黒と白3
「映画は大成功でした!」
マリアが、ご満悦だった…
「私もシナリオを書いたり、俳優を出演させたりで、儲かったわ!」
愛が喜んでいる。
「愛姉ばかりズルい!」
アンは膨れている。
「ナオトは、あちこちの映画会社から引っ張りだこらしいな…」
魔王が言う。
「世間的にはイケメンと言う事ですし、始まりの2柱で、世界を二分する1柱だと思われていますから…
実際、とんでもないポンコツなんですけど、世間の人達は知りませんからね…」
シンリーが呆れている。
「まあ、そう言うな… いろいろやらかして、一時は罰も与えたが、悪女にさえ引っかからなければ、良い奴なんだ…」
魔王はナオトを庇う…
「貴方! 白は天敵なんです! 庇う必要などありません!」
マリアが言う。
「貴方じゃない! それに、ナオトは俺の数少ない友達なんだ… カーちゃん、そろそろ白とか黒とかは忘れてくれ… 俺は息子でナオトは息子の友達だ…」
魔王は残念そうに説明する…
マリアは納得のいかない顔をしていた…
「あっ! 噂のナオトさんがテレビに出ています!」
エルフィルが教える!
画面を観ると、何処かの星に降り立ち、出迎えのファンに手を振る姿だった!
「大スターね…」
愛もため息を吐いた…
「ウチの会社と専属契約してくれないかしら…」
アンがため息を吐く…
「せっかくのチャンスを破滅の道に向かったか…」
魔王が残念そうに呟くと、皆が不思議そうな顔をする…
「ナオトの横で手を振る女…」
魔王が教える…
「えらく綺麗な人だけど… ってエミリア⁉︎」
愛が驚く!
「もともと綺麗だったが、ナオトにも、俺のような、妻を女神に変える能力を得たようだな…」
エミリアはまさに女神だった…
「悪女神製造機の誕生だな… 世界が混沌としなければいいが…」
魔王はマジで心配していた。
「アリアの分体ですか… 今直ぐ、白ごと消滅させましょう!」
マリアが気になる事を言ったが、魔王はスルーして…
「カーちゃん、ハウス!」
魔王は母を鬱陶しく思い、帰らせたかった。
「貴方、エカテリーナさんの復活とかないですよね…」
エルザが心配する。
「そんなの困るわ! 魔王映画には、あしゅら男爵は絶対に必要な人材なの!」
愛は必死だ!
「あしゅら男爵はどうしているんだ?」
魔王が聞くと…
「ヤマテリーナさん、愛様のおかげで獄中で贅沢三昧をして暮らしています」
カリスが教えてくれる。
「愛…」
魔王が呆れて愛を見る…
「ウチの専属俳優よ! 大事にしなきゃ…」
愛は欲望に忠実だった…
「お前は何をやっているんだ…」
魔王は呆れて呟き…
「カーちゃん、俺もナオトの事を言えない… 愛をこんな駄目孫にしたのは俺のせいだ…」
魔王はしょんぼりとしながら、エルザの胸に顔を埋めた…
「カーちゃんと甘えるなら、私の胸でしょう!」
マリアは怒っていた…
「嫌な予感しかしませんね…」
ミランが不安そうな顔をしていた…
そして、平穏な日々は続き、数年が過ぎた…
「ちょっとどう言う事よ! ウチの俳優よ! 絶対に認めないし! 釈放もしないわ!」
愛が電話でキレている!
程なくし電話を切り魔王に愚痴をこぼす…
「エミリアが! あしゅら男爵を引き抜こうとしているの! しかも釈放しろと言ってきたわ!」
愛が激オコだった!
「エミリアか… なんであしゅら男爵を欲しがる? ヤマトが元旦那だからか? エカテリーナとは仲は悪かっただろう?」
魔王が不思議に思う…
その時…
「魔王様、大変です… 白の軍勢にエリシオンが乗っ取られました…」
マリアの代わりにエリシオンを護る美しい女神、ガーディンが現れる困った顔をする。
「ガーディン、そんな顔をするな… 綺麗な顔が台無しだぞ?」
魔王はガーディンを抱きしめていた…
「ちょっと貴方! ガーディンを抱きしめないで、私を抱きしめてよ!」
マリアが訴える!
「だいたい、ガーディンも報告があるなら私にでしょう! 私から魔王様に伝えますから!」
マリアが怒るが…
「私、もうマリア様の部下ではありません… 魔王様の部下ですから…」
ガーディンは魔王の胸の中で顔を逸らして呟いた…
「キーっ! もー! 私が本当の妻なのに!」
マリアはキレていた。
「ほら、マリアも怒るな…」
マリアを抱きしめる…
「あっ、貴方…」
マリアと呼ばれて、抱きしめられた事に感涙するが、魔王は話が進まず仕方がなくだった…
「でだ、どう言う状況だ?」
魔王がガーディンに問う…
「はい、白と女神エミリアは、お付きのオネェ神達を連れて現れました…
交渉は女神エミリアで、魔王様の許可はもらった。バルハラ星と世界は白が治めると…」
ガーディンが困った顔で説明した。
「よし、会いに行くか…」
「早っ!」
ゆきみが驚く!
「俺、面倒な事はさっさと片付けたいタイプなんだ。ちょっと行ってくる…」
転移しようとすると…
「貴方、私達も…」
エルザが付いて行きたいと言い、その場の全員が頷く。
「仕方がない…」
魔王は皆を連れ、バルハラ神殿パルテオンに転移する。
「よう、ナオト、どう言う事だ?」
目の前に現れた魔王に驚きながら…
「いや、あの…」
ナオトはしどろもどろで困っていた。
「交渉は私を通してください!」
エミリアがナオトの前に出て遮る。
「黙れ!」
魔王が怒り、ひと睨みすると、エミリアは消滅していく…
「きっ、きゃー! ナオトさん助けて!」
エミリアが叫ぶ!
「まっ、待ってくれ、エミリアを黙らせるから、消滅させないでくれ!」
ナオトが焦って叫ぶ!
「お前のために… いや、世界のためにも消滅させた方がいいんだが…」
魔王はナオトも睨み付ける!
ナオトはオロオロして困っていた…
「まあ、いいだろう…」
魔王はエミリアの消滅を止めた…
「さあ、どう言うつもりか話てみろ… それと、そのカリスやマージ達のような生命体はお前が創造したのか?」
魔王はカリスやマージに似た、3人の女神が気になっていた…
「ああ、僕も白の力に目覚めたようで、生命体を創造出来るよになった。
カリスちゃんやマージちゃんの様な女神が欲しいとエミリアに頼まれたんだ…」
ナオトは困った様に説明し…
「魔王が、僕に世界を治めろと言った事を教えたら、エミリアがその気になって…」
ナオトが続けて言った…
「そうか、なら、ナオト、世界とバルハラをやろう!」
魔王が言うと…
「「「「「ええっ!」」」」」
その場の全員が驚く!
「貴方、宜しいのですか!」
マリアが不安げな顔をしている。
「ああ、俺もマリアも世界を治める気はない… なら、白が治めても構わぬだろう? 治めると言っても、いまさらこの世界をどうこう出来る物ではないしな…」
魔王は笑いながら言った。
「いいのですか!」
エミリアが口を出す。
「ああ、だが、1つ条件がある!」
魔王はエミリアをムッとしながら睨み…
「この世界、1〜4階層全ての神に問い、俺の元に来たいと言う神の宇宙や階層を連れていく!
そして、白の世界と黒の世界、すなわち、ザ、ワールドは関係を断ち切り、断絶する!
もう、俺達がバルハラのある、白の世界に来る事はない!
そして、お前達も如何なる理由があってもザ、ワールドに入る事は許さない! 約束を破れば全てを滅ぼす!」
当初はバルハラと世界をナオトに任せて静観するつもりでいたが、エミリアの態度に危機を覚え、ザ、ワールドに、なんらかの被害が出る可能性を危惧して、世界を割る事とした。そして、望む神や星をザ、ワールドに連れて行く事は魔王なりの慈悲の心であった。
魔王は全ての世界に魔王の波動を放った! 世界は魔王の怒りに震えていた…
「貴方…」
マリアはどうしていいか解らず困っていた。
「マリア気にするな… お前は俺のそばにいるのだろう?」
魔王がマリアを抱きしめると…
「はい、妻として、おそばに参ります…」
マリアは嬉しそうだった。
「はい! その条件で、いいです!」
エミリアは小さくガッツポーズを取っていた…
「僕もそれでいい… だけど、1つお願いを聞いてくれ…」
ナオトが頼む…
「なんだ…」
魔王が面倒くさそうに言うと…
「ヤマテリーナを僕にくれ…」
ナオトがボソボソと頼むと… その場の全員が驚き!
「駄目よ!」
愛がキレていた!
「あんなのでも、僕の師匠と妻なんだ… 会うたびに泣かれて、ザ、ワールドに置いてはいけない…」
ナオトが悲痛な顔で頼んだ…
「いいだろう、ヤマテリーナはくれてやる!
だが、ろくな目には合わないぞ?
そして絶対にザ、ワールドに立ち入るな、約束しろ!」
魔王が言うと…
「駄目! 映画の続きが作れないわ!」
愛が騒ぐ!
「黒と白の映画だろう? ナオトが抜けた時点でもう無理だ。それにもう、俺も映画には出たくない」
魔王が呆れて言った。
愛はなんともいえない顔をしていたが、それ以上なにも言わなかった。
「ああ、すまない約束は守る…」
ナオトの返事を聞き、魔王は全世界に向け言葉を発する!
「皆、よく聞け! 白のナオト、黒の魔王、我々は世界を分け断絶する事に決めた! 我と共にありたいと願う星、宇宙、階層事でも構わぬ、名乗り出るがよい、ザ、ワールドで共に生きようぞ!」
魔王の声を聞き、マリアの元に夥しい数の返事が来る。
「4階層全て、3階層、6割、2階層、1階層共に2割ずつです。丁度、半分ですね…
私がいるから、1階層は全てザ、ワールドを選ぶと思っていましたが…」
マリアが残念そうに呟いた…
「マリア、気にするな… 今、俺の放った魔王の波動にビビったのだろう…
だが、それで怯む様な連中は、ザ、ワールドには向かない… 名乗り出た連中を連れザ、ワールドに帰るぞ!
ではな、ナオト… ザ、ワールドに、お前の元に行きたい者がいたら、転移させる。
だがそれが最後だ… サラバ友よ…」
魔王は寂しそうにナオトに別れを告げ転移で去る。
魔王は世界を階層で隔てる壁を取り払い、希望した星はザ、ワールドに転移させ、白の世界と黒の世界に壁を創り分けた。
魔王は友達を失い、失意の中にいた…
「貴方、これで元通り妻ですよね…」
「ああ…」
温泉の脱衣所でマッパのマリアに抱きしめられていた…
「私は…」
「ああ、マリも妻にしよう…」
マリからも裸ハグを受けていた。
「私も…」
「ああ、マーラも妻にしよう…」
魔王は壊れたオモチャの様だった…
ここぞとばかりに、ガーディンとキシリシュが並んでいる…
「はい、今日のところはここまでですよー! 今の魔王様は、ちょっと壊れていますからねー」
アコが助け船を出していた。
そして、湯船に浸かり考える魔王…
その姿に妻達は心配していた…
宴会場に行く…
「魔王、大変だがそう気にするな、ナオトはナオトでやっていくだろう?
案外、1人立ちしてしっかりとするんじゃないか?」
ヨシヒデも魔王を気にしていた。
「だといいがな…」
魔王の顔は浮かなかった…
「まあいい、こうなったのなら仕方がない…
ザマ、魔王軍にナオトを慕っていて付いて行きたい奴がいるか確認しろ、俺がバルハラに送ってやる…」
魔王がザマに聞く。
「はっ! でもいないと思いますよ? ガンガイア軍でも慕われていませんでしたし…
記憶を無くし聖戦士だった頃は良かったのですが…
記憶が戻ってからは、魔王様の友達という特別枠扱いで、部下も持たず、ときどきフラっと遊びに来る感じで…
部下達はナオトの事をバイト勇者とかサーファー勇者とかニート勇者とか呼んで馬鹿にしていましたから…」
ザマが、ため息を吐きながら説明すると…
「サイガ達も、またやらかしたか… と呆れていました…」
ミャーダも言う。
「まあ一応な… 後はマサト、テリーナだな、どうする?」
2人に聞くと…
「僕はザ、ワールドに住み、魔王様の部下でいたいです!」
マサトが言うと妻も頷く。
「もー! なんなの? 父が世界を統べる神なのよ? ちょっと変だけど母も引き取ったのよ? マサトも行かないと後悔するわよ!」
テリーナが呆れ顔でマサトを説得する。
「あの、テリーナさん、テリーナさんは行く感じですが、僕は行かないですよ?」
ゲンキーが言う。
「なんでよ! アンタだって、息子なのに待遇が悪いとか愚痴っていたじゃない!
口うるさい母親と母モドキが鬱陶しい! 何処か遠くに行きたいと毎日言っているじゃない!」
テリーナに愚痴を暴露されエルザとシンリーに睨まれ焦るゲンキーだが…
「だとしても、前回は散々なめに遭いました。
また、ろくでもない事がおこるのに違いありません…
父は妻や子供達に無茶な事は絶対にしませんが、テリーナさんのお母さんは…」
ゲンキーが言い終わる前に…
「ならいいわ! 離婚するわ!」
テリーナが呆れた顔でゲンキーに言い放った。
「何ガッツポーズを取っているのよ!」
嬉しさのあまりガッツポーズをとったゲンキーはテリーナに殴られていた…
「ほれ、強制転移!」
魔王はみかねて、テリーナを強制転移した。
「お父さん、荷物とか…」
ゲンキーが言う。
「全て焼却!」
魔王に睨まれていた。
「貴方も、妻達を置いて行ってはどうですか?」
「小言を言われなくてすみますよ…」
ゲンキーはエルザとシンリーに嫌味を言われていた…
「すみません…」
ゲンキーは消えそうな声で謝っていた…
「バルハラの世界はどうなりますかね…」
ガーディンが心配そうに聞く。
「ナオトは白の力に目覚めたらしいが…
全ての神を従える程の力もカリスマ性もない…
エミリアやエカテリーナが贅沢三昧をする程度で、世界をどうこう出来ないだろう?
あまり心配するな…」
ガーディンを抱きしめて慰めていた…
「でも、アリア達は厄介な存在… って、貴方、ガーディンは私達ではありません!
抱きしめなくていいですから!」
マリアは何かを言おうとしたが、魔王の態度に怒っていた。
結局、ザ、ワールドから白の世界に行った者はテリーナ1人だった…
4階層では魔王はどの神も知る圧倒的な存在!
3階層も魔王を知る神達は尊敬の念を抱いていた。
1、2階層の神は魔王をよく知らないが…
黒の伝説とマリア人気により集まった神達…
ザ、ワールドは多少の小競り合いはあるが、基本的に平和で優しい世界となった。
だが、もしものときに備え、魔王軍は解散せず、己を鍛えていた…
魔王と部下達に、いっさいの油断すらなかったのだ…




