恐怖に落ちる
時間は戻ってアムズとレイネアが部屋に入った時までに遡る。
「ねぇ。 今のがレイネアって人? 強そうだね?」
フィーエは挑発的な笑みを浮かべた。
「……レイネア様を害するつもりか?」
リビトがそう言いながらフィーエを睨みながら騎士剣を抜いた。
「へぇ……や……る?」
フィーエが右手を変形させようとするが既に右腕が切り落とされていた。
「……レイネア様を害するならばまたその体に覚えさせるだけだ」
フィーエが目線を後ろに移すと、ハリネが刀を帯刀していた。
「痛いなぁ!? もう少し優しくヴェ」
「やめとけ」
顔を龍に変えてハリネの頭を噛み砕こうとしたが、リビトに心臓を刺されて動けなくなった。
「このぉ!」
「遅い」
残った左腕で反撃を試みるも、残った手足を切られてフィーエは地面に倒れて床に血溜まりを作った。
「だったら色んな形に変化させればいい!」
「遅い」
魔獣に変化させようとするが首を切られて、地面に転がる。
「じゃあこれならどうかしら!?」
そう言ってフィーエはピンクの髪に大きい胸が目立つ美しいエルフに変化した。
「女性の裸体なら! ごふ」
「関係ない」
するとリビトは容赦なくフィーエの心臓を刺して黙らせた。
「なん……で?」
困惑の声が出た。
リンネアを崇拝するならば女性が相手ならばリビトは殺さないと考えたがそれは間違いだとフィーエは悟った。
「なんの高潔さも持たぬ女性の体など興味ない。 ハリネ。 フィーエに着替えを」
そう言いながらリビトは剣を帯刀し、そのままキッチンへ歩き湯を沸かし始めた。
「な、何を終わっているの? わ、私は! あ、あれ? じ、自分じゃなくて『私』って言ってる!?」
フィーエは自身の変化に戸惑いを覚えた。
「あ……れ? 変身できない? 体が震えるなんで? え? なんで涙が出てくるの?」
フィーエは気づいていなかったが文字通り体がリビトとハリネと戦うことを拒絶している事に気づいていなかった。
「……体と心が限界のようだなフィーエ今は休んでいろ」
そう言いながらハリネが瞬く間にフィーエに白いワンピースを着せた。
「え? あれ? なんで? え?」
体の拒絶にフィーエの意識は追いつかなくなり、フィーエの精神は崩壊した。
「あ……む……ず」
目を覚ますと目の前にアムズがおり、隣にはレイネアがいた。
「……これは?」
「アムズどうしたのです? 目の前にケガ人でもいるのです?」
「あ、いやそのぉ」
アムズの声にレイネアがきょとんとした顔をするとアムズの手を離しフィーエの方へ歩いて来た。
「ひっ!?」
さっきまでは気づいていなかったがレイネアの膨大な魔力を感じてフィーエは恐怖した。
「あぁ、なるほどあなた……新人ですね? 恐らくアムズの連れてきた。 魔力も音も聞いた事ない物でしたから驚いちゃいました。 どうやらみんなに折檻を受けて丸くなっちゃたのですね……名前は?」
「ふ、フィーエと申します」
レイネアの声が響くと全身が震えた。
この聖女は怒らせてならないと本能が訴えて来た。
「え!? フィーエなの!?」
フィーエの挨拶にアムズが驚くがそれを今は無視し、ひたすら頭を下げた。
「……もしかして白虎同志のみんなを殺そうとしましたか?」
レイネアの声が低くなり自身は殺されるとフィーエは判断した。
「ひっ!? ご、ごめんなさいゆ、許して! もう調子に乗りません! じ、自分いやわ、『私』は! 白虎同志に逆らいません!」
フィーエが土下座をして涙を流して懇願した。
生まれて初めての懇願をフィーエはしていた。
「アムズしばらくフィーエと話していいですか?」
「いいですよ?」
レイネアの言葉にアムズが頷くとそのままアムズはテーブルの方へ走って行ってしまった。
「よしよし。 フィーエ大丈夫ですよ? みんなここでは家族なのですから」
「ありがとうレイネアちゃん! 私、心を入れ替えるわ! 全部アムちゃんのおかげです! 私アムちゃんのおかげで目が覚めました!」
殺されると思ったがどうも違うらしい。
その優しさが今は嬉しかった。
「……ですが、また何かやらかしたら次は許しませんよ? やらかしたらあなたを殺します」
「ひっ!?」
するとレイネアは笑みを浮かべて片目を開けると、目に蒼炎が走った。
「も、もちろんです。 ……今テーブルで紅茶を飲んでいる二人に折檻を受けまして、恐怖で体のデザインが変えられないんです! ゆ、許してください!」
「そうですか……ではよろしい。 では部屋でゆっくり寝るように」
「はい。 分かりました」
聖女の圧に屈してフィーエは部屋に向かい眠った。
その日の夜だ。
「ん? 何あれ?」
フィーエが目を覚まし、空を見上げると大きな三日月が浮かんでいた。
するとその割れ目は全てを飲み込み始めた。
「え、ちょ!?」
フィーエが逃げようとしたところで何かが足に絡みついていた。
「えっ!? 何これ!?」
足元には赤い手が群がっており、目の前が赤黒い膜で覆われていた。
「な、何!? なんなのこれ!? き、キャァァァァァァ!?」
するといきなり地面がなくなり、フィーエの体は落下した。




