『モバイル』
『モバイル』は生まれながらにして森にいた。
何故ここにいるか全く分からない。
意識も自我も曖昧。
知識も欲望も渇望もなく、ただ生きたいと言う本能だけを知覚していた。
「あ?」
喉の発達は正常。
思考も、感性も他の目にし、聞く味わう感覚も正常。
ただ誰にでもある機能、本能を感じながら『モバイル』は歩く。
「うっ!」
「ぎゃわん!」
「キィッキ!」
目の前に変なものが現れたので怖くて、煩わしいので殺して黙らした。
「う!」
これがいけなかった。
『モバイル』は自身を強者だと知覚し自覚した。
「うっ! うう!」
そこからは殺戮だった。
「な、なんだ!」
「も、モバイル!?」
「うっ!」
ざわざわした存在がたくさんいる所へ向かった。
白や黒に赤など色んな情報があって『モバイル』は歓喜した。
「う! うう!」
そこから『モバイル』は殺戮を始めた。
泣く者。 怒る者。 命乞いをする者全部を鏖殺し、壊滅し、燃やして壊した。
「う! う!」
不思議と感覚的に自身は体を変化させる事が出来ると理解して、体を見慣れた今まで殺した煩わしい存在に体を変化させて目の前にいる赤色や青い物や黒い物を殺した。
「う! う!」
喜んだ。 喝采した。
この充実感に満足感。
快感を身を委ねていれば自身はなんて無敵なんだろう。
そんな風に考えながらモバイルはあちこちにある村や街を『村』や『町』と言う知識や情緒など持ち合わせずただ殺しその本能と快楽を満たした。
だがそんな物長く続きはしなかった。
「お前をこの地下に幽閉する!」
ある日一人の変な音を発する人物によって『モバイル』は地下に閉じ込められた。
だが『モバイル』にはどうでも良かったので穴を掘れる煩わしい存在に体を変化させて深く深く潜った。
「う!」
広い空間に出ると一つの空間があった。
川もあり、食べれる煩わしい物がたくさんあったのでそれを食べて生きながら得たがある日すごい振動を感じた。
「う?」
天井を見上げると岩がたくさん落ちてきたので『モバイル』は避けた。
「うぅ!!」
この時『モバイル』は怒りを覚えていた長年住んでいた安寧の地を脅かされたと怒り心頭だった。
「ライッツオ様! ライッ!?」
煩わしい音が聞こえた。
見てみると煩わしい音を発する奴が目の前にいた。
色は白色で背丈はそんなに大きくないので近づけば殺せると『モバイル』は考えた。
「う、うぉえ」
「う?」
すると急に嘔吐したので何があったのかと思ったが『モバイル』にはどうでもいい事だった。
ただ煩わしい物を殺すただそれだけなのだから。
「そ…….んな。 嘘だ。 嘘だ!」
「うう?」
音がころころと変わる。
それがとても不愉快でイライラした。
だからこそ一刻も早く目の前にいる煩わしい音を殺すべく、体を変化させて殺戮を開始した。
「魔獣か!?」
目の前の殺すべき存在が変化させて尻尾を避けて自身に気がついた。
だがそれを無視して『モバイル』は両手を変化させて握り潰す事にした。
「うぅ。 あぁぁぁぁ!」
「チッ!」
「あう!?」
敵は両手の攻撃を避けて、体に変な物を流してきて『モバイル』は体が硬直して気を失った。
「あう! あう! ぐぅるるる」
『モバイル』はすぐさま目の前の敵を警戒した。
強い。
今まで戦ってきた中で誰よりも目の前の煩わしい物は強かった。
すると煩わしい音が聞こえた。
「……あーいやぁ俺は敵じゃない! 俺の名前はアムズ! 人間の先祖返りだ! お前の名前は?」
「うう?」
言っている意味が分からない。
自身と対話したいと思っているのだろうか。
関係ない殺し、殺される。
『モバイル』の価値観、倫理、情緒はそこで止まっていた。
「……まじか言語が分からないのか?」
煩わしい音が何か喋っている。
だからこそ殺すと『モバイル』は決意して特攻した。
「あう! わるぐぅ!」
「……とりあえず言語を覚えさせるか」
殺すべき敵はため息を吐いた。
その態度に不快感を覚えて、『モバイル』は何度も攻撃を仕掛けた。
「えーとあーうーえーお」
「うがぁぁぁぁ!!」
煩わしい。煩わしい。煩わしい。
音を聞くたびに頭がおかしくなる。
何かが芽生えそうになってイライラする。
「まぁ落ち着つけって」
また音が聞こえる。
それにイライラする。
様々な今まで殺してきた煩わしい物に変化させるが全て当たらず、イライラが溜まった。
「あうがるぅ!」
『モバイル』はそれでも特攻して黙らせようとしたがダメだった。
「……しょうがない」
「きゃん!?」
また変なのを流されて、体が硬直し気絶したが数分を持ってすぐさま目を覚まし、敵の首にかぶりついた。
「う、うぅ。 きゃんがぅるるる!」
「……何度でも俺はお前と向き合うぞ」
「うっ!?」
その目に恐怖を覚えた。
まるで内心を見透かされる様に感じた。まるで目の前にいる自分は敵ではないと怒りも、恐怖もないただ純粋でまっすぐな瞳に生まれ始めて『モバイル』は恐怖し、敗北を悟ったがそれでも抗い続けた。




