家族達
「……加護がない?」
「はい。 この世界では聖女の加護以外は消失し、さらに使える魔法属性は一つだけになってしまうのです」
「……やばいな。 うん? あれ? 俺は爆破も風も使えたぞ?」
「えっ!? そ、そんな!? じ、じゃあ見せてください」
「姉さん!? ダメだよこんな奴信じられないだろ!?」
アムズの提案にサラナが目を輝かせ、レイトはそれを諌めた。
「おういいぜ?」
「ありがとうございます!」
そんな二人を無視してアムズは笑顔で笑い。
サラナはまるで子犬のようにはしゃぎながらアムズの縄を解いて外へ連れ出した。
「もうすぐここに魔獣の群れが来ますそれを撃退して欲しいのです」
「分かったよ」
そう言ってアムズは頷き、目の前の敵を見据える。
「ぎゃお!」
「ぐるぅ」
「ガァァァァ」
「ジッジ!」
すると猿やら犬、鳥に竜にネズミなどの大群が現れてアムズは背中から冷や汗を流したがそれを無視して手をかざし、
敵に向けて大きな炎の塊をぶつけたり。
雷を落として黒焦げにしたりして敵を一掃した。
「……初めて戦ったけどなんとかなったな……」
「す、すごい! これが新人類の力なのですね! 私は今感動してます!」
全て片付けるとサラナは目を輝かせて笑った。
「でも姉さんこ、これってもしかしてアムズは新人類でも俺達に近い存在なんじゃないか?」
「どういう事だレイト?」
レイトの発言にアムズは困惑して質問を投げかけた。
「つまりはアムズは肉体を変化させた事がないんだ。 つまり人類の回帰者って奴なんだ!」
「うん? 意味が分からないんだか?」
レイトが一人で答えに辿り着いているがアムズはこちらの世界の常識を全く知らないので、困惑する他ない。
そんなアムズに対してサラナが口を開いた。
「え、えっとぉ。 多分新人類の方は様々な肉体をしてらっしゃるんですよね?」
「何故それを!?」
アムズは驚いて思わずサラナの肩を掴んでしまった。
「きゃっ!?」
「おいやめろ変態! 姉さんの天使性がなくなるだろ!」
「あ、ごめんつい」
するとレイトがすかさずアムズの腕を掴んで振り解いた。
「え、えっと……コホン。 つまり! 他にもこの旧世界に来たモバイルの方がいらっしゃったのです。 その人達に私は声を掛けて戦力として頑張ってくれました」
「……それで他にモバイルの人達はいるのか?」
「……それがこちらに来たモバイルの方は死亡。 私達を含めて旧人類も残り三十名しかいないのです」
「さ、三十人!?」
アムズは驚いて固まってしまった。
「……お願いですアムズさん私達と一緒に戦ってくれませんか? 魔王軍そして魔王ムザーを倒してください!」
「……俺よりもレイトの方が強そうに見えるけど?」
そう言って思わずアムズはレイトを見る。
「……僕でも無理な相手なんだ。 一人で魔王軍の幹部を全部倒したけど赤髪の男とその妹に阻まれて……くそ!」
「レイトごめんね! お姉ちゃんがちゃんとしてないから右腕ちゃんと治せなくて」
「ち、違う! ぼ、僕はただ姉さんの負担を減らしたくて! 姉さんが指導者として頑張らなくていいんだ! 姉さんはただ普通に恋愛とかオシャレとかそんな普通の女の子として生きて欲しいだけなんだ!」
「私はレイトと一緒に生きていたいの! 私を一人にしないで! お姉ちゃん一人は辛いよ!」
サラナが涙を流してレイトを抱きしめる。
レイトもサラナを抱きしめて涙を流し始めた。
「うっ! ゴホゲホ」
「レイト! レイト!」
すると急にレイトが苦しみ出し、膝をついて吐血した。
「ど、どうしたんだ!?」
アムズはレイトの急な変化に驚き困惑の顔を浮かべた。
「私が呪いを解呪する力があればぁぁぁぁぁ」
「おいサラナ! 落ち着け!」
「くそっ! くそっ! 私の弟を元に戻せムザー!! ムザァァァァァァ」
「すまん」
「うっ!?」
するとヒステリックにサラナが頭を掻き乱し始め、発狂した。
サラナを宥めようとしたが落ち着く気配がないのでサラナの意識を奪いそのままサラナとレイトを担いで施設に運ぶ。
「せ、聖女様をどうした貴様!」
「何があったの?」
「……弟が苦しんでるのを見て発狂したんだよ。 少し休ませてやれ疲れが溜まってるんだろ?」
「……それは」
「そこの女性の人二人を頼む」
「分かったわ」
ガスマスクをした男女の二人組が出てきてアムズに近づいてきた。
男が怒鳴り声をあげてきたのでアムズは男を無視して、冷静な女性の方にレイトとサラナを託した。
「おいカミィこいつの言うこと聞くな!」
「ダインス。 レイトとサラナはリーダーとして頑張っているわ。 彼の言う通り今は休ませてあげましょう」
女性はカミィ、男はダインスと言うらしい。
「けどよぉ!」
「ダインス……あなたは罰としてこの新人類の監視を命じるわ」
「な、なんでだよ!」
「私は二人をベットに運ぶから」
「おい! カミィ!」
ダインスの大声を無視してカミィはそのまま部屋へ向かってしまった。
「ち、なんで俺が新人類の監視を!」
「……ダインス」
「あっ? んだよ新人類!」
「俺はアムズ・ライッツオ。 俺の仲間の聖女様であるレイネア様ならレイトの呪いをなくせるかもしれない」
「……あっ? 何言ってんだ? 聖女なんている訳うおっ!?」
「いいから行くぞ! みんななら多分こんな状況ぶっ飛ばしてくれるはずだ!」
「ちょってめぇ! 何しやがる! 人様の首掴みやがって!」
「俺の家族達を探すのさ!」
「ああん? 家族ぅ?」
「その名も白虎同志!」
怪訝な顔をするダインスをよそに白虎同志に会うべくアムズは赤く染まった荒野を走り出した。
「んっ?」
フィーエが目を覚ますとそこは赤い荒野だった。
「み、みんなは!? ひっ!?」
辺りを見回すと死体だらけでフィーエはゾッとした。
「あ、いや! いやぁぁぁぁぁ!?」
「落ち着けフィーエ!」
「……り、リビト様」
フィーエが発狂すると声が聞こえて横を見るとリビトがいた。
「よかったこれでアムズを除いて見つかったな」
「うん。 よかったよかった」
「はい。 ほとんど大集合ですね?」
「えっ?」
さらに背後から声が聞こえて来て振り向くと、レイネアとハリネ。
そして三百名の白虎同志の仲間達がいた。
「み、みんな無事だったの!?」
「急に拠点がなくなった時は驚いたがオレが皆を見つけて部隊を編成した」
「魔獣退治面倒臭かった」
「……探しても人がいないのですがどうや西方面に魔力の塊を感じますけど邪悪そうなのでこれは多分敵ですね? 南の方は小さくとも暖かい魔力を感じるのでそちらを行きましょう」
レイネアが目が見えないにも関わらずあっさりどこに敵と味方になりうる人がいるのかを判別してフィーエはゾッとした。
リビトとハリネに至っては返り血も浴びずに歩いているのでその実力が垣間見えた。
「ガルギュアァァァァァァ」
「ひっ!?」
いきなり鳥型の魔獣の群れが襲って来てフィーエは悲鳴を上げた。
「邪魔だ」
「死ね」
そんな鳥型の群れをハリネとリビトが五秒も掛からずに瞬殺した。
「あ……えっ?」
「これが白虎同志ですよフィーエ。 みんな強くて元気いっぱい。 あっ手を取ってくれませんか? 足元ここ悪くて………ん? 今魔力が少し彷徨っているのを感じます! この人達はこの世界の人達かもしれません行ってみましょう! みんないいですか?」
「「「御意」」」
「よーし出発えいえいおー」
「……ははははっ怖」
魔獣だらけの箱庭なのにまるで修学旅行にでも行くようなテンションのレイネアと白虎同志の仲間達にフィーエはドン引きした。




