第22話 困難に立ち向かう
敵発見時と同時間帯のギルド会館。
お昼休憩に突入していたリリアナは、ギルドの玄関先にある説明の看板を取り外して、登録業務が終わったことを証明していた。
フランは、1番と2番の受付の窓口の前を封鎖して、これでどの業務も受け付けないとした。
二人のテキパキとした動きの中で、シオンは職員の部屋の中にいた。
お弁当箱を取り出して、二人を待った。
ロクサーヌのギルド会館は、飲は常時許されていて、食は時間制限となっている。
お昼の12時から13時と18時から19時までの間は、食事が許されているのだ。
これはちなみに、ギルド職員の休憩時間と重なっている。
職員は、裏のバックヤードでご飯を食べて、冒険者たちはギルド内の憩いのスペースで食事を取れることになっている。
このルールも、ロクサーヌの独自のもの。
クロウが定めたルールだ。
お腹が空いている時に、誰かにご飯を食べられたら、腹が立つ。
そんな理由で時間制限を設けているらしい。
自分がお腹を空かせて働いている時に、お前らも食うなという意図があるらしいのだ。
「さてと、今日も無事に終わったみたいね。午前中だけだけど」
忙しい時間帯をクリアした。
あとは13時の一時的な混雑をクリアすれば、今日の業務もほぼ終わり。
シオンはこの日の仕事が大体が終わったと思っていいとしていた。
会館が忙しくなるのは午前と、もう一つ。
13時に混む。
その理由は、ギルドのクエスト受注の時だからだ。
大体冒険者となった者で、いち早くクエストを知りたい者は、昨日貼り出されたものを12時台に見に来る。
ちなみに、このクエストの下見をする者は優秀であったりする。
9時から12時までの午前の時間帯は、まだ冒険者ではない者の時間帯なので、冒険者たちは、この時間に集まる。
13時がちょうど混むわけが、それらにあるのだ。
「新しく張ったのは、16個だっけ? 少ないからあっという間に終わりそうね」
新人冒険者が大量にいるロクサーヌ。
最初のスタートダッシュを決めるのに、このクエスト受注も、上手くこなさないと駄目なのだ。
弱肉強食。
早い者勝ち。
これらが、ロクサーヌの新人たちを着実に強くしている。
「午前中の業務。終わりました。シオンさん」
「私もです!」
二人がやって来て、席に着く。お弁当の準備をしだした。
会館内にいるんだったら、皆で一緒に食べるのが絶対!
これがクロウと皆の約束の一個だった。
これは絶対に守らないといけないルールだ。
だから、シオンも準備はしているが、食べていなかった。
「ええ。ご苦労様。二人とも大変だったでしょ」
「いいえ。マスターがいないので、スムーズです」
「え? わ、私は寂しいかなって思ってます」
フランは、邪魔なマスターがいなければ、業務はいつも通りにこなせると言い、リリアナはやっぱりクロウがそばにいないと寂しいと言った。
「そう・・・まあ、人それぞれよね。感想は・・・」
なんだかんだ言ってクロウがいないと寂しい。
それは、シオンも、そして強がったフランも思っている事だ。
「それじゃあ、一緒に食べましょうか」
「「はい!」」
三人が、いただきますと、言おうとした瞬間。
ギルド会館の入り口が鳴った。
『ドカン』
まるで爆発でもしたかのような扉の開き具合で、三人の視線は自分のお弁当箱から入口へと向かう。
「大変です。マスター。シオンさん。緊急です!」
会館内に、ネルフィの声が響いて、ロクサーヌのギルド職員たちの戦いが始まったのだ。
◇
「何事?」
シオンが言うと。
「ネルフィさんの声ですね」
フランが気付いた。
「表ですよ。いきましょう」
リリアナが立ち上がった。
二人も続いて立ち上がり、三人が向かった。
◇
「皆さん。時間がありません。急ぎの報告です・・・ま、マスターは?」
三人の他にあと一人。
クロウがいない。
ネルフィは、長にも報告したいと思い、聞いていた。
「今は出張でいないのよ。あたしが聞くから、報告していいわ。何があったの」
そんなに慌ててどうしたの。
この一文を省いたのは、ネルフィが焦っているからだ。
「はい」
ありがとうございますも省く。
ネルフィも優秀なので、伝えるべき言葉を極力減らしていた。
「魔族がロクサーヌ上空に出現し。港から東の空。あそこに、魔物の群れがいました。あれは飛行形態の魔物の群れでしょう。おそらく襲撃をするために、魔族が呼んだのかと」
魔族がまだ上空を飛んでいたのは、偵察のような形で、本命は空からやってくる群れであるはず。
魔族を発見してから、レオが判断した次の状況判断がこれらだった。
「え? 襲撃・・魔族!? まさか。魔族って一千年以上前の・・・・リイン歴よりも前の話よね」
「はい。ですが、あの特徴は、魔族しかないかと。うちの団長も、その考えで動いています」
「特徴って・・・羽が生えてるの?」
「はい。それで空を飛んでいます。かなり高い高度での飛行特性は・・・魔族しかないかと」
高い高度まで飛べる。
この特性は、たしかに魔族の特性。
それに羽がある特徴も魔族特有のもの。
人間に羽が生えているのが、魔族という認識をアルフレッド大陸の人間たちが持っているのだ。
だが、もちろんの事、羽がない魔族もいるのである。
「まずいわね。あたしくらいしか戦えないんじゃ・・・レオじゃ無理よ。なんで・・いや、あの子は正義感が・・」
レオは勇者見習いとして、勇者の卵として、心意気が備わっている子だ。
心身の心部分だけで言えば、彼はすでに勇者と同じ心を持っている。
「シオンさん。どうしたらいいでしょうか。ギルドのお考えを・・・差し出がましいですが。私は、団長を助けて欲しいと思っています!」
真っ直ぐな目でネルフィが見つめてくる。
それほど切迫している。必死な訴えだと、シオンは思った。
「わかったわ。あたしがいく。フラン。リリ。クロウに連絡を。あの人を呼んでほしいの」
「いいえ。僕もいきます。シオンさんだけでは近接戦闘が出来ません。敵の主体が、魔法戦闘じゃない場合。あなたが不利となりますから、僕が戦います」
フランはいつの間にか自分の受付番号二番の方に向かっていた。
机の引き出しの奥から、黒の手袋を取り出す。
「戦えるの? フラン?」
「もちろんです。こういう時の為。ギルドに危機が訪れた時の為に、マスターは僕をここに置いたのだと思っています。ここを守るのが僕の役目です」
あのマスターが何も考えていないなんてありえない。
実はフランは誰よりもクロウを信じている男なのだ。
普段の辛辣な意見はじゃれ合いと同じ感覚である。
「わかったわ。あなたも来て。じゃあ、リリ。あなたが連絡を。でも東が経由するから、難しいわよ。頼める?」
「お任せを!」
フランが頑張ると意気込んだので、リリアナも頑張ると決めた。
東のギルドとの戦いに備えるため、電話の前に向かった。
「うん。じゃあ、ネルフィ。しばらくリリの護衛を頼むわ。問題の場所にはあたしたちが向かうから、頼める?」
「わかりました。リリさんをお守りします」
「リリを頼めるのなら、それじゃあ、行ってくるわ! フラン、ついてきて。全力でいくから、難しいわよ」
風魔法で自身を飛ばすから、速いわよ。
シオンは自分の移動が速い事を事前に伝えた。
「大丈夫です。走り切ります」
足で追いつく。
フランも自分の移動に自信を持っていた。
「うん。じゃあ、レオを追うわよ」
「はい!」
それぞれがそれぞれの役割を全うしようとした。




