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ジジイの異世界記  作者: パパちゃん
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その9

森の結界の外まで飛んで行き帝国領の森に入り降りる。

北の森とギガント帝国とは隣接していて森の結界から王都までは数時間の距離の場所だった。


ノーブは帝国領の森を歩いて王都に向かう。

そして、どうやって母に会えばいいかを考える。

母に会いさえすれば、自分の力で助け出すことは簡単だろう。

ノーブはそう考えていた。


そして、目的地に到達する。


ギガント帝国の王都は、見たことがないほど立派な壁で囲まれて巨大な城が目立っていた。

王都に入れる門は4箇所の内2箇所は封鎖されている。


ノーブは王都が見える少し離れた場所で休憩をして、作戦を考えている…

だが、何も思い浮かばない。

とりあえず王都に入り、冒険者ギルドに行き情報を集めるかと、王都、北の門の入場の列に並んだ。

列が進むと見知った男と再開する⁉︎


「ノーブじゃないか!」


門番がノーブを見て声を掛ける!


「アルブの街の門番さんじゃないですか? こんなところでどうしたのですか?」


ノーブは昔ながらの感じを出して話す。


「王都で人が足りなくてな、アルブから呼び出されたんだよ」


門番はそう説明して少し世間話をして仕事に戻って行った。

ノーブの番となり検問を受ける。

冒険者ギルドのカードを見せる…

許可が出て門をくぐり都に入ると、左右に30名ずつ騎士が並んでいた。

一斉にノーブを取り囲む!

団長らしき男が近づいて話す。


「マリアの息子のノーブだな!」


(俺を見つけるためにアルブから門番を呼んだのか…)


ノーブは迂闊だったと後悔したが、なんとでもなるだろうと開き直っていた。


「ああ…」


「城まで同行してもらうぞ!」


偉そうな奴が言った。


「嫌だと言ったら?」


「マリアの命はない…」


(当然そうなるな…)


そう思い。


「わかった」


素直に拘束されて手枷と魔力封じの首輪を嵌められる。

そして、牢馬車の檻に入れられ連行されて城に向かう。

ノーブは牢馬車に揺られながら檻の中から都の様子を見た。

街は黒い瘴気… いや、それよりも濃い悪意の瘴気で満たされていて都全体がどんよりとした雰囲気で、人々も殺伐としている…

何の罪で連行されているか解るはずもないのに人々はノーブをニラみ罵声を浴びせて石を投げていた…


(なんなんだ、こいつらは…)


ノーブは街の人々にさえ嫌悪感を持った。

1時間ほど走り牢馬車が王城に到達する。

城は特に悪意の瘴気が満ちて禍々しい気配を感じた。

ノーブは牢馬車から降ろされて城の中に連れて行かれる…

廊下や階段には所狭しと騎士が並んでいる。


(これだけ警戒しているということは俺についても知っているということか…)


ノーブは物々しい警備にそう感じた。


一際豪華な扉の前に到着すると、両開きの扉が開かれる。

後ろから4人の騎士に剣を突き立てられたまま謁見の間に入る。

正面奥の玉座に王が座っていた。

ノーブは王の前に連れていかれて、左右、後方と騎士に囲まれ剣を向けられた。

王の左横には王妃と娘の2人が座っている。

王の右側には魔導師の一団が立ち並び、その前には焦点が定まらず虚な目をした、母、マリアがいた!


王が口を開く…


「勇者よ! 余が、おヌシを呼んだ主人、ギガント6世だ! 我に従い仕えよ!」


ギガント6世が尊大な態度で命令した!


「はあ? なんのことだ? 俺は勇者じゃないぞ?」


(嘘じゃない、大勇者だもんね!)


ノーブには余裕があり、とぼけて王をバカにしていた。


「黙れ! 調べはついておる! あのとき召喚したジジイだろうが!」


王はノーブを怒りながら怒鳴りつけた!


「ラディシュの奴め! 裏切りおって!

勝手に転生させていたとは腹立たしいわ!」


王はブチブチと文句を呟いている。


「その辺の事情は良く知らんのだが?」


ノーブが口答えをすると…


「王の前だ! 口の聞きかたに気をつけろ!」


偉そうな騎士が怒鳴る!


「まあ良い、良い機会だ教えてやろう!

おヌシが召喚される半年前に、筆頭魔導師のマリアが神聖国から呼ばれた。

無視してもよかったが神の啓示だと言いくさった…

仕方がなく出向させたのだが、聖女と共に、おヌシの神託を受けた。

それを、マリアはワシに報告せず、夫のラディシュと秘かに連絡を取り、おヌシの召喚を企みマリアの中に転生させた…

そののち、城に帰ったマリアがラディシュが死んだことを知り宮廷魔導師を辞めたいと言い出した。

殺すには惜しい人材、まだまだ利用価値があったのでな、あの街に見張り付きで閉じ込めたが…

知らぬ間に男を連れ込み子供を作ったと思っておった… 此奴にまんまとハメられたわ!」


マリアを睨み怒り狂う王! 椅子の肘掛けをバンバン叩いている!


「そうか、で、母をどうした?」


「ああぁ?」


「母に何をしたんだと聞いている!」


ノーブは王に怒鳴り散らした!


「薬と魔法で、お前のことを自白させた。

こうなっては死んだも同然、良い気味じゃ」


王はケラケラと笑った。

そして、王だけじゃなく王妃や娘、家臣達までも笑っている…


「お前らは人なのか?」


ノーブは激しい怒りが込み上がる!


「ワシは人ではない、覇王じゃ! なんとしても北の森を手に入れる。

お前が魔王を倒してこい!」


「はあ? なんで俺が? 勇者じゃなと言っているだろうが!」


「バカめ! 調べはついておる! ギルドで噂だったぞ! ラックの街だったか? 1人で何千という魔物を倒したんだろう? 

そんな事を出来るのは勇者だけだ! 誤魔化すでない!」


王は激昂しっぱなして、こめかみの血管が切れそうなほど浮き上がっていた!


「だとしてもだ! 俺が手を貸す理由があるのか?」


ノーブは呆れた顔をしていた。


「マリアを見捨てるのか?」


王は平静を装い言い返す…


「母を救ったところで心が壊れている… 魔法や薬では心は治せない」


ノーブは諦めたように首を振った…

だが、それは演技で、ノーブには救う手立てに心辺りがあった!

まだ使った事のない魔法、癒しの光とヤマトに持たされたエリクサーだ!


「ぐぬぬ… 断ればお前を殺す!」


王は脅迫に失敗した事に気づく。


「構わん。俺はこんな世界に来たかった訳じゃない… 故郷に帰れない今、生き延びたいとは思わない…」


ノーブがそう説明すると、王がニヤっと笑った…


「ならば、アレじゃのう…」


王は宮廷魔導師団に手で指示を出す…

30人ほどの宮廷魔導師が円形に並び真ん中に怪しい魔道具を置き呪文を唱える…

都全体から悪意の瘴気が集まり魔道具の魔力を満たしていく!

すると、中央にある魔道具が黒く輝く!

頭上の空間が歪み黒い渦のようなものが現れて浮かんでいた…


「アレが何か解るか?」


「さあ?」


「お前の故郷に繋がっている…」


王がドヤ顔をしていた!


「かっ、帰れるのか?」


ノーブは物凄く驚く!


「人を送ることは出来んが攻撃魔法なら飛ばせる! やれ!」


そう魔導師達に命じる。

異界の扉を開いた魔導師達が渦に向かい魔法を放つ!


「やっ、やめろっ!」


ノーブは大声で怒鳴る!


「そんなことをしたって、俺の世界は広く、大したことにはならない!」


そう強がって見せた。


「そうか? あの扉はお前が転生された場所に繋がるようになっておる。

大きな魔法を撃ち込めば何人かの知り合いは死ぬのではないか?

お前は転生させられたとき何処にいた? 家か? 外か? 家族は大丈夫なのか?」


王はニヤニヤ笑って脅した!


「やめろー!」


ノーブは絶叫し! 力を込め手枷を壊す!


「お前は… お前だけは許さない!」


ノーブは我を忘れそうなほど怒っていた!

その様子を見て取り囲む騎士達が剣を持つ手に力を込めてノーブを斬る命令を待っている!

だが、ノーブは意にも介さず王を睨む!


「これでも言うことを聞かぬかー! マリアを殺せ!」


王の命令に、待て! と止める暇もなく騎士が母の首を斬り落としていた…


その光景を見ながら王は恍惚な顔を見せて笑った…


「狂っている! お前は狂っている!」


ノーブは気がふれるほど泣き叫び怒り狂った!


「おい! デカいのを撃ち込んでやれ!」


王の命令で、20人の魔導師が広範囲殲滅魔法の詠唱を始める。


「まて! 話を聞け!」


王に怒鳴るも…


「おヌシはまだ己の立場をわかっとらん…」


王は、ため息を吐きながら首を振り魔導師に向かい顎をしゃくる。

ノーブは魔法攻撃を止めようと呪文の詠唱をするが発動しない…


(くそ! くそ! くそ! 俺が間違っていた!

俺の力があれば簡単に母を助け出せると…

この男は狂っている…

母が殺される前に、全員、殴り殺せばよかった!

あの扉は本当に俺の世界に繋がっているのか? 家族は無事か?)


ノーブの中にやり場のない怒りが込み上げてくる!


「やめろー!」


ノーブの魂からの叫びだった!


(殺してやる! 殺してやる!)


エクスカリバーを取り出そうとしたが反応がない…

素手で殴り倒しながら騎士をかき分け魔導師をとめに向かう。

だが、詠唱が終わる… 容赦なく攻撃が放たれる…


その光景に目の前が真っ暗になる… ノーブの中で何かがキレた!


闇がノーブを包む…


悪意の瘴気が集まりノーブの身体を包む。

すると、魔封じの首輪が崩れ落ちる…

薄れてゆく意識の中、ノーブは、とっさに異界の扉と母の死体に障壁を張った。


そして、心が闇に堕ちていく…

完全に闇に飲まれる…


騎士達は構わず斬り掛かってくる!


「おおおおーー!」


ノーブは吠え闇に心を委ねる。


世界が震え激震が走る…


聖女達に神託が下りる。


「魔王が誕生した」


この世に、自称魔王は沢山いたが世界が認めた魔王は初めてだった…


その情報は魔道具を経由して一瞬で世界に広がる!


騎士達の攻撃は魔王を纏う瘴気に遮られ当たらない。

魔王が静かに口ずさむ。


「紫電…」


魔王から紫の稲妻が放射状に広がり周りの騎士は感電して蒸発した。

その光景に王が焦る!


「もうよい! 殺せ!」


宮廷魔導師団に指示を出す。 

魔導師団が慌てて一斉に詠唱に入る。


魔王は一言…


「ヘルファイア…」


王家を除く全員が黒い地獄の炎に焼かれて灰となる。

魔王に詠唱は必要ない。

思い浮かぶ現象が魔法となる。


魔王は王を睨み歩き出す…


「まず娘から殺すか? 妻が先か?」


「やめろ! やめるのじゃ! ワシは王だ!」


王は焦って叫ぶ!


「それがどうした? なら俺は魔王だ! 魔王の波動…」


ギガント王国全土を恐ろしく冷たい殺気が包む!

王や家族、街の住人は死を覚悟してプルプルと震えていた。

王の首を掴み持ち上げる…


「選ばせてやる、どいつからだ? 言っとくがお前は最後だ… 俺と同じ苦しみを味わえ…」


魔王は腹の底から響く冷たい声で聞く。

プルプルと震える王を横目に娘の1人に手刀を突き出す!

当たる寸前に、母の遺体が輝き!

光が飛び出して娘の前に立ち塞がる…

そして、母の声が聞こえる。


「ノーブ、貴方は憎しみに囚われては駄目です…

私が死ぬ事も運命だったのです…

神様の声を聞き異世界から来た貴方を助けて育てました。

それでも貴方は私の息子です。

強い心を持ってしっかり生きなさい!

そして世界を導くのです。

それが貴方の役目なのですから…」


光が魔王の中に入っていく…

マーラとマリの時と同じだった。

魔王は気持ちが落ち着き、ノーブとしての自分を取り戻す。

気づくと王を離していた…

王は後退りして王妃や娘達の後ろに隠れてぶつぶつと呟く…


「ワシが王なのだ… 覇王になるのだ… 」


王の独り言に反応して悪意の瘴気が集まってくる。

瘴気がどんどんと王の身体に吸収される!


「もっとじゃ! もっとじゃ!」


狂ったように叫び出して王妃の首を絞めて殺し魂を吸い取る…

その愚行は2人の娘にも及んだ。

王妃と娘2人は王に魂を吸われて死んだ…

そして、王の身体が禍々しく膨れ上がる!


「もっとじゃ! ワシに力を寄越すのじゃ! 民ども!」


その言葉に反応し、王都、いや、ギガント帝国全土から魂が集まってくる!

ノーブに纏わりついていた悪意の瘴気も吸い取られる。


そして、城の地下が激しく揺れて振動と共に何かが飛び出し、城を破壊しながら登って来る⁉︎

城は崩れ半壊した謁見の間に小屋ぐらいあろうか? ノーブが持っている神竜の魔石の何倍もある魔石が現れていた!

魂と瘴気で膨れ上がる王は、その魔石をも取り込み巨大な人の姿となる。魔人が誕生した!


「お前は王なのか?」


「ワシは世界を統べる邪王だ!」


魔人が言葉を発した!


「自分から邪を名乗るのか…

お前のせいで民は死んだぞ?

民がいなくて何が王だ!」


「民なんぞ世界にいくらでもいるわ!」


そう吼えながら掴みかかってくる。


ノーブはエクスカリバーを呼ぶも反応は無い…

魔王となった今、聖なる物は使えないのかもしれない…


「ヘルファイア!」


黒い炎で邪王が燃え上がる!


「サンダーブレイク!」


紫の稲妻が落雷して邪王に直撃する!

一瞬、黒焦げとなるが瞬時に再生する!


「うおおおー!」


ノーブは閃光のように動いて飛びパンチを放つ!

だが、邪王の手に掴まれ握り潰されそうになる!

なんとか逃げ出す。


「グラビトン!」


重力の力で押し潰す! だが効かない。

邪王が連発で放ってくる「瘴気弾」が着弾して吹き飛ぶ!

落下したところを踏みつけられる!


(デカいくせに早いな… 攻撃が効かないし…)


ノーブは少し弱気になっていた…


「次元圧縮!」


邪王を球状の空間に閉じ込めて空間を圧縮する!

だが、ダメージを与えるも決定打にはならない…

ノーブは続けて攻撃しようと不用意に飛びあがり捕まった。

邪王は目から破壊光線を出した!

ドカーン! 直撃を受けていた!

手は吹き飛び足はあらぬ方に曲がっている⁉︎

地面に転がるノーブに邪王のラッシュが来る!

ストンピングの嵐… ノーブは潰されボロボロになってていく…

最後に蹴られて吹き飛び城の残骸の壁に激突して倒れた…


(俺は、やられるのか… 自業自得か、鬼人王のときと同じで調子に乗っていたんだろう…

慎重に計画を練って挑めば母を助けて地球に魔法を放たれることもなかった。

仕方がないか…)


ノーブは自分を過信したせいで母を失い、その後悔から魔人と戦う前から勝つ事を諦めていたのかもしれなかった…

ノーブは魔人の攻撃が迫り来る中、動こうとしなかった…


その時、アイテムボックスの中から3つの光が飛び出す!

その光りが目の前をフヨフヨと浮いている。

一つの光が一瞬消え再び現れる。

3つの光が1つになり、アイテムボックスではなくノーブ自身の身体に入る…

そして、心の中に声が聞こえてくる…


「諦めないで…」


マーラの寂しげな声がした…


「絶望しないでください」


マリも優しい声で励ます…


「戦いなさい! 貴方は黒の様に強くなるのよ!」


母、マリアは昔読んでくれた物語の主人公の様に強くなれと励ました…


「「「私達が、いつまでも貴方を見守っています」」」


身体の中から発生した暖かな光に包まれる!

すると目の前に、あの夢のような場所で見た黒い剣が現れていた…

ノーブは、その剣を掴んで掲げる。

黒い光が身体を包み漆黒の鎧を纏う!

兜は目と口だけが空いていて他を全て覆い尽くす。

鎧には巨大な蝙蝠の羽がついていて羽を閉じると身体の全面が隠れるシールドとなる。

両肩には目を模したギミックがあり閉じている。

腰の中央にはヘキサゴンバレルがあり、背中に24個のヤーが装備されたフルプレートメイル、黒く光る剣の名は魔剣カリバーン!


ノーブは自身にエクストラヒールをかける!

千切れた腕は再生し足も治り傷が消える。

それは一瞬の出来事で、今まさに襲い掛かってくる邪王に向けてノーブは魔剣カリバーンを振った!

斬撃が飛び邪王の片足が切断される!

崩れ倒れる邪王に向かい鎧の羽を広げ飛び上がる!

腰のヘキサゴンバレルに魔力を込める!


「魔導砲!」


黒い光のビームが撃ち出される!

黒い光は紫電をスパークさせながら飛んでいく!

邪王に直撃!

邪王の半身が吹き飛ぶ!

だが邪王は再生しながら立ち上がる!


「破壊光線!」


漆黒の鎧の両肩の目が開く!

その目から二筋のビームが放たれ、そのビームの周りを螺旋状のビームが追いかけながら飛んでいく!

ビームが直撃して邪王は膝をつき! ノーブを睨む!

だが、まだ、肩の目は閉じず邪眼が発動する!

邪眼に見つめられた邪王の身体が、みるみる塩に変わり崩れていく!

だが、邪王の身体は次々と再生されていく…

それでもダメージは相当与えていた。

全てのヤーを展開させて魔導砲と破壊光線を一斉発射する!


「フルバースト!」


ヤーが縦横無尽に飛び交い邪王を切り裂いていく!

それを暗黒波動が焼き尽くして破壊光線が消滅させる。

倒した邪王は跡形もなく消え去っていき魔石だけが残った!

魔石に近寄り手をかざし光魔法で浄化しようとしたが光魔法は発動しない…

それならばと、魔剣カリバーンを掲げる!

カリバーンは漆黒のオーラを放ち魔石から黒いモヤを吸収する!

全てを吸い尽くすと、今までにない巨大で神々しい魔石が残った。


(なんとか上手くいったな…)


ノーブは魔石をアイテムボックスに収納する。

そして、辺りを見回す。

邪王との戦闘で王都は壊滅していた。

ギガント帝国の人々は、王が魔人化するときに糧として魂を吸収されてしまい誰1人、生きている者はいなかった…


ノーブはその場で一息つき考えている。

すると遠くから、こちらに向かって来る人の気配を感じる。

ナオトとギャリソン、そしてチムだ。

しばらくするとノーブの前まで飛んで来た。


「あっ、あんたどうしたの?」


チムが、ノーブの姿を見て不安そうに聞く…


「ああこれか? 魔王になった…」


簡単に事の顛末を説明した。


「ナオト、頼みがある…」


「なんだい?」


「母の遺体を実家の近くの丘に埋葬して欲しい」


「自分ではしないのかい?」


「俺は行く所がある…」


ノーブは異界の扉を指差して告げた…


「戻ってくるの?」


チムが心配そうに聞く。


「わからない…」


首を振りながら答える。


「帝国の奴らが俺が転移するときにいた場所を攻撃した…

どうなったか知りたい。頼めるか?」


「任せて」


ノーブの頼みをナオトは快諾した。

母の遺体を呼び寄せて布で包みナオトに預ける。

それを、ギャリソンはただ黙って見ていた。


皆に別れを告げて異界の扉を見上げる!


(あの扉は、人は通れない… だが魔王となった今なら、時空間魔法も使いこなせるはずだ!)


ノーブは飛び上がり、謁見の間にあった次元の扉の黒い渦に行く。

城が崩壊したため黒い渦は空にポツンと浮いていた。

ノーブは渦に手を触れ集中して念入りに出口を探る…


「見つけたぞ! 転移!」


ノーブが叫ぶと、その場から姿が消えた…


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