時の旅人、力無き魔王編33
ゴー! 膨大な力がカミラ星上空に渦巻く。
「来たな…」
マオウは敵が来た事を察知する。
「まずいですな」
トシゾウが、マオウのいた謁見の間に転移で現れて呟く…
「まあだが、やるしかない… トシゾウ、魔王衣を貸してやる装着しろ…」
マオウは命令するが…
「やはり私も生身、いえ、暗黒の鎧の方がしょうにあっています…」
トシゾウが答える。
「だな、なら、行くか、マゾネス、イサミ、トキ、オオトリ、あとは任せる。
リア、先行してアルシュを説得してこい」
マオウが強制転移で呼び寄せて命令した。
「魔王様、全員で戦った方が良いと思いますが…」
オオトリが膨大な力を感じ青い顔をしている。
「なんじゃ、オオトリ、王の力を信じておらぬのか?
これだから2番手は…
王よ! 任せておけ! 星の者達は妾達が守ってみせる!
王よ、奴らを倒してきてくれ!」
トキは力強く言った。
「おう! トキ、任せたぞ!
トシゾウ…」
マオウが転移しようとすると…
「貴方、ご武運を… 奥様達がいる事を忘れないでください…」
マゾネスが声を掛けた…
「わかっている! なんとか足掻いてみるさ…」
マオウは笑って、トシゾウを連れて膨大な力の元へ転移した。
空には沢山の時空の扉が開き、次々と敵が現れる。
それは、漆黒モドキを纏った、シン星の兵士達だった。
次々と地上に降りて行くが、マオウはマゾネス達や魔王軍を信じて見逃す。
そして…
「待たせたわね」
エカテリーナが現れる。
「ファイナルフラッシュ!」
マオウは間髪入れずに大魔法を放つ!
「やらせん!」
アルシュが結界を張りビームを逸らす!
「兄さん、やめてください!」
リアが現れてアルシュを説得する!
「黙れ!」
アルシュにリアは弾き飛ばされる!
マオウは転移でリアを自分の元に呼び戻す。
「ちょ、魔王! 待ちなさい! 話が…」
エカテリーナが話し出すが…
ガキンっ!
マオウとアルシュが斬り合っている!
「ナオトさん!」
ラシードが飛んで来て、エカテリーナの横にいるナオトに呼び掛ける!
「やあ、ラシードじゃないか?
マオウと戦う事になっちゃったんだ…
力を貸してくれないか?」
ナオトがラシードに頼んだ。
「何を言っているんですか? マオウさんはナオトさんの親友でしょう?
僕にとっても恩人です。
戦うなんてありえない!」
ラシードが叫ぶ。
「それは… でも、僕の大事なエカテリーナを攻撃するんだ…」
ナオトは困った感じだ。
「完全に洗脳されていますね…
仕方がありません…
超力、神力、魔力… 超覚醒!」
ラシードがポーズを決める!
ゴー! ありえない力が渦巻き、ラシードは創造勇者へと覚醒した!
「ゼン様の代行者になったのか…」
ナオトはラシードを見て呟く…
「なら、見るといい、爆破、爆発、爆炎、超覚醒!」
ナオトも香ばしいセリフを吐き、ポーズを決める!
ドカーン! 背後が爆発する!
シン創造神の代行者となり創造勇者となっていた!
ラシードとナオトは創造神剣を抜き斬りあう!
物凄い戦闘が始まった。
「奴らは神頼りか…」
トシゾウはやれやれといった感じで見て呟く…
「まあだが、力だけでいったら俺達より上だ、厄介な事になったな…」
マオウは呆れる。
「さて、エカテリーナには死んでもらうか… ビックバ…」
サクッ…
マオウは隣りにいたリアに刺された…
「ふっ、気づかないとでも思ったか、エカテリーナの分体よ…」
マオウはなんとなくリアを疑い警戒していたが、隙を見せて刺されている。
だが、刺された事ぐらいでマオウはダメージを受けるはずがなかったが…
「ぐほっ…」
マオウはドス黒い血を吐く…
「どう? ダークマターから作り出した猛毒の味は、なかなかでしょう?
力を失っている魔王なら充分殺せるはずよ?」
エカテリーナは勝ち誇った顔で笑う。
「魔王様!」
トシゾウが焦る。
「大丈夫だ、たいした事はない…」
マオウが言うが、明らかに顔色が悪くダメージを受けている。
「何を強がって… でもおかしいわね… 数分で死ぬはずなのに…」
エカテリーナは不思議そうな顔をする。
「お前の中の科学者ミラーは漆黒を改造するしか能のない無能な科学者だった。
そんなお前も、当然、ポンコツ頭脳だ…
こんな毒程度で俺は殺れん…」
マオウは強がっている。
だが、明らかに大ダメージを受けいる…
「ふんっ、強がって… 私をバカにする魔王だけは絶対に許さない」
エカテリーナは激怒している!
「いいのか? 俺を殺すと、お前の行きたがっていた、ザ、ワールドは無くなるかも知れないぞ?
さぞ凄いところらしいからな…
ほら見てみろ、これはザ、ワールドで取れるシューティングスターダイアと言う物だ。
この世界では見たことのない輝きだろう?」
マオウはあざ笑い、ボールほどのダイアを出して見せる。
「すっ、凄い! それをよこしなさい!」
エカテリーナは物凄く欲しそうに叫んだ!
「やだね、お前にやる訳ないだろう?
自分で取って来い。
ザ、ワールドに行ければだがな…」
マオウはそう言ってダイアをアイテムボックスに収納する。
くだらないやり取りで時間を稼ぎ自身にエクストラヒールと癒しの光を掛けて回復に励んでいたが、ダークマターの毒素は消える事がなかった。
「魔王! 私を今すぐザ、ワールドに連れて行きなさい!」
エカテリーナが怒鳴る!
「お前、ミラーの記憶はないのか?
俺自身ですら自らの意思で帰る事が出来ないのにどうやって連れて行くんだ?」
マオウはアメリカンなポーズを取り呆れる。
「そっ、そうだったわね…
それに、魔王が存在しないとザ、ワールドが無くなる可能性が高い…
でも、私はどうしたら…」
エカテリーナはぶつぶつと呟き考える…
「デススラッシュ!」
トシゾウは隙を付きエカテリーナに斬撃を飛ばした!
キンッ! だがそれはアルシュによって弾かれる!
「エカテリーナに攻撃はさせん!」
アルシュがエカテリーナの前に立ちはだかる!
「とりあえず、絶望を与えて洗脳すれば良いわね…」
エカテリーナが呟いた…
「来なさい。創造神魔神シン」
ゴー! 次元の扉が開き中から創造神魔神シンが現れる。
「ちょっと不味いですな…」
さすがのトシゾウも呟いた…
創造神魔神シンの力はアルシュの何倍にも感じたからだった…
「まあだが、戦い方も知らない、力だけの魔神だ、俺がなんとかする…
トシゾウ、お前は、地上に戻り、マゾネス達を助けてやってくれないか?」
マオウがトシゾウに頼む。
「また、そうやって、お一人で戦おうとするのですか?
私は引きません!」
トシゾウは決意の目をしてアルシュと創造神魔神シンに向かって行った!
「お前というやつは…」
マオウは困った感じだが、仕方がないと自身も駆け出す!
「破滅の光! サンダーブレイク! ファイナルアタック!」
マオウは次々と魔法を放つ!
オリジンソードを抜き、リアクターメイルを纏い…
「マルチバースト!」
リアクターメイルが光り輝く!
リアクターメイル腰の後ろから30枚のヤーが飛びマオウの周りに静止、腰のヘキサゴンバレル、胸部中央の宝石、両隣の魔導板、背中から肩に移動した2問の砲身、両肩のアーマーがスライドし2つの魔眼が現れる、その全てからさまざまな種類の光線が撃ち出される!
ズゴーー! 物凄いビームがアルシュとエカテリーナ、魔神シンを包む!
「今の攻撃は少し驚いたぞ…」
アルシュは結界で塞ぎきれずに傷をおっている…
だが、シンとシンに守られたエカテリーナは無傷だ。
そして、サクッ!
シンはマオウの光線の射線上から離れていたトシゾウの胸を貫いていた…
「かはっ! これしき…」
トシゾウは胸を貫かれたまま、滅魔剣デスヘルでシンの首を斬り落とす…
「無駄よ」
エカテリーナが笑うと、頭が再生する。
心臓を握り潰され、トシゾウは落下していく。
「復活の光!」
マオウはトシゾウを復活させる。
「もう少し力を分けておく…」
マオウは自身の力を限界まで、トシゾウに分け与える。
「すみません…」
トシゾウは謝る。
そして力がみなぎる!
滅魔剣デスヘルは魔王剣ダークネスソードとなり暗黒の鎧はダークナイトメイルとなる。
トシゾウはその剣と鎧を確認して、マオウに頭を下げ、アルシュに向かって行く!
シンは既にマオウが相手にしていたからだ。
マオウとシン、トシゾウとアルシュ、ラシードとナオトが激しい戦闘を繰り広げる!
「もっと絶望させて上げる…」
エカテリーナが邪悪に笑う…
すると、次元の扉が開き、数億の魔神が現れる!
最高神、上級神も多くいる。
「仕方がない! 来い! プロト魔王! エターナル砲発射!」
マオウが叫ぶと、マオウの隣りにプロト魔王が現れ、ノーモーションでエターナル収束砲を放つ!
次元の扉から出たばかりの魔神は一撃で全て消滅させた!
「なんて事を! どれだけ苦労したと思っているの!」
エカテリーナがめちゃくちゃ怒っている!
「知った事か… いけ、ヤー、エカテリーナを仕留めろ!」
マオウは30枚のヤーを飛ばしエカテリーナを攻撃し、マオウ自身はシンと戦っている。
「ちょっ、私を狙うのは反則よ!」
エカテリーナが逃げ惑い漆黒モドキを纏った兵士を呼び集めて守らせる!
兵は次々とヤーにやられ落下していく…
「リヤ、融合!」
エカテリーナがリアを取り込み結界を張る!
「ザーム!」
「はい、エカテリーナ様…」
エカテリーナがザームを呼び出す。
ザームもエカテリーナの言いなりとなっていた。
「ザーム、私を守り…」
エカテリーナが言い掛けると、ビューン! シュンシュンシュン!
ヤーがビームを放ち、ザームに直撃する。
そして、数枚のヤーがザームの身体を斬り刻んでいく…
「ぎゃーー!」
ザームは一瞬で死んだ…
「あれ? エカテリーナが消滅しない…」
マオウがシンと戦いながら呟く…
「そんなのとっくに解除したわよ! それよりナオト、私を守りなさい!」
エカテリーナはナオトに怒鳴る!
だが、ラシードとナオトの力は拮抗していて、ナオトはエカテリーナを助けには行けない…
エカテリーナの前には次々と漆黒モドキを纏った兵士が現れるが、ヤーによって攻撃され次々と死んでいく…
マオウ自身はシンと戦い続ける。
マオウは自身の3倍以上の力差のあるシンと、トシゾウも3倍以上の力差のあるアルシュと戦い善戦していた…
だが、時と共に押され始める…
そのとき… ザクザク! トシゾウはアルシュの創造神剣に胸を貫かれ落下して行く…
「トシゾウ!」
マオウは叫び、トシゾウに治癒魔法を放とうとするが、アルシュもマオウに攻撃し始めて、トシゾウを回復させる事が出来ない…
そして格上の相手と2対1、さくっ! マオウの左腕が斬り跳ばされた!
もはやマオウは防戦一方だった…
「マオウ、私の言う事を聞きなさい。
そうすれば生かしておいてあげるから…
貴方が死ぬとザ、ワールドが無くなる可能性もあるからね…」
エカテリーナが上から言った。
エカテリーナを襲っていたヤーもシンの手により破壊されていた…
「ふんっ、言う事聞く訳がないだろう?
殺したければ殺すが良い。
この世界の人々にすまないが、お前をザ、ワールドに連れて行く訳にはいかない…」
マオウは言い返す。
「そもそもなんで、ザ、ワールドに行きたがる?
お前はシンワールドを支配したのだろう?
なら贅沢し放題じゃないか?」
マオウが聞く。
「さあ、ミラーの影響かしら…
私はどうしてもザ、ワールドと言う世界に行きたいの…
より発展して豊かな世界でありとあらゆる贅沢な暮らしがしたいの…」
エカテリーナはどこまでも貪欲だった。
「そうか、だが俺は屈しない…
この命がある限り戦い続ける!」
マオウはエカテリーナを睨みつけた!
「くっ、もういいわ、ザ、ワールドには必ず行けるはず。シン、アルシュ、魔王を殺しなさい!」
エカテリーナは短気で自分勝手な考えをする奴で、思い通りにならない魔王は殺す事に決めた。
命令されたシンとアルシュはマオウに攻撃しに向かう!
「仕方がない… 魔王衣を纏うか…」
マオウは強者との戦いに機械の力を使うのが嫌だった。
エターナル技術で造られた魔王衣は装着するだけで、シンとアルシュを圧倒する力があったからだ。
「そうちゃ…」
マオウが魔王衣を装着しようとしたとき…
「魔王様、ここは私が力を…」
マルスが転移でマオウの横に現れる!
「マルス、危ない!」
マオウは魔王衣を装着する事なく、迫り来るシンとアルシュからマルスを庇う!
グサっ! グサっ!
マオウは胸を貫かれた…




