表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ライフモバイルユニバース  作者: 宅間晋作
一章 白虎同志
9/14

倫理の欠如

 もう何時間も戦っている気がするが時間が経つという感覚を忘れてアムズは目の前のモバイルと戦いを続行していた。


「あう。 ……うっ!」


 モバイルの方は既に足元がふらつき、眠そうな顔を浮かべてグッとお腹の音が鳴っていた。


「……なぁもうやめにしないか? 俺は別にお前を殺したい訳じゃないんだ」


 アムズはなるべく今まで掛けて貰った言葉を真似して、モバイルに歩みよった。

 憶測に過ぎないが目の前のモバイルはもう既に活動限界になるまで動いてもうろくに頭も体も動かないのだろうと察した。


「……あー食べ物なら俺が探してきてやっからよ」


「う、あっ、うう」


 すると目の前モバイルが膝から崩れ落ちた。

 どうやら本当に限界を迎えてしまったらしい。


「……ライッツオ様すみません。 あなたをここに置いて目の前のモバイルの命を救う事を。 そして来世では、またあなたの孫で師弟にしてください」


 アムズは片膝をついて、ライッツオの遺体に対して祈りを捧げモバイルを担いで歩き始めた。


「う……うぅ」


「……衰弱しているのか?」


 アムズは肩に担いだモバイルの様子を見ながら疑問を口にする。


「……やっぱモバイルもあくまで生命体だからエネルギー必要なのか?」


 アムズがほとんど出会ったのはデザイン固定してるモバイルばかりなので、この様にまだ自我や多様性を獲得している途中のモバイルは見た事ない。


「……えーと確か遺伝子が万能でも運動エネルギー? 魔力をどうしても必要になるってライッツオ様やリビト様は言っていたっけか?」


 うろ覚えの知識を口にしながらアムズはモバイルに食わせてやる食料を探す。

 とりあえずカエルとムカデがいたのでそれを風魔法で取り上げて軽く火で炙る。


「ほれ」


 そう言ってアムズは目の前のモバイルに置く。


「う? うぉぉぉぉ!!」


 するとムカデとカエルの山盛りを目の前のモバイルは貪る様に食べた。


「あう! うっ!」


「あー良かったよかっ……えっ?」


 目の前のモバイルが食べ終わったと思ったらアムズの頭をモバイルがいきなり掴んでいた。


「うっ! うっ!」


「……まさか」


「うぁぁぁぁ!!」


「ぎゃあああぁ!?」


 すると目の前のモバイルはアムズの頭に電流を流したがどうやら初めて使う魔法だったらしく、モバイルの方も出力をミスって気絶した。


「な……んだ?」


 口はそれしか呟けずそのままアムズは気絶した。



「おはようアムズ」


「んあ?」


 アムズが目を覚ますと目の前には言葉を喋るモバイルがいた。


「……なんで言葉を喋れる様になってんだ?」


 アムズは急に起きた現象に戸惑い、首を傾げた。


「ふっ。 これは細胞の活性化さ」


「活性化?」


「おそらくだが君と戦った事によって俺? 自分? 僕? 私? は知性を手に入れたのだよ。 自分で与えられたのではない。 他者から与えられたのさ。 まぁ君が音として喋るのと同時に電撃で活性のサイクルがなければ無理だっただろう」


 そう言いながらモバイルは流暢に言葉を喋る。


「はぁ。 うん」


「これはどうかな?」


 そういいながらモバイルの姿が変わる。


「はっ?」


 性別が女性になったり、男性になったり、髪が赤や黒に白など様々な姿に変わる。


「ふふふ。 今まで殺してきた奴らのデザインを真似してみたんだ! すごいだろ!?」


 まるで子供が優勝トロフィーを掲げる様に、両手を広げてモバイルがニコニコと笑った。


「……本気で言っているのか? お前」


 あまりにも言ってる事が分からなくてアムズは絶句する。


「うん? どうしたんだよ? 君の言葉通り自分。 うんとりあえず自身の事を『自分』と言おう!」


「……お前今まで一体幾つの人間を殺してきたんだ?」


 アムズは絶句して目の前のモバイルを見る。


「うん? 人間じゃないでしょ? モバイルだよ。 性別も生き方も全部自由に生きれるすばらしい種族で情報とタンパク質の塊。 それを殺しただけだよ?」


 首を傾げて目の前のモバイルは首を傾げる。

 倫理が育っていない。

 道徳がない。

 まさしく生きる者の敵だった。


「……なんで色んな人達を殺した?」


「煩わしかったから。 目障りだったから。 意味が分かんなかったから」


「……あ? えっ?」


 目の前人物が言っている意味が分からなかった。

 どう教育されれば、こんな価値観や倫理に目覚めるのだろうか。


「お、親や友達は!? し、親戚に兄弟姉妹! そんなのはお前にはいないのか?」


「……変な事言うんだねアムズは……そんなの自分にはないよ。 一人ぼっちだったの知ってるでしょ?」


「あ……え」


 暗い深淵の瞳を宿しながら、モバイルは言葉を話す。


「だって一人だったんだもん。 けれどね。 殺して、殺して殺す度に自分は快感を得て満足して、 生きてる実感を感じれた。 あぁこれが自覚なんだねアムズ! 自分は今生きてて一番楽しい!」


「……あ」


 アムズは絶望した。

 与えてはいけない生物に水や食べ物を与えて育ててしまった。

 そう悟った。


「ねぇアムズもっと教えてよ君の事。 あっ! なんなら君の家族姉妹や兄弟を殺そうか?」


「……お前はここから出してはいけない!」


 そう言いながらアムズはモバイルと激突した。

 






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ