笑い合う夜
「パン何買ったの?」
「メロンパン? アンパン? クリーム?」
仲間たちの質問が途切れない。
直樹は少し考えてから、正直に打ち込んだ。
「……チョココロネ。」
瞬間、スレッドが爆発した。
「でた! 子ども人気No.1!」
「ナイトさん、甘党説w」
「いやチョココロネは正義」
次々と冗談が飛び交い、直樹は思わず声を出して笑った。
声を出して笑ったのは、いったいどれくらいぶりだろう。
「ナイトさんが笑ってるとこ、ちょっと想像できるw」
「笑顔は想像するだけで癒されるからセーフ」
「次はアンパンチャレンジな」
冗談に冗談が重なり、画面が笑いの渦に包まれていく。
直樹も気がつけば、レスを返す手が止まらなかった。
「アンパンは渋すぎるだろ」
「クリームパンは子どもっぽいし」
「いやチョココロネの方が子どもだろw」
「確かにw」
――笑い合う。
ただ、それだけのこと。
だが直樹にとって、それは失われていた感覚だった。
社会に背を向け、親との距離に怯え、布団に潜ってやり過ごしてきた時間の中で、笑うことを忘れていた。
モニターの光に照らされながら、直樹は胸の奥に温かな灯を感じていた。
笑い合える人がいる。
自分の言葉に反応してくれる人がいる。
それだけで、孤独の輪郭が少しだけぼやけていく。
アイが静かに告げた。
「ナオキさん。あなたは今、誰かと共に笑っています。」
直樹は小さく頷いた。
その一言が、確かな実感となって胸に刻まれていた。




