時の旅人、光と闇編17
「マオウ様、神国ゴードから聖女ミゲルを返せと言って来ました。
返さなければ、ウエスト国、サウス国、ノース国と連合を組み侵略すると言っていますが…」
ギムガンが報告する。
「受けて立つと返事をしてやれ…」
マオウはどうでも良かった。
「あの、魔王様、私と一緒に召喚された勇者達は助けてくださいね」
アズマが頼む。
「ああ、奴隷術はといてやるが、そのあと何処に行くのかは本人達しだいだぞ?」
「それで良いわ」
アズマは納得する。
「あの、私、神国と話をしましょうか?」
ミゲルが言うが…
「ミゲル、やめておきなさい、あの教皇は全く信仰心がなく欲にまみれています。
貴方が行ったところで、なんの解決にもなりません。
いいように利用されるだけです…」
マロニエルが止めるとミゲルが頷く。
「ああ、マロニエルの言う通りだ、遅かれ早かれ帝国や神国は攻めて来る。
ミスティ国や魔国が動く前に決着をつけた方が都合が良い」
マオウは各国との戦いは避けられないと思っている。
「飛び石だと少し面倒だな… 強制転移!」
マオウは呟き転移を発動する。
「マオウさん、誰も来ないけど…」
ミャーダが不思議そうに聞く…
「ああ、ミライ国とアンナ国をミャーダ国の両隣に移した…
あと、連合の国々も近場に転移させた。
見た感じ、1つの巨大な国に見えるかもな…」
マオウが笑って教える。
「なっ、なんて事をするんですか!」
ギムガンが声を上げる!
「さすが王ですな。後でどうやったか教えてください」
サトシは興味津々だ。
しばらくすると…
「ちょっ、魔王様、何をやったの!」
「魔王様…」
ミライ女王とアンナ女王が城を尋ねて来た。連合国の者達も集まっていた。
マオウは謁見の間に皆を集める。
「神国と帝国から宣戦布告を受けた。
そのうち、ミスティ国や魔国も攻めて来る。
全ての国を一箇所に集めた方が守りやすいだろう?
それだけだ…」
マオウが告げる。
「まあ、そうですね… ここはいっそ、全てをミャーダ国にしてはどうですか?」
ミライが提案する。
「それは皆で話し合ってくれ… 俺は王じゃないから、その辺の事には口出し出来ない…」
マオウは目を逸らして答えた…
アンナ達がジト目で見ている…
「さて、アズマ、ミャーダ国連合軍の総帥を任命する。マリーは副総帥。そんなところだ…」
マオウは適当に丸投げした。
「仕方がないわね…」
アズマは渋々引き受け。
「私、頑張ります!」
マリーは燃えていた。
「あっ、ミゲルとマロニエルは戦いに参加しなくて良い」
マオウが気を使う。
「私、戦います!」
「私もです!」
「しかしな、同僚や信者と戦えるのか? 無理をしなくて良いんだぞ?」
マオウは2人を心配するが…
「「大丈夫です!」」
いらん世話だったようだ…
「あの、天使50名に加護をやっていただけないでしょうか?
ダムダに攫われダーク天使になると可哀想なので…
それに天使のままではダーク天使に太刀打ち出来ません…」
マロニエルが頼む。
「天使達は堕天しても良いと思っているのか?」
「はい。天使達、全員に聞いた総意です」
「解った天使達を呼べ…」
マオウが納得すると、マロニエルは謁見の間に50人の天使を呼ぶ。
何故か、天使達に紛れてジョニーとブラックが並んでいる。
「そこ、関係ないだろう…」
マオウが呆れる。
「僕、魔王様のファンなんです! ぜひ加護をください!」
ジョニーが言うと…
「未来の配下に加護をください!」
ブラックも頼む。
「あの、僕も…」「私も…」
マルスとレッドも手を上げる。
「やれやれ、今の俺より、お前達の方が圧倒的に力がある。
格下の者が格上の者に加護を与えられる訳がないだろう?」
マオウが呆れる。
「まあ良い、キリがない。
ほら、全員に加護を与える」
マオウが手を翳し光り輝く!
天使50人と管理者の4名が加護を受け取る!
天使達は堕天して、マルス達は黒く光る粒子に包まれ黒く輝く!
「生命の木と同じ輝き!」
マルスは興奮する!
「うん? 生命の木? まあ聞かなかった事にしてやる…」
マオウはマルスの心の声をスルーしてやった。
「ダークネス様!」
レッドも興奮して泣き叫ぶ!
「それも聞かなかった事にしてやる…」
マオウは呆れっぱなしだ…
「だが、その黒く輝く光り、俺の本来の力か…」
マオウはなんとなく理解した…
「まあ知ったところで面倒ごとが増えるだけだな…
もう、自分の事を探るのはやめよう…」
マオウは嫌な気がしてしょうがなかった…
「ねえ、それ、私達もやって欲しいんだけど…」
「「「「「お願いします!」」」」」
ミライが頼むと各国の代表も頼む!
「加護を与えれば、ソウソウゴーレムに防衛させられるか…
仕方がない、各国の広場に民を集めろ、連合国全ての者に加護を与える」
マオウは前回の世界でソウソウが造った戦闘防衛ゴーレムを配備するために民全員に加護を与える事とした。
ソウソウゴーレムはマオウの加護を持つ者を攻撃せずに守る仕様となっているからだ。
「ソウソウゴーレムですか?」
アンナが聞く。
「ああ、勇者を超える強さのゴーレムがオートで国を守り敵を駆逐する。それを各国に配備する」
マオウが答える。
「もう、勇者なんてなんの価値もないわね…」
アズマが呆れる。
「勇者なんて、ただの器用貧乏だ… なぜ世界からアテにされチヤホヤされるか意味がわからん…」
マオウはやれやれといった感じで呆れる…
マオウは各国を回り加護を与える。
「トキ、オオトリ、お前達までなんだ… 加護なら持っているだろう?」
「是非、上書きしてください! 私達もあの黒く輝く加護をください…」
マオウがミャーダ国の民の最前列に並ぶトキとオオトリに呆れると、オオトリが頼む。
「それ、私にもいただけないでしょうか…」
突然、マオウの影からトシゾウが現れて頼む…
「トシゾウ! お前、どうして!」
マオウはこの世界に来てから1番の驚きだった!
「それは、後ほど…」
「そうか、まあ良い、会えて嬉しいぞ?」
マオウはトシゾウを抱きしめ、背中に回した手で肩をポンポンと叩く…
「ありがたき幸せ…」
トシゾウは感涙する。
「よし、やれるかは解らないがお前達にはとびきりの加護をやろう!」
マオウは嬉しかった、それも物凄く!
マオウが手を翳し民に加護を与える!
民は光り輝き加護を得た…
そして、トキ、オオトリ、トシゾウは黒い粒子に包まれ輝く!
「「「これは⁉︎」」」
その力に3人は驚く!
「ありがとうございます」
トシゾウは再び感涙した…
全ての国を回り各国の民に加護を与え10万の戦闘防衛ゴーレムを配置した。
「ねえ、少し戦ってみてもいい?」
アズマが戦闘防衛ゴーレムを指差す。
「ああ、破壊しても構わん、すぐに再生するからな…
マリー、お前も試してみろ」
マオウに言われてアズマとマリーはゴーレムに挑む!
それは物凄い強さだが、2人は苦戦しながらも勝つ事が出来た。
「魔王様、アレ、反則、アレが10万って… 誰がこの国に攻め込めるのよ!」
アズマが声を上げる!
「とりあえず神国と3つの帝国だが?
そのあと魔国とミスティ国と言ったところだろう?」
マオウは真面目に答える。
「いや、そういう意味で言ったんじゃないけど…」
「何にしてもだ、民に危害は加えられない」
「さすが魔王様です!」
マリーはキラキラした目でマオウを見ていた…
マオウ達は城へ戻り、魔王の間で話しをする。
「トシゾウ?」
「はっ! 魔王様がエターナル粒子に包まれたときに私はソウソウワールドに転生いたしました。
今はサイバーヒューマンといった存在です」
トシゾウが説明する。
「ソウソウワールド? サイバーヒューマン?」
聞いているミャーダ達は理解出来ない…
「俺の執事を気取っている超AIがな力を持ち過ぎて、俺のアイテムボックスの中に小さな宇宙を創ってしまったんだ…」
「宇宙ってあの空の?」
ミャーダが天井を指差して聞く。
「まーな…」
そして、マオウはソウソウとその宇宙の事を説明した…
「あの、貴方は、その、ザ・ワールドに行くために人間を捨てたのですか?」
アズマが青い顔で聞く。
「ああ、大した事ではない… お前はまだ魔王様と出会って日が浅いのだろう?
そのうち俺達の気持ちがわかるさ…」
トシゾウは満足そうな顔で答えた。
「ソウソウワールド… それも僕達の知らない宇宙…」
マルスは唖然とする。
「宇宙と言っても多少の星がある程度だろう?」
マオウが聞くと…
「はい、この宇宙の1つの銀河ほどです…」
「マジか…」
さすがのマオウも驚く。
「まあ、小さいと言えば小さな宇宙だが、個人のアイテムボックスの中に存在するとなると… とりあえず聞かなかった事にしておこうかな…」
レッドがブツブツと呟いた…
「私もソウソウ殿の5千年計画を手伝う事としました。次は5千年後に現れます…」
「いやいや、今はゆっくりとしていけ…」
「はっ! 今しばらくご一緒させていただきます!」
マオウに言われトシゾウは嬉しそうだった。
「ブラック、アレが人族1番のトシゾウです」
オオトリが教える。
「徹底していますね…」
ブラックが感慨深い顔をする…
「魔王様が好きな者達は皆、あんな感じです。
私の妹、ボロス、デスヘルやメイデン、ザ、ワールドに辿り着けるか解りもしないのに… 一部の望みを掛け転生して行きました…
遠い未来で再び魔王様に会える事を願って…」
オオトリは寂しそうな顔で教えた。
「たぶんじゃがな、願いは叶う。エターナルが導いてくれるはずじゃ…」
トキは根拠の無い自信があり、望む者全員がザ、ワールドに辿り着けると思っていた。
「私もどうしてもザ、ワールドに行きたいです…
別に人間じゃなくても大丈夫です。
トシゾウさん、連れて行ってはもらえませんか?」
マリーがトシゾウに頼む。
「他の方法を当たれ… 一応、ソウソウ殿に相談しておく。
だが、ミャーダ様がご存命中は魔王様のそばで支えると良い」
トシゾウが教えるとマリーは頷いた。
「僕も、ザ、ワールドに行きたいな…」
ジョニーまで言い出す。
「ジョニーさんも、いずれ魔王様と再会出来ます。
ブラックもジョニーさんも変な気をおこさないように…」
マルスが2人に釘を刺した。




