宇宙編14
「どういう事ですか!」
サーシが朝食中にも関わらず押し掛けて来て騒いでいる。
「なんだ騒々しい、ポンコツ2号機!」
「ポンコツでも2号機でもありません!」
何故か朝からプリプリと怒っている。
「それで何をプリプリしているんだ?」
「サンガイアの皆さんに加護をお与えになったと聞きました! 私が頼んだときは断ったじゃないですかー!」
「何度も説明しただろう? 加護を与えると…」
「はい聞きました!」
説明を遮り答える。
「イスカやタカナシには相談をしたのか?」
「いえまだ… ですから、今から転移で…」
手を挙げ遮る。
「お前、自分の国の時間は調べたのか? 今行って夜中とかではないだろうな?」
目を泳がせながら「調べて来ます…」と立ち去っていった…
「すみません。あと2時間ほどで夜明けだそうです…」
「やれやれだな… また今度な」
「嫌です! 起こします! だから!」
「はぁ、仕方がない。6時間後だ!」
その返事を聞くと、サーシはスキップをしながら出て行った…
「おじい様ってポンコツ女好きよね…」
ゼダンの門を通って愛が遊び… 視察に来ていた。
「好きじゃねーよ!」
6時間後、ゼダンの門からリンガイアに転移する。
サーシは王のところに行かせて魔王はガンガーディア基地で雑務をこなして、待ち合わせ場所に行く。
「魔王様ー!」
アコが駆け寄りジャンプして抱きつく!
「やめい! おっぱいが当たる!」
そう言いながらもしっかりと抱きしめている。
「駄目ですかー」
アコが上目遣いだ…
「うっ、だっ、駄目じゃない…」
魔王はしどろもどろだ。
「違ったわ! ポンコツじゃなくて巨乳好きだったわ! エルちゃんも巨乳で良かったわね!」
愛がほざいている…
(勝手な事を言いやがって! 確かに俺は巨乳は好きだが…)
魔王は否定出来なかった。
この日はアコの賛美歌コンサートの日で、来星中のアコの顔を見に少し寄っただけだ。
決して巨乳目当てではない… と魔王は自分に言い訳していた。
アコも誘いカフェでお茶を飲んでいるとガラパゴスが鳴る…
「話がつきました!」
結果、全員一致で加護を与えて欲しいとの事だった。
アコの賛美歌コンサートの前座で与える事とした。
時間は過ぎ、アコの賛美歌コンサートには100万人の人々が集まり世界中に中継もされている…
(苦手だ、こんな人の多い場所で…)
魔王は注目されるのが嫌いだった。
「はーい、みなさーん! 今から魔王様がご加護をお配りしまーす! 受け取っちゃってくださーい!」
アコのMCが始まる。
「加護は欲しいかー?」
イェーイ!
(軽いな… 加護はチラシじゃないんだぞ!)
アコのノリに魔王はムッとするが、エルザとステージの中央まで行き超神剣ジェネシスを頭上に掲げる!
魔王とエルザは輝きリンガイアの人々も光り輝く。
(導者様と女神様の加護を与えます)
シンリーの声が人々に伝わる…
加護を得た者達は、その場に跪き忠誠を誓う! 空を見るとセシリードローンが飛んでいる…
誰がスイッチを? と、辺りを見回す。愛が握っていた…
祖父を売るか… と魔王はガッカリとしていた。
「加護! いただいちゃいましたか?」
イェーイ!
「賛美歌、歌っちゃうぞ!」
イェーイ!
アコがノリノリだ!
愛達が楽しそうに聴いていたので、最後まで聴き竜王星に戻る。既に真夜中だった…
(眠いわけだ…)
魔王はゆっくりと休んだ…
結局、リンガイアとサンガイアを庇護下にしてしまった…
形はどうあれ、魔王は3つの星を事実上護る事になってしまったと大変に思うが…
(まあ、今更か…)
と、諦める。
すると突然、神の園の気配が現れた事に気づく…
エルザを連れて竜王星の神の園に行く。
門は開かれていて園の造りは同じだった。
神殿に入る。天使はいなかった。神の扉だけが現れて開いていた…
中に入ると2人の男性と1人の女性の姿があった。
「その姿は?」
「導者のおかげで、神としての力が増して具現化するに至った」
右端の中年男性が告げ、そのまま自己紹介をした。
「我がガンガイアだ」
真ん中の青年男性が…
「リンガイア…」
どことなく頼りない…
左の女神が…
「サンガイアですよー」
何か軽い感じだ。
「導者のおかげで、どの星も信仰と安らぎを取り戻した。感謝する!」
「同じく…」
「ええ、ありがとうねー」
それぞれがお礼を言った。
そこからはガンガイア神が語った。
この星は惑星ガイア、自分達を産んでくれた母なる神の星。
昔は緑豊かな星だった…
だが、ザムドに襲われてガイア神は倒された…
人や魔物は連れ去られ星は荒廃して死の星となり逃げ延びた一部の魔物が繁殖した。
ガイア神は倒される前に3柱の神を生み出した。
神と星は生まれたが、ザムドに目をつけられた。
1番被害を受けたのはガンガイアだった…
だが、他の2つの星も少なからず被害を受けている。
神達は星を創り力を使い果たして弱体化する。
人との距離は離れ信仰は薄れ神の力もどんどん衰退していき意識だけの希薄な存在となっていた。
神同士、連絡を取ることもままならない状態だった…
だが、魔王の活躍で星は活気を取り戻して人々は再び神を崇め祈り始める。
祈りは神気を生み神の園に集まり神の栄養となる。
希薄で朧な存在だった神達もはっきりとした自我に目覚めて存在が顕になったという訳だった。
「でな、我ら3柱から1つ頼みがある…」
ガンガイア神が申し訳なさそうに言い出す…
「またか… 俺をいいように使いやがって!」
魔王はご立腹だった!
「まあまあ、神様が貴方を信頼なさっているんですよ」
エルザが慈愛の笑みをみせる。
「さすがエルザさん、良い奥さんね」
サンガイア神が優しく微笑む。
「奥さんじゃねーし! 彼女だし! まあいい、どんな頼みなんだ?」
魔王は面倒くさくなってきていた…
「この星を再生して欲しい。国を造り民を集めガイア星を復興して母なるガイア神を甦らせて欲しい!」
ガンガイア神が頼む。
「そんな事が可能なのか?」
「ザムドに倒されて吸収されたが、魔王がザムドを倒した事によりガイア神の魂は解放された。
もともと神は死なない。倒されても一時的なもの、封印さえされなければ復活する。
だがそれには条件がある。
星と生命が神と共にある事だ。
星が豊かになり、人々が祈りを捧げてくれれば、ガイア神は必ず甦る! それをお願いしたい」
そこから話は続いた。
竜王星を基地だけでなく国を造り人々を増やす。
人は3つの星から集めて信仰を高めガイア神を復活させる。そんな感じだ…
「俺は皆に任せて、エルザと2人で静かな老後を楽しむ予定なんだが…」
魔王は今度こそ引退しようと考えていた…
「そんな事を言わないでくれ… こんな事を頼めるのは導者だけだ…」
困ったようにリンガイア神が言う。
「新しい導者を作ればいいじゃないか! どこかから召喚しろ! 俺は充分働いた!」
魔王は自分を良いように使う神達が嫌だった。
「そんな… エルザさんからも頼んでよ。お願い」
サンガイア神は神の癖に卑怯者だった!
「また1つ貸しにしましょう。貴方なら出来ます」
エルザが期待の目で見る…
「くそっ! 卑怯だぞ! 仕方がない… 引き受けてやる… だが、天の裁き!」
神に天の裁きとは神をも恐れぬ魔王の所業だ!
だが発動しない…サンガイア神が笑っている…
「ほっほっほっ、神にそんな魔法が通じる訳がないじゃない…」
「破滅のひ…」
手を向ける魔王の目が本気になっていた。
「待って、それは駄目! 調子にのりました。ごめんなさい」
サンガイア神は一生懸命に謝る。
「駄目ですよ、神様にそんな事をしては」
エルザが魔王を宥めると…
「エルザ様!」
サンガイア神はエルザにすり寄る。もはや誰が神だか解らなかった…
「ゴホッン!」ガンガイア神が咳払いをして、
「では頼んだ。先払いだ我ら3柱の力をもう少し分け与えよう…」
魔王とエルザが神々しく光る! 力がみなぎり新しい能力が目覚めていく…
「ちょっ、待てよ!」
どこかのアイドル風の言い方だ…
「なぜ、こんな力を与えた? まだ何かあるのか?」
魔王は3神を懐疑的な目で見る。3柱は目を泳がせながら…
「「「では任せた…」」」
と、消えていった…
「特大の貸しだからなー!」
魔王はデッカい声で叫んでいた!
仮設司令室に戻り主だったメンバーを集める。
ガンガイアからは愛やヤマト達。
サンガイアはジジと息子。
リンガイアはイスカとタカナシ、加護を与えたリンガイアも1つに纏まり、イスカが星の代表になった。
ルルシュとアコも参加している。
神達との話の内容を伝え話し合う。
そして…
星の名は竜王星から魔王星ガイアに変え、建国して星を再生する事となった。
街は1千万人が住める規模の物を建設する。
ガンガーディア本部基地と3つの星の共同の造船所も造る。
今後、宇宙船はこの星で生産され管理する。
初期移住者は500万人、ほぼリンガイア、サンガイアから来る予定だ。
ガンガイアは移住者もあり急速に人口が増えていった…
それでも、100万人、日本なら小さな県程度…
移住を集うのには人口が少なく、ガンガイアからは軍と技術者と少数の移住希望者だけに留める予定だ!
「ワシも、ワシも移住させてください!」
ジジが言い出す。
「駄目に決まっているだろう!」
暴走するジジを息子が一生懸命に止める。
「なあ、あれ、会議に必要か?」
空中に浮かび記録するセシリードローンに指を刺す。
「かっ、会議の記録用よ!」
愛の目が泳いでいる。脱線しながら会議は進む。
「だいたいそんなところだが、あとは、優秀な聖職者が必要だな…」
「「はい! 私が」」
ルルシュとアコが立ち上がる! お互いを見つめ、バシバシ火花を散らす…
「お前達は、3星間ツアーがあるだろう… 誰か後任でもいれば別だが…」
「魔王様! 私が!」
リリが勢いよく手を挙げる。
「あんた、おじい様のそばにいたいだけでしょう!」
愛がイラッとしている。
「そっ、そんなことはありません…」
「ほら、めっちゃ目が泳いでいるわ!」
(リリでもいいんだが…)
悩んでいると…
(リリが適任かと、3柱の加護もあります。聖女王としての使命です。
ガンガイア星には私の現し身もいます。問題ないです)
シンリーに言われ納得する。
「わかった、リリに頼もう」
「全く、リリに甘いんだから…」
リリを認めると、愛が寂しそうな顔をした。
「寂しいのなら愛もここに来るか?
ただし条件がある!
お前がガイアの女王としてこの星を治る。
ガンガイアは将とまりんが王と女王になれば良い」
魔王はただ自分が星の王になりたくなかっただけだった。
「わかったわ!」
愛はあっさりと承諾した。
「そんな勝手な…」
将が困り… まりんも青い顔をしている。
「娘のためだ、仕方がないんじゃないか?
もともと、お前達が嫌がって愛に押しつけたんだ…
それにお前達2人は国民からの人気も高い。
何の問題もないと思うが…」
魔王は無責任に淡々と話す。
「お父さん、お母さんお願い!」
愛も両親にお願いする。
「…わかったよ」
将達は渋々承諾した。
「なら1つ頼みがある。ナオト君を僕に預けてくれ!」
ナオトは責任を取ってサンガイアに移住したが、その暮らしに馴染めていないと報告があった…
将はナオトを気にかけていて呼び戻してやりたかったようだった。
愛もいなくなると防衛力が落ちる。
「わかった呼び戻そう。
それと、お前達2人はレベリングして少し強くなれ。時空間魔法を覚えろ、ゼダンの門を使えないと困るからな」
魔王はナオト家族を戻す事に承諾し、将夫婦は、次の日からアモンのスパルタレベリングに苦しむ。
ただレベリングするだけではなく戦闘も教えられて鍛えられる。
2人も大勇者として目覚め、3神にも加護を貰い2人はガンガイアの守護者となった。
「あとはあれだ、聖歌姫だな… あっ! お前達2人はないから座れ」
立ちっぱなしのアコとルルシュを座らせると、2人ともガッカリとしていた。
「おじい様、任せて! おじい様好みの可愛いポンコツ巨乳を連れて来るわ!」
よほど嬉しかったのか? 愛はご機嫌で訳の分からない事を言っていた…
そして魔王星ガイアの本格的な開発が始まる!
広大な土地を整地し国造りを開始する。
ヨシヒデが図面を引き街や工場の場所を割り振りデザインしていく、職人軍団が着工し、軍は再編成し、移住者の募集を各星に出す。
そして、リリを代表にしてガイア教を立ち上あげる。
さまざまなことを同時に進めて1年殆どで魔法と科学の融合都市ガイアが完成するのだった!




