時の旅人、力無き魔王編23
「魔王様、賑やかになってきましたね。昔のようです…トシゾウを見ているとデスヘルを思い出します…」
オオトリが新しく出来た演習場を眺めてほのぼのとしている。
「ですが、アイツだけは邪魔です… 鳳凰のイカズチ!」
オオトリはトキに向かってイカズチを放つ!
「痛い! 誰じゃ! ぐぬぬ、オオトリめ… 時空竜の逆鱗!」
トキが仕返しする!
「痛い!」
オオトリが頭を抱える。
「ほら、やめろお前達…」
マオウは呆れる。
そのとき…
「マオウさん、見つけました」
ラシードがゼンとナオトを連れて戻って来た。
「お前、何をやっているんだ…」
マオウがナオトを見る…
「マオウがいけないんだ… あの星が死の星だと教えてくれないから…
僕、とんでもなく豪華な家を買っちゃったんだ…」
ナオトが怨めしそうな顔をする…
「まあだが、星も無くなる。借金もチャラじゃないのか?」
マオウが言う。
「そんな訳にはまいりません。
私が建て替えてお支払いいたしました。
それを返してください!」
女はマオウに迫る。
「お前、死にたいのか?」
トシゾウが女の首に滅魔剣デスヘルを当てている…
「ひっ!」
女が驚く。
「トシゾウさん、構いません。
その女の首、切っちゃってください…」
オオトリが許可をする。
「いや、待て話を聞く」
マオウが言う。
「なんで俺から金を巻き上げようとする?」
それは真実の言霊だ。
「私は詐欺師で、以前私が騙し取った家をナオトに売り多額な借金をさせて、全部私の懐に金を入れた。
けど、全てをあの星の土地の購入資金に当てたの、なのにマオウとか言う奴のせいで、土地がなんの価値もなくなったわ…
魔王星やカミラ星でナオトに借金をさせて金を作らせようとしたけど、多額の借金を抱えていて金が作れないといったの。
なら、友達だと言うマオウに因縁を付けて責任を取らせる形で金をむしり取ろうとしているのよ?」
女は青い顔をして口を押さえて抵抗しながら全てを告白した。
「それな、真実の言霊だ。俺の前では神ですら隠し事は出来ない…」
マオウは残念そうな顔をして教えた。
「星の王を騙そうとした罪は重いぞ?」
トシゾウが言うと、女が青い顔をする。
「まっ、待ってくれ、彼女は悪い人じゃないんだ!」
ナオトはアホたった。
「この頃から悪女好きだったんですね!」
ソウソウが興味津々だ。
「ナオトさん、私は悪くないの! アイツの怪しい術のせいで嘘が勝手に口からでたの…」
女が嘘を付く。
「真実の言霊は、この星と魔王星では超有名な魔法で、それで問われた者は真実を語る事しか出来ませんよ…」
ラシードが呆れる。
「ラシードまで、アイツを信じるの?」
「この星で、マオウさんをアイツ呼ばわりすると命の補償は出来ませんよ?」
ラシードはトシゾウやオオトリの顔を見てため息を吐いた。
「コイツ、ただ殺すだけでは済ませません。
首を斬り離し延命魔法をかけて、その辺に吊るしておきましょう。
カラスやネズミに食わせて、死にかけたらエクストラヒールで復活させ…」
トシゾウはこの上なく怒っている。
「トシゾウ、こんな詐欺師にムキになるな…
星外追放、女、二度とカミラ星と魔王星に近づくな…」
マオウは呆れて告げる。
「マオウ、すまない! ゼン様、早く!」
ナオトもゼンを転移装置代わりに使っていた。
ゼンは納得のいかない顔をしたが、トシゾウやオオトリが物凄く怒っているのを見て、連れて来た自分にもとばっちりを受けるかも知れないと、さっさと転移した。
当然のようにラシードも連れて行かれた…
「あの女凄いな…」
マオウが呟く…
「どことなく似ていますね…」
ソウソウが呟く…
「誰にだ?」
「魔王様が最も嫌っている女性にです…」
ソウソウが答える。
「そうか…」
マオウはもう会う事もないだろうと気にしなかった…
「借金勇者め!」
トシゾウはまだ怒っている。
「ありゃ… うる星1番の悪女で詐欺師のアンナですな…
数々の王や大物貴族を騙した、伝説の女です。
もう、うる星では有名になり過ぎて誰も近寄らなくなったので、あの勇者をターゲットにしたんですな…」
ギガムが話した。
「そんなになのか?」
「はい、王を騙して乗っ取った国もあります。
そして、それを隣国に売るといった事までしました」
ギガムもやれやれといった感じだ…
「アイツ、大丈夫なのか?」
マオウはナオトを心配する。
「あんな駄目勇者など心配しなくて大丈夫です」
ナオトを良く知らないオオトリも嫌っている。
マオウだけがナオトを心配していた…
その後、ゼンとラシードが戻って来た。
オオトリやトシゾウが睨む中、ラシードが報告する。
「ナオトさん、うる星に残るそうです…」
ラシードが報告する。
「もう既に、彼にはこの星と魔王星に帰る場所はありませんからね」
オオトリが嫌そうに言う。
「ちょっと黙っていてもらえませんか? マオウさんと話しているんで」
ラシードがムッとしてオオトリに口答えする。
「なんて態度なんですか!」
オオトリが怒るが…
「オオトリ、良いから、俺も気になる。ナオトはどうするつもりなんだ?」
マオウがオオトリを黙らせてラシードに聞く、オオトリは納得のいかない顔をしたが、黙っている。
「アンナさんが、ナオトさんに調子の良い事ばかりを言って離そうとしないんです。
僕が、真実の言霊で聞き出した本心を聞いていないのですか? と言ったところ、「レディーは少し我儘な方が可愛いんだよ?」とか訳の分からない事をいって笑っているんです…」
ラシードが困った顔をする。
「噂ですが、アンナは洗脳が得意だとか…
希代の悪女、アンナだと分かっていても、いいように騙されて、骨の髄までしゃぶられ、利用価値が無くなると捨てられて目を覚ますといった感じです…」
ギガムが教えた。
「まあだが、ナオトが出来る事などしれている…」
マオウが呟く…
「でも、何かあるといけません。
この2つの星と、うる星の付き合いのある星全てに、魔王星で多額の借金を踏み倒した犯罪者として連絡しておきましょう。
そうすれば、他星の事ですし捕まる事はありませんが、お金を借りたりは出来なくなるでしょう…」
ミリアが提案する。
「それが良い。アンナも詐欺未遂… それじゃ注目度が薄いか…
何か適当な罪状を付けて指名手配者にしといてくれ」
マオウが頼むと…
「はい、カミラ星、密入国、星の王にたいしての脅迫と詐欺未遂。
それと、うる星で私の父の知り合いだった王が騙されて国を乗っ取っられて売られるといった事件がありました。
うる星での国家転覆罪も、うる星のマゾネス国とライフ国名義で付けておきましょう」
そう言った。
「もう、すっかり首相じゃのう?」
トキがほのぼのとした顔でミリアを見る。
「まあ、受けたからにはしっかりとやらせていただきます。
良いお給料ももらっていますし…」
ミリアは照れている。
「とりあえず、また様子を見てきます…」
ラシードは呟いた…
「借金勇者など放っておけばいい!」
トシゾウが嫌そうに言うが…
「僕にとって唯一の友達なんだ…」
ラシードも長きを生き、知り合いは死んでしまい、今は妻もいない…
ヘルズやトシゾウ達とは気が合わず。
ナオトしか友達はいなかった。
ラシードは寂しそうな顔をした。
「ああ、転移装置に与える燃料代は俺が支払う。
気にせず転移装置を使って見に行ってくれ…」
マオウもそんなラシードの気持ちが解り心配していた。
「ちょっと! 転移装置扱いしないでくれる!」
ゼンが怒っている。
「お前の大事なラシードの友達だ強力してやれ。
その代わり、好きな物を好きなだけ食っていいから…」
「ほんと! 約束よ!」
ゼンは嬉しそうだった。
だがゼンもラシードとは長い付き合いで、頼りにしている唯一の人間、マオウが奢らなくても協力するつもりでいただけに、マオウの申し出は嬉しかった。
「ラシード、何か美味しい物を食べに行きましょう?
転移なんて毎日でも良いからね!」
ゼンはご機嫌でラシードと腕を組み出て行った。
「あの2人、お似合いですね…」
ミリアが呟いた…
「まあだが、この宇宙で一番偉い神と人間だ、なかなかな…」
マオウが呟くと…
「宇宙で一番偉い神様…」
ミリアが青い顔をする。
「あれ、紹介したはずだが… ミリアはいなかったのか…
その隅に影の薄いの、メスがこの星のドミー神と隣りのオスが魔王星のダゾーン神だ。
分類はポンコツ神だ…」
マオウが教えると…
「神様を、オスとかメスとか、そしてポンコツ呼ばわりしないでください…」
ミリアが困った顔をする。
「いいんです。私、本当にポンコツですから、魔王さんがいなかったら、私、神にも戻れませんでしたし、この星は深淵の魔王に乗っ取られていましたから…」
ゼンが寂しそうな顔で呟く…
「ワシもいろいろやらかして迷惑かけましたから…」
ダゾーンも遠い目をして呟いた…
「魔王様って、何者なんです?」
ミリアが改めて驚き聞く。
「ただの魔王だ…」
マオウは困ると、そのセリフしか出てこなかった…




