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私の素顔をわかってくれる人。  作者: べるあっと。
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寂しい思いをしないように。

 私は佐々木に呼ばれ、階段の踊り場にきていた。


「で、なんかよう?」

「放課後、時間あるか?」

「え、なんで?」

「ちょっと話がある。」


意外だった、佐々木がいきなり私を放課後に呼び出すなんて思っても見なかった。


「、、、私、リンチされる?」

「しねえよアホか。ただ一対一で話したいってだけだよ。お前私のバイト先と家近いんだろ?バイト終わったら連絡するからマイン教えろ。」

「あ、うん、わかった。」


思っても見ないところで二人目の連絡先をゲットした。


「今日は九時上がりだから、じゃあな。店には来るんじゃねえぞ。」

「うん、わかった。またお店行くね。」

「喧嘩売ってんのかこいつ、じゃあな。」


そう言い残して佐々木は去って行った。

なんでわざわざ階段の踊り場まで来たのか謎だった。



 教室に戻ってみると、古川がいの一番に駆けつけてきた。


「巽さん!!!大丈夫??何かされてない??」

「え?何?そりゃ大丈夫だけど?」

「本当?殴られたり酷いこと言われたりしてない?」

「全然?なんで?」

「だってあの佐々木さんに呼び出されたら何されるかわかったもんじゃないよ。とにかく無事でよかった。」


古川の中で、いや、このクラスの中では佐々木は不良だという印象が強いんだろう。実際はそんなことないと思うんだが。


「佐々木さんとはあんまり関わらない方がいいと思うよ、いい噂聞かないしさ。」

「たとえばどんな噂?」

「不良だとかパパ活してるとか男遊びしてるとか色々あるよ、怖いよね。」

「うーん。」


私は今聞いた佐々木の噂とコンビニで働いてる佐々木がどうにも一致しなかった。

あの子は見た目ばかり派手で中身は子供っぽいと思うのだ。


「佐々木はそんな奴じゃないと思うけどな。」

「えーそうかなー。」

「そうだよ、案外いいやつかもよ?」

「うーん、本当かな?」


古川は納得できていないようだった。人の印象はそんなすぐには変わらないことは私はよく知っているから、仕方ないと思った。



 午後の授業も筒がなく終わり、下校の時刻になった。


「じゃあ行こっか。」

「うん。」


私は古川に手を引かれながら教室を後にした。


「早く行こ、」

「う、うん。でもちょっと早いかも。」

「そんなこと言ってられないよ、早く黄瀬のところに行かないと。」

「それはわかってるけど、そんなに急がなくても。」

「早くしないとダメなの!」


古川は突然大きな声を出した。


「ふ、ふるか「もし黄瀬に何かあったらどうするの!?重い病気になってたら!?一人で倒れてたら!?誰が助けてあげるの!?今黄瀬は家で一人なんだよ!?どうしてそんなに悠長にしてられるの!?」


古川は私の手をより強く握ってそう訴えた。目の前の取り乱した彼女と昨日降りた駅、そして時折見せる寂しそうな顔がつながって、彼女の抱えるものがほんの少しだけどわかったような気がした。


だったら、今取るべき行動は一つだ。


「ごめん、早く行こう。」

「へ?巽さん?」

「黄瀬さんが心配なんでしょ?」


私は古川の手を引いて走り出した。



 黄瀬の家には五分足らずで到着した。


「いやーまさか巽さんまでお見舞いに来てくれるなんて思わなかったなー。ありがとう。」

「私は古川の付き添いに来ただけだから。」

「それでも嬉しいよ。古川もありがとう、心配かけてごめんね。」

「本当だよ、昨日元気だったのにいきなり休んじゃうんだもん。」

「はっはっは、この通り私はピンピンしてるから安心したまえ。」

「、、、うん、安心した。」

「明日から学校行くつもりだから、また一緒に行こうなー。」

「、、、今日金曜日だから明日学校休みだよ?」

「、、、そ、そうじゃん。」


二人は笑った、私はただその光景を見ていた。



 黄瀬の家を後にし、私と古川は駅へと向かっていた。


「古川は普段徒歩なんだろ?」

「うん、でももうちょっと巽と一緒にいたいから。」

「そうか。」

「うん、」

「黄瀬、元気そうでよかったな。」

「本当にね、全く人騒がせなんだから。」


古川も人のこと言えないなと思った。


「あ、駅着いちゃったね。」

「そうだな、じゃあ帰るわ。」

「ねえ、巽さん。」

「ん?なんだ?」


私がそう返事した瞬間彼女は私のことを抱きしめてきた。


「本当にありがとう、今日の私、結構うざかったよね。」

「そうだな、うざかったかも。」

「酷いなぁ。巽さんは大人だからこういう時そんなことなかったよって言ってくれるもんだと思ってたよ。」

「残念だったな、私は古川と同い年だ。」

「確かに、そう言えばそうだった。」


古川はそう言って私のことを離し、「じゃあね巽、また来週。」と言い残して去って行った。


「また来週、か。」


私はそう呟き、駅構内へ入って行った。

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