魔王と女神27
翌朝、レインを連れてトバック星、ガリレイ王国のギルドに行く。
チェリーはナオトが、ルーザとサーザはアコとセシリーが案内をする事となった。
魔王は冒険者ギルドに入る。
「魔王様ー!」
慌しくサライが駆けてくる。
王と姫の様子を根掘り葉掘り聞かれ、Sランク依頼に出掛け何件か依頼をこなしギルドに戻る。
「時間が余ったな… レイン、飛行機でデートだ!」
ギルド本部の前に14mの真っ赤なロボットを出す。慌ててサライが飛び出してくる。
「こっ、これはなんですか?」
「ああ、出来立ての飛行機だ!」
魔王が嬉しそうに自慢するそれは、以前、将に頼んでいたバルキリータイプのロボットが今朝納品されたのだ。
「人型ですが…」
サライが不思議な顔をする。
「まあ見ていろ!」
街の人々が集まって来て物凄いギャラリーだった。
アコの音楽ライブに使おうと2人乗りで頼んであった。ワイヤータラップを下ろし、レインを抱えて、上りコックピットに乗り込む。
「しっかりシートベルトを締めろよ?」
レインにそう言い、計器類のチェックをする。
「魔王様、もう大丈夫です!」
レインの言葉を聞き、垂直に飛び上がる! 上空で飛行モードに変形し、一気に飛び立つ。
「おおー! 良い感じだ!」
魔王はノリノリで操縦する。操縦桿はギターではなく、操縦桿タイプだった。
「レッツゴー! ふんふんふ…」
魔王は鼻歌を歌いご機嫌で国の上空を飛ぶ!
国際問題になりそうだが、神をも倒す魔王に何か言える奴はいない。
城をパイロン変わりに急旋回して遊び、時折ロボットモードに変形してライフルやバルカンを撃って試す。
「よし、良い出来だ! 魔国まで飛ぶぞ!」
レインに告げ、マッハで飛ぶ。
魔王城の目の前でロボットモードになり肩のスピーカーポッドを開く!
「俺だ! 魔王だ! ウー達は皆楽しんでいる。安心しろ!」
そうスピーカーで一方的に伝え、満足して飛行モードに変形して飛び去る。
トバック星のあっちこっちの街を上空から見て回り、ギルドに戻る。
「レインどうだ?」
「ちょっと酔ったかも知れません…」
レインの顔色が悪かった…
「すまん、調子に乗り過ぎた…」
魔王は、とりあえず謝り、ギルド内のベンチで休憩する。サライが慌てて駆け寄る。
「あっちこっちから、何事かと連絡が入っています…」
そう困った顔をしていた。
「魔王がオモチャのテストをしていたと伝えておけ!」
魔王の返答に、サライが納得のいかない顔をして戻っていった。
「どうだ? 街にでも行くか?」
「はい!」
レインの回復を待ち、チェリーに聞いた店を回り、アコに頼まれた物を買う。
買い物を終え、美味いケーキのあるカフェでお茶をする。ケーキも追加で300個頼み、お得意さんとなっていた。
魔王達は満足しホテルに戻ろうとすると…
「魔王様ー!」
サライが駆けて来る。
「探しましたよ…」
「探すも何も、約束も何もしていないだろう?」
「そうですが、先程、王子様がおいでになられ、食事をご一緒したいと申されていて…」
「面倒くさいな、いかない…」
王子の誘いを一蹴するとサライが青い顔をして困っている。
「魔王様、お話があるんですよ? 行きましょうね!」
レインが気を使う…
「レインが言うなら仕方がない…」
魔王は渋々、城に向かおうとするとサライも付いてくる…
「お前も行くのか?」
「はい、一応、魔王様のお目付役を世界中から託されていますから…」
サライも不満げな顔をしていた。
「遠いな、飛んで行くぞ!」
「飛べませんよ…」
サライは飛べなかった、魔王は男を抱いて飛ぶのは嫌だ…
「仕方がない」
反重力自動車を出して車で城に向かう。
「タイヤが無いんですけど… 浮いて滑っていますが…」
「サライ! お口にチャックだ! 俺のする事をいちいち気にするな!」
魔王は面倒くさくなり、サライにピシャリと言って釘を刺す! 城に到着すると、丁重に案内され、レオ王子とヨーネ首相と食事をする。元勇者ラーもいた。
「魔王様、お呼びだてして申し訳ない…」
レオ王子が頭を下げる。
「まあ良い。話があるのか?」
「今後の事を聞きたくて…」
「そうだな、俺はこの星の神を倒した。だが、神は死なない復活させる事も出来る。
まあ、それで、1番偉い神に相談したんだが。
ここの神はろくでもない奴のようなのでな、そのまま休眠させておく事となった。
そこでこの星を、俺の住む次元の宇宙に転移させて、新しい神を呼ぶ事にした」
魔王のとっぴおしもない説明に、3人とも空いた口が塞がらなかった。
「まあだが、人族魔族が手を取り納得出来なかったら、この星は見捨てる」
そう続けて話た。
「見捨てられるとどうなるのですか?」
「この星全ての人間が一丸となりトバック神のために全力で祈りを捧げ復活させる。
それが出来無ければ、死の星となり、大地は枯れ動物はいなくなり、水も腐る。
魔素が大量に湧き魔物のパラダイスとなり人は滅びる。
そして最後は星の生命が停止して、爆発したり、化石化していく…」
レオの問いに魔王が答えた。3人が再び青い顔をして聞いていた。
「魔族はそれを望むと思いますか?」
レオが再び質問する。
「ああ、魔王ウーは俺の下についた。今、ウーは俺の星で部下達と遊んでいる。妻と娘も俺の妻達と一緒にいる。この星の人族が滅びを選択しても魔族は俺の星に連れていく」
3人が、またもや驚いていた。
「細かい宇宙の仕組みや惑星転移の話はガリレイが帰ってから聞け。今、覚えさせている」
魔王が面倒くさそうに告げた。
「あの、最近、消えた星は魔王様に、なにか関係があるんですか?」
ヨーネ首相が恐る恐る聞く。
「ああ、いろいろあってな俺が4つの星を、ザ、ワールド、俺の宇宙に転移をさせた。
妻のレインはこの星のそばにあった星の勇者だった、今は女王で俺の妻と言う訳だ」
「はい、私の星は神が甘く悪人がやりたい放題の星だったのですが、魔王様に再生していただき、今では良い星となって他の星とも付き合い発展の一歩を辿っています」
魔王の説明にレインが答えると、3人は驚いていた。
(コイツらは驚くことしか知らないのか…)
魔王はため息を吐いた。
「すみません。とっぴおしもなさすぎて何を信じていいか…」
レオ王子が困っていた。
「まあ、そうだろう… せっかくだ、いろいろ見せてやろう! 明日の朝出発でいいか?」
3人が頷く。
「せっかくだ、ラー、勇者の称号を返してやる。もう敵を見間違うなよ?」
そう言ってラーに勇者の称号を与える。ラーは激しく光、大勇者へと戻っていた。
そして翌朝、レオ、ヨーネ、ラー、サライを連れ魔王軍、演習場に転移する。
「よう! ウー、どうだ?」
「おおー! 魔王様! それに勇者ラーにガリレイ王国のレオにヨーネじゃないか!」
ウーは楽しそうにラー達に声を掛けた。
「魔王ウーよ、やけにフレンドリーじゃないか!」
ラーが嫌そうな顔で答える。
「ああ、もう魔王と呼ぶな。魔王様はそこにおられる方ただ1人だ。
お前達がどう言う答えを出すか知らんが、たとえ星を失っても我ら魔族は魔王様と、ともにある事に決めた」
ウーは爽やかな笑顔で言い切り、その笑顔に何の迷いもなかった。
そして宇宙戦艦ムサシに皆を乗せ発進する。
「どうだ? 初めて宇宙に出た感想は?」
レオ達は星の海を眺め固まっていた。ワープしコナス星に行く。
「あの星がお前達の宇宙から転移させたコナス星だ!」
「以前、ガリレイ国王に見せられた映像とそっくりの星です…」
ヨーネが星を見て驚く! コナス星に着陸し、開発具合を見て回る。タケルン達にも会い話を聞いたりした。
そしてコナス神にも会う。
「トバックって神を知っているか?」
魔王が聞く。
「はい、隣の星の神ですから… やたらギャンブルに誘う柄の悪い神ですよね… 何かありました?」
コナスが答え尋ねる。
「ああ、俺を殺そうとしたから消し去った」
魔王の返答にコナスが絶句していた…
「そうですか… 私の星の住人とトバック星の住人を戦わせ惑星戦争させたがっていましたから、この星を転移させた魔王様に腹を立てていたのかも知れませんね…」
コナスがガッカリとしながら説明した。
「なんでそんな事をしたかったんだ?」
「神々を集めてどっちが勝つか、賭事をしたかったんだと思います…」
魔王とコナスの話を聞いていたレオ達がガッカリしていた。
ムサシは帰らせて、転移でエメラーダに行くと… サーフィンを楽しむチェリーを見て4人が絶句していた。
「お兄様ー!」
魔王達に気づいたチェリーが笑顔で手を振り駆けて来る。
「お前、なんて格好を…」
レオがビックリして呟く…
「あら、ビーチでは普通の格好よ?」
水着姿のチェリーは悪びれる事なく言う。
ヤザンの店に行き、お茶を飲む。
「魔王様、姫の安全は大丈夫でしょうか?」
ヨーネが心配している。
「ああ、あの横にいる男な、人族最強だぞ? 大勇者ラーでは絶対に勝てないほどだぞ?」
「そっ、そうなんですか…」
ヨーネが驚く。
「それにこの星はリゾート地で平和だから、武器を持って歩いているのは、お前達ぐらいだぞ?」
「でも何かあったら困りませんか?」
ヨーネがしつこい!
「ああ、防衛チームもいるし。数万のドラゴンと竜人がこの国を守る。何の問題もない」
「ドラゴンって…」
魔王は面倒くさくて返事をするのをやめた…
「そういえば、お兄様達は場違いでダサい格好をしていますね… 服を買いに行きましょう!」
チェリーに連れられレオ達とサライはショッピングモールに行ってしまった。
「魔王様、なんだか面倒くさく思ってきてませんか?」
レインが聞くが…
「ああ」
答えるのも面倒くさかった。
「魔王様、充電です。心を休めてください」
レインが気を使い充電していた。
そして温泉旅館で皆と合流する。
ルーザ達も温泉旅館に泊まっている。レオ達と顔を合わせてお互いにビックリしていた。
とりあえず風呂だと、魔王は妻達と家族風呂に行く。
「魔王様ー!」
「レイン、駄目だと言っただろう?」
「魔王様ー!」
「マーリンも駄目と言ったじゃないか…」
「あっ! 本当だ! ちょっと大きくなってきましたよ?」
ミミが言う!
「やめろー! 見るなー! 誰だ! ミミとルナを呼んだのは! お前達も横から覗くんじゃない!」
「あっ! 萎んでいきます!」
ルナが興味深々だった…
「駄目だ… もうお婿に行け無い…」
魔王は四つん這いになって泣き崩れる…
「ちょっと握っても良いですか?」
「ミミ、触っては駄目だー!」
ミミに触られそうになり、魔王は絶叫し転移で男湯に逃げた。
「魔王、どうしたんだい? なんだかボロボロじゃないか…」
ナオトが心配そうに声を掛ける。
「ああ、痴女にナニを握られそうになって逃げてきた…」
「そっ、それは大変だったね…」
魔王はヤザン達やレオ達と温泉に浸かった。
「やっぱり男湯は良いな! ヤッフー!」
男どうし信仰を深め合った!
「魔王様ー、なんで逃げるんですか?」
アコだ!
「お前達が痴女をけしかけるからだ! もう俺は家族風呂に入らん! ってか、温泉には来ない! 家でジャグジーに入れれば充分だ!」
魔王はプンプン怒っていた!
「痴女って酷いです…」
ミミがガッカリしていた。
「ミミが魔王のナニを握ろうとしたのか…」
ナオトがめっちゃ驚いていた。
「レオ、さっさと飯を食って帰るぞ!」
魔王はエッチをした事もない女に、少し大きくなったところを見られて、プライドがズタボロだった。
終始気まずい雰囲気の中、食事をして、レインとレオ達を連れトバック星に転移した。
「魔王様、怒っていますか?」
レインが気にしている。
「いや、怒ってはいない。恥ずかしかっただけだ… 穴があったら入りたいと言う奴だ…」
「はっ、入りますか?」
「レイン…」
せっかくなんで入れさせてもらった。魔王はヤりまくり機嫌が治る。単純なエロ大魔王だった。
翌日はご機嫌だった。
冒険者ギルドに行き、Sランク依頼を受け仕事をこなす。
1日1回は魔国を見に行き変わりがないかを確認する。
そしてレインとデートしイチャイチャする。
楽しい日が続き約束の5日が経つ。
「さあ、帰るぞ!」
「そんなご無体な、ワシはもっとここにいたいのですじゃ…」
ガリレイがごねている。有無を言わさず転移する。
「嫌です! 帰ったらサーフィンが出来ないじゃないですか… ナオトさん、助けてください…」
ごねるチェリーに返事もせずに転移する。
「もう、帰るんですか…」
ルーザ達も嫌そうだが無視だ。
「もう少し! もう少しだけ!」
ウーと将軍達もごねていた。
面倒くさいからちゃっちゃと転移でトバック星に帰る。
ガリレイの冒険者ギルドのロビーに到着した。その面子に冒険者達はビビって建物から出て行った。
そして、ギルドの用意した会場で2日後に世界会議を開く事となった。
魔王は各々を強制転移で送る。
「さて、ケーキを取りに行くか!」
「はーい!」
レインとカフェに行き、ケーキを受け取り、お茶をする。
「レインどうしたい? あと2日、こっちで泊まるか、それとも家に帰るか?」
「もう少し2人でいたいです…」
そう言ったレインはとっても可愛く、もう少し2人でホテルに泊まり冒険者活動をする事にした。
翌日、冒険者ギルドに行くとガリレイが待っていた。
「魔王様! ロボットに変形する飛行機を見せてください! 宇宙船と浮いて走る車もですじゃ!」
ガリレイの圧が凄く、城の庭に出して見せてやる。
せっかくなんで、魔神ガイアー、ドラグーン、小型宇宙戦艦テスター、反重力バイクやカーなど、アイテムボックスの中にあるマシンを次々と出して見せてやった。
ガリレイは各マシンに驚いていたが、レオやラーは空間収納の広さに驚いていた。
「さあ、もう良いだろう? 俺は仕事に行く…」
「わかりました! ギルドにSランク依頼を出します! 宇宙戦艦で宇宙に連れて行ってください! お願いしますじゃ!」
「わかりました!」
サライがその場でささっと書類を作り金額を交渉する。さすがはギルド総帥、ささっと話を纏める。
「仕方がない。テスターに乗れ…」
王と王妃、お付きの者や大臣達を乗せ飛びたつ!
「おおっ! これが宇宙か… アレがワシらの星か…」
ガリレイは感動で泣いていたが、王妃や大臣は恐怖でプルプルと震えていた。
しばらく宇宙を飛びワープをしたり亜高速で飛んだりしてみせる。
ガリレイを満足させ王国に帰り、夕食は城で王達と頂く。
「魔王様、お城でのお食事は緊張しますね…」
「レイン何を言っている? お前も女王だ、これから幾度となく城で食事をするんだぞ? 俺の妻でコナス星の女王、連合星の殆どの星から会食の申し出があるぞ?」
「魔王様、助けてください! 私、女王じゃなくて、ただの妻が良いです… タケルンさんを王にしてください! お願いします…」
レインが困っていた。タケルンは元魔王だが、シュシューにボコボコにされ、己を知り変わった。
今では、マ国の首相として立派に民を導いているし、各国を導く代表でもある。
タケルンがいるからこそ、こうしてレインと出掛ける事が出来ていた。
「うん、タケルンを国王にしても問題ないな… 愛と相談してみる。なんなら国王制度を廃止しても良いしな」
皆の前で夫婦の会話をして話を聞かせてしまった。
「誰かに国王をやらせるとか国王無しとか…」
レオ達は驚いていた。
「ああ、俺が関わっている星ぐらいだが、王なんてただの飾りだ。いてもいなくてもどっちでも良い。貴族制度や奴隷制度も廃止して、民衆が選んだ首相や政治家が星を運営している。
俺の周りには、そんな星が多いな」
レオ達は困った顔をしていた。まあ目の前で王族が無用の物だと言われれば困るのは当たり前だろう。
「魔王様はガイア星の王ではないのですか?」
レオが聞く。
「ああ、もともと、ガンガイア星の王をしていたが、孫に押し付けた。
で、ガイア星を開拓したとき、孫をガイア星の女王にして、ガンガイア星を息子夫婦に押し付けた。
孫はそれなりにガイア星の女王をしているが、息子夫婦は、ガリレイの先生を務めたシンリーに押し付け、自分の好きな仕事をしている。先程見たマシーンは息子が造ったんだ」
魔王は細かく説明した。
「魔王様は支配とかには興味がないのですか?」
ヨーネが聞く。
「ああないな、支配なんて面倒くさいだろう? 俺は自由に生きたいんだ! 好きな事をして好きなときに好きな場所に行く。何者にも命令されず、遊び尽くす。それが俺のモットーだ!」
魔王の言葉に。ガリレイは羨ましそうに、うんうんと頷いていた。対照的にレオ達は困った顔で考え込んでいた。
食事をご馳走になり、ホテルに戻る。
「魔王様、レオさん達ビミョーな感じですね…」
「まあ、権力者は、なかなか自分の立場を捨てられないからな…」
「ですね…」
レインはレオ達の事を思い出し少し寂しそうだった。
翌日はギルドの依頼をして1日を終え。
約束の世界会議の日が来た。
人族からは国や街の60名の代表者達と魔族からはウーとルーザの2人が参加した。
集まった全員に、神のいない星がどういう結末を送るかを教え、惑星転移の事も伝えた。
その後、人族の代表のみで話し合いをおこなった。
「我ら人族はこの星に留まる事を選びます!」
レオが代表して宣言した。
「そうか、解った」
魔王は納得する。
「我ら魔族は星を捨て魔王様と共にありたいと思います!」
ウーが宣言する!
「ちょっと待ってください! 星は滅びるのですよ? たとえ神を復活させても、また人間どうし戦わせられて滅びる可能性もあります! なぜそんな道を選ぶのです!」
レインが理解出来ないとばかりに持論を語る!
「ワシもそう思うのだが、皆、権力を捨てられないそうじゃ…」
ガリレイも悲しそうだった。
「そんな事のために…」
レインは絶句してしまった…
「レイン、考えは人それぞれだ。俺達が口を出す事じゃない… 結論は出た尊重しよう」
魔王がレインにそう告げると、ウーが話し始める…
「人族よ、共に生きる事が出来なくなり残念だ。あの神がいなくなった今なら手を取り合う事もできただろうに、魔族は魔王様に付いて行く。
魔族が退去した後ならば、魔国は好きに使ってもらって構わない…」
ウーが寂しそうに伝えていた…
「あの、皆さんの考えが理解出来ないので、私を代表に転移希望者を集めたら魔族の方々と一緒に連れて行ってもらえませんか?」
チェリーが魔王に尋ねる。それはチェリーの独断だった。
「それで残る者達が納得するなら構わぬが?」
魔王がそう答える。
「ギルドは国とは違う組織です! ギルドからも転移希望者を募ります! 偉い人達の我儘で人々を見殺しには出来ません。
それに私自身も死にたくありません! 私達も是非連れて行ってください。魔王様お願いします」
サライも力強く言った!
「わかった、だが新たな星だ! 身分を捨てて人生を一からやり直す覚悟がある物に限る。そして転移で移動するため持っていけるのは手荷物程度だ、それで構わない者だけを集めろな…
各自だいたいの人数を示せ! 多ければ新しい星を用意する!」
魔王がそう告げ、人魔会議は終了する。
その後、集計を取ると魔族300万人、人族は400万人ほど集まった。
星を造るには少ないが、神の滅んだ死の星で、魔物が多く開拓に向きそうな星を選び、本格的な星再生プロジェクトを発動する。
ヨシヒデがトップとなり張り切って開拓して国や街を造る。
人族を集めた立役者の1人、チェリーのためにサーフィンが出来る海辺のリゾート地なども造り、冒険者も多い事から魔物が多い星を選び、ゾラ、ナス、コナス、サイン、コサインと冒険者が出稼ぎにも行きやすいエリアに星を配置した。もちろんガイアにも近い。
魔王は開発の間にもトバック星ガリレイ王国のギルドに定期的に顔を出していた。
「魔王様、移住希望者がどんどん増えていくのですが…」
サライが困ったように説明する。
「ああ、大丈夫だ。そんなのは想定内だ。星を1つ用意した。国などいくらでも拡張できる!」
魔王は自信満々で答えると、サライは安心した顔をする。
「ありがとうございます。1人でも多く集めたいと思います」
サライは人々思う良い奴だった。
「魔王様、聞いてください! ウー様が私に女王になれと言うんです… ウー様を国王にしてください!」
「いや、私は力だけの魔王だった。新時代には無用だ…
チェリーが政治をすればいい! それに魔王軍に行ったりしたいし…」
チェリーとウーが星の王を擦りつけ合っていた。
「そう嫌がるな… 誰か適任者がいれば良いのだが… とりあえず王や女王は飾りだ。
星が落ち着くまで名乗る程度で良い。あとは優秀な首相がやってくれる」
魔王は2人に説明する。
「「首相⁉︎ 誰か適任者がいるのですか⁉︎」」
2人が声を揃えて驚く。
「目の前にいるだろう? 人々を思い1人でも救おうとして、頑張っている男が!」
魔王が答える。
「あっ、サライさんですか?」
頷いてやると…
「おお、うってつけの人材ですな!」
チェリーも気づき、ウーも納得していた。
「わっ、私いー!」
サライが裏返った声で叫ぶ!
「そうだぞ? 既に俺を相手にじゃんじゃん人員を増やす交渉を何度もしただろう? 外交交渉も完璧じゃないか! 新しい星で皆を導き後進を育てろ」
「はぁ、私で良ければ頑張りますが…」
どこか納得がいかないようだが、サライは首相に決定した。
「サライ殿、宜しく頼のむ!」
「お願いしまーす」
ウーとチェリーが嬉しそうに声を掛けていた。
そのとき、ギルドの外に1台の馬車風の車が止まる。
「またどこかの貴族が、貴族待遇で連れて行けと交渉に来たのですかね…」
呆れたようにサライが呟く。
サライは毎日のように、交渉に来る貴族の相手に条件を説明し納得させて追い返していた。
中には身分を捨てて、一般市民になる事を決めた貴族もいるそうだが、1割にも満たないと嘆いていた。
「やれやれ…」
サライが説明をしに行こうと歩き出したとき、降りて来たのは… ガリレイだった。
「魔王様! ワシも連れて行ってくだされ!」
王妃も横で頭を下げている。
「王様、ですが…」
サライが言い掛けると。
「わかっておる! 王座はレオに譲った。ワシも平民で良い。もっと新しい世界が見たいのじゃ!」
「お父様、お母様…」
ガリレイの言った言葉に、チェリーがウルウルしていた。
「そんな訳でなチェリー、ワシ、貧乏人になる。ワシら2人を養ってくれな。ハッハッハッ!」
ガリレイが豪快に笑っていた。
「そうか、ならな、ガリレイ、お前、王をやれ! 2人も嫌がっているしちょうど良い! ついでに王妃には外交官を任せる」
魔王は丁度良いとばかりにガリレイに新しい星の王を押し付ける!
「ええ、ワシも好き勝手に生きたいんですじゃ!」
ガリレイは抵抗する。
「まあ聞け、王様ならそれなりに給料も出る。2人仲良く外交に出て星々を見てこい! リゾート星やら近未来都市、さまざまな星が見られるし、外交用の宇宙船はガイアで建造した最新鋭機だぞ? しばらくでも良い後進を育てて、やりたい事を見つけてはどうだ?」
魔王から出された破格の提案にガリレイは息を飲む。
「近未来都市… 最新の宇宙船… 解りました! 頑張らせていただきます!」
ガリレイが答えると、
「私に出来るか解りませんが頑張ります」
王妃も承諾した。
「ああ頼む。それとこの話は転移が終わるまでは皆にはナイショだ。他の王族や貴族が我もと名乗り出てはサライが苦労するからな…
これでチェリーは自由だが、ウーは魔王として魔族のシンボルではいろ! シュシューもそうしているし、アイツも自由に魔王軍に出入りしている構わんだろう?」
「はい、シュシュー殿も自由そうですし、それなら大丈夫です」
魔王の案にウーが納得すれば…
「わーい、これでサーフィンに打ち込める!」
チェリーも喜んでいた。
ちゃんとした王と外交官が決まりサライも安心していた。そして、ヨシヒデ達の頑張りで星は完成した。
まず最初から転移を希望していた魔族を全て転移させて、人々を段階的に転移させる。
移住者達に街や家を割り振っていく。サライがあらかじめ希望の職業聞いたり特殊な職業の者達を調べていたおかげで、新しい国への移民はすんなりと進んだ。
やはり王や貴族の犠牲にはなれないと、どんどん移住者が増え、新たな街作りに終われ、完成すると転移させを何度も繰り返した。
「最後、ラーで終わりだな」
ガリレイ城の庭にレオ達とヨーネ、数多くの貴族も集まっていた。
「勇者ラー様まで、行ってしまうのですか?」
どこかの貴族が聞いている。
「ああ、俺はこの星と心中するつもりはない。仮にトバック神を復活させたとしても、ゲームのコマにされるのはゴメンだ!
魔王様の手伝いをして、新しい星を守るのが俺の役目だと思っている」
ラーはそう言い切った。
「魔王様、私達はどうしたら良いのですか?」
ヨーネが聞く。
「ああ、最初は400万人程度の予定だったが、平民の殆どが新しい星に転移した…
残った人間で毎日、トバック神復活のために心からの祈りを捧げろ。人が少なくなった。
10年か20年は掛かるだろうが祈れば希薄だが復活するだろう…
あとな、もう星の消滅は始まっている。
大地は枯れ大気や水が悪くなり動物は絶滅していく、食料と身体を大切にな」
魔王は寂しそうな顔で説明した…
「そっ、そんな…」
ヨーネはもちろんレオや貴族も絶句していた。
「何を驚いている。同じ事を人魔会議で説明しただろう? 己の保身に拘ったのはお前達だろう? 世界中の王族や貴族を集め一つの街を造り、皆で協力して畑を耕し魔物を狩って生きてゆけ、10年ぐらいして俺が忘れていなかったら見に来てやる… 1つ言っておくが、子孫は増やすなよ…」
そう呟き、貴族の子供達を見る…
「魔王様、お願いです! 子供達だけでも連れて行ってください!」
1人の貴族の妻が叫ぶ。
「構わぬが、行き先は孤児院だぞ?」
そう告げると…
「孤児院など嫌です! 私を誰の子供だと思っているのです!」
子供が真っ赤な顔で怒っている。それを母親が青い顔で見ていた。
「まあ、そう言う事だ、さて、ラー行くぞ! 皆の者達者で暮らせ!」
「待ってくださいー!」
レオが叫んでいたが、魔王は無視して転移する。
「最後まで愚かでしたね…」
ラーが呟いた…
「権力者なんてあんな者だ2〜3年もしたら、一度見に行く、改心していたら連れて来てやる」
「優しいですね…」
「忘れていなければだがな…」
ラーと雑談しながら王の間に行く。
「さあ、転移は終わった。メタル星の始まりだ! ほら、アクマン神、この星を頼むぞ!」
新しく派遣された神はアクマン神だった。
「もー! なんで僕が…」
「仕方がないだろう? 俺の周りにはポンコツ神ばかりだ… 自分の星の管理すら危うい連中だ、掛け持ちは無理だろう? その点アクマンは優秀な最高神。星の1つや2つ増えたところで関係ないだろう?」
「チェ! 仕方がないな… 魔王の頼みだ引き受けるけど、基本、放し飼いだよ?」
「ああ、それで良い! 星さえ生きていれば、あとは何とかする!」
アクマン神も引き受けてくれ、新しい星は動き出した。
「魔王様、お疲れ様です。やっと終わりましたね。残った方々はどうでした?」
レインが心配していた。
「ああ、なんとかなるだろう… 数年したら見に行ってやる」
そう教えると、レインが心配していた。
ラーを迎えに行くときは、レインは連れて行かなかった。見捨てるような別れは気持ちいいものではないからだ。
「愛様が今日は温泉だと張り切っていましたよ?」
「じゃ、今日は帰らないでおこうかな…」
「泊まりですか? 私もご一緒して良いですか?」
「もちろんだとも!」
レインがホテルの予約を取りに出て行った。
「そういえば、ガリレイはどうした?」
「はい、さっそく外交だ! 視察だ! とテステラ星に行かれました…」
サライが困っていた。
肩に手を置き「頑張れな…」魔王は、そう言って労った。
「魔王様…」
「ルーザ、どうした?」
「ウーがガイア星に行ったまま帰ってきません…」
内政を手伝うルーザも困っていた。
「顔を見たら、ほどほどにしろと言っておく」
「お願いします」
皆、自由だった。そう、もう1人の自由人と言えば… レインと合流し転移で様子を見に行く。
「魔王様ー!」
真新しいビーチをチェリーが駆けて来る。
「見てください! 私のサーフショップ!」
ビーチから見える場所に可愛らしいカフェ&サーフショップ、チェリーブロッサムがある。チェリーの店だ。中に入ると、ジジリンがいた…
「お前どうした?」
「新しい星でサーフィンを広めようと思ってな! 手伝いにきた訳じゃ!」
ジジリンは使命に燃えていた。
「ミミ、お前もか?」
「魔王様が痴女とか言うから… 恥ずかしくてガイアから引越しました!」
ミミが膨れている… 魔王は、1人でテーブルに座りコーヒーを飲むナオトを発見した。
「お前まで何をやっている?」
「チェリーちゃんに呼ばれたんだ…」
「良かったじゃないか! 付き合うのか?」
「僕はそのつもりだったんだけど… どうも師匠と思っているようで…」
ナオトが呟きガッカリしていた。
「まあ、師弟から始まる恋もある頑張れ!」
「そっ、そうだよね! 休みの日には顔を出すようにしようかな」
ナオトは単純で、ちょっと嬉しそうな顔をしていた。
その後はレインと新しいショッピングモールに行ったり、あちこちを見て回り、ホテルに行く。
「なかなか良いホテルだな!」
「真新しいですからね!」
ホテルのレストランの食事もなかなかだった。
「お部屋も豪華です!」
レインのテンションが高かった。
「魔王様、ベッド、ふっかふかですよ?」
「そうか、ふっかふかか、試さなきゃな…」
とりあえずお試しの1発をヤってしまう。
そしてレインと熱い夜を過ごし魔王は大満足だった…




