新章6
魔王は魔導バイクで大陸を爆走中だった!
魔導バイクは将に造らせた試作品で今までの魔導バイクとは違いモードチェンジでタイヤを収納して反重力モードとなり空中を滑走する事が出来る。
だが、それには膨大な魔力が必要で魔王や一部の者にしか運転出来ず実用化に向けてのデータ取りをしていた。
今はバイクモードで南西に向かって走っている。
何となく人の気配を感じたからだ。
飛んで行った方が速いが家出中で暇がありバイクに乗り途中でキャンプをして獲物を取り捌き調理して食う。
(ワイルドだろ?)
アイテムボックスの中には大量の非常食があるがサバイバルな旅を楽しんでいた。
翌日、魔導バイクで走っていると前から人の気配を感じる。
(この大陸にも人がいるのか… ちょっと安心するな)
魔王は爆走して人の気配に近づく。
(うん? 追われているのか?)
2人の子供が走って逃げていた!
魔王は近くまで行きバイクを止める。
「おい! お前ら何から逃げている!」
魔王が叫んで聞くが子供は無言だが何かを言いたげだ…
(10人が追って来ているか、そろそろ追いつくな…)
魔王は感知して状況を把握する。
「お前達、困っているのなら逃がしてやるぞ?」
兄弟なのか姉が弟と目を合わせてから2人で魔王を見て頷く。
(追いついてきたな)
10人の盗賊風の奴らが叫びながら走ってくる。
「後ろに乗れ!」
魔王は子供にバイクの後ろに乗れと促す。
駆けて来た2人が魔導バイクに跨る!
「しっかりと捕まっていろ」
追っかけて来た連中が何かを叫んでいるが無視だ。聞いたところで厄介ごとが増えるだけと魔王はバイクを走らせる。フルスロットル!
追っていた連中は一瞬で見えなくなる。
しばらくしてバイクを止めて休憩する。
弟の手を引き頭を下げて立ち去ろうとする姉、10歳ぐらいだろうか?
「まあ待て、こっちに来い」
子供達を呼ぶ。
「エクストラヒール!」
2人が光り輝き傷が癒えていく。
「話してみろ、喋れる筈だ」
魔王が言う。
「「あーあー、うそっ!」」
声を出して驚き泣き出す。
「落ち着いたらなにがあったか話せ」
魔王は食事の用意をする。
ご飯を与えると物凄い勢いで食べる。
「沢山あるから落ち着いて食え」
魔王は食事をする2人を見護る。
しばらくして腹も膨れ落ち着いたようで話し出す。
「助けてくれて、ありがとうございます。
私はミサ、弟のケーンです」
それから逃げていた訳を話し出した。
この先にあるダンジョンに隠れて住んでいる者達で簡単にいえばボスが独裁者で女性や子供を奴隷のように扱うらしい。
子供達は舌を切られて強制労働をさせられていたが母が逃がしてくれた。
それを盗賊風の奴らが追って来たところに魔王が出くわしたといったところだった。
「どこか逃げるところはあるのか?」
ミサに聞くと、
「勇者様の町へ行くつもりです…」
「勇者の町?」
「はい」
「場所は解るのか?」
魔王が尋ねるとミサが首を振る。
(冒険だ、冒険の匂いがする!)
魔王は少しウキウキとしている。
「じゃあ、勇者の町を探しに行くか!」
魔王は楽しげに2人に提案すると…
「勇者様ではないのですか?」
ミサが聞く。
「違うぞ? ただのジジイだ!」
(昔、リリに、神様ですか?と聞かれて、魔王だ! と答えたな…)
魔王は懐かしく感じていた。
「おじさん、つおい?」
ケーンが聞く。
「ああ、お前らを護れるくらいはつおいぞ」
魔王は力コブを見せて笑う。
「母さんを助けて!」
ケーンがお願いする。
(そうくるか… まあそうだな…)
魔王は当然かと思い。
「じゃあ、さくっと助けて勇者の町に行くか」
子供達にそう言って笑いかける。
「危険ですよ…」
ミサは心配する。
「大丈夫だ安心しろ、それより場所は解るか?」
大体の場所を聞き脳内マップと照らし合わせる。
「さあ、後ろに乗れ! 出発だ!」
魔導バイクを半重力モードにチェンジして浮き上がらせる。
反重力バイクは空中を滑走して物凄いスピードで走り出す。
「わーい!」
喜ぶケーン!
(6歳ぐらいか? 可愛いな)
魔王がその姿に癒されていると…
先程のザコ達が「うらー!」と叫びながら魔法や槍や弓を放ってくる!
(話も通じそうにないな…)
「エアカッター!」
放った刃が多すぎて細切れになっていく、ちょっとグロい…
「お前達、見るんじゃない!」
子供達に叫びながら滑走する!
ダンジョンの入り口に到着して魔導バイクをアイテムボックスに収納する。
その状況を見た子供達は訳が分からず目を白黒させる。
魔王は堂々と歩いて入ってダンジョン内を進んで行く。
3階層の森エリアに村っぽいものがあった!
人はざっと120人ほど意外と多い。
魔王がズカズカと村に入り歩いて行く。
わらわらと盗賊のような連中が集まって来る!
ボス風の奴が魔王を見て驚き、
「お前、何者だ?」
そう凄んだ。
(テンプレだな…)
魔王はそう思い。
「通りすがりのジジイだ! それより勇者の町とはなんだ? どこにある?」
魔王はとりあえず聞きたい事を聞くが、
「そんなもん、ただの噂だ!」
ボスは、そう答えた。
「そうか、こいつらの母親を出せ」
魔王は面倒くさくなっていた。
「馬鹿か? 出す訳がないだろう」
ボスが腕を振り上げる。
それを合図に四方から攻撃がくる!
「愚かだな… ライオット!」
紫電が暴れ狂いボスと攻撃して来た者達を感電死させる。
「まだ他に悪い奴はいるか?」
子供達に聞くとミサとケーンは首を左右に振る。
「なら母の所に案内しろ」
ついて行くと1つの建物に監禁されていた。
とりあえず全員の監禁を解く。
広場に集めると40人の女性と50人の子供達が居た。
話を聞くとギャリクとの戦いの後も少数の人間は隠れ住んでいて彼女達は盗賊に攫われ連れてこられた。
男達はダンジョン開拓の捨て駒にされたとのことだった。
「ここに残りたい者はいるか?」
魔王が聞くと全員が首を振った。
(仕方がない連れて行くか…)
全員を連れてアルブの町に転移する。
怪我をしてる者や舌を抜かれている者、欠損している者、全員を纏めて…
「エリアエクストラヒール!」
全員に治癒魔法をかける。
みるみる傷が治り欠損が再生していく。
全員が驚き奇跡と涙する。
ミサとケーンの母がやってきてお礼を言う。
「ところで、勇者の町とはなんだ?
皆、そこに行きたいのか?」
魔王が母に問う。
「はい、五年ほど前から、この大陸の何処かに勇者様がお護りする町があると噂がありまして…
皆さん、その町を探して旅をしているところを捕らえられました」
母が答えた。
「解った。勇者の町とやらを探してやる。
俺が勇者の町を見つけるまで、この街で暮らせ」
魔王が告げると女性達は戸惑う。
「あの… 貴方様が勇者様ではないのですか?」
ミサの母が聞く。
他の女性達も興味津々だ…
「いや、違うぞ? 俺が勇者だったのは遠い昔の話しだ…
それに5年ほど、この星にいなかったしな…」
魔王は否定して説明した。
だが、ミサの母達には魔王が何を言っているのか? 理解出来なかった…
なんともいえない空気が流れる。
(いろいろ説明するのも面倒くさいな…)
そう思った魔王はアイテムボックスから非常食を出して配る。
「家は適当なのを使え、あまり遠くに行くな。
出来るだけまとまっていてくれ食べ物を配るのに面倒だからな…
ミサのカーちゃん、名前は?」
「はい… サリーです…」
「よし、サリー、皆の代表な、しばらくは全員と連絡が取れるようにしていてくれ」
サリーに丸投げする。
「はい…」
サリーは少し困っていたが引き受けてくれた。
(うーん… いろいろと面倒だ。助手が必要だな)
魔王はエルザに念話する。
(あっ! 俺、ちょっと手伝いが欲しいのだが頼めるか?)
エルザに聞くと直ぐにエカテリーナと相談して(大丈夫です)との返事をもらい転移で迎えに行く。
エカテリーナの市長室だ。
「導者様、お城は大騒ぎですよ…」
エカテリーナが困った顔で言う。
「放っておけばいい! ちょっと留守にしただけでブチブチと怒りおって!」
魔王もブチブチと文句を呟きながらエルザに用意させた山盛りの食料をアイテムボックスに補充する。
そしてエルザを連れアルブの街に戻る。
引っ越したマーラの墓を見せて家に案内する。
「ここが俺の家だ、ここで寝泊まりしてくれ」
エルザを母の部屋に案内した。
夕食はエルザが作ってくれた。
「最近、自炊してたから簡単な物しか食っていなかった。
ちゃんとした料理は久々だ! しかもうまい!」
魔王はエルザの料理の味に感動していた。
「老後の1人暮らしは料理が問題だな…」
独り言が漏れてしまう。
「本当に1人暮らしをするのですか?」
エルザが聞く。
「ああ、当然だ、そうでなければ墓を移動させたりせんだろう?」
「まあそうですけど…」
「そういえば、聖女ズとリリーの恋の行方はどうなった?」
その事はやたらと気になっている。
「順調らしいですよ」
「ところでエルザは誰かいい人はいないのか? 俺が話をつけてやる」
魔王はガラパゴスを握る。
「いませんよ」
そうエルザが微笑む。
「残念だな、お前ほどの女はそういないのに… 理想が高すぎるのではないのか?」
「そうかも知れません」
そして雑談変わりに女性達と子供達を助けた経緯を話す。
「ノブさんは、いつも誰かを助けていますね」
エルザが感心する。
「まあ、それが俺の役回りなんだろうな… ほんと面倒くさいよ」
魔王は乾いた笑いをした。
翌日、エルザに手伝ってもらいサリー達に食料を配る。
そして、この大陸一帯を感知する。
(ああ、ここか)
大陸の中央を西に行った所に大規模な結界が張られている場所がある。
結界の中から人の気配もする。
「勇者の町とやらの目処がついた。エルザ、行くぞ!」
エルザを連れて転移する。
行った事の無い場所だったために近くまで転移しエルザを抱き上げ飛んで向かった。
ほどなくして目的地が見える。
「ほう、大規模な結界と認識障害をかけてある。
勇者と言うのも嘘ではないかも知れないな…」
結界の前に行き結界をすり抜ける。
神の加護を持つ魔王に、この星の者が掛けた魔法は通じない。
結界内に入ると2千人規模の村があった。
「あの… 降ろしてください」
小さな声で恥ずかしそうにするエルザ。お姫様抱っこをしっぱなしであった。
エルザを降ろして、ゆっくり歩いて行くと噂の勇者だろうか前方から男が1人で飛んで来る。
そして目の前に降り立つ。
それは。勇者、ではなく異世界人だった。
「結界を超えてすまない。少し話が聞きたい」
魔王は普通に話をすると異世界人は驚いた顔をして少し考え「構いません、此方に」と先を歩き案内をする。
魔王はエルザを連れて付いて行く。
村の広場だろう。数人が武器を持ち待っていた。
「まて、敵じゃない! 武器を下ろして!」
異世界人が叫ぶ。
大人しく従う者達。
野蛮な連中ではなさそうだ。
「初めましてトシキと申します」
「魔王だ、よろしく頼む」
挨拶を交わす。
いく人かの老人達もトシキの周りに近づく。
その中に1人、懐かしい男がいた。
「ヨハネか?」
その昔、神聖国フォーリーンの教皇だった男だ。
「そうですが、どちら様ですか?」
「そうか、風貌が変わってしまったが天空の国の守護者だ」
ヨハネは「ええっ!」っと驚く!
「まあ無理もない。お前と会ったときは20歳ぐらいだったか…
あれから異世界に行ったり戻ったりで、お前達とは違う時間の流れの中にいたんだ」
簡潔に説明する。
「もしかして、導者様となられたのですか?」
「ああそうだ、この大陸にもシンリーの声が聞こえたか…」
「我らをお救いに…」
ヨハネが言いかけた言葉を遮る。
「それは違う。今、天空の国ギガンティスはイース大陸に降り立ち繁栄を始めた。
近々、この星最大の戦いが始まる。
それが終わったあと、ひっそりと1人この地に住もうと家の準備にきた。
そのあと、生き残りの女性や子供を助けたのだが勇者の町に行きたいと申してな…
それで交渉に来ただけなのだ」
魔王はやれやれといった感じで説明した。
「神託が! 神託がありました!」
ヨハネが泣きながら叫ぶ。
「導者様が現れて我らを導くと…」
もはや号泣だ…
「ちょっと待て! 確認する」
魔王が告げるとヨハネは泣くのも忘れて驚きの表情をする!
(忙しい奴だ…)
魔王は呆れてエルエルに念話する。
(エルエルか? 神託を出したのか?)
ちょっとムッとした声で問う。
(すっ、すまない… あまりにも一生懸命に祈るのでな、放ってはおけなんだ…
導者殿が住む町で暮らさせてやってはくれないか…)
(仕方がない… 次からは先に相談してくれ! 1つ貸しだからな)
魔王はムッとしながらエルエルに言い念話を終えた。
ヨハネが驚きの表情のまま手を組み祈り始める。
「ヨハネ、今の天使との話しを聞いていたのか?」
「貴方様は何者なのですか?」
ヨハネは驚きの表情をしている。
「知り合いに神や天使がいるだけの、ただの導者と呼ばれる者だ!」
魔王は面倒くさそうに言うと、その場にいた者全員が跪く。
騒然とする中、町の住民全員が集まってくる。
「異世界人、いや、勇者よ!お前がこの町の代表でいいのか?」
「はい、導者様!」
「ならば問う。ここを捨て元アルブの街で我と共に街を造るか?
お前が町の者と相談して結論をだせ!」
魔王はわざと尊大な態度で告げ勇者を相談に行かせた。
「エルザ、ナオトと連絡を取ってくれ」
エルザは頷きケータイでナオトと連絡をとる。
トシキが皆に説明をしているのを見る。ほぼ全員一致でついてきそうだ。
「ナオトさんです」
エルザがケータイを渡す。
「トシキという異世界人を知っているか? お前と同世代っぽいが…」
黙り込むナオト…
「本当にトシキなの?」
「ああ、本人はそう名乗っているし、勇者、というか、異世界人の称号を持っている」
ナオトは再び黙り込む…
「まあいい、説明は後だ。2千人が何日か食える物資が欲しい。
用意して連絡を待っていてくれ」
「わかった…」
返事をするが心此処にあらずな感じだった。
ナオトとの通信を切るとトシキが駆けて来る。
「全員行かせていただきます」
そう答えた。
「お前達の中に転移魔法を使える者はいるか?」
魔王が尋ねると、
「「「はい!」」」とトシキと2人の老人が手を挙げる。
その老人は2人とも片腕がなかった…
しかも魔王には見覚えがある。
「お前達、俺と何処かで会ったか?」
「はい、連合軍でサーラン様の護衛をしておりました…」
連合軍がギガンティスに攻め込んで来たときにサーランの護衛をしていた者達だった。
腕はそのときに失っていた。
「サーランの部下か!」
魔王は思い出した。
「はい、サーラン様は…」
「サーランは元気だぞ? 我が国の一つの街の副市長だ」
魔王が教えると、
「ええっ! もしかして、シーラン様も…」
元、サーランの護衛が聞く…
「ああ、俺が保護して仲良く暮らしているぞ、なあ」
魔王がエルザに同意を求める。
「市庁舎にお菓子を持って遊びにきますよ」
エルザが笑顔で答えた。
号泣する老人…
(この町の老人は情緒不安定だな)
魔王はそう思い呆れた。
「とりあえず、引っ越しの準備は何日で出来る?」
「明日には出発出来ます」
トシキが答える。
「じゃあ明日の昼に荷物を持って此処に集まれ、と皆に伝えてくれ」
魔王が言った、そのとき、1機の真っ赤なドラグーンが飛行形態で飛んでいく…
(ナオトか?)
(今どこ?)
(どこ? じゃねーよ! 連絡するって言っただろう!)
(すまない…)
(まあいい、行き過ぎだ少し戻れ)
「おい、あれは連れだ結界と認識障害を解いてくれ」
魔王がトシキに頼むと結界が解かれた町にドラグーンがロボモードに変形しながら降りてくる。
皆、ドン引きだった。
ドラグーンのハッチが開きナオトが飛んでくる。
「トシキ!」
「ナオト!」
何やら感動の再会っぽい。
涙を流しながら抱き合う。
その姿を後で見せて馬鹿にしてやろうとガラパゴスで盗撮する。
落ち着いたようでナオトが説明しにきた。
「トシキは一緒に召喚された友達なんだ! 死んだと聞いていたのに…」
と、説明が始まった。
王の怒りに触れて斬られた。助からない重傷だと思われてトドメは刺されなかったと。
仲の良かった者が匿い治療し異世界人の回復力で時間は掛かったが傷が治り生き延びた。
だが、ナオトと連絡をとる事は出来なくなってしまったとの事だった。
「わかった、お前らの臭い話は…」
魔王はお涙ちょうだい物語が嫌いだった。
とりあえず転移魔法が使える3人と、ヨハネ、ナオトを連れアルブの街に転移する。
エルザにサリー達を集めさせる。
「サリー、ほら勇者様を連れて来たぞ」
魔王はサリー達にトシキを紹介する。
「ゆっ、勇者様ですか! 私達を勇者様の町に連れて行ってください!」
サリーが代表で頼んだ。
「えっ、あの、僕達は導者様の街に引っ越すんですが…」
サリーとトシキの話しが噛み合わない。
「どっ、導者様?」
サリーが不思議そうに聞く。
「はい、この方が… 知らないのですか?」
トシキが紹介するがサリー達は導者が何者なのかよくわかっていない。
「皆様、導者様は世界を護り人々を導く、いわば神様の代行者であられます」
ヨハネが手を組み祈るように説明した。
サリーや女性達は驚く!
「まあ、そんな良い者ではないが、サリー達も勇者の町の者達と、この街で暮らすといい。
俺が普通に暮らせる街にしてやる」
魔王は仕方がないと本気で街を造る気になりサリー達も納得した。
とりあえずトシキやヨハネ達には街を見に行かせる。
魔王はギガンティス、フォール市庁舎に転移してサーランを迎えにいく。
すると、エカテリーナとシーランも待っていた。
「すみません」
ナオトが止める暇もなく出て行ってしまったとエカテリーナが誤った。
「エカテリーナ、シーラン、お前達も一緒に行くか?」
魔王は2人に提案する。
「「お願いします」」
2人が頭を下げる。3人を連れてアルブへ戻る。
街を見ている連中と合流する。
先程の老人2人がサーランとシーランの元に駆け寄る。
抱き合って4人が号泣…
エカテリーナがナオトに駆け寄り泣く…
「カオスだな…」
魔王がエルザに呟くがエルザも貰い泣きしている…
(本当にカオスだ…)
魔王を見つけて、とことことケーンが歩いて近づく。
「あの人達、なんで泣いているの?」
ケーンが不思議そうに聞く。
「うんこを踏んだからだ!」
魔王はケーンに適当な嘘をつく。
ケーンが、
「うんこ! うんこ!」
そう連呼して笑い転げる。
魔王は、その姿に癒されるが子供に嘘をつく魔王を白い目でエルザが見ていた。
魔王は気にせずケーンを肩車をして遊んでいた。
皆が落ち着くのを待ちサーランにトシキとサリー達を紹介する。
「サーラン、明日、この街に2千人連れて来る。
今、保護してる人も含め、皆の意見を聞いて、うまい事割り振ってくれるか?
しばらく、この街に残り面倒を見て欲しいんだが?」
魔王はサーランにそう提案してエカテリーナを見る。
2人が頷く。
「是非、私にやらせてください!」
サーランが力強く言った!
「私も手伝わせてください」
シーランも言ってくれた。
「それとな、エルエルにウエス大陸の生存者達を助けて欲しいと頼まれてな。
後々、住民が増えるが、よろしく頼む」
魔王は面倒くさそうに告げた…
「私も残ってお手伝いしたいです」
エルザも言う。
「それは助かるが… エカテリーナ、2人も借りて大丈夫か?」
魔王はエカテリーナに確認する。
「大丈夫です! 変わりにナオトに働いてもらいます」
そう笑顔で言った。
「ガンガーディア軍の仕事もあるからほどほどにな」
魔王はナオトをホローしていた…
さまざまな手配はエルザに頼む。優秀な秘書だ。
転移魔法が使える3人に、明日、2千人を転移魔法で連れて来るように伝えたら無理だと言った。
結局、魔王が迎えに行く約束をした。
その後は、ナオトがドラグーンを置いてきたのを回収したりエカテリーナを送ったり魔王はちょっと大変だった。
家に戻るとエルザが食事の用意をしてくれていた。
「おお、凄いな、幸せだ!」
魔王はご馳走を頂く。
「あっ! 忘れていた… エルエルの所にも行かなくては…」
魔王は忙しくて忘れていた。
「私も行っていいてすか?」
エルザが言う。
「聖職者じゃないが良いだろう。奴には貸しもあるし」
「天使様に貸しがあるって」
エルザはクスクスと笑った。
食後にエルザと神の園に転移する。
エルエルに、
「エルザだ。俺の秘書的な者だ」
そう紹介した。
エルザを見て少し考えて頷く。
「エルザ殿、導者殿を支えてくだされ」
そう言いって加護を与え、しかも聖職者でもないエルザが聖女王となってしまった…
エルザも唖然としている。
借りを返したつもりなのか? と魔王は思っていた。
「まあいい、あの大陸で助ける者達を教えてくれ」
エルエルが場所と神託を出した者を教える。エルザがメモる。
100人規模でいるところから2〜3人のところまで数10件…
急を要する所から順に集める事となる。
神の園から、さっそく転移して空を飛び向かう。
今まさに魔物に襲われている家族を見つける。
魔王はサッと魔物を倒し救う。
父母、長女、次女、長男の家族だ!
「ロビンソン、神託は受けたのか?」
「はい、導者様!」
跪き頭を下げる。話は早い。巻きでいく。
さくっと話をつけ転移で連れ帰る。
サーランに合わせて仮の宿舎で休ませる。
夜だけで4件こなしていた…
「すまんな付き合わせて…」
エルザに謝ると…
「大丈夫ですよ」
可愛い笑顔を見せている。
「しばらく滞在するのなら、何処かに良い家を用意するか?
明日、サーランに頼もう」
魔王が提案すると首を振り、
「ノブさんの家に置いてください」
そう頼んだ。
「若い娘が、おっさんと暮らすのは不味い気がするが大丈夫なのか?」
魔王は心配する。
「大丈夫です」
「いや、俺、エロ魔王だからエッチなことをされちゃうかも知れないぞ?」
魔王がいやらしい顔をして言うが…
「大丈夫ですよ…」
エルザは赤い顔をしていた。
「いや、冗談だ、そんな事はしないけど…」
魔王は何も言えなくなり、しばらく居候させるかと諦めた。
翌朝も、神託の回収だった。昼までに 数件こなして500人ほど街に連れて来た…
そして勇者の町。
広場には2千人の人がいる。
「さて、さくっと行くぞ! 忘れ物は後でトシキ達に頼め!」
丸投げである。
2千人を一気に転移させる。皆は一瞬で変わった景色に驚いていた!
この街に連れてきた者、全てを広場に集める。
すると、空に突然、時空戦艦ムサシが現れる。
皆、焦り逃げようとするが、
「慌てるな俺の船だ! 物資を運んできただけだ!」
魔王が叫ぶと皆が安心し落ち着きを取り戻す。
ムサシは広場の近くの川に着水する。
ケーンがとことこと寄って来て魔王に「乗せてください」と小声でお願いする。
魔王は「ああ」とケーンの頭を撫でていた。
サーラン、シーラン、エルザと並び挨拶をする。
「皆の者、良く集まった。歓迎しよう。
この街では上も下もない皆平等だ!
俺の作った国には亜人や魔族もいる。
この街に出入りすることもあるが差別は絶対に許さない!
その事だけは肝に命じるように。
皆、力を合わせて生きていこうぞ!」
魔王は尊大な態度で演説して超神剣ジェネシスを抜き掲げる。
エルザもジェネシスのツカに手を添える。魔王は癒しの光を放つ!
人々の傷は治り病気は癒え欠損は再生されていく。
神の奇跡と思い全員が涙して膝をつく。
魔王とエルザが光り輝き皆もまた黄金に光り輝く。
(導者様と聖女王様の加護が与えられます)
シンリーの声が心に響き全員の心に安らぎと平穏が訪れる。
あとは、サーランにお任せだ。
話し終わるとサーランがトシキ達、各グループの代表を集め話し合い家を割り振っていく。
魔王はケーンを肩車し子供達を連れムサシに行く。
ムサシに乗り込むと、愛と将、まりんが待っていた。
「おじい様…」
愛が暗い顔をする…
「うん? どうした? 元気がないぞ」
愛の肩を叩いてやる。
「3人とも、あとで家に来い。近くに母さんの墓を作った。お参りしてくれ」
魔王は静かに言う。
「将、船を飛ばせ。子供達が楽しみにしている」
子供達を艦橋に連れて行く。
「ムサシ、発進!」
ゴー! と唸りを上げて空を飛ぶ。
子供達がキラキラした目で空を眺める。
しばしの空中航行を楽しむ。
街に戻り広場に子供達を送ると聖女ズが駆け寄る。
「お前達も来ていたのか?」
「はい! 新しい街には教会が必要かと思いまして!」
元気にルルシュが答える。
「まあそうだな、この街を造った原因はエルエルにあるからな… 俺は1人静かに暮らしたかったのに…」
魔王は愚痴る。
「エルエル様のおかげですか!」
ルルシュが驚く!
「奴が神託を出しまくったせいで大忙しだ」
そこに、ヨハネもやって来た。
「大聖女様!」「ヨハネ様!」
挨拶するも、お互い微妙な距離がある。
「ルルシュ、ヨハネと相談して必要なら聖女や神官を送ってくれ。
あくまでもヨハネ達のサポートだぞ? でしゃばり過ぎるなよ」
魔王は釘を刺す!
「はい…」
ルルシュは微妙な顔をする。
「天使エルエルもこの街を気にかけて見ている。
その証拠にエルザを紹介したら聖女王にしやがった」
話しを聞きルルシュがめまいを起こして倒れる。
アリがルルシュを支える。
「3人目の聖女王様…」
ルルシュは泣きそうな顔をする。
気まずい顔をするエルザ…
「なんで、エルザさんを聖女王に?」
愛が訪ねる。
「さあな、エルザの顔を見て何かを納得して俺を支えてくれ、みたいな事を言って加護を与えていた」
「支えるって… エルザさんがおじい様のお嫁さんっと思っての事じゃないの?」
「秘書と紹介したぞ?」
「いや、絶対そうだわ! エルザさん、いえ、おばあ様、おじい様をよろしくお願いします」
愛は思い込み暴走していた…
「あっ、はい。」
エルザが困った顔で返事をする。
「ほらエルザも、はいじゃないだろ?
おばあ様って呼ばれる歳じゃないだろう?
愛もふざけるんじゃない」
魔王は呆れているが…
「絶対にそうだわ!」
ブツブツ言いながら愛が自分の世界に入り込んでしまった…
皆を連れて墓に行く。
マリア、マーラ、マリ、そして妻の墓が並ぶ。
その横を指差す。
「俺が死んだらそこに埋めてくれ」
皆にお願いする。
将とまりんは黙って頷くが、愛は…
「おじい様は死なないわ! 天使様が認めたお嫁さんがいるもの」
目をキラキラさせて自信満々に言った。
家に案内する。
「この世界での俺の実家だ」
「夫婦2人なら、ちょうど良いけど子供が出来ると狭いわね」
愛は妄想の世界から出られないでいる。
テキパキとお茶の用意をするエルザを見る。
「間違いない。おじい様のお嫁さんとして合格だわ!
お父さんもお母さんもそう思うでしょう」
将達にも同意を求める。
将は顔を引き攣らせながら「ああ」と返事をしている。
お茶を飲み街に戻る。
「将、この街を常に護る結界の装置を造って欲しい」
将が「任せて!」と返事をする。
そのとき、シャドウが広場に着陸する。
ナオトと共にセシリーとマーリンがやって来た。
「魔王様ー!」
マーリンが可愛く走ってくる。
このパターンは魔王に抱きつくな、と、誰もが思っていたそのとき!
愛が魔王の前に立ちはだかる!
「駄目よ! おじい様に変な事をしてわ。
おじい様はエルザさんのものよ!」
愛が皆の前で言い放つ!
「俺、誰のものでもねーし」
魔王が言うが愛はもちろん誰の耳にも届かなかった…
「エルザさんは天使様が認めた、おじい様の運命の人よ? その愛は何者にも邪魔できないわ!」
皆がビックリを通り越して唖然とする。
「愛様どう言うことですか?」
マーリンが泣きそうな顔をしている。
「エルエル様が、おじい様のお嫁さんにエルザさんを認めたってことよ!
その証拠に聖職者でもないのに飛び級で一気に聖女王になったわ!」
もう愛の暴走が止まらない。
「いい、貴方達! これからは、おじい様の護衛は要らないわ!
エルザさんが秘書としておじい様を支える。
それが天使様の望みでもあるの」
愛は頬の横で手を組み乙女のような表情で目をキラキラさせ天を見つめている。
「将、まりん、大丈夫か?」
魔王は2人に小声で呟く。
「お父さんごめんなさい。ああなったら止まらないので…」
まりんが申し訳無さそうに謝る。
愛の勢いに飲まれ、その場にいた全員が何も言えなかった。
ただ1人、エカテリーナを除いて。
エカテリーナもノリノリで愛に同意する。
「やっぱり、エルザも導者様が好きみたいだし導者様もエルザを可愛いっていってくれる。
お似合いだと思ってたの」
2人で手を組み合い、ぴょんぴょん跳ねる。話しがどんどん膨らんでいく…
黙ってナオトを睨み、
(嫁の暴走を止めろ!)
魔王はナオトに念を飛ばすが…
気まずい顔をして、つつつーっと目をそらし、そっと逃げて行った…
(カオスだー! 誰か助けてくれー!)
魔王は心の中で叫んでしまった…




