時の旅人、力無き魔王編27
「アレは…」
ソウソウが現れて絶句する!
「うん? 知り合いか?」
マオウが不思議に思う。
「奴は魔王様の天敵です。
ここで誕生したのですか…」
「天敵?」
「はい、ザ、ワールドや、その元となった世界で散々魔王様を困らせ、殺そうが封印しようが何度も復活し、悪の限りを尽くした希代の悪女エカテリーナです… アリアとも名乗っていた事もあります」
ソウソウが説明する。
「あら、そう、エカテリーナね、意外と良い名じゃない?
その名を名乗ると未来を約束された事となるわね」
アンナとミラー、リアのミックスされた女が嬉しそうに語る。
「いや、お前に未来はない! 今ここで魂ごと消滅させる!
ファイナルアタークッ!」
マオウが渾身の一撃を放つ!
「ナオト!」
エカテリーナが叫ぶと、ナオトが結界を張り転移させる。
「マオウ、待ってくれ、アンナは悪い人じゃないんだ…」
ナオトはアンナ… いや、エカテリーナの前に立ち塞がり、庇う。
「そうよ? 私は未来に行って贅沢がしたいだけ…
ナオト、私を愛しなさい。そして貢ぎなさい。
私を魔王の妻のように、豊かな星の女王にしてやりたい放題させなさい!」
エカテリーナは強欲な笑みを浮かべている。
「まさにエカテリーナです… ベースはアンナのようですね。
そしてミラーの賢さを持つ、リアの役目は何なのでしょう…」
ソウソウが分析する。
「そんな厄介な奴を生かしておくほど俺は甘くない!
ファイナルアタック!」
マオウが両腕を突き出し、眩い光線を放つ!
「誰だ! 我が妹を攻撃する奴は!」
1人の男が現れ、光線を真っ二つに斬る!
光線は左右に分かれてエカテリーナは無事だ。
「リア、大丈夫か… えっ、誰だ?」
男がエカテリーナを見て困惑する。
「その、ザームとやらが、リアとアンナ、ミラーを混ぜて作った世界最悪の悪女らしい…」
マオウが男に教える…
「ザーム! どういう事だ!」
男が怒る。
「アルシュ様… なぜここに…」
ザームが驚く!
「黙れ! 言い訳をするな! 今すぐリアを元に戻せ!」
アルシュがキレている。
「無理よ? もう、魂が融合して1つになったの。
貴方、私を妹だと思って助けて贅沢をさせなさい!」
エカテリーナが狂気な顔をして命令する。
「なんだ、この女は… こんなのリアではない…」
アルシュは泣きそうだ…
「やれやれ、アルシュとやら、そいつ妹らしいじゃないか、さっさと連れて帰れ…」
マオウは迷惑そうに言う。
「こんなの妹じゃない… それに何だお前は… 何をしているんだ…」
アルシュが聞く。
「俺はマオウ、その女とザームが俺の星を侵略しに来たから対処しているところだ…」
マオウが説明する。
「侵略? ザーム、俺の留守にどういった事だ?」
「数ヶ月前に、漆黒というロボを従えた隕石と、アンナと名乗る女が現れて、交渉の結果手を組む事となりました」
ザームが説明する。
「はあ? 俺にナイショで何をやっている?」
アルシュが呆れる。
「貴方は、もう用済みです。
私が新たな王となります」
ザームがアルシュに言う。
「お前、俺に勝てると思うのか?」
「勝てません。ですが、私を殺すと、アレ、死にますよ?」
ザームがエカテリーナを指差す。
指を刺されたエカテリーナが驚く!
「いやー、正直、クーデターを実行するか悩んでいたんですよね…
まあでも、ミラーに仕込まれていたようで、人体合成魔術を発動してしまいました… 仕方がありません。
それで、私も奴らを信じていた訳でもなく。
合成魔術にとある仕掛けをしました。
ミラーはアンナと融合すれば良いと言っていましたが、リア様も巻き込ませていただきました。
そして、私に何かあれば、魂が崩壊するように仕掛けをして…」
ザームが静かに淡々と語った。
「貴様! よくも!」
アルシュは物凄く怒っている。
「全員、戦闘を止めろ!」
そして、兵達を止める!
「いや、やめなくてよい。今日からワシが王だ。
アルシュの言う事など聞くな…」
ザームが全員に告げる。
「やれやれ、内輪揉めは帰ってからやれ…」
マオウはそう呟きながら、ザームを真っ二つに斬る!
「ちょっ! お前待て、ザームを殺すと妹が!」
アルシュが叫ぶ!
だが、ザームは斬られた場所が一瞬で再生する。
「魔王細胞か厄介だな。全てを焼き尽くすか…」
マオウが呟くと…
「待て、待てと言っているだろう!」
アルシュが怒鳴る!
「なぜ俺が侵略者の言う事を聞かないといけない?
お前は俺の敵なのか? 敵なら殺すが?」
マオウはアルシュに答える。
「俺を殺す? 大きくでたな…
いや、今はそれどころではない。
大事な妹が大変なんだ!
頼む、兵達は俺がなんとかする。
あの変な化け物は俺の部下じゃないから好きにしてくれ…」
「ずいぶんと勝手だな… 貸しだぞ?
魔王軍の全員に告げる。
敵の兵とは戦闘をするな。
漆黒モドキ、そしてキメラ魔獣、それを殲滅しろ。
ただし、敵兵の中に挑んで来る者がいたらやっても構わない」
マオウがカミラ星と魔王星で戦っている者全員に告げる。
「おい! 全員よく聞け、アルシュだ!
この侵略は、ザームが勝手にやった事だ!
ザームはクーデターを起こした!
リアが人質となっている…
とにかく、戦闘を止めろ!
俺の命令が聞けず。この2つの星の者に攻撃する者がいたら反逆者として処分しろ。
そして、魔王星の者達と協力して、訳の分からない物を倒せ!」
アルシュも全ての者に聞こえるように命令を出す。
「なあ、アレ、どうする? お前、魂の分離とかできるのか?」
マオウがアルシュに聞く。
「いや、俺はそういった事は出来ないんだ…」
アルシュは困った感じだ。
「そうか… ソウソウなんとかなるか?」
マオウが聞くと…
「魔王様の力が戻れば、あるいは…」
ソウソウが意味ありげに答える。
「ならやはり、ザームにやらせるしか…」
アルシュが呟くが…
「ワシではもう戻せませんよ?」
ザームが悪びれる事なく言う。
「どうすればいいんだー!」
アルシュが叫ぶ!
「世のため人のため、諦めてエカテリーナとザームを殺せ…」
マオウが助言する。
「だから大事な妹だと言っているだろう!」
アルシュがムッとする。
「そうか、なら、全部連れて帰れな…
さて、イサミは復活したか…
トシゾウ、イサミ、残党を倒して帰るか…」
マオウはどうでもよくなっていた。
「マオウ! 逃がさないわよ!」
エカテリーナが叫ぶ!
「そうか、無限地獄!」
マオウが無限地獄を発動する。
エカテリーナとザームは個別に球体の結界に包まれ爆発した…
「お前! なんて事を!」
アルシュの顔が真っ青だ!
「安心しろただの拷問魔法だ…」
マオウが言うと、エカテリーナの飛び散った肉片が集まり再生する。
そして、ありえない悲鳴をあげて再び爆発した。
そして再生する。それが繰り返されている。
「なんて凶悪な拷問魔法だ… じゃない! リアが可哀想だろう! 今すぐ解け!」
「リアじゃない、エカテリーナだ。
解いてやるから撤退しろ…
次、アイツに生意気な事をいわせたら、もう容赦はしないぞ?」
「わかった、全て撤退させる…」
アルシュが約束する。
「仕方がない… 解!」
マオウが無限地獄を解くと、エカテリーナとザームは憔悴しきり、意識を失い空中から落下して行く…
アルシュが2人を追い捕まえて、両肩に担ぎマオウの前に戻る。
「迷惑をかけた。改めて謝りに来る」
アルシュが言うが…
「まあ良い。終わった事だ。
もう来る必要もない」
マオウが顔を左右に振る。
「お前、良い奴だな…」
アルシュが感慨深い顔をした。
「一つ忠告です。エカテリーナの中の1人、アンナは洗脳が得意です。
そして、エカテリーナは未来の世界でも、人々を洗脳してやりたい放題でした。
気を付けてください…」
ソウソウが忠告する。
「未来? よくは解らないが、その忠告、覚えておこう…
アルシュだ! 全員撤退する!」
アルシュが声を掛けると、全員が転移して来る!
「ではまたな…」
アルシュは別れを告げ、特殊な装置をつかい転移門を開く。
それは、別の宇宙への扉だった。
「興味深いですね…」
それを見たソウソウが呟く。
そしてアルシュ達は門を抜け、自分の星へ帰って行った…
ナオトも後を追い、門の中に飛び込んだ…




