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ジジイの異世界記  作者: パパちゃん
4/546

その4

どこかに続く道を東へ向かう…

あてのない旅、今まで旅をしてきた街で世界地図を探したが見つからなかった…

ギルドマスターに聞いてみればよかったが、奴らに小さな借りも作りたくないと、ノーブは、この世界の地理は冒険者達に聞いた程度の事しか知らなかった。

地球のスマホの便利さを今更ながらに知る。


歩いていると、前方に戦いの気配を感じ、風に乗って流れてくる煙りと焦げた匂いを嗅いだ。


(厄介ごとか、迂回でもするかな…)


前世を思い出してからは、日本人の、ことなかれ主義が強く働き、面倒なことには関わりたくなくなった。

事件や死体の第一発見者になるのは勘弁願いたかった。


だが、数台の馬車が盗賊に襲われているところに遭遇してしまった。

先頭の馬車から火が上がり、40人の盗賊と20人の金ピカな鎧を纏った騎士が戦っていた。

後方から2番目に位置する豪華な馬車の周りにはさらに豪華な金ピカな鎧を纏った騎士10人が取り囲み護っている!


森の中からは3人の盗賊が魔法を放って、馬車を攻撃し、盗賊のほうが有利なようだった…


そして今、ノーブのいる場所は盗賊の後ろ、金ピカの騎士達には盗賊の仲間だと思われかねない。

正直、関わるのは面倒くさいと思い、森に入り迂回しようとしているところを盗賊に気づかれた…


「なんだお前はー!」


盗賊が叫ぶ!


ノーブは手を上げる。


「近くの街の者で散歩をしております」


街の人のような服にマントを羽織り手ぶら…

言い訳としてはこんなところだろうと、1人で、うんうんと頷き、完璧な言い訳だと自画自賛していた。


「んな訳あるかー!」


盗賊が叫びながら走ってくる。


(まあそうか、若者が1人で馬車しか通らない場所を、武器も持たずに散歩しているなんてありえないか…

近くに街や村もないし…)


ノーブは反省しながらも、剣を掲げ物凄い勢いで走って向かってくる盗賊に近づきローリングソバットを叩き込む!

頭が弾け飛び、倒れる盗賊…

前世の記憶が蘇った今、正当防衛とはいえ人を殺す事には気が引けるが…

今世では既に盗賊を10人ほど殺し、今更だった。

この世界、少しでも躊躇すると、こっちが殺されてしまう、向かって来る者は容赦しないと決めていた。


「悲しいけどコレ、戦いなのよね…」


ノーブは、ふと、何処かで聞いたセリフに似た言葉を呟いていた。

仲間が倒されるところを見た盗賊の4人が血相を変えて走って向かって来る!

距離はあるが盗賊に向かってジャブを4発放つ!

拳から見えない気弾が飛び、盗賊の心臓を貫く!

倒れる4人の盗賊…

同時に森の中から3発のファイアーボールが飛んでくる!


「サンダーメイル!」


ノーブは稲妻を身に纏う!

ファイアーボールが着弾するが稲妻の障壁が防ぐ。


「サンダーアロー!」


ノーブが放った稲妻の矢が3人の魔法使いの盗賊を貫く!


「降りかかる火の粉は振り払わないとな…」


ノーブは呟き駆け出した!

盗賊と騎士の戦いに割って入り、盗賊達をパンチとキックで倒していく!

金ピカ騎士達も奮闘して盗賊を退治して騎士達の勝利で戦いが終わった。


だが、金ピカ騎士達が剣を構え怪訝な顔をしてノーブを見ている…

ノーブは両手を上げる…


「怪しい者じゃないから。

散歩の途中で偶然出くわして襲われただけ。

盗賊の仲間でもないし、何もしないから通してくれ。」


日本仕込みの営業スマイルをキメ、その場を立ち去ろうとしたが…


「まて! 簡単に通すわけがないだろう!」


1番豪華な金ピカ騎士が凄んだ!


(俺は、そんなに怪しいのか? 前世でも、若い頃はよく警察官に職務質問されたっけ…)


ノーブはついつい前世を思い出して懐かしんでしまう。


「で、どうするんだ? 通さないなら抵抗するぞ?」


ノーブは金ピカ騎士達に殺気を放つ!

金ピカ騎士達はノーブの殺気にたじろぎ後退りする。

そんな中、豪華な馬車の扉が開き、神官服を着た4人の女性が降りて扉の左右に並ぶ。

そして、司祭服を着た美女と美少女が姿を現し、ゆっくりと馬車を降りて来る…

その光景に騎士達がざわめく!


「聖女様、危険です!」


1番豪華な金ピカ騎士が聖女の前に立ち塞がる!


「さがりなさい!」


聖女が騎士に命令する!


「しかし…」


食い下がる騎士だが…


「良いのです」


聖女が騎士を手でさえぎり下がらせると…

聖女が歩き出してノーブの目の前に来て跪く。


「勇者様、神託が下りました…」


その聖女が告げた⁉︎


「勇者様⁉︎」


その場にいた騎士達がざわめき騒然とする!


(ええっ! なんだなんだ? 絶対に面倒事だ…)


ノーブは嫌な予感しかしなかった…


「人違いだ!」


その場を立ち去ろうとするが、騎士が行く道を塞ぐ!


「お話だけでも聞いてください」


聖女が、そう誘った。

ノーブは美人の誘いを断れず、しぶしぶ了承するが、先程からやたらと絡んでくる偉そうな金ピカ騎士が物凄い形相で睨んでいた。


「無理に誘われたのは俺の方なんだ! それなのに、俺を睨むのはお門違いだぞ!」


ノーブは睨んでいる騎士を睨み返し殺気を放つ!

その騎士は殺気に恐怖して腰が抜けヘナヘナと座り込んでいた。


「ざまー!」


ノーブは笑った。

騎士達は死んだ盗賊を道の脇に寄せたり、壊れた馬車を直したり、後処理をしていた。

そんな中、道路脇にある開けた場所に聖女のお付きの騎士達がテーブルをセッティングした。

ノーブは聖女と対面に座る。

聖女の横にはチビ聖女が座った。

そして、豪華な鎧を纏った9人の騎士がテーブルを守る様に囲んでいた。   

神官服を着た女性達が用意したお茶を飲みながら先にノーブがいくつか質問をして話を聞いた。


彼女らは大陸中央の北東に位置する神聖国フォーリーンの教会に務める聖女と神官、聖騎士の一行との事で、冒険者ギルドの要請で瘴気の森の浄化に向かう途中との事だった。

偉そうな金ピカ騎士は聖騎士団長だった。


あと数日でラックの街に着くといったところで盗賊に襲われた。

そして、その最中にノーブが現れて神からの神託を受けたと聖女が告げた…


「その話、俺が聞かなきゃ駄目か? 俺、神とか興味ないんだけど…」


ノーブは迷惑そうな顔で聞く…

聖騎士団長が烈火の如く怒り!


「若造が口を慎めっ!」


怒鳴り散らした!


「こう見えても65歳なんだ… 若造呼ばわりはやめてくれるか?

俺から見ればお前の方が若造だぞ?」


ノーブはムキになる団長をおちょくる。

そして、何事もなかったかの様に聖女が口を開く!


「勇者様の旅に同伴する事を許可していただきたいのです!」


信念のこもった言葉だった…


「ええー!」


だがノーブは露骨に嫌な顔をし…


「こんな大所帯での旅なんて嫌だし、人探しの途中だ、勘弁してくれ…」


断った。


「だとしても神託は絶対です! 今日限り聖女を辞め、私1人、勇者様に着いて行きます!」


聖女の言葉に強い決意を感じさせられる。


「おい! 団長! 迷惑だ! 全力で止めろ!」


ノーブは団長に丸投げする。


「聖女様、なにとぞお考え直しください!」


金ピカ騎士団長は、強い口調で説得する!


(団長! 頑張れ!)


ノーブも心の中で応援していた!


「貴方は私に、神託を反故にしろと申すのですか?」


聖女は強い口調でピシャリと言った。


「しっ、しかし…」


口籠る団長…

突然チビ聖女が話し出す。


「聖女なら私でもいいはずです。

私が勇者様にお供します。

お姉様は教会にお戻りください!」


そう言った。


もう、何が何だか解らない。ノーブは付き合いきれないと立ち上がりフライの魔法で空に浮き上がる!

勇者の力に目覚めたときに新しく覚えた魔法で、鎧がなくても空を飛べる様になっていた。

だが、鎧で飛ぶときが戦闘機なら、フライの魔法はセスナキ機程度の能力だった…


空中に浮き上がり、


「じゃあな!」


ノーブが飛び立った瞬間…


「キャー!」


チビ聖女の悲鳴が上がった!


何事かと振り返ると…

聖女が短剣で自分の胸を刺していた!

その場が騒然とする。

ノーブは急いで聖女の元へ戻る…


「神託を守れないのなら私に生きる価値はないのです…」


聖女は微笑んで言ったが、傷は深く大量の血を流していて危険な状態だった。


「誰か聖女を治してやれ!」


ノーブは皆を睨み叫ぶ!


「神託は絶対なのです…」


チビ聖女が残念そうに首を振った…


(俺の為に死ぬのが信託なのか?)


ノーブはそう思い辺りを見回す。

神官達も聖騎士達も動く気配がなかった…


「団長! なんとかしろ!」


団長に詰め寄る!


「神託は絶対だ… それに、この世界にそれ程の傷を治せる治癒魔法も医術もない…」


団長は下を向き苦虫を噛み潰した様な顔をして涙を流していた…


(どうなっているんだ! この世界の奴らは!)


言いようのない怒りが込み上げてくる!

ノーブは聖女の傍に行き短剣を抜きながら…


「エクストラヒール!」


治癒魔法を唱える!

聖女の身体が白金に光輝く!

すると、傷がみるみるふさがり治っていく…


「やはり、神の力… 貴方様は誠の勇者様でございます…」


聖女はノーブの手を握りそう呟き、傷が治った聖女は満足そうに微笑んでいた…


「旅のお供の許可をいただけますか?」


聖女は再度許可を求める。

連れて行かなければ死ぬ。

こんな狂信者と一緒の旅は嫌だが、自分のせいで死なれるのは寝覚めが悪いとノーブは思い。


「団長、連れて行ってもいいのか? 国や教会的にも問題ないのか?」


ノーブは団長に聞いた。


「ぐぬぬ… 問題ない。聖女を辞めると言ったのだ… もう聖女でもなんでもない!」


血が出そうなほど拳を握り睨みながら叫んでいた!


(仕方がない、ヤバい奴だが少し連れ回せば嫌になって逃げて行くだろう…)


ノーブはそう思う。


「わかった…」


頷いたが…


(成り行きで認めてしまったが、この先どうしたらいいのやら。トホホホ…)


かなり後悔していた。

チビ聖女が…


「お別れもしたいですし、荷物も整理してお渡ししなくてはなりません。

どうか、この先の村までご一緒させてください」


そう願い出る。


「もうなんでもいい、好きにしてくれ…」


ノーブはやぶれかぶれになっていた…


聖女達が乗っていた馬車に、聖女、チビ聖女と一緒に3人で乗り込む。

ノーブにとっては次の村、彼らにとっては一度寄ったホイ村に向かう。

馬車の中では聖女とチビ聖女が引き継ぎや今後の話をしている。


「ルルシュ様に相談しなくても良いのでしょうか…」


チビ聖女が尋ねる。


「いずれ、ルルシュ様は勇者様と必ず出逢うはずです…」


聖女とチビ聖女が話をしていたが、ノーブは面倒くさく感じて口を挟む気にもならなかった。

半日ほど馬車で走りホイ村に到着した。


聖女の荷物を受け取りアイテムボックスに収納する。

荷物は意外と少ない。

ノーブは少し離れたところで待ち、聖女は皆と最後の別れの挨拶を済ませて1人でノーブの元へ来る。

豪華な司祭服は着替えた様で、一般的な服にローブを羽織っていた。

チビ聖女達には、瘴気の森の浄化は、もう必要ないと説明したが、確認の為にとラックの街に向かい出発した。


「これからよろしくお願いします」


聖女が良い笑顔でノーブに挨拶をした。


(神託を守ると言う事は、ここまでの事なのか…)


日本人で宗教とは無縁だったノーブには理解出来なかった…


「ああよろしく… とりあえず宿を探そう…」


そう言って辺りを見回す。


「でしたら、ご案内しますわ」


聖女が歩き出す。


聖女はこの村で一度泊まっていて、宿の場所を知っていた。

村としての規模は大きいが、小さな宿が1軒あるだけだった…


(まぁ、宿があるだけいいか、街のくせに宿が無いところもあったしな…)


ノーブはそう思いながら宿に入り部屋を借りる。


「2部屋頼む」


ノーブが頼むと…


「いえ、1部屋でお願いしますわ」


聖女が頼み直す。


(一緒の部屋でないと俺が逃げるとでも思っているのか?)


ノーブは戸惑うも…


「じゃあ、1部屋でベッドを2つ食事付きで頼む…」


そうオーダーすると、納得した顔で聖女が頷いた。

部屋に案内されて荷物を置き食堂に行く。

メニューはオークのテールスープと野草のサラダにパンとボアの肉と野草の炒め物だった…


(ああー、女房の作ったメシが食いたい)


ノーブは日に日に日本と家族への想いが強くなっていた…


食事をしながら聖女と話す。


「聖女…」


ノーブが問い掛けると…


「もう聖女ではありません… ノーブ様、マリとお呼びくださいませ」


聖女はマリと呼んで欲しいと言った。


「そうか… マリ、俺の事はノブと呼んでくれ!」


ノーブでもノブでも、もう構わなかったが、ギルドカードに登録した手前、名はノブでいく事としていた。


「わかりました。ノブ様」


「様もいらんが… まぁいい、おいおいでいいから砕けた口調で話してくれ…」


「はい」


ノーブの頼みに、マリが頷く…


「で、神託なんだが、俺で間違いないのか?」


ノーブはまだ納得していなかった…


「神託に間違いはございません!」


普段は大人しいマリだが、神託の事となるとムキになる。


「そうなのか…」


ノーブはマリの圧に怯んでいた…


「それでどんな神託だ?」


1番気になっていた事を聞くが… マリは口籠もり、しばらく間を開け…


「勇者様と共に旅をして彼を支え導けと…」


慎重に言葉を選んで話していた…


「それだけか?」


マリは小さく頷く…

言えない何かを隠しているのは見え見えだが追及はしない。


「後悔はないのか? 教会に戻れば引退間際の聖女だっているだろう? 若いお前が犠牲になることもあるまい」


ノーブは実際、自分の娘より若い女と旅をする事に抵抗を感じていたし、マリはかなりの美人で、その微笑みは見る者全てが癒されるアニメに出てきそうな美しい聖女だったが、美女と言っても16歳の子供。

65歳のジジイからみれば、孫の様なもので恋愛感情は湧かない…

4〜50代の熟女の聖女とチェンジして欲しいと、ノーブは不謹慎な事を思っていた。


「犠牲だなんて、これは、私の使命なのです…

神託が聞こえたのは私だけのはずです…」


マリは困った顔をして説明し、ノーブは少し残念に思っていた。


「まあ、チビ聖女よりマシか…」


ノーブが呟く…


「妹には、今回の神託を受ける資格がありません…」


マリは感慨深い顔をしていた…


「まあいい、それで何が出来る?」


「神聖魔法は極めています。回復、状態異常の回復、呪いの解除、浄化、結界……」


魔法の説明は続いたが、同じ魔法が使えたり、類似魔法を持っているノーブには大した戦力にはならなかった。


「もしかして死者蘇生も出来るのか?」


ふと、気になり聞いてみる。


「それは神の領域です。聖女ごときが使える魔法ではございません…」


マリは困った様に説明する…


(そうだろうな、死んだ者がポンポン生き返っては、秩序が乱れてしょうがないからな…)


ノーブは納得する。


「俺を異世界に飛ばすことは…」


全てを言い終わる前に、首を横に振られる…


「まぁいい、明日から再び旅に出るが… 付いて行けとか、導けとかの神託が出ているんだろう?

向かうべき所はあるのか? 優先するぞ?」


面倒臭いことはサクッと終わらせたい。

行くべき所があるなら遠回りせず向かってやる。

ノーブはそう思っていた。


それならばと、マリは食事を終えたテーブルの上に地図を広げ、大陸の東南を指差す。

そこは、国や街ではなく山だった…

何か意味があるのだろうと、ノーブは了承した。


「地図は、ノブ様が持っていてください」


マリから地図を受け取りアイテムボックスに収納する。

すると視線の右下にマップのアイコンが現れた!

意識して開くと、脳内に世界地図が映し出されて現在地が赤く光っている!

まるでスマホの様だ。

一度開いたあとは視界のアイコンは消えて意識するだけで地図が見える!


「魔道具なのか?」


ノーブは驚いていた。


「はい、その昔、始まりの勇者様が作ったとされる魔道具の1つです。

地図はその都度更新されて勇者様だけが持つアイテムボックスの中に入れると、勇者様だけが観える地図になると言われている物です」


マリが説明する。


「俺が預かって大丈夫なのか?」


「大丈夫です」


マリが了承したので、ありがたく頂いた。


「ところで、その勇者の話を聞きたいのだが…」


「その昔、この星に魔神が現れ世界の危機が訪れました。

大陸中の英雄や猛者を集め魔神に挑みますが敵わず。

滅びを待つだけとなったとき、神様から神託がくだり、大陸1番の魔導師が異世界から勇者を召喚したのです。

その勇者の力により魔神は封印されて世界に平和が訪れました。

これが始まりの勇者のお話です」


よくあるファンタジー物の話だった。


「その後の勇者は何故呼ばれるのだ?」


素朴な疑問だった。


「そうですね… 大陸中央にあるギガント帝国が、始まりの勇者を召喚した魔導師の末裔を使い、定期的に勇者を召喚させては北にある広大な森に住む魔王に挑み続けていると言われていますが…

本当のところはわかりません」


どこかおかしな話で、勇者は魔神を封印するほどの力を持つ、魔王は魔神より下位な存在。

その魔王を倒すために何人もの勇者が必要なのかと、何より爆炎の勇者が帝国に喧嘩を売った話もあり、ノーブは納得がいかなかった。


「私が知っている事はこのくらいです…」


「そうか、話してくれてありがとう」


ノーブは、いろいろな事を聞き満足して食堂を後にする。

部屋に戻ってからも翌日からの打ち合わせをした。


「おはようございます」


翌朝、目覚めると、マリが挨拶をする。

ノーブは、おもむろに扉の前に近づき…


「いるのは解っている、入ってこい!」


そう言って、鍵を開けてやる…

扉が開き、あの聖騎士団長が私服姿で入って来た…


「どうして来たのですか?」


マリは戸惑いながら問いかける。

団長は無言で下を向く…


「連れ戻しに来たのか?」


ノーブは問いかけるが…

団長は首を振るだけだった…

マリの事が心配だったのだろう…

一晩中、扉の前で見張りをしていたのを、ノーブは知っていた。


「聖騎士団はいいのか?」


「辞めてきた…」


その言葉に、ノーブはため息を吐き…


「馬車の御者は出来るか?」


問いかける…

団長は驚いた顔をしながら頷く。


「じゃあ決まりだ! 朝飯食って、馬車を買いに行くぞ!」


「いいのですか…」


「仕方ないだろう… マリもそれでいいだろ?」


団長は嬉しそうだが、マリは少し渋い顔をして「はい」と頷いた…


「かたじけない…」


団長が頭を下げる。

3人で食堂に行き朝食を頂く。

そして、団長に金貨を渡して馬車を買いに行かせ、ノーブとマリは旅に必要な物資の調達に行く。

急な事だったが、運良く中古の幌付きの馬車を手に入れた。


そして、鎧を聖騎士団に返却して自前のロングソードのみの団長の装備とマリの装備品や武器を買いに行く。

防具屋で団長は鋼の胸当て手甲や足甲を買い、マリは魔法耐性のあるローブを買い揃えた。


「団長、準備はいいか?」


「団長はやめて、フィンと呼んでください。呼び捨てで構いません…」


フィンは多くを聞かずに旅の同行を許可したノーブに感謝して態度を改めていた。


「わかったフィン、俺もノブでいい!」


「勇者を呼び捨てには出来ません… ノブ殿と呼ばせてもらいます」


「硬いな」


2人は握手をしてから東南のランディル山脈に向かった…


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― 新着の感想 ―
記憶消してお荷物共は置いて行ってほしい。 せっかくいい感じな作品だなぁ…と期待してた所にお荷物の参加は萎える
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