表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
辺境のギルドマスタークロウ  ~ 目指すはスローライフ! でもどうやったらライフはスローになるんだ? ちょっと忙しくなってきたんだけど ~  作者: 咲良喜玖
何でもない日常からマスター会議

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

17/22

第17話 いざ、マスター会議へ

 会議当日。

 クロウは、まだロクサーヌにいた。

 朝会の挨拶の前。


 「本当にさ。ちょっとクロウ。なんでここにいるのよ」


 シオンの第一声から始まる。


 「ん。そりゃまだ会議の時間じゃねえもん」

 「いや・・・会議って、本当にトリカル湖なのよね? ここじゃないよね」


 ここで会議を行うから、クロウが移動しないんだ。

 クロウの対応がまともで、自分の考えの方が変なんだ。

 そう思ってしまったシオンだった。


 「当り前だよ。何聞いてんの?」

 「じゃあもうトリカル中心地にいないと駄目じゃない? ていうか、もうギルドの総本山リスターの会議室にいないと駄目よね?」


 思考を元に戻せた。

 正気に戻ったとシオンも思う。


 「普通の人はな」

 「あんたは?」 

 「俺は大丈夫よ。ちょちょいって飛んでいくからよ」

 「え。飛ぶ?」

 「今って何時だっけ」

 「8時30分」

 「そろそろか。行ってみてもいいか」

 「だから、無理じゃない?」


 二人の会話を黙って聞いているフランとリリアナも、シオンと同様に心配してる。


 「んじゃ。リリちゃん、フラン君。シオンを手伝ってな。頑張ってくれよ!」

 「はい・・でも」

 「当然です・・しかし」


 あなたはと、言いたげな二人を置いて、クロウはヨミにも指示を出す。


 「ヨミちゃん、俺のいない間、迷ったり困ったらシオンに聞きな。こいつも元冒険者だから、良い答えを教えてくれるからさ」

 「はい!」


 元気のよい返事の後。


 「よし。行ってくるわ! んじゃ、留守を頼んだよん。バイバイ」


 と軽い返事を残して、クロウが姿を消した。

 淡い光と共に消えていったので、皆が唖然とする。

 

 「「「え!?」」」

 「これはまさか・・・超遠距離移動! 古代魔法のワープね」


 シオンは、トリカル魔法学園の図書室にある本を思い出した。

 誰も読むこともない本の中の古代魔法を頭の中で探せる彼女は超優秀である。

 

 「シオンさん。超遠距離移動とはなんです?」

 「フラン。あなたは、瞬間移動系の魔法やスキルを知ってる?」

 「はい。大体はですけど」


 フランも優秀な男なので、スキルや魔法を大体網羅してる。


 「あれらって、自分が見えている範囲に移動するの。だから、移動は視線の方向に限定されるから、戦闘の達人には不意打ちにはならないわ」

 「そうですね。見えている範囲だけですからね」

 「でも、さっきのクロウのは違うの。指定したポイントに一気に移動する魔法だから、見えていない場所でも移動を可能にするのよ」

 「じゃ、じゃあ、マスターはもうすでに・・・」


 彼女の発言から、フランはクロウの行動の予想が着いた。


 「そう。たぶん、トリカル湖にいるわ」

 「・・・だったら、早くに言って欲しいですよね。心配して損しますね」

 「あら、あなたも心配してた」

 「当然です。もし遅刻でもしたら、ロクサーヌのギルドはまた不遇になるでしょうから」

 「そうね。ここは大変だからね。あたしたちの人間関係はいいのにね・・・ここの立場がね」


 二人の心配は、クロウの遅刻の心配だけじゃなく、別な事にも繋がっていたのである。


 ◇ 


 ギルドの総本山リスターの会議室。

 広々とした空間に、現在いるのは六名。

 円卓の席の九時の方向にいるのが。


 「皆が集まっているのに、奴がいないのは何故だ」


 イカツイ顔をした鬼の角を持つ男性。

 ライノルド・バーキンだ。

 彼はアルフレッド大陸西をまとめるマスターである。

 既に会議室には統括マスターがいるというのに、マスター界の底辺である辺境のマスターのクロウがいない。

 その事に不満を抱いている。

 腕組みをして呆れていた。


 「そんな事、ワタクシには知りませんことです。彼は自由気ままでありましょうから。まだ来る事はないのでは? むしろ、既に来ている方が珍しいでしょう」


 円卓の席の七時の方向にいるのが、涼し気な目元が特徴のエルフ女性。

 ミサリザ・ジューンだ。

 彼女は、南のマスターである。

 手を左右に軽く振って、そんなの私の知った事じゃないとジェスチャーしている。


 「・・・・・」


 円卓の席の三時の方向で、無言でいる男性は、熊型の獣人種。

 武骨であり、忍耐の文字が似合う男性なので、文句も言わずにずっと黙っている。

 ロードオブウルフ・マイルキープ。

 通称ロウ。

 北のマスターである。

 

 「統括マスター。なぜ、あんなのがマスターなのですか。私は納得がいきません」

 

 円卓の席の五時の方向で文句だらだらで声を荒げたのは、ヒュームの男性。

 美形騎士で東のマスターのノイル・ラルコードだ。

 クロウにイラつくのは、遅刻しているからもあるが、他にも理由があったりする。


 「そう騒ぐな。ノイル。クロウ殿は、準備で遅れているのだろう。今回。彼が議題を提出してくれているからな」


 と本当の所は普通に遅刻しているのだが、その彼の肩を持ったのが、統括マスターであるダニエルだ。

 円卓の席の一時の方向で、ノイルの発言がそれ以上広がらないように蓋をした。


 「ええ、私もそうだと思いますよ。おそらく先生は、準備の為に遅れているのでしょう」

 

 その統括マスターを擁護したのが、ジュリスだ。

 円卓の席の11時の方向にちょこんと座っている。

 ギルドの職員じゃない彼女がマスター会議にいる理由は、学園の校長としての立場からだ。

 彼女は、ギルドの外部要員。

 顧問のような立ち位置で、外からギルドの運営に口を出せる存在として、ここにいる。

 でも実際の所は、話し合いや運営の際の頭数を増やすためなどではなく、世界の中で調整をしなければならない忙しいダニエルの為に、補佐としての役割を果たすことが大きい。

 

 「統括マスターも、校長殿も、奴に甘すぎます! あれでなぜマスターを名乗れるのか。私は東のマスターとして、不満で不安ですぞ」


 まだ食い下がる。

 統括マスターが言っても、怒りが収まらなかった。


 「まあ、抑えてくれ。彼は重要な人物なんだ。このアルフレッド大陸。いや、世界にとってな」

 「馬鹿な。あんな男のどこが重要なのです! 今も遅れている不誠実な男! マスター失格以前に、人として失格だ!」


 ノイルの叱責が止まらない。

 流れるように話し続ける。


 「それにですよ。統括マスター。奴が移動したとの話も聞いていないんです。私どもの管轄のギルドにも、その確認が取れています。こちらに来る気がないのですよ。こちらに来る気がね!」


 これほど叱責するのにも訳がある。

 彼は、クロウを嫌うというよりも、そもそも東のマスターにとって、ロクサーヌにマスターがいることが目障りなのだ。

 なぜなら、ロクサーヌのギルド会館とはここ最近に作られたもので、今までロクサーヌ地域の冒険者たちも、東のマスターの管轄内で、一括管理をしていたのだ。

 なので、以前だったら冒険者たちの新人を担う仕事をしていたのに、その仕事を奪われた。

 という考えが彼の中にある。

 それと、当然の話だが、この考えが東のギルド職員の考えにも根付いている。

 だから、シオンやフランが心配していたのは、そちらからの嫌がらせが加速するのではないかとの話である。

 ちなみに、嫌がらせの一つをあげると、中央へ連絡を入れる際に、東を経由しないと連絡が出来ない設定になっている事である。

 つまり、マスターオブマスターから、ロクサーヌの連絡は出来るのに、ロクサーヌからマスターオブマスターへの直通は不可となっているのだ。

 醜い嫉妬のような行為で、ロクサーヌのギルド会館自体が嫌がらせを受けているのだが、クロウ自体が全く気にしていないので、この設定を無視している。

 職員である三人が苦労をしている部分だ。


 「悪い悪い。遅れちゃったわ」


 そうこうしている内にクロウがやってきた。

 扉を開けて早々、めんごめんごと言いながら、右手だけで謝る。


 「遅い! 何をしていた!・・・って、なぜ貴様がここに!?」


 監視のような行為で、クロウの動向をチェックしていたノイル。

 移動もしていないのに、トリカルの中心地にいることに驚く。


 「悪いって言ってんじゃねえか。そんなプリプリ怒んなよ。美肌坊主」

 

 ノイルの肌が、玉のように美しい肌なので、クロウはそのあだ名で呼んでいる。


 「ど、どうやって。貴様は・・・列車にも・・・乗っていないはずだ!」

 「え? 普通に来たけどさ。あ。でも悪いな。道に迷っちゃってさ。久しぶりに、一人で、ここを歩いたから迷っちゃってさ。誰かに案内してもらわねえと、広くて大変だぁ」


 クロウはこの建物内に来てはいたのだが、内部で迷ってしまっていた。

 広く大きく長い廊下に、たくさんの部屋があって、そこをいちいち一つずつ開けて、確認していたのである。


 「先生!」


 ジュリスが嬉しそうに立ち上がった。

 目立ったので、クロウがそちらを見る。

 

 「おお。ジュディちゃんもいたのか。元気だった?」

 「はい! お久しぶりです」 

 「うん。そうだね。元気ならいいよ。元気なら」

 「はい先生!」


 クロウが入口から自分の席に歩いていく。

 席は、円卓の六時の方角だ。


 「よいしょと。悪いね。皆。俺を待っててくれたわけだ。始めちゃってもよかったのにな」


 クロウが言うと。


 「いいえ。クロウ殿。それはないですよ。あなたもマスターですから、待ちます」


 ダニエルが答えた。

 ダニエルは、公に入ると、クロウの事はクロウ殿と呼ぶことになっている。

 当然、私の部分になれば、先生に戻るのである。


 「そうか。ダリちゃんがそう言うなら、会議を始めるわけないか!」

 「統括マスターの温情だぞ。それに従ったここの全員にも感謝しろよ。辺境のマスタークロウ」


 言ってきたのは、西のマスターライノルド。


 「そうか。角坊悪いな」

 「角坊言うな! お前より年上じゃ」


 ライノルドは自分の方が歳上だと思っていた。

 クロウの見た目がヒュームの二十代にしか見えないからだ。


 「それはありえねえわ。まあいいや。名前知らんもん」


 重要人物しか名前を覚えない性質である。


 「ライノルドだ! いい加減覚えろ」

 「・・ライ?・・・角坊だな」

 「覚える気がねえな!」


 何食わぬ顔のクロウを見て、ツッコミを入れたライノルドであった。

 

 「ん! クロウ殿」


 咳払いからの呼び込み。

 クロウはそちらに顔を向ける。


 「おお。クマちゃんもひさしぶりだな」

 「はい」


 クロウは、北のマスターをクマちゃんと呼ぶ。

 名前で呼んでいないが、愛称にちゃんが付いている事。

 ここが、クロウにとって重要だ。

 君やちゃんが、ある人物。

 それが、彼からの信頼の証のようなものなのだ。


 「クマちゃんもマスターだもんな。ちっちゃい頃は可愛かったけど、今は立派だな」

 「はい」


 彼は、多くを語らないので、返事のみである。

 

 「それじゃあ、ワタクシは、覚えておられるのですかね? 辺境のマスターさん」

 「当然だ。ミサリザだろ。ミサちゃんだ」

 「ええ。そうです。よく覚えてらして」

 「当り前よ。俺は女性だけは全部頭の中に残してるからな」

 「ふっ」


 ミサリザは、軽く鼻で笑った。

 クロウの軽く口が今日も軽快だったからだ。


 「そんじゃ始めようぜ。マスター会議って奴をさ」

 「なんで貴様から始まるのだ。辺境のマスターは黙っていろ」


 ノイルの指摘を聞かずに笑顔のクロウ。

 良くも悪くも、結局クロウが中心になってしまうのが、この世界の理。

 不思議な魅力を持つのが、辺境のギルドマスタークロウなのだ。



 ようやく始まったマスター会議。

 ここからが、アルフレッド大陸の新時代の始まりである。

 その事を、ここにいるギルドマスターたちは知らなかった。

 何も問題もなく会議が始まっていくからだった・・・。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ