モバイルと人間そして加護
「……どうりでみんな強いわけだよ! 冒険者だったのかよ! ちくしょう!」
大人にコケにされてアムズはヤケクソになっていた。
「……哀れだなアムズあのまま私の言葉に耳を傾けていればこんな事にはならなかった」
「う、ううう分かっているよ! リビト様!」
そう言ってアムズは涙を流す。
「さて、今回は復習の雑学だ。 我々モバイルは姿形を自由に変形させ、さらに魔法を火、水、風、土、闇、光、防御、武器、雷、氷の10種類が扱える」
「はい」
「そして加護という特殊な力を得る。 これは個人の奥の手切り札とも言える。 大体十歳の頃に発現し、使いこなす鍛錬が必要だ。 覚えているな?」
「はいはい。 覚えてますよ! 普通の魔法よりも魔力を使うんだろ?」
「正解だがその怠けた態度はいただけない」
そう言ってリビトは剣を抜いた。
「……お前は加護を得ている。 それを今から試す」
「……本当に俺は発現してるのか?」
「……最初に言っておこう。 お前は私達モバイルでは無く、モバイルの元になった種族の先祖返りの人間と言う個体だ。 モバイルは結婚しても無性のモバイルが生まれるがお前達先祖返りはその先祖返りの子供しか生まれない。 つまりは生きてる途中で性別、肉体というデザイン設計図を変える事がお前は出来ん。 だが加護は授かるこれは皆平等の力だからだ」
「……脱線だけどさぁ。 ハリネ様もリビト様も姿変わってないじゃんなんで?」
「……それは私達はデザインの固定をしたからだ」
「デザインの固定?」
「ああ。 三年間同じ姿を保つ事をデザインの固定と言う。 そうすればもうモバイルは好き勝手に性別や肉体、種族の変更は出来ん。 まぁ自己納得でこの姿でいたい言う意志表示がデザインの固定とも言えるがな……話が長くなった。 ではお前の加護の検証に入る」
「まずは武人の加護。 これは武器の強化が出来る加護だ。 私は武人の加護を持っているからなこの通り武器の切れ味や強度を上げれる」
そう言ってリビトは剣で身近にある大きな岩を真っ二つに割った後に粉々して砂に変化させた。
「……すげー」
「だがお前は武人の加護持ちではない。 十五年間お前は武器を持って組み手したが武人の加護ではないだろう」
「はぁ!? なんでんな事分かるんだよ!」
「加護は趣味趣向や独自の哲学価値観で発現する物だからだ」
「……つまり?」
「情熱を注ぎ、時間も疲労も忘れて夢中になれるものが加護なのだ」
「……分かりません。 リビト様」
純粋に分からずアムズは素直に気持ちを言葉にした。
「……まぁ加護は生きた年月によって強くなる。 これはお前は無理だろう。 病も怪我も老いもないモバイルと先祖返りの人間種族のお前とでは全く加護の度合いが違う」
「……リビト様も俺は弱い人間だと思いますか?」
いちいち、人間とモバイルを比較して言うのでアムズは自信がなくなってきた。
「……すまないな。 純粋に心配なんだ」
「……心配?」
「ああ。 殺戮や悪性に目覚めたモバイルがお前の目の前に立ち塞がった時に心を折れてほしくない」
「……うん」
「まぁ最初私も、お前の事は嫌いだったがレイネア様が慈愛向けられた我々白虎同志の仲間だ。 だからこそ私は全力でお前を育てる事にした」
「……リビト様」
「……はぁ。 話しすぎたな今日はここまでにして休め」
「……分かりました」
そう言ってアムズは頷き眠りについた。




