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ジジイの異世界記  作者: パパちゃん
19/546

その19

その日は朝からあわただしい。

世界会議に出席する日であった。


ヤマト達は数千年間、北の森とダンジョンで生きて来ていた。

現状、大魔王国ギガンティスは全てを自国で賄えるほど豊かであり経済、産業面、生産、食糧と全てが他国を凌駕していた。

強力な結界障壁を維持さえすれば他国と関わらなくても良いというのが大半の意見だった。

だが魔王は、自分の様なイレギュラーな存在に攻め込まれる事もありえる。

もしかしたら、突如、天才が産まれ、とんでもない魔法や兵器を開発するかも知れないと、さまざまな事を考える。

他国が何を考えていて、どんなカードを持っているのかを知る必要があると思い至った。

愛を出席させる事も検討されたが結局は魔王とヤマト、シンリーの3名が出席する事となった。

ギガンティス最大戦力の魔王とヤマトが一緒に国を空けるのは心配ではあったが、ナオトや勇者達、ギャリソン、アモン、守護獣達と、ギガンティスには世界と充分渡り合える、いや、それ以上の過剰戦力があった。

魔王達が罠にハマる可能性もあるが、魔王とヤマトをどうこう出来る者がいるなら、この世界はとっくに支配されている事だろうと、考えての事だった。


「さて、出発するか」


魔王達は戦闘魔導飛行船「ミラージュ」に乗り込み出発する。

空の旅を楽しみながら大陸の東の端にある大王国ダンジルに到着した。

ここ最近、急成長した国だ。


魔王は派手に登場してやろうと思い会議が始まる直前ギリギリにダンジルの王都上空を通り指定の門に向かう。

だがミラージュを着陸させる場所はない。

王都の壁の外の森をミラージュの中から「ヘルファイア!」地獄の黒炎で木々を焼き払う。

焼け焦げた大地を土魔法で整地して、その場所にミラージュを着陸させた。

一部始終を見ていた門番や騎士達が驚愕の表情を見せる。


ミラージュから魔導車のリムジンに乗り込み、その周りを騎士達が魔導バイクで囲み門を通り抜けて王都を走る。

街並みは中々立派なもので中世のヨーロッパの様な感じだった。

人々が驚きの顔で魔王達のリムジンが通り過ぎる様子を見ている…

ヤマトが「ちと派手だったのう」と笑う。

王城に着くと真新しい綺麗な城だった。


「この会議のために立て直したのか? 無駄な見栄を張って…」


魔王は呟き呆れていた。

リムジンを降りダンジルの騎士達に城の中に案内される。

控室もあるらしいが既に会議が始まっているとの事で直接会議場に通される。

扉には芸術的な彫刻があり豪華な装飾が施され贅の限りを尽くされている。

室内に入ると豪華な内装で広い会議室、巨大な円卓のテーブルに6カ国の代表が3名ずつ座っている。

ギガンティス国を入れると7カ国となる。

魔王達は何食わぬ顔で、さっさと座ったが遅刻は咎められない。

議長役の大王国ダンジルのサラーン首相が話し出す。


「ようこそおいでくださいました、大魔王国ギガンティスの方々、まずは自己紹介していただけると助かります」


魔王が立ち上がる。


「我が大魔王国ギガンティスの国王、ノブ・ギガンティスだ!」


「首相のヤマト・タケルじゃあ!」


「副首相のシンリー・ギガンティスであります」


魔王達のファミリーネームは適当に考えたやつだった。

魔王とヤマトは尊大な態度で挨拶をおこなったため、各国の代表達は渋い顔をしていた…

続いて大魔王国ギガンティスのために新たに各国の挨拶が始まる。

聖神国フォーリーン。

ランデル王国。

ルーン王国。

ファイン王国。

バンル王国。

とホストの大王国ダンジル。

国王や首相の名前は聞いたが魔王は覚える気もなく聞き流していた。

困ったらシンリーに聞けばOKだと他力本願な考えだった。

フォーリーンからは新教皇と大聖女と枢機卿が来ている。

そして、ダラダラと退屈な話が始まる。

一通りの説明が終わると進行役のサラーンが…


「大魔王国ギガンティスも我ら世界連合に加入していただけますかな?

さすれば国交を結び貿易や技術の共用と、さまざまな利がありますし他国からの侵略の心配もなくなります。」


上から目線で語っている。


「そうか、だがいらんな、我が国は全ての物が自国で生産し消化されている。

他国に頼る必要はない。

それに、この国を見る限り我が国より技術力が1000年ほど遅れていて、なんの徳も魅力もない…」


魔王は馬鹿にした物言いで、やれやれとアメリカンなポーズを取っていた。


青い顔をするサラーンと真っ赤な顔で怒るシューマー国王!


「それでは、他国の脅威はどうするおつもりですか?

連合の加入なしでは他国の侵略をお止めする事ができませんぞ!」


サラーンは脅しにかかってきた。


「ガッハッハ! 笑わすな! この大魔王が他国の侵略ごときに恐れをなすだと?

侵略する者には破滅をもたらそう!」


魔王は軽く魔王の波動を放つ! 会議室が魔王の殺気に包まれる。


「貴方は世界と調和をもたないのですか…」


その場の全員が青い顔をしてサラーンが震えながら声を絞り出していた。

魔王は波動を解く。


「ならばお前らに問おう。

我が国には貴族制度がなく、皆、平等だ。

人族、魔族、エルフ、ドワーフ、獣人、精霊… さまざまな種族が入り混じり暮らしておる。

奴隷を持つ事は許されない!

そんな国と協調性を持って付き合えるのか?

俺の国と国交を結ぶという事は我が国の国民全てを平等に扱うという事だぞ?

お前達の国に我が国の亜人達が出掛けても危害を加えず協調性を持って人として扱えるのか?

それが飲めるのなら考えても良い!」


各国共に口を紡ぐ。

そして、シューマー王が真っ赤な顔でキレた…


「黙れ! お主こそ亜人を集め奴隷のように働かせておるのだろうが!

あんなけったいな物まで造りおって!

世界中から奴隷を買い漁りおって奴隷禁止が聞いて呆れるわ!」


こいつ! と、魔王がキレそうになったとき…


「お待ちください!」


大聖女が話し出す。


「大魔王様の国では集められた奴隷や孤児、庇護を求め集まった亜人は家を与えられて仕事をもらい子供達は学校に通い豊かな生活をしています。

誰かの奴隷として仕えている者は1人もいません」


そう説明して援護をした。


「黙れ! 神の使いのくせに! 魔王の肩などもちよって! 馬鹿者が!」


シューマー王がキレて大聖女に怒鳴っていた。


「話しにならんな… 帰るぞ!」


魔王は興味をなくして立ち上がる。


「待ってください!」


サラーンが止める。


「まぁいい、皆で好きにやれ… 我が国は自由にやらせて貰う。

ただし、仇なす者には死と滅びを与える。良く考えて行動しろ…」


魔王は冷たい顔で忠告をして城を出た。

ミラージュに向かう車中でヤマトに、


「気づいたか?」


魔王が聞く。


「ああ、シューマー国王の隣で黙って座っていた奴じゃろう?」


「飛び抜けていたな… 魔族っぽかったが…」


「厄介な事にならなきゃいいんじゃが…」


ヤマトも気づく程の危険人物がいた。

そして、ミラージュに乗り込み飛び立つ。


「やれやれ…普通こんなところで襲うか?」


魔王は愚痴を溢しながら艦橋正面の窓から空を眺める。

20m級のグリーンドラゴンが5頭向かって来ていた。

それらは従魔の首輪をはめられていて操られているようだ。


「隷属魔法すら使えんのかレベルが低いな…

あの感じだと王の策略だろうな、馬鹿だったし…

俺がドラゴンにやられるところを皆に見せて力を誇示したいのか?」


魔王はぶつぶつと独り言を呟きミラージュを飛ばした。

見せつけるように高速で城の周りを旋回して船首をドラゴンに向け静止させた。

魔王は艦橋でノリノリだった!


「ついにこの日が来たぞ! 魔導砲発射よーい!」


船首のドクロのオブジェの蓋が開き艦橋内にピーピーピーピーと意味もなく効果音が流れる。


「セーフティーロック解除、ターゲットスコープオープン!」


引き金付きの照準器か出てくる。


「エネルギー充填120%

カウントダウン5 ・4・ 3・ 2 発射!」


魔王は引き金を引く!

船首の発射口から極太の黒い光を紫電が纏いスパークしながら突き進み5頭のドラゴンがその光に飲まれて消滅する… 灰すら残らない。

この魔導砲、実際はノータイムで撃てて連射も可能となっている。

魔王が50発分の魔力を魔石に込めて搭載してあった。

魔王はミラージュを、その場に静止させたまま世界会議の会議室に転移する!

窓から外を見て呆然としている各国首脳人達に…


「おい!」


魔王が後ろから声をかける。全員がビックリして振り向く!


「ドラゴンがこの国を襲おうとしていたから討伐してやった。感謝しろ!

なに、礼はいらんサービスだ!」


魔王は余裕の笑みを浮かべて転移で消えた。

魔王はミラージュの艦橋に戻る。


「船首反転120°」


プシュ! プシュ! とエアースラスターから圧縮空気が噴出され向きを変える。


「全速離脱、発進!」


魔王の号令で後部の魔導ジェットエンジンが甲高い音を放ち噴出口から青白い炎を噴きミラージュは一瞬でマッハの速度に到達して飛んで行く!

それを窓から眺める各国の首脳人達は青ざめた顔をしていた。

世界が大魔王の力を知り認めた日となった。

各国は大魔王の力に戦慄を覚える。

聖神国フォーリーンは大魔王国ギガンティスを支持する構えをとり連合から追放処分となる。

残った国家は連合体制をとり大魔王国ギガンティスと敵対する道を選ぶこととなった…



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