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私の素顔をわかってくれる人。  作者: べるあっと。
2/13

お弁当と黒板掃除。

 翌日、私はいつも通り早起きしてお弁当を作っていた。


「今日の卵焼きは白だしで作ってみようかな、あとは作り置きしてるサラダと昨日作ったミニハンバーグも入れて、よし完成!」


出来上がったお弁当は色とりどりとても美味しそうだ。


今直ぐ食べてしまいたくなるのをグッと我慢して蓋を閉め、中学の頃に家庭科の授業で作った巾着袋にお弁当を入れて、そのままカバンに入れた。


「よし、忘れ物もなし!行ってきまーす。」


返事は返ってこなかった。



 いつも学校に着くのは始業の四十五分くらい前だ。別に早く来ないとダメな理由があるわけではない、誰もいない教室がなんとなく好きでいつも早くに来ているのだ。


「今日も一番のり。」


自分の席にカバンを置き、教室に飾ってある花瓶の水を変え、黒板の掃除をする。私が毎朝やっていることだ。


黒板も綺麗になって、制服に少しついてしまったチョークの粉をぱんぱんと叩いて落としていると、同じクラスの子が二人来た。


「おはよー巽さん、相変わらず早いね」

「おはようございます。」

「また黒板綺麗にしてるんだ、相変わらず真面目だねー。」


やってきたのは黄瀬と古川だ。


「いつも何時に起きてんの?」

「六時とかですかね。」

「はっや、学校には何できてんの?」

「電車です。」

「どれくらい時間かかんの?」

「大体30分くらいですかね。」

「まぁまぁ遠いじゃん。」

「うちら歩いても五分かかんないくらいだしね。」

「それなのにこんなに早くきて本当に偉いねー。」

「まぁ、好きでやってることなので。」

「そーなんだ。」

「私たちもやってみる?早起き。」

「えーやだよ眠たいの嫌ー」

「それはそうだけどさーなんか面白そうじゃない?」


それからは二人だけで会話が進んでいった。私はいつも通り自分の席に戻って文庫本を取り出した。



 予鈴のチャイムが鳴り、先生が教壇に上がった。

私が読書に夢中になっている間にほとんどのクラスメイトが登校していたようだ。


「では日直の黄瀬さん、号令をお願いします。」

「げっ、私が日直かよ。」

「思っても声に出さないの、いいからお願いね。」

「はーい、きりーつ、気をつけ、礼。おはようございまーす。」

「はい、おはようございます。では出席をとりますね。」


こうしてまたいつもの一日が始まった。



 一時間目から古典でクラスのみんなはげんなりしていたけれど、隣の席の川上は私のノートのおかげで授業についていけると上機嫌だった。私も彼の役に立てたようで悪い気はしなかった。


そして二時間目、隣のクラスと合同で体育だ。着替えは男子は教室で、女子は更衣室でするようになっている。


一人で黙々と着替えていると、後ろから話し声が聞こえてきた。古川と黄瀬だ。


「なんで男子は教室で女子は更衣室なんだろうね。」

「そりゃ男女が同じ部屋で着替えたらまずいからじゃんね。」

「いやそんなことわかってるし。私が言いたいのは、なんで男子じゃなくて女子がわざわざ更衣室に行かなきゃいけないのかってこと。」

「あーそういうこと、てっきり古川は男子に見て欲しいのかと思ったよ。」

「そんなわけねーだろ、私の裸は安くないんだよ。」

「処女のくせに何言ってんだ?」

「黄瀬も処女だろうが。」

「それの何が悪いんだ?ピュアそうでいいじゃねえかよ。」

「だったら私もピュアだな。」


そんな会話をしている時点でピュアではないなと思った。



 体育の授業が始まった。今日はサッカーだ。


「今日は二人一組になってパス練習をします。まずは適当にペアを組んでください。」


先生の指示のもと、みんなが友達とペアを作り出した。しかし私には友達と言えるほど仲のいい人がいない。


普段はなんとも思わないけどこういう時困るなーなんて思っていると、一人の生徒が目に入った。


まだ入学して一ヶ月だというのに髪の毛をほぼシルバーになるまで脱色していて、よくみると軽いメイクをしている女の子。その相貌は学校の中では酷く浮いて見えた。そのせいか誰も彼女に話しかけようとしていない。


「あの、ペア組みませんか?」


私は彼女に声をかけた。優しさや同情ではない、ただ他に声をかけれそうな人がいなかったからだ。

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