女子高生と、宗滴の家臣たち
私の家臣となった近衛殿。石合戦を楽しみ、以前に三好家との戦い、渡月橋での戦いでは、私と同じように兵士として参加もしているから、実戦経験もある。
「と言う訳で、殿の側室がいなくなってしまったので、また私が新たな継室を見つけないといけなくなりました」
「うらがいなかった間、いろんなことが起きすぎです……」
奏者の役目を終え、福田館に戻ってきた吉清に、私が目を覚まして、感極まって泣きそうになっていたのだが、これまでのことを話すと、吉清の涙はすっかり止まり、アハハと笑っていただけだった。
「凛様。そもそも、貴方が遠い未来から来たとは、どう言うことですか?」
吉清に話している時、つい現代の話もしてしまったので、近衞殿が、私を疑うようにジト目をしていた。
私が令和の時代から来ていると言うのは、私に近しい人と、重臣クラスのごく一部の人だけ。そう言えば、近衞殿には話していなかっただろうか。
「だから、近衞殿のお兄様は、私を認めてくれたんです」
「あー。やっと納得しましたー。どうして兄様が朝倉家に興味を持ったのか。そうじゃないと、兄様は私を朝倉家に嫁げとは言いませんよねー」
唾を吐き捨てるような感じで、近衞殿は胡座をかいて、どこか拗ねているような感じだった。
「それはそうと。殿の継室探しです。家中では、いつ後継ぎが生まれるのかと、心配している者も多くいます」
「つまり、殿が子供が欲しくてたまらないぐらい、絶世の美女を探すってことですね」
また公家に頼って、絶世の美女を探さないといけないのだろうか。近衞殿も私以上に可愛いから、近衞殿レベルの女性を探さないといけない。
「凛様。これを機に、一度宗滴様との家臣たちと顔を合わせるのはどうでしょうか?」
宗滴が亡くなって以降、宗滴に仕えていた家臣たちは今、どうしているのだろうか。
敦賀郡司である、朝倉景紀が、宗滴の跡継ぎになるのだが、景紀は基本的には一乗谷に来ることはなく、ほとんどが敦賀の地で拠点を構え、若狭や畿内の監視をしている。景紀が近くにいない間、景近、私に宗滴の傍に居てほしいと、私たちに宗滴を託すほど信頼しているようなので、景紀の代わりに一度、私が率先してバラバラになりそうな宗滴の家臣をまとめるべきなのだろう。
福田館、安波賀の館にも宗滴の家臣、住み込みの使用人も多く暮らしているので、多くの家臣が、今後について不安に思っている。一番近かった景近は、義景の近侍になっていているので、次に宗滴の傍に居た私が、一度家臣を招集させて、今後について話すべきだというのが、吉清の考えなのだろう。
「良い機会です。今後の朝倉家のためにも、今一度、家臣たちをふるいにかけるべきですね」
そして私は、すぐに行動を起こし、一週間後に安波賀の屋敷に宗滴の家臣を集め、会議をすると言った書状を書き、吉清と協力して、一度宗滴の家臣を終結させた。
一週間が経ち、安波賀の屋敷には、100人を超える宗滴の家臣が集まった。一乗谷だけはなく、越前国内にいる宗滴の家臣がやって来た。
「今日はお忙しい中、集まっていただき、ありがとうございます」
私がそう挨拶した後、私より忙しい、景紀もこの会議に出席し、こう述べた。
「この光景を気に食わぬものは、早々と出ていくと良い」
景紀がそう言うと、約50人ほどの家臣たちが、出て行ってしまった。
「今出て行った者は、凛殿が気に食わぬ者か、それとも父である宗滴の後を、この実子ではない私が継ぐことが気に食わぬ者か。まあ、どちらでも良い。父の威厳だけで過ごしてきた者は、今後の朝倉家には必要ない」
景紀の言葉で、会議の空気が一変する。しばらく沈黙が続いた後、私がゆっくりと口を開けた。
「初めて孫九郎様には言います。私は、宗滴様が書いた遺言書をもらい、今後の事を頼まれました」
私は、宗滴の遺言を述べた。
「私に対して、宗滴様は殿の事を頼み、家中の諍いをなだめてほしい、そして宗滴様の屋敷は、私に託すと書かれていました」
養子である景紀の配慮なんてない。本来、景紀の方が宗滴の遺産、家臣たちを相続しないといけないのだが、令和の時代からやって来た、得体の知れない、一族でもない私に、宗滴は託した。
「そういうことなら、父の遺言に従いましょう」
景紀は怒る、悲しむといった表情は作らず、ただまっすぐ、この屋敷に集まった家臣たちを見つめていた。
「すべて凛殿に任せることはしません。私は、これまでと同様、子の景垙と共に、敦賀郡司を務め、不安定な畿内を見張り続けると共に、家中で起きる問題も、これからは積極的に参加しましょう」
「……あ、ありがとうございます」
「では、再び問おう。父の遺言に納得できぬ者は、出で行くと良い」
再び景紀が問うと、今回は誰も出ていく人はいなかった。
「ありがとうございます」
私は、景紀に深々と頭を下げ、何とか私たちが一乗谷に残れるようになったことで、次の問題を話した。
「近衛家から嫁ぎに来た継室なのですが、子が出来ず、殿は新しい側室を迎えたいとの意向です。というわけで、誰か殿に嫁がせたいという方はいらっしゃいますか……?」
私の聞き方が悪かったのか、自分の娘を嫁がせようと、一気に名乗り始め、次第には他人の子供を貶すような言葉が飛び交っていた。
「孫九郎様。目が合いましたね」
そんな中、一番前の列に座り、じっと私たちを見ている男性がいた。近衛春嗣のような、公家のようなやんわりとした雰囲気と、腹黒そうな雰囲気がある男性は、こう私たちに言った。
「先祖は足利家の血を引く、御館様に相応しい、この鞍谷家はいかがでしょうか? 孫次郎様が気に入るような、絶世の美女でございます」
どんな娘なのかは分からない。けどチャンスがあるなら、一度義景と顔合わせても良いのかもしれない。
「凛殿。如何なさいましょうか?」
「お願いします」
景紀は、私に判断を委ねたので、私は一刻も早く、義景の問題を解決したかったので、鞍谷家の娘を義景に合わせることにした。




