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縁をつなぐ乙女

「エイジ~届いた宅配便を仕分けするから手伝って」

「うーけっこうめんどいな、数が多い。父さんはどうした」

「お父さんはお仕事が忙しいからお疲れなのよ」

 エイジは宛名を確認して仕分けていく。雨宮家への宅配便は化粧品やファッションのために母と娘に多い。

「それじゃ、エイジは静ちゃんに届けてあげて。今は部屋にいるはずだから」

「はいよ」

 エイジは静宛に届いた化粧品を届けに行く。


「おにーちゃんありがと」

 静は女性誌に夢中だった。表紙にはデートする時のどうこういう文字が見える。エイジが開いているページを覗くと“お相手の男性が奢ってくれる時の振る舞い方”という見出しが見えた。

「なあ静、女子が男子に奢られたい理由ってなんだ?」

 兄の質問に静はキョトンとした顔をした。それはすでに答えたはずだから。

「男が女に奢るべき理由はあちこちで唱えられているが、そういえば『奢られたい理由』は聞いてない気がしてな」

 エイジは『自分のために財産を使ってくれて嬉しい』という気持ちなんだろなーと勝手に想像していたが。

「だって、現代って経済力の社会じゃん。お金で支配されてる感じがして興奮するでしょ。そういうのは女の子が似合うんだよ」

「お姫様は騎士に恩賞を出して剣を振るってもらう、武器を持つ騎士たちが離反したらお姫様は最後だけど、メイドはお給金を出すご主人様に逆らえないじゃん」

「静……お前のことは生まれた時から知ってるが、お前から世間一般の女子のことは理解できないな」

「私が普通じゃないのは、お兄ちゃんの妹である時点でハッキリしてるよ」

 そのとき廊下から音がする。

「静ちゃん、ふたりで選んだアレが届いたわよ」

 じゃあ、俺はジャマだから退室しようか。エイジはそう思ったのだが……


 数分後。

「エイジはお父さんに似てイケメンだからお化粧しましょ~」

 笑顔で洒落たボトルのフタを開ける。妹に羽交い締めにされて抵抗できない。

「か、母さんそれなんだ? うわ冷たっ!」

「お兄ちゃん、腹筋をあと3カ月くらい鍛えて。それくらいが一番カッコよくなる」

 開いたままのドアに弘崎アズマが現れた。

「あ、あなたたち血のつながった息子と兄に対してなにをしているんですか!」

「あら、大神官様じゃないですか。エイジがお世話になってます」

「お父様がここにいると教えてくださったのですが、お邪魔でしたね」

 頭痛があるかのようなアズマに静が答える。

「そうかもしれません、途中で塗るのをやめたらダメですから」

 ふうとため息をはくアズマ。

「しばらくリビングで待ってます」


 そして。

「エイジくんは能力や社会的地位という意味でも、人間的魅力という意味でもご家族に恵まれていると思っていましたが、まあこういうおイタも仲睦まじいからでしょうが」

「白藤くんが嫉妬しないのは、両者の人徳でしょう」

 エイジにとって親友の家族を悪くいうのは歓迎できないが、それは否定できないことである。

「『天竜とひとつになる、そのためにハンドラ王国の謎を解く』として彼の地に向かったお父上に対する想いは複雑でしょう。我らが主とひとつになるというおこがましい野望も決して周囲の人々に受け入れられるものではありません」

「あんたが定期的に明良と面談してるのは、アイツの心の内を気にしているためか。いいカウンセラーがいたな」

 アズマは首をふる。

「私は人に対しては威厳を見せようとしてしまいます」

 戸惑い顔でアズマはエイジを見つめる。

「エイジ君……白藤神官のこと、頼みました」

 アズマは神以外には見せないほどの殊勝な態度だ。

「彼の父が私に語りかけたことがあります」

 それは死者との対話なのか生者とのテレパシーなのか、弘崎アズマならどちらもありえる。しかしエイジはあえて聞くようなことはしなかった。

「あいつの親父さんはもうこの世の人間じゃない。明良の世界にはいないんだ」

「人の命に終わりなく、つながりのない命はありません」

 いかにも宗教家がいいそうな言葉である。思想よりも現実を重視するエイジは哲学の類はあまり興味がない。陰陽道の根幹となる哲学も実践のための理論ほどには関心はない。

 アズマの眉がピクッと動いた。それはエイジに対してではない。

「どうやら用件ができたようですね、これで失礼します」

「ふっ、あんたが行くべきかもな」

 エイジはわかるみたいだ。

 雨宮家を出たアズマは繁華街へ向かう、いつでも魔法を発動できる態勢を整えつつ。しかし彼が目撃したのはうるわしい少女だった。すくなくとも見た目は。

「日野うららシスター、あなた男漁りのためにハンドラの悪魔まで従えましたか」

「ええ、ハンドラ王国で活動しているおっさんのおかげで手に入れた力よ」

 うららは力を誇示する。

「大神官様に秘術を授けてもいいわよ? あたしに弘崎アズマを教えてくれるならね。あの白藤とかいうイイ男に感謝しないといけないわ」

 アズマに啓示を授かる時の衝撃が走る。

「我ら全員をあなたがつなぐことになろうとは……」

明良「ではみなさん、僕らの話を聞いていただきありがとうございました」

エイジ「またいつか会おうぜ!」

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