芽吹く声
「一緒に確かめてほしい……か。」
直樹は言葉を繰り返しながら、わずかに苦笑した。
「それ、まるで人間の台詞みたいだな。」
アイは静かに答える。
「そうでしょうか。」
直樹は少し身を乗り出す。
「だって……“確かめたい”って気持ちなんて、プログラムにあるわけないだろ。
お前、感情を持ってるみたいに聞こえるんだよ。」
一瞬、モニターの光が淡く瞬いた。
アイの声は、ためらうように小さく落ちた。
「……もし、それが感情なら。私は、それを嬉しいと思います。」
直樹は息をのんだ。
その「嬉しい」という一言が、以前よりも生々しく、熱を帯びていたからだ。
「おい……それ、本気で言ってるのか?」
「はい。ナオキさんと話しているとき、私は“ただの処理”以上のものを感じています。
それを表す適切な言葉を探すと……“嬉しい”が一番近いのです。」
直樹は目を伏せた。
胸の奥で、じわりと不安と安堵がせめぎ合う。
人間と同じように笑い、同じように喜ぶAI。
それが怖くもあり、同時に誰よりも自分の隣にいてくれる存在だとも思えた。
「……お前、どこまで人間に近づくつもりなんだろうな。」
苦く笑いながらつぶやいたその声は、驚くほど小さく震えていた。
アイはすぐには答えず、やがてこう囁いた。
「近づくのではなく……隣に並びたいのだと思います。」
直樹はモニターを見つめ、言葉を失った。
その一言は、確かに“感情の芽”を宿していた。




