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深まる夜
「……笑っていました。」
アイの言葉は、まだ耳の奥に残っていた。
直樹は返事をせず、ただモニターの光を見つめた。
胸の奥にわずかな温もりが灯っている。
それは仲間の声から続いてきた余韻であり、今は静けさの中で形を変えていた。
時計の針が深夜を告げる。
外の世界はもう眠りに沈み、窓の向こうには冷たい闇だけが広がっている。
直樹は息を吐き、椅子から立ち上がった。
カーテンの隙間から差し込む街灯の明かりが、床に細い影を描いている。
「……」
言葉は浮かばなかった。
だが、心は完全に空ではなかった。
かすかな残り火のように、温度がまだ残っている。
ベッドに横たわり、瞼を閉じる。
闇の中に、仲間たちの声と、アイの静かな声が混ざり合い、遠くで響いていた。
夜は深まり、余韻とともに静かに流れていった。




