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ライフモバイルユニバース  作者: 宅間晋作
一章 白虎同志
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白虎同志

「うぁう」


「……声だけ聞こえている事だけがちょっと悲しいですね」


 そう言ってレイネアは瞳から一筋の涙を流した。


「……私、目が見えませんから赤ん坊の可愛いお姿が見えません」


「……まぁまぁ落ち着いてくだされ。 皆あなた様の帰りを待っていますから」


「手を引いてくださいねライッツオ」


「はいもちろんですとも」


 そう言いながら二人は地下を歩いて家族の待つ神殿に辿りついた。


「レイネア様!」


「ライッツオ様!」


「あーレイネア様だ!」


「皆! レイネア様が戻られたぞ!」


 神殿に辿りつくと地下神殿の集落に住む者達が二人の元に集まり、笑みを浮かべた。


「レイネア様! 集落に住む新たな同胞家族はいますか!」


「いつでも料理の準備は出来ています!」


「レイネア様! お帰りなさい!」


「はいはい皆さんそんなに騒がないで? この子が泣いてしまうわ」


「「「えっ?」」」


 するとレイネアの胸に抱いている赤子の姿を集落の人々は気がついた。


「こ、これは!」


「……無性ではない。 男の子か」


「……先祖返りの子を連れて来たんですね」


 すると赤子を見るな否や集落の皆の表情が変わる。


「お、お待ち下さい! レイネア様ま、まさかその子を育てるおつもりですか!」


 するとレイネアの前に片膝をついて傅く一人の男が現れた。


「……リビトそんなに慌てないで? 赤子が起きてしまうわ」


「す、すみません!」


 レイネアが注意すると黒髪に青い瞳。 白い僧衣を着た少年リビトは頷いた。


「……我らモバイルは元々無性から生まれ、そこから価値観形成やエゴ、性癖や自己納得によるもので己の体のデザインを変えますで、ですが! 性別も姿も固定された先祖返りをあなた様は育てるおつもりですか!」


「……やめとけバカ騎士」


「……ハリネ」


 すると袴姿にハリネズミの顔をし、髪が緑色で琥珀の瞳を宿した少女ハリネが現れた。


「……レイネア様このバカの言ってる事無視していいのでレイネア様のやりたいようにしてください」


「ああん? レイネア様に口出しするつもりか! この侍女!」


「……私は別に反対しない。 ライッツオの爺さんもおんなじだろ?」


 そう言ってハリネは視線をライッツオに向けて確認を取る。


「……レイネア様がお決めになった事を阻む通りなしと私は思っておりますのでな」


 そう言って温和な笑みをライッツオは浮かべた。


「何より新たな我ら白虎同志の家族。 これを祝福しない訳にはいかぬだろうよ」


「……ライッツオ様がそう言われるのであれば私も否定はいたしません」


 そう言ってリビトは立ち上がってレイネアを見た。


「もしもその子供が我々に危害を加えた場合は私が処罰します」


 圧を込めながらリビトはその場を立ち去った。


「……すみませんなレイネア様。 騒がしくしてしまって」


「赤子がぐっすり眠っているならいいのです。 起きていたらすこーし皆に黙って貰おうと思っていましたが」


 温和な笑みを浮かべながら圧を込めてレイネアは笑う。


「はっは。 これは恐ろしい。 ところでその子の名前はどういたしますか?」


「……そうですね。 手を伸ばせる子になるようアムズなんてどうでしょう。 えっへん」


「ほほ。 それはよろしい事で」


 そう言いながらライッツオは笑いながらアムズの頭を撫でた。


「……どうか銀の女神様の加護がありますように」


 そう言って十五年の月日が経った。






「……なんでだよ! 俺は外に出たいよ! ライッツオ様!」


 そう言ってアムズは口を尖らせて駄々をこねた。


「……アムズ。 そう文句を言うなお前はまだ未熟私から一本も取れてないだろう」


「……そ、そうだけどさぁ!」


 アムズはライッツオの発言に苦虫を踏んだような表情を浮かべた。

 五歳の頃から鍛錬に明け暮れたがアムズは今でもライッツオから一本を取った事がなかった。


「……スマホだって貰ってないし! 鍛錬と読書ばっかりで飽きた!」


 アムズは自身の思いを打ち明けるが、ライッツオは顰めっ面でアムズを見るだけだった。


「ダメだ。 お前はまだ未熟だ後二.三年研鑽してから物を言いなさい」


「あ、そういいもん! ハリネやリビトに許可貰うから!」



 そう言ってアムズは外に出て、ハリネとリビトがいる家に向かった。


「俺は外に行きたいんだハリネ! リビト! お前達から言ってくれ!」


「「ダメだ」」


 アムズが土下座して外に行きたいと懇願するがハリネもアムズもそれを否定した。


「……な、なんでだよ! お、俺そんなに弱いか!」


「弱い」 「確かに弱いな」


「ぐはぁ!?」


 ハリネとリビトから評価を下されて、アムズは胸を押さえて膝から崩れ落ちた。


「う、うぅぅ。 ど、どうしてだちくしょう!」


 情けなく、涙を流しながらアムズはハリネとリビトを睨んだ。


「……私とライッツオ様相手に善戦出来無ければB級冒険者や魔獣の相手にすらならん」


 そう言いながらリビトが淡々と告げる。


「……まだお前は未熟。 ここで弛まぬ鍛錬を積め。 それが強くなる一歩だ」


「嫌だ嫌だ! 俺は冒険者になってみたい! 外の世界いーきーたーい!」


「……レイネア様のような事を言うな。 斬り殺したくなる」


「……すみません。 調子乗りました」


 アムズが駄々をこねて地面を転がるとリビトが剣を抜いて脅してきたので正座をして話を聞く事にした。


「……もう今日は寝ろ」


「そうだ。 子供は寝ていろアムズ」


「……はい」


 厳しい声にアムズは頷くしか無くトボトボと自分の部屋に戻り眠った。




その日の夜だった。


「誰も起きてねぇな! よし!」


 そう言ってアムズは地下神殿を抜けようとしていた。


「どこへ行くのです?」


「……レイネア様」


 アムズが出て行こうとするとレイネアが立っていた。


「……れ、レイネア様どいて下さい! 俺は外の世界を見たり冒険者になってみたいんです!」


 アムズは目の前にいる白虎同志が崇め奉る聖女であるレイネアを相手に啖呵を切った。


「うん? 別にいいですよ?」


「えっ?」


 するとキョトンとした顔をしながら頬に人差し指を与えてレイネアは笑った。


「よしよし大きくなりましたねぇ。 モバイルではそんなに大きくなるスピードは遅いのですが本当に先祖返りの子は大きくなるのが早い」


「頬を挟まないで下さい! レイネア様!」


「ふふ。 ごめんなさい」


 いつの間にか目の前に来て頬を挟んで触るレイネアに困惑しながらアムズは反抗期の子供のような態度をとった。


「あ、そうですこれどうぞ」


 すると何かを思い出したようにレイネアが両手を叩き、ポケットからスマホを取り出してアムズに手渡した。


「……スマホ?」


「はい。 これでお金や連絡交換が出来ますので連絡下さい」


「……俺白虎同志を出て行っていいんですか?」


 こんなに手厚い対応を取られてアムズは困惑した。


「……まぁ子供の成長を見守るのが母であり、女神であり、聖女ですので……」


「そうですか。 ありがとうございます! レイネア様! 行ってきます!」


「あっ、アムズ」


「なんですか?」


「元気に過ごすんですよ」


 そう言ってレイネアがアムズを優しく抱きしめた。


「はい! ありがとうございます! 行ってきます!」


 そう言ってアムズは冒険者の国クランを目指した。





「本当によろしかったのですかな? レイネア様」


「……ライッツオ。 ……寂しいものですね。 数多くの同志達がこの神殿を飛び出して騎士や傭兵、復讐者そして冒険者になりました。 それでも慣れませんねこうやって強くなろうとする子達の背を押すのは」


「……そうですな。 アムズならば大丈夫でしょうクランにいる冒険者相手でもなんとかなるでしょう」


「と言っても私達も冒険者のチームなんですけどね?」


 そう言ってレイネアはライッツオのいる方向を向いて暖かい笑みを浮かべた。



「よっしゃあ! 生まれて初めて地下神殿から出て来たぞ!」


 そう言いながらアムズは冒険者街クランを目指して歩いていた。

 誰も知らない山奥の地下に地下神殿はあるのだがそれは今はどうでもいい。

 十五年間生きて初めてアムズは自由を謳歌している。


「へっ、俺は自由だ! ライッツオ様の魔術砲撃や杖のフルボッコもないし。 ハリネとリビトと剣戟攻撃に怯える事はない! 自由だぁぁぁぁぁぁ!!」


 そう自由を噛み締めていたその時だ。


「ぐぅぉぉぉぉ!!」


「わんわん!」


「へっ?」


 大型の猿と犬がアムズの目の前に現れていた。


「……よ、よしっ! い、犬と猿かぁで、デカァ……魔力勿体無いから逃げます!!」


 そう言ってアムズは脱兎の勢いで逃げに徹した。

 三つ森を抜けた所で地面に転がって気を失うように眠った。


「………ふぁわ。 よく寝た」


 一眠りすると、魔力も体力も回復して前向きになった。


「……よし! とっとと。 冒険者登録して俺はどんどん強くなるんだ!」


 そしてふとスマホを取り出して冒険者のアプリを起動した。

 スマホの使い方は十歳の時にハリネとリビトに教わったので難なく使えた。


「……えっ? まじで?」


 アムズが冒険者チーム一覧を見てみると冒険者本部にスカルバンドテクノックス社に騎士団そして最後に白虎同志という白い虎が長い杖を加えたエンブレムの書かれた表記を見つけた。


「……えっ? 白虎同志って冒険者チームなの!? う、うそぉぉぉぉぉぉ!?」


 アムズは驚いて思わず帰って来た道を速攻で戻り、地下神殿に帰って来た。



「はぁ。 ぜぇはぁ」


「……アムズどうしました? 忘れ物ですか?」


 そう言いながらレイネアが紅茶を飲みながら優雅にアムズを見下ろしていた。


「……な、なんで黙っていたんですか! レイネア様! 白虎同志が冒険者のチームだって!」


 アムズは呼吸を整えながらレイネアを見る。


「……えっ? だって聞かれていませんし。 一回クランに向かって他のチームにボコられて泣いて帰って来たところをサプライズとして明かそうと思っていましたのに……残念」


 そしてどこかイタズラが失敗した子供のように俯くレイネア。

 そんなレイネアに対してドキドキしながらアムズは頭を下げた。


「レイネア様! お、俺! 冒険者になりたい!」


「……覚悟には死が伴いますよ? それでもいいですか?」


「はい!」


 そう言ってアムズはレイネアの目を見た。


「まぁもう登録してるんですけどね?」


 そう言ってレイネアがスマホ画面を見せ、冒険者チーム白虎同志のメンバー表にアムズの名前が載っていた。


「えっ?」


 何が起きているかアムズにはわからなかった。


「ふふ。 十五歳の誕生日おめでとうアムズ?」


「なんだよそれぇぇぇぇぇぇぇ!?」


 レイネアのイタズラの笑みにアムズは絶叫する他なかった。

 


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