時の旅人、力無き魔王編18
「なんか面倒くさいな…」
マオウが呟く。
「ですね…」
マゾネスも嫌そうだ。
「ほらほら2人とも、ちゃんとしないとダメですよ?」
ミリアが2人に言う。
「ならミリアに任せる。
お前も姫だ、問題ない…」
マオウが言うと…
「姫は元です。今は教師ミリアです」
「はあ… 誰が世界会議を開けと言った…」
「貴方ですよ…」
マオウがマゾネスとミリアと話していると…
「魔王様、到着いたしました」
イサミが声を掛ける。
ネェル魔王城の艦橋からロドン王国の城が目の前に見える。
「さて、行くか…」
マオウが言うと、ネェル魔王城が城のバルコニーギリギリに近づく。
「魔王様、門から入らないのですか?」
ミリアが驚く!
「ああ、俺のいた世界では、空を飛ぶのは常識でな、謁見の間のバルコニーは空中用の玄関なんだ…」
マオウは適当なウソを付く、そんなマオウをミリアはジト目で見た。
「転移でいきなり現れるより良いだろう?」
そうとも呟いた。
ネェル魔王城から謁見の間のバルコニーに豪華なタラップが掛けられる。
魔王軍兵士が駆け出して、バルコニーに入る道を作り整列して敬礼する。
マオウ達はその中を悠然と歩いて渡り、バルコニーに降り立つ。
「邪魔するぞ!」
トシゾウが謁見の間のドアを開けて中に入る。
「魔王様の御成だ失礼のないようにな」
トシゾウは軽く殺気を放つ!
そして、兵達が駆け込み部屋の周りに立ち隙間なく整列した。
「なっ、何事だ…」
ロドン王が焦る。
「死にたいのか? 魔王様のお入りだ。静かに待て」
トシゾウはロドン王の首に剣を当てている。
ロドン王を後ろで護衛していたギガムは動く事すら出来ない。
その中をマオウがゆっくりと入って来る。
「トシゾウ、大袈裟にしなくていいから…」
マオウは迷惑そうだ。
イサミが椅子を引きトラップがないかを確認する。
「魔王様がお座りになるのには少し貧弱だな…」
イサミは転移でマオウとマゾネスの椅子を城の庭に捨てて、アイテムボックスから豪華な椅子を出しておいた。
「魔王様、マゾネス様、お座りください…」
イサミに勧められ、マオウとマゾネスは困った顔で座る。
「マオウ様、これはどういう事ですか?」
ロドン王国の王妃が嫌そうな顔で聞く。
「我らが勝手にやっているだけだ、女だからと容赦はしないぞ!」
王妃も首に剣を当てられ、泡を吹いて失神した…
「そもそもだ、ロドン王国が、マ勇者ズを雇ったり、トウ国が魔王軍を呼んだからこうなったんだ…」
マオウが困った顔をする。
「なぜ、魔王軍はワシの国の味方をしない…」
トウ国王が困った感じで聞いた。
「魔王様は魔王星とカミラ星の事実上の王だ!
魔王軍は魔王様のために存在する!
よくも、我らを騙して魔王様と戦わせようとしたな!
お前の国が消されなかっただけでもありがたく思え!」
トシゾウが怒っている!
その場はとんでもない空気感だ。
「ほら、トシゾウ、いいから、俺の横に立って俺を守れ。
前回、あの英雄に一撃入れられたからな…」
マオウがギガムを指差す。
「そっ、それは、マゾネスが俺の剣を斬って飛んだのが当たっただけじゃないか…」
ギガムが言い訳する。
「あれ、俺じゃなきゃ、頭が真っ二つになって死んでいたぞ?」
マオウが言うと…
「アンタだって、俺の目を潰しただろう!」
ギガムが声を荒げる!
クチュ!
「こんなふうにか?」
トシゾウがギガムの右目に人差し指を突っ込んでいる!
「それともこうか?」
グチョ! イサミが左目に親指を突っ込んで回した!
「ウギャー!」
ギガムが絶叫する。
「ほら、もう良いから弱いもの虐めはやめろ… 気の弱い王妃達が失神した…
会議が始められない。
ほら、エクストラヒール。
ギガム、お前、英雄なんだろう? やすやすと目を潰されるな、だから勇者になれないんだ…」
マオウはギガムの目を治してやった。
「癒しの光!」
その場の全員が聖なる光に包まれて癒される。
気を失っていた王妃達が目を覚ました。
「さて、始めるぞ? 面倒くさいから一方的に話す。
この星には神がいない。
そして神を失った星は死の星となり消滅する。
俺はマゾネス国の民を連れて、魔王星かカミラ星に行く、だからそれまで絡むな。
出て行ったあとなら好きにしていい。
だが、この星に先はないがな…」
マオウが話した。
「嘘だ…」
ロドン王が呟く。
「魔王様が嘘をついてどうする?」
トシゾウが呆れる。
「我らを騙して星を奪おうとしているんだ…」
ロドン王が言った。
「馬鹿なのか? 魔王様は支配とかに興味がないんだ。
魔王星もカミラ星も王になってもらいたくて、さまざまな人や神が頼み込んでもOKしなかった。
だが、両方の星の全員が魔王様を王だと思っている。
どっちの星もこの星よりかなり進んでいて豊かだ。
そんな星の王になりたがらない方が、こんな田舎星を欲しがる訳がなかろう?」
トシゾウが呆れる。
「マオウ様が、少しでも欲しいそぶりを見せていたら、魔王軍がこの星を制圧してとっくに献上している」
イサミも呆れて言った。
「本当なのか?」
ロドン王が驚くと、各国の王達がざわめく…
「信じるかどうかはお前達の自由だ…
この星と心中するのもよし、どこか交流のある星に行くのも良い…
好きにしろ、だが、まもなく、この星の魔素が増え大気は汚染され作物が育たなくなり水は汚れ飲めなくなる…
もう、子供は作らない事だな…」
マオウは下を向き顔を左右に振った。
「教えてくれ、何故神がいないんだ…」
1人の王が聞いた…
「さあな、昔、ダゾーン星で、神々と戦った事がある…
その中にいて、魔神化して倒したのかも知れないし。
何か別の者に殺されたのかも知れない」
マオウが答える。
「神々と戦った⁉︎ 魔神⁉︎」
王達が驚いている。
「それ、本当かも知れません… 実は聖女が、神からの信託がない…
神の気配を感じないと申しておりました…」
世界会議の席に同席していた、ロドン王国にある教会総本部の教皇が青い顔で報告する。
「ギルド総本部からの報告です。
世界各地に大量の魔素が発生し、あちらこちらに魔素溜まりが出来て、凶悪な魔物が増え、瘴気が濃くSランク冒険者でも近づけないエリアが多数発生しています」
ギルド総本部長が報告する。
「医療ギルドからも、その方の説明の通り、魔素に水や空が汚染され、さまざまな病気が発生しています…」
医療ギルドも報告した。
マオウは星の危機を伝えるために、王や首相だけではなく、各ギルドも招待させていた。
「ライフ王はどうするのだ!」
それを聞き慌てたトウ国の王が声を上げる!
「王位は弟に譲った。
ワシらはミリアとともに魔王様に付いて行く…」
ライフは答えた。
「それが、本当なら、ワシらも…」
トウ王が言うが…
「魔王星もカミラ星も、魔王様は絶対的な存在、その方を倒そうと考えた者を受け入れる訳がないだろう? どこか他の星を見つけろ…」
トシゾウが答えた…
「あの、何か星が助かる方法はないのですか?」
他国の王が聞く。
「あるぞ、何処からか神を連れて来て頼め」
マオウが笑って答えた。
「そんな…」
その王が愕然とする。
「そうだな、俺が出て行ったら、マ勇者ズに全能神を呼んでもらって星の面倒を見てくれる神を派遣してもらうか、その全能神にこの星の面倒を見てくれと頼め。
だが、俺がいるうちに呼ぶなよ?
俺とは敬遠の中でな、俺がいると解ると絶対に協力してくれない。
最後のチャンスだ、大事にしろ」
マオウは適当な嘘を付く。
「「魔王様…」」
トシゾウとイサミが呆れる…
「そんな訳だ、いろいろあったが、たっしゃでな…」
マオウは寂しそうな顔で別れを告げた…
「さて、皆、帰って引っ越しの準備だ! 忙しくなるぞ!」
マオウはそう部下やマゾネス達に告げ、全員を連れて転移してネェル魔王城に戻った…
残された王達は、なんともいえない顔をした。




