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ジジイの異世界記  作者: パパちゃん
14/546

その14

国造りは順調! 愛のレベルアップも順調! 守護獣達も順調に育ち大きく強くなっていく…

良い日は続いていたが… 小さな面倒事はやってくる。


ギガンティスは鎖国をしている状態で、他国に面した場所には壁があり門は閉められていて、国全体に結界障壁が張られている。

ただ、他国に面していると行っても、もともとギガント帝国の土地はは広く、ギガンティスの塀の外は誰の土地でもなく門の前には広大な広場があり、その向こうには森と他国からの街道などがある。

また、アルブの街のようなギガント帝国領の離れた街は国が突然なくなり困り果てて隣国を頼ったり、街々で協力して生き残ったりしていた…


ヤマトの格は神人、普通の人間に彼の張った結界は破れない。

そんな訳で、入国するには門を通過する方法しかなかった。

庇護を求めて来る者も多いため門の監視は常駐している。

その、門を監視していた騎士から連絡が入る。


「変な団体が来ました! 門の前で騒いでいます!」


魔王はやれやれ…と思い。


「わかった、俺が対応する」


騎士に伝えて門に向かった。


門は開けず、魔王は飛び上がり空中から門の外に出て眼下を眺める。

正面に貴族風の衣装を着た成金みたいな奴が300人ほどがいて騒いでいた。

馬車も300台以上が並んでいて、左右の森には冒険者だろうか? 強そうな連中が100人ぐらい隠れ潜んでいる。


(よくもまあ、もこんなに集まったものだ…)


魔王はため息を吐いた。


鎧も着ず無防に門の前に降り立ち正面の成金達の前まで歩いて行く。

ここで立ち止まると左右から挟み打ちをくらうだろうが、どうということもないと気にも止めない。


「なんだ、お前ら?」


魔王は面倒くさそうに聞く。


「奴隷商組合の者だ!」


集まっていた連中の中から、60代半ばで腹の出た恰幅の良い紳士が代表で前に出て、その雰囲気に似合わぬ感じで凄んでいた。


「何の用だ?」


だが、魔王は凄まれたところで気にもしない…


「亜人や孤児を解放しろ!」


答えは想定通りだった…


「はあ? 我が国は無理強いをして監禁している訳ではないぞ? 本人達の希望だが?」


「お前では話にならん! この国の代表を呼べ!」


代表の男が怒鳴ったとき…


「俺が、その代表の大魔王だ!」


魔王は面倒くさくなり、ちょいギレで魔王の波動を放つ!

冷たい凍るような殺気がその場を包み支配する…

全員の腰が抜けて立っていられる者はいない。

気絶している者もいる。

偉そうに怒鳴っていた奴が震えながら…


「やれ!」と叫ぶ!


森から一斉に矢や炎の魔法が放たれて雨のように降り横から一直線に風や雷の魔法が魔王に襲いかかってくる!

当たる寸前まで待ち転移で空中に移動して、その場を眺める。

次々と矢や魔法が魔王のいた場所に着弾し爆発して炎や煙が上がる。

それと同時に剣を持った奴らが飛び込んでいった。


(バカだな… 気配でわからんかね? S級だっているだろうが…)


魔王は眺めながら、そう思いため息を吐く…


だが、中には感知魔法や気配を察知する者もいるようで、少し遅れて魔王を見つける。


「上だー!」叫び声が上がる。

1人の冒険者が叫んだとき…


「面倒くさいな… グラビトン!」


魔王は手加減して重力に潰されて死なない程度に魔法を掛ける。

冒険者達も奴隷商人達も限界ギリギリの重力に潰されて、その場を動けない…

魔王は地上に降り立ち周りを見渡す。

すると、見知った顔がいた…


「お前、ダーガじゃないか?」


ダーガは唖然とした顔をして魔王を見る!

炎の剣の連中も魔王に気づく!


「雷帝様!」


炎の剣のメンバーの1人が叫んだ!

魔王は炎の剣のメンバー7人のグラビトンを解除すると魔王の元に集まって行く。


「お前達、俺と敵対するのか?」


魔王がダーガ達に聞くと…


「大魔王がアンタだって知らなかったんだ…」


そう答えて炎の剣のメンバーが次々と話し出す。


「僕達は人質救出作戦に参加しただけなんだ…」


「雷帝様に敵対する気なんてありません…」


炎の剣のパーティーメンバーは魔王の凄さを嫌と言うほど知っていた…


「わかった、お前達…」


魔王は悪い顔でニヤける。


「では、死ね!」


突如、真顔になり他の奴らに聞こえるように叫ぶ!


その瞬間に7人が真っ黒な球体に包まれて浮き上がり、キューン! キューン! と不気味な音を立てる!

ダーガ達は真っ青な顔をして叫んでいる!

だが、黒い玉はボシュっと嫌な音を立てて爆縮して消えた…

その場の全員が一瞬で炎の剣が消滅した瞬間を垣間見て、その場が恐怖に包まれていた。


「さてお前達はどうしたい?

地獄の炎に焼かれたいか?」


魔王が座った目で見据えると後方に置かれている馬車が1台2台と黒い炎に包まれ焼かれていく…


「それとも、稲妻の獣に食われたいか?」


魔王が指をクルリと回すとライガーを形どった紫の稲妻が現れて冒険者や奴隷商人の回りを走り威嚇する。

魔王に怒鳴っていた男の腕を食いちぎる!

傷口は焼け爛れ血は出ずにすぐには死なない。

だが、その男の断末魔のような悲鳴が響き渡り。

次は自分の番かと全員がブルブルと震えている。

その場の全員の心が折れて死を覚悟して助かりたい一心で神に祈っていた…


だがそのとき、グラビトンが解除されて紫電のライガーが拡散していく…

魔王は腕を食い千切られた男の前まで行き…


「今から、お前の国を消滅させる。どこに住んでいる? 言ってみろ!」


偉そうだった男は口をつぐむ…


「俺に黙秘が通用すると思うのか?」


魔王がムッとしながら言った。


「もう一度だけ聞く、何処に住んでいる!」


それは、真実の言霊だった。

質問された男の口が勝手に動く…


「わしは… バンル国王都に住んでいます…」


自分で話して驚愕の顔をする!


「あの方角か…」


魔王が指を刺して呟く。


「お前ら、さっきの冒険者が俺のことを雷帝って呼んだだろう?

ラックの街の話を聞いた事があるか?

巨大な岩が空から火を吹き降ってくる魔法を!

特別にお前達に見せてやろう!」


魔王は天を指差すと全員が空を見上げる。


「メテオ!」


魔王が派手に叫ぶ!

突如、空から巨大な隕石が大気圏の摩擦に焼かれ火を吹きながらバンル国に向けて流れ落ちていく!

男は涙を流し許しを乞う、家族がいるからと…


「魔王の俺に慈悲はない!」 


冷たい顔で言い放つ!


「なんでもします」


男は懇願する。


「お前達全員、今から俺の下僕となるか?」


魔王が全員を見回して問う。

すると、全員が頷いた。


「わかった、チャンスをやろう…」


瞬時に鎧を装着する。

全員の目が釘付けだ!

少し浮き上がり腰のヘキサゴンバレルに意識を集中する。

「魔導砲!」極太の黒い光を紫の稲妻が包みスパークしながら一直線に飛んでいく!

空から落ちてくる燃えさかる巨大な岩を塵も残さず消滅させた!


その場にいた者達は本能で悟った。

大魔王には逆らってはいけない。

死よりも辛い何かが待っていると…


紫電のライガーに腕を食い千切られて死にかけている男の横に降り「エクストラヒール」を掛ける。

焼け爛れ、ぼろぼろだった傷がみるみる治り肩から新しい腕が再生される。

その光景は神の奇跡のようで、見ていた者達に尊敬の念が生まれる。

悪魔のような力を持ち神のような技を持つ、それが、大魔王なのだと…

鎧を脱ぎ、おもむろにポケットから「ガラパゴス」を出して連絡をとりナオトを呼ぶ。

鎧を着た「爆炎の勇者」が現れる…

それは噂に聞く姿そのもので、皆、一目で察する事が出来た。


「ナオト、冒険者達を中に」


ナオトは頷き冒険者達を街に誘導する。

そして魔王は奴隷商人達に、アイテムボックスからマーカーを出して一つずつ手渡す。 


「お前ら、それを持って帰れ!」


皆、解放されるとは思っておらず、一旦驚き、そして安堵の表情をする…


「解放してやる!

ただし、それを捨てる事は許さん!

誰か1人でも捨ててみろ連帯責任だ!

この大陸の全ての国に、メテオの雨を降らせるぞ!」


もはや、脅しだと思う者は1人もいない。

全員が青い顔をして震えて頷く。

誰かが約束を違えれば、この世界は地獄と化す。

全員が持たされたマーカーを大事そうに懐にしまうが…

帰って良いと言われても誰もその場から立ち上がれない状態だった…

精神的疲労が大きかったのだろう。

衰弱している者も多い…

仕方がないと魔王は思い、奴隷商人達に手を翳し「癒しの光」を放つ!

全員がビクッ! とするが抵抗は出来ない。

そのとき、辺り一面が光り輝き疲労が回復する。

持病も怪我も全てが治る…

驚きと戸惑いが場を包む。

1人1人と立ち上がり帰り始める。

馬車を燃やした奴もいるが、乗合で帰るだろうと魔王は踵を返し王都に戻って行った。


門を潜ると炎の剣のパーティーが待っていた…

空間ごと消し飛んだように魅せた転送魔法… 転移魔法を応用したものだった。


「おう、お前ら悪かったな!」


魔王が笑顔で謝ると、ダーガ達、炎の剣のパーティーメンバーは青い顔をしながら頷く。


「なぜ、あんな連中と手を組んで攻め込んで来た?」


魔王が聞くと、ダーガが気まずそうに…


「ギルドに大規模な依頼が来たんだ… 囚われた亜人達の解放作戦の…」


説明した。


「信じたのか?」


魔王が怪訝な顔で聞くと…

ダーガが噂があるんだが… と前置きして、


「大魔王が現れて北の森の魔王と共闘してギガント王国を侵略し王都を落とした…

そして、大陸中の亜人を集めて国を造り戦争の準備をしていると…

最近では亜人だけでは足りず孤児まで攫っているとも…」


ダーガが説明する。


「酷い言われようだな…」


魔王はやれやれといった表情だ…


「雷帝様、本当なんですか?」


炎の剣のメンバーが魔王に問う。


「雷帝じゃない、大魔王だ!」


そう笑い。


「いろいろあってな… 俺の母を攫われて、俺は1人で城に乗り込んだ…

王は全ての民の魂を喰らい魔人となったが、俺が倒した。

そして誰もいなくなった無人の王都を手に入れて北の森の連中と協力して国を造る事にした。

亜人は集めた訳じゃなく庇護を求めて集まって来たんだ。

ただ孤児は俺が集めたがな。

亜人が少なくなった今、孤児を奴隷目的で取り上げたり攫ったりする奴が出てきたからだ。

まあ、ざっとこんなところだな…」


魔王はそう説明した。


だが、ダーガ達は複雑な顔をする。

魔王を信じたい気持ちもあるが、王が民の魂を吸って魔人化した事や、魔王1人で魔人を倒した事など、話が大き過ぎて理解に苦しんでいた…


「爆炎の勇者が他の冒険者達と話をする。詳しい話はそこで聞いてくれ」


そう告げて、他の冒険者達の所に連れて行くが…

魔王の姿を見た冒険者達が引き攣った顔をしていた。

聞けばSランク冒険者が10人もいた…

Sランクって人外と呼ばれる者だろう? もっとしっかりして欲しいと魔王は思っていた。

ナオトには冒険者達を1週間ほど滞在させて国を造った経緯や真実を教え街を案内して見せてやれと指示をした。

その後は無条件で解放してやれとも命じた…


Sランクを含め100人の冒険者が消えてギルドは大騒ぎになっているだろう。

そして、この国の内情を知った冒険者が帰ればギルドや国からの事情聴取が始まり真実が明るみに出る。

Sランク冒険者は信頼度が高く後ろ盾に国が付いている者もいる。

嘘だとは思われないだろうし真実が広がれば良いといった思惑があった。

そして、魔王は聞いた者が恐怖して恐れ慄く様にと、本来なら冒険者や奴隷商人如きを脅す為に使う必要もないメテオや鎧の力を使い演出もした。

仮に敵が増えたとしても今更だ。

魔王となり国を造った以上、世界と敵対してでも護り抜く、魔王はそう決心していた。


冒険者を解放した後、魔王はヤマトに聞く。

冒険者達は驚き驚愕したことを…

この国は、この世界の国では珍しく綿密な都市計画のもと道路を造り、王城、教会、病院、学校、都庁、商業施設、民家を計画的に配置して、建物は日本の技術をベースにして美しく機能的な都市となっていた。

そこで楽しく暮らす人間や亜人、孤児達の姿も見せた。

魔導列車や魔導飛行船にも乗せ、バスで各街を回った。

森や湖は美しく妖精が飛び回る光景は御伽噺の世界の様で驚嘆のため息に包まれていた。


(ナオトめ、ちょっとやり過ぎだな。

これを聞いた人間がどんな行動をとるか想像がつく。

まぁ良いだろう、この国を愛に任せる前に面倒ごとは力ずくでも潰しておく!)


魔王はそう思っていた。


ヤマトから冒険者達の話を聞いていると…

ゴーレムがお茶を運んで来る。

人型の女の子だった。


「ヤマト、これはなんだ!」


魔王は驚いてヤマトに迫る!


「ホムンクルスとかいうやつじゃが?」


何を驚くとばかりにヤマトが答えた。


「お前が造ったのか?」


「違う、ヨシヒデ達より数世代前じゃったか?

忘れちまったが、変わった勇者がおってのぉ…

エレキテルとかカラクリばかり造っておった…

もうとっくに死んでおるが…

子孫が代々、変わった研究ばかりしておる… 奴に貰ったものじゃ!」


ヤマトが教えてくれた。


「そいつを、紹介してもらえないか?」


魔王は気になって仕方がなかった。


「ええぞ! じゃあ付いて来い!」


ヤマトの転移で跳ぶ!

着いた所は、元アルカディアがあったダンジョン跡の洞窟の中だった。

ヤマトの魔力も無くなりダンジョンは小さな地下洞窟となっていて、そこに、ぽつんと工場が建っている…


「なんでだ? 引っ越す所が無かったのか?」


魔王が不思議に思って聞くと…


「いや、勧めたのじゃが、ここがええと言い張ってのぉ…」


ヤマトが困った顔をして工場に入る…


「おーい! マル、いるかのぉー!」


ヤマトが叫ぶ!


「うるせぇーなー!」


40歳ぐらいに見える男が出て来た。


「なんだよ! ここは出ていかねぇーぞ!」


勇者の末裔だが、ドワーフとのハーフで人間よりドワーフ寄りで背が低くガッチリとした体型だった。

ぶっきらぼうな感じでヤマトにも臆する事なく文句すをを言う男だった。


「そんな話じゃないわ! お前にお客だ!」


ヤマトは絡みにくそうだ。


「魔王のノブだ。よろしく!」


魔王が挨拶する。


「魔王様か! マルってんだよろしくな!」


マルと言う名で、ぶっきらぼうだが悪いヤツではなさそうな印象だった。


「ホムンクルスを見せてもらった… 更に高性能なのは造れるか?」


さっそく本題に入る。


「ああ、ただどれだけ高性能に造ってもな… 魂の無いオモチャだ… 人間のようにはならねぇ…」


マルが残念そうに説明するが…


「そこで、お前に頼みたい…」


魔王は計画を説明してマルの作品をいくつか見せてもらう。

彼の能力はこの世界でも破格の部類だと解った。

いろいろ協力してもらいたい事もあるが、まずは、最高傑作のホムンクルスを造って欲しいと頼んだ。


奴隷商人達を解放してから1週間が経つ。魔王は脳内マップを眺める。

大陸中にマーカーが動いている。

これで、主な都市や街は網羅出来る事となる。

既に街に止まっているマーカーも何個かあった。


魔王が孤児を回収しに行ったときは、孤児を街や村から移動させて何処の森に集めたあとだった。

そして、マーカーの在庫が少なく各街に設置する余裕がなかった。

そのために、今までは全ての街の転移座標を持っているわけではなかったのだ。


「まずは、1番偉そうだった奴から行くか…」


魔王は1人そう呟き、あの腕を治した奴隷商人の目の前に転移して現れる!


「よう!」


「ひっ…」


突然現れた魔王に驚き奴隷商人はすぐ様跪いた。


「だっ、大魔王様、お越しいただきまして、ありがとうございます…」


床に頭を擦りつける。


「まあいい、頭を上げて普通にしろ、話を聞きに来ただけだ」


魔王は情報収集に来ただけだった。


「ははっ!」と頭を上げ話す。

ルッチと名乗り、ヤマト達では解らない、この世界の常識と国や貴族、そして戦力の事を質問した。

最初は緊張していたが次第にリラックスしていき質問に的確に答えてくれる。

意外と常識人のようだ。

ルッチは奴隷商組合の理事と言う事もあり、あの場では虚勢を張って頑張っていたとの事だった。

一通りの事を聴き満足する。


「ところで、奴隷を見たいんだが、お前の店に連れてってくれないか?」


魔王が頼むと顔を引き攣らせながら「はい」と返事を

した。

ルッチが用意した馬車で店に向かう。

華やかな商店街を抜けて路地裏の少し寂しい場所に店を構えていた。


「解りにくい場所にあるんだな?」


魔王は不思議に思った。


「奴隷は表立って買うものではありませんし誇れる商売でもないのです…」


ルッチはなんともいえない顔で説明する。


「この世界でも、そんな常識はあるんだな…」


魔王は少し驚いていた。


「わしらは商売人なんです。

商品を仕入れたり卸したり店で販売したりするのが本職なんですが…

ある程度、商人として認められると国や貴族が奴隷商をやれと斡旋してくるのです。

変わった奴でもない限り誰もやりたがりませぬ…」


ルッチはやれやれといった感じだった…


「お前らも辛い立場なのか…」


魔王は少し気の毒に思っていた。

ルッチの店に入り中を見せてもらう。

薄暗いロビーには黒い革張りのソファーが置いてある。

大体が予約してから来店する。客はソファーに座り目の前に連れて来られる奴隷を見て気に入ったら購入する。

そして、奴隷紋を刻み持ち帰ると言う流れらしい…

1年以上売れない者は大手農家や鉱山に安く卸すそうだ。


奥に行き檻に入った奴隷を見せてもらう。

売れ筋は10〜20歳ぐらいの女子だとか…

見るからに病気の奴や四肢を欠損している者もいる。

そして犯罪奴隷…

この世界に法律は殆どない、だいたいの犯罪者は、その場で殺される。

生き残った犯罪者は刺青を入れられて犯罪奴隷として売られるか鉱山で一生働かされるのが常識だった。

魔王は犯罪奴隷以外を見て回る。

邪王との戦い以来、悪意の瘴気に取り憑かれた者が何となく解るようになっていた。

軽い者は救えるが重い者は無理だった。

この世界にはそういう者が多くいた。

魔王は瘴気に憑かれていない者だけを選び、ルッチに尋ねる。


「あの奴隷達20人を買うと、いくらだ?」


「えっ… あの…」


ルッチは困った顔で言い淀んでいる…


「そうだ、俺はこの国の金を持っていない… 魔石でも買えるか?」 


魔王はギルドでいうところのA級やB級魔物の魔石をいくつか出して見せる。拳大のオークキングの物やバケツぐらいの土竜の物を並べる。

ルッチは1番小さいオークキングの魔石を取る。


「これでも、お釣りが出ます」


そう、小さな声で答えた…


「本当か? お前に損はないのか?」  


真実の言霊を使う。


「本当です」


ルッチに確認を取る。

魔王は力尽くで商品を奪うことは考えなかった。

魔物の魔石や素材は沢山持っており金で済む事ならそれで良いと思っていた。


「じゃあ、取引は成立でいいか?」


「はい…」


「なら、連れてこい!」


20人の男女が並ぶ、うち1人は病気で立てず 1人は右腕がない…


「お前らを買う事にした!」


魔王が声を掛けると全員が力なく頷く…


「お前達は俺の国造りを手伝ってもらう。

奴隷紋は刻まない。

嫌な奴は逃げても構わん。

ただし、国の外に出て捕まり再び奴隷として売られても俺は知らん。

その代わり、1年働らけば自由にしていい。

国に残り国民になるのもよし他の国に行くもよしだ!

国で働く間は家や衣類や食材も与え、もちろん給料も出す。

奴隷の中に家族がいる者は一緒に住むといい。

15歳以下の子供で保護者がいない場合は孤児院に住んでもらう」


それは破格の待遇だった。

魔王は奴隷として扱うのではなく国民として受け入れるつもりなのだ。

だが、あまりの出来事に奴隷達やルッチは魔王の話が理解出来ずにポカンっとした顔で聞いている。

魔王は構わないとばかりに一方的に説明し奴隷達に手を翳す。


「エリアエクストラヒール!」


奴隷全員が眩い光に包まれる!

身体の底から力が湧いてくる!

臥せっていた者は立ち上がり、腕を無くしていた者は見る見る腕が再生していく!

小さな女の子が再生した腕を動かして手の平を握ったり開いたりして確認する。

そして、トコトコと歩き近寄る。


「貴方は神様ですか?」


そう聞く…


「違うな、魔王だ!」


そう笑いかけ…


「お前、名前はなんだ?」


少女の名を尋ねる。


「リリです!」


「そうか覚えておこう!」


魔王は名前を聞き満足そうにリリの頭を撫でていた。


この先は、どうするのか?と、ルッチに尋ねられる。

魔王は奴隷を買えるだけ買うという事を教えた。


「世話になったな、もう自由だ」


魔王はルッチにお礼を言い、帰ろうとする。


「奴隷を買い集めるのを手伝わせてください!」


そう願い出た。

他の奴隷商にも自分が一緒だと話が早いし魔石も換金してからの方が良いと説明した。

魔王は納得してルッチと奴隷達を連れアルカディアに転移する。

一瞬で景色が変わり美しい街並みが目に入る。

奴隷達は跪き首を垂れ忠誠を誓うが…


「そんな事をする必要はない! 各自、楽しみを見つけて普通に暮らせ…」


魔王は優しく声を掛けて皆を連れて教会に行った。

彼らをアリ達に紹介して食堂で食事をさせる。

メニューはパンとスープとステーキだ。

魔王は日本人の心が抜けずに国に来た者にはカレーライスを食べさせたいと思った。

しかし、この世界の人には微妙な味らしく評判がイマイチで断念した。

だが、子供達に出しているお子様ランチは評判が良く旗の立ったチキンライスやハンバーグは受け入れられている。

ギャリソンが子供達を迎えに来る。


「新しい子供達だ。ゆっくりと馴染ませて学校に通わせてやってくれ。

他の孤児達と同じように扱い成人したら自由にさせてやれ」


魔王が説明する。ギャリソンにも魔王の胸の内が良く解っていた。


「わかりました」


頷き子供達を連れて行こうとすると…


「ギャリソン。まだまだ増える予定だ。よろしく頼むな…」


呼び止めて声を掛けて頼んだ。


「はい大丈夫です。何人でもお連れください」


笑顔で答え子供達を園に連れて行った。


成人してる奴隷達にはアリが話をして仕事の希望を聞きフィンがその場所に案内をする。


「さて、次に行くか!」


魔王がルッチの指示する街に転移する。

その後は早かった!

ルッチが次々と商談を纏めて奴隷を買い、各地を回った。

商品不足で2〜3人しかいない店から数百人いる店まで様々だった…

ざっと、1万人ほど集めた。

まぁ、集めたところで奴隷制度が止まる訳でもない。

需要があれば供給もある…

世界が、国が、人々の意識が変わらなければ、どうにもならない問題だと魔王はただの自己満足だと思いつつも、やれるだけの事をやってみようと頑張った。

その結果、国に国民が増えた。

魔王はそれを喜ばしい事だと思う事にした。

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