主役は魔王22
「皆様にお土産です」
サナリーが皆にお土産を配っている。
「お姉様は助けてくださったので特別です。私とお揃いのスカーフです」
「あら、嬉しいわね…」
シンリーが目を細めて喜んでいる。
「エルザ様、今度、お料理を教えてくださいますか?」
「私でいいんですか?」
サナリーに言われエルザが驚いている。
「魔王様が料理や家の事は、エルザ様が1番良く知っているから教えてもらいなさいと言われまして…」
「あらそんな事を… 私で出来る事ならなんでも教えますから、いくらでも聞いてくださいね。明日にでも一緒に料理をしましょうね…」
「はい、よかったらお買い物から連れて行ってください」
「はい、解りました一緒にまいりましょうね」
サナリーに頼られエルザも嬉しそうだった。
「サナリー、なんか変わったわね?」
愛や他の妻達が驚いている。
「もともと、あんな感じだったのですが、辛い体験で殻に閉じこもっていましたし、助けてもらった私達に遠慮がありましたから…
魔王様と旅行に行って、いろいろな不安や鬱が吹き飛び殻がなくなったようです。
やっと楽しそうな顔が見れて安心しました」
シンリーが説明した。
「そうなのか… サナリー、恩を感じて妻になったのなら無理しなくていいんだぞ?」
魔王は気を使う。
「もー! そういう事を言わないでください! 恩や義理で、妻になった訳ではありませんから…」
サナリーが膨れる…
「魔王様、もう少し女心を理解するようにしましょうか?」
シンリーは呆れた。
「すっ、すまない… サナリー、キャメル達にお土産を持って行こう! マーリンもナナリーを見てやってくれ!」
罰の悪い魔王は、さっさと出掛けようとする。
「おじい様、時間通りに来てよ?」
愛に念を押され、サナリー、シンリー、マーリンを連れて、キャメル達にお土産を届けに行く。
「ただいま戻りましたー、お土産です!」
元気に戻って来た、娘の姿にメイビス達が驚いていた。
「楽しかったようで杞憂が吹き飛んだようですよ」
シンリーがメイビスとナナリーに事情を教えていた。
「そうですか、これで本当に昔のサナリーが戻ってまいりました、ありがとうございます」
メイビス達がお礼を言った…
「順調そのものです。心音が2つ、双子ちゃんですね! おめでとうございます」
「おおっ! 双子とは!」
メイビスが驚いている。
「お父様、お母様、良かったですね… おめでとうございます。私も産まれる日を心待ちにしています」
サナリーも喜んでいた。
そして、エメラーダの温泉旅館に行く。
女神ーズが揃って待っていた。もちろん愛人も彼女もいる。
まず温泉だ!
「魔王様ー!」
「サナリー、皆の前で裸ハグはやめろ…」
「マリアンヌちゃんもルルシュちゃんもこっちに来て3人で挟みましょう?」
「「こうですか?」」
3人の幼妻に囲まれて、抱きしめられる。
「ほら、そういう悪戯は駄目だ…」
腰をくの字に引き、さっさと逃げて温泉に浸かる。
「魔王様、失礼します…」
リリが言いながらミキと湯に浸かる。
「リリもミキも最初から一緒に入ればいいだろう?」
「私達のスタンスですから」
またミキが訳の分からない事を言っている。
「サナリー、楽しそうですね…」
シンリーが聞くと。
「はい、城の中で育てられ外の世界を知らずに育ち、悪神の器にされ死にかけたりと碌なことがありませんでしたが。
魔王様とお姉様に助けていただき、目覚めたら世界が変わっていて、最初は戸惑っていましたが、どこも素晴らしい世界ですし、旦那様は常識外れのめちゃくちゃな方ですけど、優しくて… 奥様達も皆さん優しくしてくれて… 友達まで出来て… 幸せが一気に来た感じで、嬉しくて楽しくて仕方がありません」
「そう、良かったですね…」
シンリーがサナリーを優しく撫でて… エルザやミラン達はウルウルしていた…
「はちゃめちゃなら無理をしなくても…」
魔王は困った顔で呟く…
「魔王様は女心を解ってください…」
「そっ、そうだった…」
優しくは言っているがシンリーが少し怖かった…
風呂から上がり宴会場に行く。ゲンキー達も来ていた。
「もう、サナリーちゃんも普通に戻って妻にしちゃったんですね…」
ゲンキーが残念そうに呟く。
「ゲンキーも嫁ーズも元気がないじゃないか? どうした?」
「………」
沈黙が続く。
「私が説明いたしますわ…」
サーラが沈黙を破って話し出した…
「結論から言います… ランジェリーショップは倒産して、妻の私達は一文無しに… ゲンキーは多額の借金を背負いましたわ…」
説明を聞いたエルザが、泡を吹いて倒れた…
「皆、エルザは話が終わるまで寝かせておくからな!」
口の泡を拭いてやり、膝枕でそのまま寝かせておく。
それが落ち着くと、サーラが再び話始めた…
「ゲンキーはお父様に怒られた後、2号店の資金として私達に借金を迫りました。
お父様の言いつけもあり誰も貸さなかったのですわ!
でもです、ムキになったゲンキーは多額の借金をしてきました…
その資金を投資して2号店をオープンする…
でも簡単に相手を信用したようで、詐欺に遭ってしまいお金は全て持ち逃げされましたのですわ…
このお父様の善人ばかりの宇宙で、たった一握り程度しか悪人がいない場所で詐欺に遭うなんて… なんと運の悪い…
そう思って仕方がないとイーシャさん以外の6人の貯金をはたいて借金を穴埋めしようとしましたの…
ゲンキーを信用しありったけを渡しました…」
サーラが泣いてしまって話が進まなくなってしまった。
「それでですね…」
泣き止まないサーラに変わり、ベソをかいている。
ラサラが続けた…
「実は騙し取られたのは嘘で、欲を出して3号店も一緒にオープンしようと、カジノに行き勝負をして、全部スってしまっていたのです…
私達が借金を返してきてくれと渡したお金も、一攫千金を夢見てカジノで…」
ラサラも泣きじゃくってしまった…
「それで…」
次は泣きやんだハルが話し出す。
「ちょっと待て! 話は聞くし何か考える、続きは別の場所でする!」
「おじい様、なんでよ!」
愛は聞きたいばかりだった。
「こんな話、エルザの耳に入ったらどうなる! 心が…魂がどうかなってしまうかも知れない! エルザの泣き顔は見たくないんだ!」
小声で言ったが…
「貴方…気を使わなくて大丈夫です… このまま娘達の話を聞いてあげてください…
私、もう少しこうしていさせてください…」
エルザが力なく言った…
「すまん続けてくれ…」
「カジノで全てを失って、さらにお金を借りに行ったそうですが借りられなくて…
そのうち家やお店に借金の返済の催促が来るようになって…
私達はそこで初めて騙された事が嘘だと知り、全てをギャンブルに注ぎ込んだ事も知りました…
店は手放し在庫も処分して、サーラさんの住んでいた方の家やクランハウスを処分して、それでも足りず。
ミーラお母様にもお借りして…
今は細々と冒険者活動をしていまして、その収入とサーラさんのお給料で借金を返済して生活している状態です…」
ハルが説明を終えた。
「ミーラ…」
魔王は呆れたように呟く…
「すみません…子供達に強く口止めされて…」
「いや、いいんだ、金を出させてすまなかったな…」
「いえ、全部、魔王様に頂いたお金ですから構いません…」
ミーラが申し訳なさそうに言った。
「まあ、お前達の思うところがあって相談しなかったのだろう… 別れないのか? 親の俺が言うのもなんだが、ギャンブルで夢を見るやつはまたやるぞ?」
魔王はガッカリとして説明した。
「はい… みんなで別れようと言う話も当然でました。でも、ゲンキーが冒険者として1からやり直すからと泣いて頼むので、もう一度だけチャンスをあげようと言う事になりまして… それとナツが…」
ハルが言いにくそうにしている。
「妊娠したのか?」
魔王が察して聞いた。
「はい…」
ナツが自分で返事をした。
「そうか、仕方がない皆で頑張りなさい…」
魔王はなんとも言えない顔をしている。
「そっ、それだけですか? 援助しようとか思わないのですか?」
ゲンキーが驚く!
「馬鹿なのか? 誰が嘘をついたんだ! 誰が借金をしたんだ! 誰が娘達を泣かせたんだー!」
止めどもない魔王の波動がゲンキーを襲う! 身体も精神も崩壊しそうなほどの殺気だった! 星が震え出し大気が揺れ、魔王の怒りと悲しみが、ザ、ワールドを包む…
「貴方、怒りを鎮めてください…」
エルザが必死に止める…
「すっ、すみません! 僕が悪かったんです! 心を入れ替えて働きます。許してください」
魔王の波動を解かれたゲンキーは一心不乱に謝っていた。
初めて父に本気で怒られ自分の愚かさを知った。
「まあいい! 今回は多めに見てやる。サーラ、後で全ての借金を教えろ! 今回は建て替えてやる… お前達7人が貸した金は返してやるが、それはなんかあったときに渡してやる。ミーラに借りた金も俺が返しておく。
今は現金を渡す気にはなれない… しばらく食料品や日用品は家から用意する。
明日、エルザとサナリーを買い物に連れて行く予定だ。誰かついて来い生活に必要な物を好きなだけ買えばいい…」
「お父様、それでは申し訳ないですわ! 私達がやった事ですし私の給料も沢山いただいております。自分達でなんとか…
お父様、すみません… やっぱり、甘えさせていただきます… 明日お買い物に連れていってくださいまし…」
サーラは話していて、自分達で立て直すのは無理だと思ったのだろう… 素直に納得した。
「エルザ、こんな感じでどうだ?」
「貴方の思う通りでよろしいです…」
「とりあえず、サーラ、来い…」
抱きしめると…
「少しやつれたな… 加護があるから体型はあまり変わらないはずだが… 極、癒しの光!」
最上級の癒しの光だった。
サーラは神々しく光り輝き癒され安らぎを得る。
「サーラさん、栄養ドリンクです、元気がでますから飲んでください」
マーリンも心配して栄養ドリンクを飲ませていた。
ラサラ、ハル達と順番に呼び最後にイーシャを癒して終わりだ。
「あら、魔王様、イーシャさんもですよ?」
シンリーが言う。
「イーシャ、お前もおめでただったのか…」
魔王が声を掛ける。
「はい… 大変なときにすみません…」
イーシャが困った顔をしている。
「何を言っている… めでたい事だ可愛い孫を産んでくれ。イーシャとナツはマーリンに見てもらえな?」
「「はい」」
2人が安心して返事をしていた。
「もういいから、皆、飯を食え! ほら、お前達も遠慮せず入って来い!」
魔王は宴会場の外で待っている、ヨシヒデ達にも声を掛ける。
「いっ、いいのか? 派手に怒っていたみてぇだが…」
ヨシヒデの顔が引きつっている。
「星が恐怖で震えていたぞ?」
ヤマトとが言うと、エミリアが隠れるように入っていった。
「ゲンキー、あんまり怒らせないでくれよ? ガンガイアが消滅したらみんな死んじゃうんだから… 巻き添えはゴメンだよ?」
ナオトがそう言いながら、そそくさと入って行きパチーナも大人しく入って行った。
「魔王様、凄まじい波動でしたがどうかされましたか?」
アモンが心配している。
「なんでもない…」
そう言うと察したのかエルフィーとテーブルに向かって行った。
皆、サナリーのために集まってくれた。
「サナリー、すまんな…」
「大丈夫です… 魔王様のせいではありませんから…」
サナリーも気を使っていた。
しばらくして場の空気も和み、皆でサナリーが妻になった事を祝ってくれた。
サナリーも嬉しそうにして、ゲンキー嫁ーズや皆にもお土産を配っていた。
魔王が、あまりに激しく怒ったせいか? ゲンキーはシュンとしたままだった。
「ゲンキー、お前もメシを食え! 食って頑張って働き妻達と産まれてくる子を養ってやれ!」
魔王はゲンキーにそう告げた。
「はい… すみませんでした…」
ゲンキーは泣きながらメシを食っていた。
「サーラ達もどんどん頼んで沢山食っていけ!」
痩せた娘達が心配でならなかった。
「そうだ、皆にプレゼントがあったんだ!」
そう言って宝石を出す!
「おじい様、久々ね!」
愛が1番嬉しそうだ。
「まずルルシュからだ!」
ダイナモンドで造った指輪とネックレスを付けてやる。
ピーチ、ミナ、シンリー、マリアンヌ、ミーラ…
最近、妻、彼女、愛人になった順にプレゼントして付けて行く。
まるでアラブの大富豪のようだ。
そしてママちゃん、エルザ、アコ、セシリー、マーリン、レイン、カミラ、ミラン、レイン、リリ、ミキ、メールにも…
もちろんアンとカコの2人の娘と孫の愛にもだ!
そして最後は7人の義理の娘にだ。
ラサラ、ハル、ナツ、アキ、フユ、イーシャ、最後は…
「お父様… こんな素敵な物まで…」
サーラが歓喜極まっている。
「女王様なんだから、これぐらいの物を付けていないと駄目だろう?」
魔王がサーラと話ていると…
「魔王様はサーラちゃんを凄く可愛がっていますよね… 出会いは最悪だったのに…」
アコが余計な事を言う…
「そうなのですの?」
サーラが不思議そうな顔をしている。
「そうですよー、マリアンヌちゃんに、あの縦ロール、孤島の牢獄に送っていいか? と聞いていましたよ? 結構怒っていましたからね、マリアンヌちゃんが止めていなかったら、本気で捨てに行っていたかも知れませんね…」
アコは悪気もなく懐かしそうに言ったが…
「マリアンヌ様、本当なのですの?」
「そっ、そんな事ありましたかね… ちょっと記憶が…」
マリアンヌは必死にとぼけている。
「それ覚えています… 私達に失礼な事を言ったからお父様が怒っていたのですよ? お父様はいつも私達娘の味方ですからね」
ラサラが嬉しそうに言う…
「それは私がいけなかったのですけども… お父様に捨てられそうになっていたと知ってしまうと、少しショックで悲しくなりますわ…」
サーラがガッカリとしている。
「サーラ、昔の話だ忘れろ… ほら、女王様としての公務用の派手なジュエリーも作ってきたから、機嫌を直せ…」
式典などの行事に付ける派手なのを女王達全員に配る。
「お父様、ありがとうございます! とても素敵ですわ!」
サーラは機嫌を直して喜んでいた。
ジュエリーを配り終わると物欲しそうな顔をした3人がいた…
「忘れていたな… カーラお前にもある。可愛い娘だからな…」
そう言って渡してやると、カーラは複雑そうな顔をしていた。
「あの… 私のは?」
「なぜ、俺がパチーナにやらなければならない! ナオトに頼め!」
「私は元カノだからありますよね?」
「捨てて出て行った女にやる物はない!」
魔王は、そうエミリアに言ってやった。
「パチーナ! ジュエリーなら僕も自分で作ったのなら持っているよ? どれが良い、選びな?」
「ナオトさん、私にもください!」
パチーナとエミリアが駆け寄って行く… テーブルに置かれたジュエリーを見て…
「なんですかこれは? 粘土細工? 魔王様が奥様達に配ったようなデザインがいいです! 作り直してください!」
パチーナにバカにされ、それから、ナオトは何度も作り直しをさせられ。
エミリアもナオトにもらったジュエリーをヤマトに作り直させていた。
ナオトとヤマトは酔う暇もなくジュエリー制作をさせられていた。
エルフィーは以前アモンがプレゼントしたダイナモンドのジュエリーを身につけている。
アモンが魔王と一緒に採掘して魔王が加工した物だった。
それをパチーナとエミリアに羨望の眼差しで見られて、ご満悦であった…
アモンは自分だけ助かり、ホッと胸を撫で下ろしていた…
一夜明け、翌日…
「さあ、じゃんじゃん買っていけ!」
皆で買い物だ。エルザはサナリーを連れて料理の材料を買いに行く。
ゲンキー嫁ーズはイーシャが中心となり6人が分担して買い物をしていく。
7人全員が残り買い物に参加していた。
家に帰るとエルザの料理教室が始まる。
参加者はサナリー、マリアンヌ、ルルシュ、ハル達4姉妹とラサラ、サーラ、カーラだ。
「私も手伝った方が良いですか?」
セシリーが聞く。
「任せておけばいい… セシリーは俺専用の料理しか作れないだろう?」
「はい、アナタ専用です」
セシリーは満足そうに頷き。
助手にはカミラが付いた。
適材適所であった。
「アコ、お前は習わなくていいのか?」
「私が覚えられると思いますか? 私が作った料理、食べたいですか?」
「いや、大丈夫だ… 精のつく物ばかり食わされそうで怖い…」
「それもアリですねー、やっぱり私も習ってきまーす!」
アコも習いに行ってしまった… 余計な事を言ったと後悔してしまった…




