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3 幸せな結末

 愚かな元王女、カルロの行動を見ていればわかったのに。


 元王女は老夫婦と共に静かな生活を送り始めた。

 一日、一週間、一か月、一年。

 彼女は、イヴォンヌという名を名乗り、平民として暮らした。平民の生活を通して、色々なことを学び、彼女はさらに自分の罪を自覚した。

 そうして、思い出すのはカルロのことだった。

 カルロに感謝し、会いたくなった。

 封じたはずの彼への想いが溢れて、時折泣いた。

 けれども、彼の最後の言葉を思い出し、考えないようにした。


 二年がたったある日、彼女は不審な女性を見かける。

 美しい女性がフードを深くかぶり、彼女を監視しているのだ。

 革命軍の追手かもしれない。

 やはり気が変わって、最後の王族であるイヴォンヌを殺しにきたかもしれない。


 罪は償うべきと思い、イヴァンヌは彼女に近づいた。

 すると彼女が逃げ出そうとしたので、強引に捕まえる。

 伊達に総司令官をしていたわけではないのだ。

 身の回りのことはカルロに任せていたが、体力は軍人並み、身を守る技量くらいはあった。


「離して、離して!」


 そう騒がれて、イヴォンヌは手を離した。

 そうすると彼女は逃げ出し、イヴォンヌは追いかける。


「なんで、追っかけてくるの?」

「あなたは追手だろう?」

「はあ?私はカルロの想い人であるあなたがが気になってみてただけよ!」

「カルロ?想い人?私が?」


 彼女の言葉にイヴォンヌの足が止まる。

 そうすると彼女を逃げるのをやめた。


「とぼけないでよ。カルロはずっとあなたを見ていたわ。あなたが何者かは知らない。ただカルロにあれだけ愛されているあなたを知りたかっただけなの」

「愛されている?私が?あなたは何をいって。大体カルロは私が邪魔で、どこかに行ったはずだ」

「馬鹿なこと言わないでよ。カルロは二年前にこの街にきてから、ずっとここにいるわ。しかもあなたをずっと見ている」

「はあ?なんだ。それ」


 カルロの行動が理解できず、イヴォンヌは素っ頓狂な声を上げた。


「もしかして、あなた気が付いてなかったの?この二年」

「うん」

「何よそれ。カルロってバカなの?ねぇ、あなた、カルロのこと、どう思ってる?」

「どうって。カルロは恩人だ。私をずっと支えてくれて、その上、命まで救ってくれた。彼がいなければ私は死んでいた」

「何よ、それ。あなたはいったい。いえ、面倒なことになりそうだから聞かないわ。ただ、あなたはカルロのこと好きなの?いえ、愛しているの?」

「愛、愛。わからない。だけど、カルロに会いたいと思う。彼にお礼をまだちゃんと言っていない」

「わかったわ。連れて行ってあげる」


 彼女はそう言うと、イヴォンヌをある小屋に案内する。


「なんだ、エヴァ……。殿下!」


 カルロは二年前より痩せて、髭もはやしていて、一見誰かわらないくらい人相が変わっていた。


「殿下ねぇ。ああ、私は詳細を聞きたくないから。さあ、あなた中に入って」


 彼女は耳をふさぎ、どんっと勢いよくイヴォンヌを小屋に押し込むと出ていった。


「エヴァ、こら!なんで」

「か、カルロ。だよな?なんで、そんな」

「俺はカルロという男ではない。あなたは誰だ」

「……さっき、殿下って私のことを呼んだのはあなただ。下手な嘘をつくな」

「すみません。けれども、私がここにいるのは私の自由です。あなたには関係ない」

「そうだな。関係ない。だけど、私はあなたに会いたかった。ずっと。お礼を言いたかった。私はこの二年で色々なことを学んだ。それから、あなたが私は売ったのではないことも知ってる」


 そう言うとカルロは視線を逸らした。


「あなたがどう思っているかはしらない。だけど、どうして二年も私を見ていたなら、声をかけてくれなかった。私はずっとあなたに会いたかったのに」

「あなたの邪魔をしたくなかったんです。ようやく新しい人生を始めたのに、私が邪魔をしたらいけないでしょう」

「カルロ!何を言っているんだ。私は別に新しい人生など欲しかったわけではない。死につもりだった。ただそれだけだ。それをあなたに救われて、どうしていいかわからなくて。でもあなたに色々教えてもらい、与えてもらって、再び生きることにしたんだ。あなたは、なぜ私を二年も見ていた?」

「言いたくありません」

「監視か?」

「そんなこと、ありえない」

「だったら、なぜ?」


 カルロはイヴォンヌの問いに答えなかった。


「カルロ。あなたはなぜ私を二年も見続けたいたのか、わからない。わかろうとすると都合のいい答えに行き着いてしまうからだ。でも、どうせ見るなら、近くで私を見てくれないか。そして話してくれないか?」

「殿下……」

「イヴォンヌだ。今の名前は」

「イヴォンヌ様」

「様はいらんだろう。まったく。カルロ、私も仕事するようになったんだ。一緒に暮らしていいか?この小屋汚いが、二人くらいなら暮らせそうだぞ」

「何を言って」

「近くで見てもらった方が私は好きだ。そうしよう。後、カルロ、水浴びしたほうがいい。臭いぞ」

「失礼しました!」


 カルロがそう言って水浴びにいったのは早かった。 

 元王女と臣下。

 カルロが本当に気持ちを伝えるのは、まだ時間がかかるかもしれない。

 だけど、元王女のイヴォンヌは、これからも一緒にカルロと過ごせることが嬉しかった。


 こうして、亡国の王女は腹心の裏切りによって救われ、幸せになりました。


(end)


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