百、合、子。
掲載日:2025/12/03
ー19xx年、12月ー
宇田川啓司は目を疑った。
木造仕立ての古いアパートの一室で、かつての同志が首を吊って死んだ。
肺がひゅっとなり息がうまく吸えない。
足元が崩れてしまい立てない。
ズボンのポケットにあるピッチを震えながら取り出し、#9110と押した。
駆けつけてくれた警察に事情を話していてはいたが、頭の中は真っ白でふらふらしていた。
小宮健志郎とは仲が特別良かったわけではなかった。しかしある事件がキッカケでよく話すようになって行った。
人って、死ぬんだ。
そう思った。
死ぬ勇気があった人間は愚かなのか。
宇田川にはわからなかった。小宮の気持ちを汲み取り理解してあげられなかった。
すまない…心の底からそう思った。
雪がちらつき、やがてしんしんと降る頃には事情聴取から解放された。
雪が小宮の涙に見えた。
その時に初めて涙を流した。




