辺境のギルドマスタークロウ  ~ 目指すはスローライフ! でもどうやったらライフはスローになるんだ? ちょっと忙しくなってきたんだけど ~  作者: 咲良喜玖
クロウとの絆とロクサーヌ襲撃事件

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

24/34

第24話 説得と一瞬の判断

 シオンとフランの走行中。

 フランは地に足を着けて移動。

 シオンは足を若干浮かせて、風魔法で平行移動をしていた。


 二人の速度は一緒だ。


 「フラン。あなた・・・足が速いのね。相当鍛えているのね」


 元特級冒険者の移動と互角。

 これは強者の証だ。


 「ええ。鍛えています」

 「そうだったのね」


 自分が思った以上に武闘派。

 シオンは、フランの事を普通のギルド職員だと思っていた。


 「それより、流石は元特級のシオンさんだ。その移動。風魔法のコントロールが素晴らしいですね。僕の実家の人間たちでも、それほどのコントロールは出来ないでしょう」

 「あなたの実家?」 

 「ええ。忌々しい家系です。兄以外ですが」

 「へえ」


 苦い顔をしたフランを見て、家との折り合いが悪いのかしらと、シオンは思った。


 「「ん!?」」


 二人が同時に音に気付いた。

 どこかで爆発した音だ。


 「戦闘音?」


 フランにだけ、爆発音の次の音が聞こえる。


 「フラン、どこかわかる? レオかも知れないわ」

 「これは、港方面で間違いないです。僕らが向かっている先ですね」

 「じゃあ、急ぎましょう。迷っている時間が無いかもしれない」

 「はい!」

 

 二人は更に加速して、ロクサーヌの東。港へと向かう。


 その途中で、さらに音が鳴る。

 爆発音とは別な音だった。


 『ウ―――――――――――――――』


 耳を破壊するかのような警報の音が町中に響いた。


 「これは、緊急退避の警報!?」


 フランが音の意味に気付いた。


 「レオたちのおかげね。最初の判断かも」


 シオンはこの警報を鳴らせた理由に気付いた。


 「ん!? 人がこっちに?! あ、そうか。港にいた人たちが逃げてきてますよ」

 「まずいわね。あたしたちが巻き込まれちゃう・・・」


 港方面から大量の人。

 最高速度で東に行きたい二人は、この人たちを迂回して移動する事を考えられなかった。


 「僕は、屋根でいきます。シオンさんは? 高く飛べますか?」

 「出来るわ。魔族程はいけなくても、人の頭くらいは越せるわ!」

 「じゃあ、このままいきましょう」

 「うん!」


 二人は向かってくる人の波に抗わずに、立ち向かっていった。

 フランは家の壁を走って屋根に到達。そこからは家々を渡っていく。

 シオンは飛ぶ高さを出して進んだ。


 「見えた! フラン見えたわ。レオが戦ってる」


 すれ違う中で、奥が見えた。

 遠巻きだが、レオが羽の生えた人間みたいな敵と戦っている。


 「急ぎます」


 フランの蹴りが一つ一つ威力が上がっていった。

 走る速度が異常に上がる。

 魔法移動のシオンと同じく位置で、向かって行った。


 こうして二人は、大激戦となる戦場へと移動したのであった。



 ◇


 この少し前、敵を迎え撃つつもりのレオは港の端にいた。

 団員たちに指示を出す。

 

 「皆はここにいる人たちだけでもいいから逃がせ。とにかく西へ行けと、走れと伝えて欲しい。町から出るのが望ましいけど、出来なくても西へだ! 頼む!」

 「「「はい!」」」


 一緒に来てくれた仲間たちが、住民の移動を支えたのであった。


 「来る! あれが魔族・・・恐ろしいほどの魔力量だ・・・あれは異常だぞ」


 中級者の実力を持つレオ。

 相手の力量が読めてくる頃合いだからこそ、恐怖も出てきてしまう。

 恐れ知らずだった初心者の頃の方が今は良かったかもしれない。

 でも、そこを持ち前の勇気でカバーするのだ。


 「かかって来い。俺が相手だ。魔族!!!」



 ◇


 上空にいた男は、その声に気付いた。

 地上を見て、声の主を探し出した。


 「ん。高く飛んでいたのに、私を見ていたのか・・・魔物を使う時間を稼いでいたが・・・中央から東に移動したのも見ていたという事だな。あの男、中々やる」


 町の中心地で一旦町を見下ろしていた。

 偵察行動のようなことをしてから、本格的に攻める際は東から行こうと思って、東に移動していたのだ。

 今は海側にいるので、大声を出した男性は、自分のここまでの行動を見ていた事となる。


 「いや、奴ほどの男はいないだろう。クロウと言う名の男だったな。たしか・・・」


 要注意人物がいない今がチャンス。

 町の制圧を目的としていた男性は、狙いをまず声出しした男性に搾ったのである。


 ◇


 「俺に来い。相手になってやる」


 攻撃を自分に集中しろ。

 皆を守るために発した言葉だ。


 「ふん。珍しいな。人間は自己犠牲などしないはず」

 「俺を人間と言うあたり、お前が人間じゃない証明だ。お前は魔族でいいんだな」


 人間が、人間に向かって、お前が人間だとは言わない。

 レオは、ここまでの自分の予想が正しかったと思った。


 「貴様らは、我々を魔族としか称せない下等生物。貴様らは、何千年経とうが、無能なままだ。無駄に抵抗しようと思うな。我々の支配下に入った方が楽だぞ!」

 「何を? 魔族じゃないだと?」

 

 敵の言葉を聞くに、魔族と言うのは不正解のようだ。

 レオは、考えながら対話をしていた。


 「ふん。我々側の歴史を知らない者に、教えてやる義理もない。間違った認識のまま死んでゆけ。人間」

 「俺は戦う! 皆の為にだ!」


 だって勇者になるのだから!!!

 最後の言葉は行動で示した。

 レオは、立ち向かっていったのだ・・・。



 ◇


 戦闘が始まっている。

 それも最初から圧倒的に負けているだろう。

 レオはもう傷だらけのボロボロの姿だった。


 二人が確認して、人の波を突破。

 こちらの戦場に到着した。

 シオンが指示を出す。


 「まずい。フラン。レオを掴んで! こっちに飛ばす」

 「了解です」


 シオンが風魔法の移動を切って、遠距離発動に切り替えた。


 「間に合え。ウインドラッシュ!」


 シオンが出した風魔法が、魔族とレオの間に出現する。


 ◇


 「む!?」


 レオを完全に砕こうとした魔族は、拳を振り切ろうとしていた。

 前に突き出し直後に、目の前に風魔法の卵が出現。

 ここから大きな風になっていくのは、魔法の軽やかさから分かった事だ。


 「魔法か。中々筋がいい魔法だ」


 これほどの魔法を出す人物が、この地にいたのか?

 手を引っ込めながら、魔族は自分の体重を後ろに傾けていく。

 風が出現すると同時に、その風に乗って後ろに下がった。


 「ぐあああああ」


 レオは、風魔法に気付かずに、巻き込まれた。

 後ろに勢いよく飛ばされる。

 受け身なんて取れそうにない態勢で、吹き飛んでいる。


 「よし。レオさん。ご無事ですか」


 声を掛けられた。

 と同時に自分が無事であった事を理解できた。


 「ぐあ!? ん!? あ、フランさん?」


 抱きしめられた感触で後ろを振り返ると、助けてくれたのは見知った人であった。


 「ええ。よく無事で。ラッキーでしたね」


 魔族が相手で、よく生きていた。

 フランはレオの事を地面に降ろした。


 「レオさんは離れていてください。僕たちが戦います」

 「え。でも、それは無理かと、俺も!」

 「いいえ。あなたの階級ではおそらく瞬殺です。生きていたのは、あの魔族が手を抜いていたからでしょう」


 魔族と戦えるのは特級冒険者くらいなはず。

 三級の冒険者が挑んでいい相手じゃない。


 「でも、数があれば!」 

 「駄目です。ここは質が重要だ。無駄に散らせるよりも、あなたは生きて、この状況を大陸に知らせた方が良い。ネルフィさんたちと共に、ロクサーヌから脱出してください」

 「・・・お言葉ですが、フランさん! 俺だって勇者未満だけど。冒険者の端くれ。こんな所で逃げ・・・」

 「あなたはその勇者になりたいのでしょう。だったら生きてください。ここは任せて、退避を。それとギルド会館にいるリリさんとネルフィさんと合流して。二人を助けてください。あの二人なら、こっちに来ますから」


 強さが桁違い。

 目の前にいる魔族を見て、フランはあの二人の事を優先して、守る事を選択した。

 おそらく、自分たちが戦っても勝てるどうか分からない。

 それほど魔族が強い。

 それも一緒にいるシオンよりもだ。

 二人で協力して戦って、それでなんとか勝っても、こちらが五体満足でいられるかは・・・。

 とにかく最悪を想定して、フランはレオに頼んでいた。


 「で・・・でも」


 レオが下を向いた。

 ここから離れたくない。

 逃げたみたいで嫌だ。

 勇者はどんな事があっても諦めない。前を向く。

 それが子供の頃に憧れた御伽噺の中の勇者だったのだ。

 自分はそこを目指していた。だから逃げたくなかった。


 「レオさん! あなたが頼りとなるかもしれないのです。成長して、魔族に勝つ可能性があるのは勇者だけだ。とにかく生きてください!」


 フランにしては珍しい大声。

 力強い後押しは、レオの行動を促した。


 「わ。わかりました。二人を守ります」

 「はい。お願いしたい。リリさんを頼みます」

 「はい!」


 レオはここで二人を守るために移動した。

 ギルド会館を目指すために西へ移動を開始した。


 「ふぅ。よくやったわ。フラン。よくあの子を追い返したわね」

 「ええ。彼には生きてもらわないと、誰かがあの群れから、皆を守らなくては・・・彼しかいないと思います。このロクサーヌの戦力からいってもですけど」


 目の前の魔族以外で、魔物の群れがこちらに来ている。

 今ここで、二人で迎撃するにはするが、この数では撃ち漏らすのは確実だ。

 そして、その撃ち漏らしたはずの敵が向かう先が予想ではなく、明確となっている。

 当然、奴らは人間を襲うのだ。それも今、一生懸命逃げ惑っている人間をだ。

 その時に魔物と戦える者がいなければ、町民が全滅となるだろう。


 一瞬の判断で、正解を導いていたのが、フランだった。


 「フラン。少しの間、あの魔族の相手が出来る? 時間を稼げる?」

 「シオンさん・・・それは何かの策があるのでしょうか?」


 二人が距離を詰めて、並んで立つ。

 コソコソ話に切り替わった。


 「うん。あたしがあれと戦うわ。群れを消す」

 「出来るのですか。数がかなりですし、あれはガーゴイルでは?」

 「ええ。でも出来ると思う。火力を上げて、魔法を放出してみる」

 

 ガーゴイルが30。

 モンスターランクはA上位。

 一級冒険者であれば倒せるのだが、数が数だ。

 これは特級クラスではなければ、太刀打ちできないだろう。

 しかしそれは、他に憂いのない状態でである。

 今は、未知数の魔族が近くにいることで、果たして、シオンの本領発揮となるのかは、分からない所である。


 「わかりました。僕がやりましょう。全開で戦います! 五分・・いいえ、三分はなんとかします」

 「ありがとう。ここで二手に別れるわよ。いい。頼むわよ。死なないでね。フラン」

 「もちろんです。シオンさん、そちらを任せました」


 二人が役割を明確にして、戦場を別々とした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ