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第14話 冒険者登録作業の一連の流れ

 マスターオブマスターの電話から二日後。


 「ついに何も見ずに書けました!」


 ギルドの職員の部屋に元気な声が響いた。

 自分が文字を書いた紙を持って嬉しそうに掲げるヨミは、クロウに駆け寄り、顔の前に紙を持っていく。

 近すぎて、文字が見にくい。


 「どうですか! 上手に書けてますか」

 

 字がつたないのはしょうがないとして、完成にまでは至れた。

 クロウが笑顔で答える。


 「うん。そうだね。よかったね」

 「はい!」


 思った以上に時間が掛かったが、書けたから良しとしよう。

 クロウはうんうんと頷いた。


 「そんじゃ。特別だけど、登録してみるか」


 今は午後。

 登録作業は本来受け付けていないが、今回は頑張ったご褒美に登録してあげよう。

 クロウが直々に登録作業をすることはないので、大変珍しい事となる。


 「そんじゃ。用紙を持ってくるから、そこに名前を書いてもらうよん」

 「はい!」


 クロウが一番の受付にいく。

 冒険者の対応をしているリリアナに言う。


 「リリちゃん。ごめんよ。用紙頂戴」

 「はい。どうぞ。私がズレますので取ってください」


 対応中の為に、椅子をずらして引き出しの前を開けた。


 「んじゃ、ちょっと失礼」


 クロウが受付の引き出しから用紙を取り出す。

 すぐに裏に戻り、ヨミの前に用紙を出した。


 「これが登録の紙で、ここに名前を書いてくれ。ここだよ」


 文字が色々書いてある用紙の中で、クロウは青い線が書いてある場所の上を指差す。

 そこは、名前が書きやすいように下線があった。

 

 「はい!」

 

 ヨミ! とデカデカと書いた。


 「うん。よく書けたね」

 「はい!」

 「そういえばさ。ヨミちゃん。姓はないのかい?」

 「ありません」

 「そうか。じゃあ、君は・・・もしかして、ドノスの民かい?」

 「え。マスター、ドノスの民を知ってるんですか!」

 「まあね。大陸西の砂漠地帯の子たちだね」

 「はい! そうです。マスター物知りなんですね」

 「いやそうでもないよ。でも、君。よく正反対の位置から、こっちにまで来たね。向こうにもギルド会館なんてあるでしょうに?」

 「はい! あります。でも、受け付けてくれませんでした! 文字が読めないんで!」

 「ありゃ。すでに門前払いを食らってたのか」

 「はい。文字を覚える間に、お金が無くなっちゃ駄目だと思って、今すぐ登録できる場所を探して、どんどん歩いていったら、それだけでお金が尽きそうになっちゃって。ここが最後の希望でした!」

 

 まあそうなるだろうな。

 クロウは思った。

 ここは、東の端だから、ここより先はないのだ。

 海の上にギルド会館があったらいいが、そんな事にはならない。

 

 「だから、マスターありがとうございます! 何から何まで教えてくれて! 助かりました」

 「うん。でもまだだよ。君は文章もちゃんと読めるようにならないとね。書けなくてもいいけど、読めるようにはなれないと駄目だよ。いいかい?」

 「はい!」


 そう書けなくてもいいから、文字を読めないといけない。

 書くと言えば、文書へのサインの為に名前さえ書ければいいのだ。

 

 「よし。じゃあ、ご褒美の登録だ。これでお仕事が出来るようになるからね。まずは」


 クロウが用紙を特殊な装置の中に入れた。

 ガシャンガシャンガシャンと文字を打つ音が出ている。


 「マスターこれは何やってるんですか」

 「これはね。冒険者の素質を測って、カードを作ってるところだよ」

 「カード?」

 「うん。冒険者カード又はギルドカードっていうさ。身分証を発行するんだ」 

 「へえ」

 「その時に、診断書も出てくるから、そこから職業を選ぶんだよ。いいかい」

 「はい!」


 クロウは優しく一から教えてあげていた。

 仕事をすれば出来る男でもあるのだ。

 なので、もっと仕事をして欲しいと思うのが、シオンたちである。


 「お。出てくる」


 カードと同時に診断書も出てきた。


 「これだ。こっちを持っててね」


 クロウはまずカードを先に渡した。

 ヨミが貰ったカードの裏表を見る。


 「あれ? ほとんど何もないですよ?」


 冒険者 ヨミ

 等級  五級冒険者

 職業  なし

 

 とカードには書いてあるが、ヨミは自分の名前だけしか読めない。

 

 「うん。まだまだ白紙に近いのはさ。君が新人だからね。これからだよ」

 「そうなんですね」

 「それで、君がなれる職業はっと・・・なんだ。え、君はこれになれるのか。珍しいな」


 クロウが診断書に目を通す。

 書いてある事があまりないのだが、少ないながらも書いてある職業が特殊であった。


 「戦士見習いか、勇者見習いになれるみたい。どうする」

 「勇者見習いがいいです! 勇者になれるんですよね」

 「まあ、見習いからなれるになれるんだけど。結構難関だから精進が必要だよ。必要なパラメータだけじゃなくてね。他にも諸々の要因がないと、勇者にはなれないからね」

 「そうなんですか!」

 「うん。これ見な。君のステータス表のパラメータが・・・ってわからないか」


 文字が読めないんだから駄目か。

 クロウは口頭で教える。


 ヨミのステータス。

 HP   88

 MP   11

 攻撃力  24

 防御力  11

 素早さ  70

 知力    3

 魔力    8

 闘気  213

 

 「これは・・・君は戦士を選んだ方が、序盤が楽だね。うん。こっちを選んだ方が、かなり早い成長をすると思う」


 戦士のステータスの成長伸び率と、彼女の本来のステータスがマッチしている。

 これは、勇者よりも向いていると言えるだろう。


 「そうなんですか?」

 「ああ。君はどうやら闘気型の子みたいだからさ。勇者を選ぶと、成長が難しいな。ここから魔力を伸ばさないといけないしね。それと知力もだ。勇者のパラメータは、バランス重視だからさ」


 世界ダルレシアは、魔力と闘気が存在する。

 魔力は文字通り魔法を扱う際の威力を示していて、闘気は戦う力を具現化する力だ。

 武器や肉体を強化する力と言い換えてもいい。


 「闘気を増やすって結構難しいから、最初から多いのは良い事だ。しかもこの時点で、ぶっちぎりだしね。たぶん、レオでもこのレベルの闘気を持っていないだろう。だから、おそらく君がこの町でナンバーワンの闘気持ちだな」

 

 新人冒険者たち、登録をしようとしている子たち、町人たち。

 これらから言っても、ヨミが一番素晴らしい闘気を持っているようだ。


 「あのマスター?」

 「うん。なんだい?」

 「強さが数字で記されるんですか」

 「そうだよ。これは、明確にするためらしいよ」

 「明確?」

 「ああ。俺の師・・・じゃなくて」


 言いかけた後に説明を続ける。

 

 「この世界の神様が決めた事なんだ」

 「神様!? 凄い人が決めたんですね」

 「まあね。つうかあの人は・・・じゃなかった。神様の元居た世界のRPGってのが、基本にあってね」

 「RPG???」


 ヨミが、知らない単語に首を傾げる。


 「まあ、そこは気にしなくてもいいよ。とりあえず、この世界はその方式を取っているんだ。でも一つだけ違うのが、レベル制を導入してなくて、このパラメータは独自に伸びるシステムなんだ。攻撃力とか防御力とかが独自に伸びるってことね」

 「そうだったんだ」 

 「うん。だから君の闘気の伸びだけがいいんだよ。レベル制だったらここまで一つが特化して伸びていかない。ぐんぐん伸びてるのは、独自に伸びるからだよ」

 「・・・あ、そうですね。闘気だけ高いですね」


 この他にも、個々で伸び率が違ったりする。

 個々の性質に加えて、職業補正も掛かるので、一人一人に違いが生まれる。

 勇者の補正は、全体にプラスの補正が働くのだが、勇者見習いは全体にマイナスが働く。人よりも成長しにくいのだ。

 だから、勇者への道は厳しいものである。

 そう、勇者とは険しい山をいくつも登った先にあるものと知れ!

 神からのお達しであった。


 「これ、あとでね。スキルも学習するんだよ。いいかい」

 「スキルですか?」

 「うん。タレントスキルとか、他にも職業スキルってのがあるからね。今なりたいと思ってる勇者見習いにも、獲得できるスキルがあるからね。勉強しておくといいよ。これからの為にね」

 「何があるんですか」

 「まあ、色々あるんだけど。最初に獲得した方がいいのが、たぶん勇者見習いの心かな。これの獲得を目指すといいよ。状態異常にかかりにくくなるから」

 「状態異常って、麻痺とかですか?」

 「そうそう。眠り。毒。麻痺。恐怖。病。ステータスダウン系。これらが主な奴かな」

 「どうやって獲得するんですか!」


 真面目な生徒だな。

 クロウは学習意欲があるヨミをじっと見つめていた。


 「教会に行って、色々やってもらうのさ」

 「教会なんですか?」

 「そう。この世界の人は、自分のステータスの変化を調べたい時に、教会に向かうんだ。スキル獲得ポイントってのが戦う内に蓄積されていくから、十分なポイントを得たら、獲得したいスキルを教会で選んでいくのさ。教会にそのシステムがあるからね。出来たら教会がある街を起点に、冒険は考えた方が良いよ。ちなみにここにはないからね。気をつけてね」


 ロクサーヌは初期村のような立ち位置だから、スキルを獲得できない。

 大きな街にだけ、教会はあるのだ。

 

 「そんじゃあ、大体説明したし。これから勇者見習いでいくなら、覚悟がいるけど。それでもいい?」

 「はい!」

 

 成長について、説明しても、まったく迷わない。

 その心があれば大丈夫か。

 クロウは、勇者見習いの登録を急ぐ。


 「よし。じゃあ、このカードを持ってくれ。どっちかの手に持って欲しいから、利き手がいいかな」

 「はい」


 ヨミは右手にカードを持った。


 「こう言ってくれ。登録。勇者見習い! こんな感じ」

 「はい」


 ヨミが言われたことを素直にやる。


 「登録。勇者見習い!」


 カードが濃い光を放ち、本人も薄っすらと光った。

 

 「よし。無事になったな」


 その姿を見ていたクロウが、カードを覗き込む。

 職業の欄に、勇者見習いが加わった。

 

 「本当ですか。やったぁ! やっとなれた。嬉しいです! うわぁああああん」

 「え? どしたの急に」


 嬉しそうに飛び跳ねてから、急に蹲って大泣きになる。

 動じることの少ないクロウがたじろいだ。

 

 「やっと・・・やっとなれました・・・長かったですぅ。ありがとうございます。親切にしてくれて、ありがとうございます」

 「そうだね。よかったね。でもまだこれからだよ。勇者見習いは結構大変だから、前向いていこうね」

 「はい! 頑張ります! ここでずっと」

 「いや、それは・・」


 流石に無理があるな。

 ここで勇者になることはないはず。

 レベル帯が弱すぎて、自身の成長を促せない。

 勇者へと昇格するには、ここでの成長程度では足りないのだ。


 「まあいいだろう。とりあえず君は、文字を読めるようにしよう。今度は本を読む特訓だ!」

 「はい!」

 「それと並行して、クエストを受注して、達成してみよう。冒険者の第一歩を歩まないとね」

 「はい! そうします」

 「んじゃ。まだ座学ね。いいかい?」

 「はい!」


 こうして、クロウが教えることになるヨミは、成長していくのである。

 ロクサーヌ産の勇者見習いは、果たしてどこまで成長することになるのか。

 クロウの人生の楽しみの一つとなっていくのである・・・。


 

 

 


 

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