主役は魔王10
「ちょっと出掛けて来る!」
魔王は1人で出掛けようとする。
「ちょっと逃げないでよー!」
愛が焦る!
「大丈夫だ! 義理の娘達のために、ちょっと用意をしてくるだけだ」
そう言って出掛けた。
愛が逃げるなと言っているのは温泉での宴会だ。
またエカテリーナ達の事らしい… だが魔王にはそんな事はどうでも良かった。
しばらく出掛け女神ーズを迎えに行き温泉旅館へ行く。
まずは家族風呂だ。
「魔王様…」
「リリなんだ?」
「魔王様ー!」
「ミキなんだ?」
脱衣所で、突然の裸ハグだった。
「ねぇ、なんで大っきくならないですか!」
ミキが股間を見て言う…
「見るなよ恥ずかしい… なんでって… いくら裸とはいえ少年に抱きつかれてもな…」
魔王が呆れている。
「「少年じゃありません!」」
2人が声を揃えて抗議する。
面倒くさいので、そそくさと風呂に逃げる!
「メールさん、見損ないましたよ! 1人だけ…」
珍しくリリが怒っている。
「魔王様も魔王様です! オッパイが大きければなんでもいいんですか!」
ミキが吠える。
「そんなこともないぞ? オッパイは8割程度だぞ?」
「「はっ、8割⁉︎」」
ミキとリリがビックリしている。
「俺が好きなんだから仕方がないだろう? 見よ! この13人、26個の美しい巨乳を!」
魔王は誇らしげだ!
「見事に巨乳ばかり… 巨乳以外の方は妻にしないのですか?」
リリが聞く。
「ああ、嫁ーズに並びたいのなら最低Eカップだな… 少年スタイルのお前達には無理な話だ!」
魔王がドヤ顔で説明する!
「べっ、別に並ばなくてもいいですから…」
ミキが口を尖らせて言った…
さっさと宴会場に戻る。
「「「「「「お父様!」」」」」」
義理の娘ーズも来ていた。
「魔王、呑ませてもらうぜ! 今日もこっちだな…」
ヨシヒデがゲンキーの隣りに触る。
ヤマト、アモン、ナオト、マサト、ミーナ、エルフィー達がやって来た。
男達は皆暗い顔をしていた。
「こりゃ、今日も荒れるな…」
ヨシヒデがアメリカンなポーズでやれやれといった感じを出している。
「そんな事はどうでもいいんだ!」
「おじい様、どうしたの?」
魔王の熱量に愛が心配そうにする。
「愛、大丈夫だ… それよりヨシヒデ、ゲンキーのクランハウスだがな…」
魔王は愛を制しドキドキしながらヨシヒデに声を掛ける。
「おお! アレを見たのか! 凄いだろう! 自信作なんだ!」
不味い… 自信作とか言い出しやがった。
「ああ、凄かった! 映画も観たが、まさにあんな感じだった。
だが、俺やゲンキーは良いが、娘達にはもっとオシャレなビバリーヒルズやハリウッドにあるようなプール付きの豪邸とかの方が似合うんじゃないかと…」
魔王は下から頼む。
ヨシヒデには、何かと世話になっていて、魔王は強く言えない。
「なんだよ! 俺の仕事にケチを付けるのか?」
ヨシヒデの機嫌が悪くなる…
「そうじゃないって、若い娘達に似合う感じに外観を変えて欲しいんだ! もちろんタダとは言わない! コレを用意した!」
2つの巨大な酒樽を出す。
「コレは?」
ヨシヒデは興味津々で聞く。
「1つはドワーフの長老達しか飲めない特級ドワーフ酒! もう1つは上位神達が嗜む最高神酒、バッカス酒だ!」
「ゴクリ…」
ヨシヒデが喉をならす。
「しっ、仕方ねえ、ここまでされちゃあやらない訳にはいかねぇ! 娘達、相談してデザインを考えな! 思い通りのクランハウスを造ってやるから!」
ヨシヒデはご機嫌だ。
「「「「「ありがとうございます」」」」」
義理の娘ーズは凄く嬉しそうだった。
ゲンキーもヨシヒデから見えない位置でガッツポーズを決めていた。
「魔王様、良かったですね」
シンリーが良い笑顔で言う。
ヨシヒデは大事そうに2つの酒を飲み比べていた。
「おじい様、それで朝から出掛けていたの?」
愛が聞いた。
「ああ、娘達のためだからな!」
「「「「「お父様、大好き!」」」」」
デレデレだった。
「おじい様、何もかも終わったみたいな顔をしているけど、本番はこれからよ?」
愛が呆れていたが、魔王にはエカテリーナなどどうでもよく、娘達の事が気がかりでならなかった。
ヨシヒデに納得してもらい、義理娘ーズに感謝され、達成感でいっぱいだった。
「おまたせ致しました」
エカテリーナがテリーナを従えてやって来た。
魔王や嫁ーズに会釈をして通り過ぎて行く。
「さあ、初めるわよ!」
エカテリーナの第一声だった。
「母さん、アレはダメだ…」
マサトが言う。
「なんで?」
エカテリーナが不思議そうに聞く。
「テリーナが死んじゃうからに決まっているだろう!」
ナオトが叫ぶ!
「なぜ、それを…」
「シンリー様に見てもらったんだ… 軍でも徹底的に調べた… リサが作ったやつだと言う事も解っている… 他にも何か隠し持っているんじゃないのか?」
マサトが困った顔で説明する。
「そっ、そんなの知らないわよ… いいから早くして! テリーナもいいでしょう? お母さんのためよ?」
エカテリーナは、バレた事など微塵も気にしていない。
「私だって死にたくないわよ!」
テリーナも悲痛な顔で叫ぶ!
「テリーナ、よく聞きなさい? 貴方を産んだのは、こういったときのためのバックアップみたいなものなのよ? お母さんの役に立ちなさい」
そう言って笑ったエカテリーナの顔は見るに耐えないものだった…
「なあ、アイツにサンダーブレイクを落として消滅させてもいいか?」
魔王は、はっきり言ってムカついていた。
嫁ーズや娘、義理の娘達がいなかったら、とっくに次元の谷に落としていただろう…
「かっ、家族の問題ですから魔王様は口を出さないでください…」
エカテリーナがビビリながら言った。
「そうよね… そう言われちゃうと私達はタダの部外者だから… ナオトさんが爆発させるのがいいんじゃない? 私達、見なかった事にするから…」
愛も魔王と似たような意見だった。
「アモンさん、魔王様達も見逃してくださいますし… 跡形もなく消滅させてください」
エルフィーが無表情で言い放った。
「しかしな…」
アモンは困っている。なんだかんだ、ナオトもヤマトもエカテリーナには手が出せないでいた。
「みんな、なに物騒な事を言っているのよ! 平気な顔をして人を殺す話をしないでよ!」
エカテリーナが焦って声を荒げる。
「なら、親とはいえ娘を利用して殺そうとするのも見過ごせないな…」
魔王はかなり怒っていた。
「むっ、娘ではありません! バックアップのために用意した器です。私の所有物なんで、私がどうしようが自由じゃないですか?」
エカテリーナもムキになっている。
「口の減らない女だ! もうどうでも…」
魔王が頭にきてどこかに飛ばしてやろうと思ったとき…
「魔王様、もう少しお待ちください…」
シンリーが魔王を止めた。
「わかりました、やってください…」
テリーナがそう言った。
「そうよね! さすが私の娘! お母さんが貴方の分も生きるから喜びなさい!」
そう言って新しいスクロールを出した。
「ナオト、マサト、テリーナの気が変わらないうちに早く!」
エカテリーナが2人に命令する。
「出来る訳ないだろう!」
ナオトが怒りに震えていた。
「先に言っておきますが、エカテリーナさんがテリーナちゃんの中で転生するのは無理ですよ?」
シンリーが笑顔で説明を始める。
「えっ! なぜ…」
エカテリーナが凄く驚いている。
「魔王様が可愛がっていましたからね! 神様の元へ連れて行き加護も与えさせて聖歌姫にしました。
当然、魔王様と神様の神力で護られています…
そのスクロールを使えば魔法は跳ね返り、エカテリーナさんは失敗の反動で消滅していきます。
それでも良ければやってみると良いです」
シンリーはやれやれという顔をして説明した…
エカテリーナが青い顔をしている。
「そう言えば、テリーナちゃんとミサちゃんは魔王様がフライングして聖歌姫にしちゃいましたものね… 私、いろいろ苦労したんですよ?」
アコが当時を思い出していた。
「うっ、嘘よ! そんな訳ないわ!」
エカテリーナは自分に都合の悪い事は信じないたちだった…
「貴方? ガンガイアに住んでいたのに魔王様の力を信じないのですか?」
「それは…」
「やってみるといいです。マサト君は外れてください。こんな方でも親です。貴方を親殺しに参加させたくありません」
シンリーがそう言った。
「シンリーが言うのなら僕だけで大丈夫! エカテリーナが望むならスクロールを発動させるよ?」
エカテリーナは悩んでいる。
「ええやって。そんな事ある訳ないわ! 転生魔法は昔からあって普通におこなわれているものだもの!」
エカテリーナは自信満々だ。
「魔王、大丈夫だよね?」
ナオトが心配そうに確認する。
「ああ、シンリーの言う事に嘘はない。テリーナも安心しろ。エカテリーナ最後だ! 自分の愚かさを噛み締めながら消滅していけ!」
魔王が言うと、エカテリーナがキッと睨んでいた。
「じゃあ、いいんだね…」
「ええ」
「エカテリーナ… さようならだ!」
ナオトがそう言ってスクロールに魔力を込める! スクロールから煌く魔法陣が浮かびあがる」
「凄い魔法陣ですね!」
マーリンが驚いている。
エカテリーナが輝き! 魂が抜け出る。テリーナの身体に入ろうとするが弾き飛ばされる! 行き場所をなくした魂はエカテリーナの身体に戻っていた。
「何がおきたの?」
エカテリーナは状況が解っていない…
「魂がテリーナの身体から弾き飛ばされ、もとの身体に戻っただけだよ… シンリーの言った通りテリーナは魔王に護られていた。
君の身体も消滅しかけている。もう手の施しようがない! 安らかに眠ってくれ…」
ナオトが悲しそうに説明した。
「嫌よ !なんとかしなさい! テリーナはなぜ拒むのよ!」
エカテリーナが叫ぶが…
「知らないわよ… 私は覚悟を決めて立っていただけだもの…」
テリーナは複雑な顔をしていた。マサトも寂しそうだった。
「魔王様! シンリー様! お願いです! なんとかしてください!」
エカテリーナが叫ぶ!
「やだよ? 家族の問題なんだろう? 俺は口出し出来ないからな…」
魔王は嫌そうな顔をした。
「そんなことを言わないでください!」
エカテリーナは焦る。
「最後です。ホムンクルスに移りますか?」
シンリーが言うが…
「その方法しかないのですか?」
エカテリーナは最後までホムンクルスは嫌なようだった。
「もう一つあるぞ? テリーナかマサトのケータイに心を移してやる。エカテリーナアプリだ! 俺が本気を出せばそれぐらいチョロい!」
ドヤ顔で言ってやる。
「魔王様ー、私に何かあったら、魔王様のガラパゴスに移してくださいねー」
マーリンが言う。
「大丈夫だ。マーリンがあの状態になっても俺が全ての力を使ってでも助けてみせる」
「アプリなんて嫌です! 私も助けてください!」
「エカテリーナの為に全てをかけられる訳ないだろう! 俺がやってやれるのはケータイアプリだけだ!」
「どうします? どんどん消滅していってますよ? 魔王様そろそろ最後の時間です。
あとはご家族の方達で別れを惜しんでもらった方がいいかと思います。」
シンリーが言うので、あとはそっとしておく。
「お父様、クランハウスのデザインの相談に乗ってください」
ラサラが言う。
「そうだな? デラックス星の家みたいな感じがいいんじゃないか? 豪華なプールがあってカッコ良いんじゃないか?」
「そうですね、でも少し大人っぽいというか…」
ハルの好みではないようだ。
「ハルは可愛い方が良いのか? パステル色を使って可愛く仕上げるのもいいかもな…」
「お父さんがクランハウスを造るのならどんな感じですか?」
ゲンキーが聞く。
「島を丸ごと使ったサンダーバード基地かな…」
魔王が呟く…
「おっ、それいいな魔王島の近くの島に作ろうぜ… ひっくっ!」
ヨシヒデは完全に出来上がっていた。
「しっ! 死にたくありません! ほっ、ホムンクルスに移してください!」
エカテリーナが叫んでいる。
「魔王様、ホムンクルスを出してください」
シンリーの頼みで、アイテムボックスに収納してあったホムンクルスボディを出す。
「魔王様、魂の器を神気で満たしてください。エカテリーナさん、このボディを貸す以上しっかりと働いてもらいますからね!
マサト君、テリーナちゃん、ホムンクルスに移してもよろしいですか?」
マサトとテリーナが頷く。
シンリーがエカテリーナの胸に手を置き、魔法を掛けて魂を取り出す。その魂をホムンクルスボディに移す。
「目覚めなさい! ホムンクルスエカテリーナ!」
ホムンクルスエカテリーナは神々しく光り輝く! そしてゆっくりと目を開け起き上がる。
「皆様、ご迷惑をおかけいたしました。酷い事を言ってすみませんでした。テリーナさん、ごめんなさいね… 母として失格です…」
そう言って深く頭を下げた。
「シンリー様なんなりとご命令ください」
「とりあえずシンリーハウスのシンリーチェアに座っていてください。魔力の補給をしないと止まりますからね… 魔王様お願いします」
シンリーに頼まれ、シンリーハウスにホムンクルスエカテリーナを転移させる。
「お2人とも、あのエカテリーナさんは魂の善の部分です。少し少ないので、そっけなく感じるかも知れませんが、紛れもなく貴方達の母親です。いつでもシンリーハウスに会いに行ってあげてください。徐々に善の部分が増えていく事でしょうから」
「あの… また元に戻らないですか?」
エルザが心配している。
「魔王様の神気で魂を包みました。悪い心は浄化され消えていきます。キャメル神のとは違い永久的に効果は持続いたします。もう悪女が顔を出す事は絶対にありません」
その言葉に全員が安堵の表情を浮かべていた。
「魔王様、ご迷惑をおかけしました、母をよろしくお願いします」
テリーナが頼むと、マサトと2人で頭を下げていた。
テリーナは自由になり復帰してミサとの活動を再開する。




