時の旅人、力無き魔王29
「魔王様、アルシュが来ました」
イサミが報告に来た。
マオウは城で主だったメンバーと話し合いをしているところだった。
「面倒事はごめんだ。帰れと言ってやれ」
マオウは嫌そうに答える。
「そんな事を言わないでくれ…」
アルシュが勝手にイサミについて来た。
「不法侵入だ。イサミ、処刑しろ…」
「そんな事を言うな。侵略に来た事は謝るから… すまんかった…」
アルシュは困った感じだ。
「で、なんの用だ…」
マオウがため息を吐いて聞く…
「エカテリーナから、リアの魂を取り出せないか?」
アルシュが聞く。
「無理だな」
「ソウソウが魔王の力が戻ればとか言っていなかったか?」
アルシュは引かない。
「遠い未来の話です。
エカテリーナは訳あって数人に魂を分けて存在していました。
そして、魂を1つとして完全体となるんですが。
その中に2人だけ、エカテリーナの良心の部分があり、エカテリーナは良心を取り込みたくはなく、完全に融合しずに取り込んでいました。
その2人は魔王様の知り合いで、魔王様が魂を抜き取り救いました」
ソウソウが教えた。
「魔王、それをやってくれ!」
アルシュが頼む。
「お前の妹が完全に同化をしていたら無理だし、今の俺は力を失った状態だ…」
マオウかま下を向き目を瞑り顔を左右に振った…
「力を失っている? 俺には及ばないが、かなりの力を感じるが…」
アルシュが戸惑う。
「今の魔王様は、絶頂期の1%も力が出せません…」
ソウソウが答える。
「1%も⁉︎」
「そうです。本気で魔法を放てば、宇宙その物を破壊し、時を操る、森羅万象を超えた存在なのです」
ソウソウが教える。
「まあだが、力などいくらあったとてだ…」
マオウは力を失った事を全く気にしていない。
「ですが、失ったとはいえ、エターナルは常に魔王様と共にあります…」
ソウソウは感慨深い顔で呟いた…
「まあなんだ、1%では役に立たない。
悪いなアルシュ、さっさと帰れ…」
マオウはただただ面倒くさかった。
「そんな事を言わないでくれ、俺達、友達だろう?」
「友達になった覚えはないが? お前、馴れ馴れしくないか?」
「仕方がないだろう? お前しか頼る者がいないんだ…」
「まあ強すぎる奴は、孤独だからな…」
マオウはそれをなんとなく理解する。
「そうか、解ってくれるか、心の友よ!」
「ジャイアンかっ! って、お前は漫才をしに来たのか!」
マオウが呆れる。
「いや、違う、まず、俺の話からしよう。
俺はこの宇宙とは別の宇宙の全能神シン様の第一惑星シンのアルシュだ…」
アルシュが話し出す。
「ちょっと待って、他の全能神が本当にいるの? なぜ私は知らないの?」
その場に居合わせたゼンが驚愕する。
「コイツな、この宇宙の全能神だ」
マオウがアルシュに教える。
「えっ、コレは失礼しました全能神様」
アルシュがゼンに跪く。
「そうそう、これこれ! コレが全能神にたいしての態度よ!
なのにマオウ達ときたら、私をポンコツ神の親玉だとか、転生装置代わりに扱ってさ…」
ゼンがブーブー文句を言い出した…
「アルシュ、ポンコツ神は放っておいて話を進めろ…」
マオウが呆れる。
「それでな、俺は全能神様の代行者に選ばれ、シンワールドを護る調停者となった。
宇宙を揺るがす問題が起こると出向き解決する。それが俺の役目だ」
「そうか」
マオウはアルシュの説明を聞くがあまり興味がない。
「お前も俺と同じ存在なんだろう?」
「いや、俺はただの魔王だ…」
アルシュとマオウの会話が噛み合わない…
「私から説明を、魔王様は別の宇宙… 宇宙その物が違うステージの世界から、大いなる意思の下、さまざまな世界、異なる時間軸に送られて旅をされています。
元の世界では、宇宙を護る絶対的な存在で、魔王様が率いる魔王軍には神の部隊もあり、全能神、最高神、魔神、巨神さまざまな神々が部下となっています…」
ソウソウが説明する。
「そんな馬鹿な… 全能神様が部下に…」
アルシュが驚く…
「信じられないのも当然ですね…」
ソウソウがそう答えて映像を流す。
エターナルデスティニー星で、マーズ率いる神の軍が演習しているところを観せる。
マーズが魔神化して戦うところを観たアルシュが驚いている!
「なぜ、魔神が魔王の部下として戦う…」
「魔王様、神とかそういった次元の存在ではないからです。
妻は全員、魔王様の女神となりましたが…
もともと、全能神の、更に上の統一神もいらっしゃいました。
奥様方もそれ以上の存在という事です」
ソウソウが教えた。
「そうね、エルザさんだったかしら…
魔王の力を使ったとはいえ、魔王の悲しみで宇宙が消滅していったとき、生命の存在する星々を護り、消滅を止めた…
私の力ではなんともならなかった事を、存在意識だけでやってみせたもんね…」
ゼンが呟きため息を吐いた…
「まあ、ここの宇宙はザ、ワールドとはステージの違う宇宙だと思います。
存在価値のあり方は違うのかも知れませんが、少なくとも魔王様と亡くなられた奥様達は、この世界の全能神より尊い存在だと思います」
ソウソウが話した。
「なら、マゾネス様は?」
ミューが聞く。
「当然、他の奥様達とは同じ存在です。
ザ、ワールドでは戦闘女神ーズの一員として、魔王軍でもトップクラスの実力を持っています」
ソウソウはマゾネスがデモンメイルを纏い、デモンブレーカーを振るい。
夥しい数のヘルボーグを斬り捨てるところを観せた。
その中には、レインやミャーダ達戦闘女神ーズも同じように無双する姿が写っている。
「そう、私は未来でも戦っているのね…」
マゾネスは満足そうな顔で映像を観て呟いた…
「私もマゾネス様や魔王様のところに行きたいです…」
ミューが呟いた…
「にわかには信じられないが… 全能神様もおっしゃるし…」
アルシュは戸惑っている。
「アルシュ、気にするな、コイツら大袈裟なんだ。
例えそれが本当だとしても、今の俺はお前ほどの力もない…」
マオウが教える。
「だよな…」
アルシュはマオウをマジマジと見て納得する。
「魔王様、一度、戦ってみてはどうです?
魔王様は常に格上の存在を倒し成長してきましたし、魔王様は常々「戦闘は力差だけが全てではない。
戦闘経験値こそが、戦いには役に立つ」そうおっしゃられ、人の身でありながら、最高神魔神と戦い、膨大な力差があるなか、最高神魔神サードを撃破しました…」
ソウソウは魔神サードとの黙示録のような戦いを見せる。
「そんな、ウソじゃ! 魔王様は力推しが全てだと、火の魔法には、もっと強い火の魔法で対抗しろ的な事をいっておった!」
カイザルが抗議する!
「それは、魔王様と魔王軍の常套手段です。
作戦もなしに相手の力を上回る力を見せて無双する。
それは、相手の心を折る作戦であり、それを見た者や噂を聞いた者に魔王様と魔王軍の圧倒的な力に無駄な争いを選ばせなくするためです…
魔王様、自分の力を上回る敵と戦うときは、誰の犠牲も出さないようにと、1人で全てをかけて挑み、けして諦めず圧倒的な力差ですら、戦闘経験をいかし、時には自ら進化して勝ち進んで来ました…
俺の命なんて安いもんだと、お一人で1つの宇宙に戦いに行ってしまう事もざらです」
「魔王軍は?」
トシゾウが疑問に思う。
「魔王様は魔王軍の事は防衛隊程度にしか思っていません…
戦いで一人も犠牲者を出したくないのです。
魔王軍の元となったガンガーディア軍は別として、魔王軍となってからは自ら望んで総帥になった事はございません…
魔王様は自身が世界の異物を排除し、魔王軍は宇宙の平和を見護る存在となって欲しいと願っているのですが…
ザマ総帥、エルミ副総帥、魔王様が好きで集まった魔王軍の全員が魔王様を心配して力になりたいと、面倒くさがる魔王様に無理矢理付いて行っているといった状態です。
突然フラっと戦いに行ってしまったり、どこかに消えてしまう魔王様にザマ総帥やエルミ様、奥様達が困り果てています」
ソウソウが説明がてら余計な事まで行っている。
「そして、巻き込まれ体質で、何かと争い事に巻き込まれ、今回は少し壮大ですが、似たような事が多々ありまして、私が造られたのです…」
そう付け足した…
「そうか、未来の魔王軍も今と同じ状態なのか…」
トシゾウが深く考える。
「まあ、人間の本質なんて変わらないからな。
もう、俺の話はいいから…」
マオウが呆れる。
「さて、戦ってみるか?」
マオウがアルシュに聞く。
「いや、無理だろう? 俺の見立てでは、俺の半分以下の力しかないんだぞ?」
アルシュがいうが…
「なに、構わんさ…」
マオウが笑う。
「そうか。なら…」
アルシュが渋々納得した。




