魔王と女神16
「とーたん! やまー」
魔王はアンと砂山を作っていて、目の前でトムとゲンキーが遊んでいる。
久しぶりのビーチだ! ジャグジーを造ってもらったときのヨシヒデとの約束を果たすためにエメラーダでプチ家族旅行中だ。
夜は温泉旅館でヨシヒデ達と合流し宴会だ。
そしてナオトの妻の顔見せをする事となっていた…
「大丈夫ですかね…」
エルザが心配している。
「そう心配するな… 理由はどうあれ子供が出来たと言う事は、アンリだってナオトの事が好きなんだろう?
この前は女神になれない事実を知って取り乱していただけだ、今日はラブラブな感じで現れるんじゃないのか?」
魔王は意外と上手くいっているんじゃないかと思っている。
「魔王様、ほんとおめでたいですよねー、だから変な女に目をつけられるんですよ?」
アコが嫌味混じりにいう…
「アコみたいな女にか?」
魔王は嫌味で返してやる…
「ひどーい!」
アコが怒っている。
「冗談だ、ムキになるな… ほらこっちに来い」
ムギューと抱きしめる!
「じゃあ、今晩可愛がってくださいね…」
「もちろん!」
アコは可愛いやつだった!
「よし、アン、見ていろよ!」
土魔法で砂の家を作る。
「とーたん! すごー!」
アンが喜んでいる。アンを肩車してアイスを買いに行く。
「アコ、一緒に行こう」
3人でアイスを買いに行く。
「アンちゃん可愛いですね! 私も子供が欲しいなーって、最近思います…」
「良いな、アコに似た可愛い子が欲しいな!」
「ほっ、ほんとですか! じゃ、今日は、いっぱい頑張りましょうね!」
アコの笑顔が輝いていた。
早めに旅館に行き、とりあえず温泉だ。
いつものように妻ーズと家族風呂だ。
メールは愛のお供に女湯に連れて行かれた…
「貴方…」
「どっ、どうしたエルザ、皆の前でマッパで抱きつくなんて、お前らしくない…」
「今日は、一波乱ありそうですからね… はい、充電もしておきましょうね…」
「エルザ、危険だ… 恥ずかしい事になったらどうする…」
魔王が困ったように言うと…
「今日は妻しかいませんから大丈夫です」
エルザがそう言うと。
「じゃ、私も…」
カリンも抱きついてくる! もう止まらなかった、セシリー、マーリン、アコと順々に抱きついてくる。
いつしか大変な事になっていたが妻達は何も気にしていなかった。
アコだけが「後でたっぷりとしましょうね」と微笑んでいた。
恥ずかしさのあまり魔王は何か大切な物を失った気がして湯船に浸かる前から真っ赤だった。
「あらあら貴方、そんなところでボーッとしていないでこちらにどうぞ」
エルザが絶好調だった。エルザとカリンに挟まれ至福の時を過ごす。宴会場に戻ると呑兵衛達が酒盛りをしていた。
「魔王、呑んでいるぞ!」
ヨシヒデがデカい声で言う。
「ああ、今日は、お前が主役だ! 浴びるほど呑んでくれ!」
ヨシヒデが酒樽を抱えて戯けていた。
「お主凄い物を作ったな、街がオッパイで溢れている!」
ヤマトが、めっちゃ嬉しそうだ…
「俺じゃない、マーリンが作った」
「マーリンもボインボインになったのう?」
「俺の大事な妻をいやらしい目で見るんじゃない!」
魔王は思いっきりヤマトの目を指で突いてやる…
「ぐぉっ! なっ、なんて事をするんじゃ! 痛いじゃろうが!」
「お前の目はいやらしいんだ、マーリンを舐め回すように見るんじゃない! ミーナを見れば良いだろう?」
「あんなオバハン… ぎゃふぅん!」
言い終わる前にミーナに踵落としで潰されていた…
「遅くなりました」
ナオトが笑顔でやって来た。後ろには仏頂面のアンリがいる…
「魔王、ありがとう! 僕達のために!」
「まあ、ヨシヒデにお礼もあったし、ヤマト達がアンリを見たがっていたからな…」
2人を呼んだのは、ヤマトやヨシヒデ達が望んだからだ。そうでもなければ自ら針の筵に座るような事はしなかった…
「貴方…」「魔王様…」
エルザとカリンが両隣りでプルプル震えている。
「2人とも、俺の隣は危険だ目立たない隅の方にいた方が良いだろう…」
「そっ、そうですよね… カリンさん…」
「では私達と…」
セシリーとマーリンがエルザ達と入れ替わっていた…
「魔王、最近アンリが元気がないんだ…」
ナオトが心配そうに相談にきた。
「マタニティーブルーじゃないのか? 優しく支えてやれ…」
「そうだね! 安心したよ」
ナオトも魔王級のめでたい奴だった… 意外と宴会は楽しく続いた…
「おじい様、つまらないわ! 何事も起こらない…」
「止めろ! 愛! 変なフラグを立てるな…」
その時、ガラッと障子が開きエカテリーナが仁王立ちしていた…
「おじい様、ごめん…」
愛が青い顔で謝った…
「いや、既にこうなる事は決まっていたんだろう…」
魔王もガックリと項垂れる…
「ちょっとナオトさんどういう事? 私は離婚に同意した訳じゃないんですけど…」
「お母さんやめなよ…」
テリーナが必死に止めていた。
「出て行って好きにすればいい、そう言ったのは君じゃないか!」
ナオトがエカテリーナにくってかかる! 楽しげな宴会の席が凍り付きヨシヒデとヤマトだけがニヤニヤと楽しんで見ていた。
壮絶な元夫婦の喧嘩が続く…
エルザとカリンが手を取り合ってプルプルと震えている。
「2人とも部屋で休んでいたらどうだ? 俺と愛が残ればなんとかなる。皆も先に部屋に戻ると良い…」
魔王は妻に声を掛ける。
「貴方、すみません… あとで教えてください… カリンさん、行きましょう…」
エルザとカリンは離れた出口からそっと出て行った…
愛とアコは2人並んで楽しそうに見ている。
メールは一心不乱にご馳走を食べ、セシリーとマーリンは平常運転だった。
「魔王様、あーん!」
「旦那様、こちらも…」
魔王は、食事は後で良いからと言いたいが、甲斐甲斐しく世話を焼いてくれる2人には言えず、ひたすら食べさせてもらいながら、ナオトとエカテリーナの戦いを見守った。
「愛、旅館から苦情が出ないか?」
「大丈夫よ! こんな事もあろうかと、このフロアは貸し切ったわ!」
魔王の問いに、愛が良い笑顔で答える。
「愛様、ぐっじょぶ!」
アコが愛にサムズアップしている。最近やたらと仲が良い。
アンリを見ると、我関せずと料理を食べていた。
しばらく口論が続き、怒りが頂点に達したエカテリーナが魔法攻撃を始めた… 旅館を壊されると大変な事になる。さすがのヨシヒデも焦っている。
魔法は全て魔王がレジストし、この部屋で魔法は使えないようにした。
だが、思うようにいかないエカテリーナはついにアンリに牙を向いた!
「貴方が泥棒猫ね! 姑息な手でナオトを私から奪うとはどういうことよ!」
物凄い剣幕のエカテリーナに、楽しげに見ていたアコもビビっていたが、アンリは動じる事はなかった…
「別に奪った訳じゃないですよ… たまたまお互いに好きになっただけです… ナオトさんを良いように使っていた貴方には愛想が尽きていたようですよ…」
アンリは気が強かった…
「このクソアマっ!」
アンリの正論にエカテリーナは暴言しか吐けなかった。
「なんなら、お返ししましょうか?」
アンリの爆弾発言だった…
ナオトもエカテリーナも驚愕の表情で驚く。
「いっ、いいの?」
エカテリーナは素直に尋ねる…
「1つ条件があります。私を魔王様の妻にしていただけるならナオトさんをお返しします」
アンリも底抜けのバカだった…
「どういう事なんだー!」
ナオトが頭を抱えて絶叫している…
「まっ、魔王様の妻に?」
さすがのエカテリーナも理解が追いつかないらしい…
「私は、どうしても女神になりたいのです。1番美しい姿で永遠に生きる… これほどの幸せがどこにありますか!」
アンリが冷静に説明する。
「1番美しい姿で永遠に…」
ゴクリっ! と、唾を飲み込みエカテリーナが魔王を見る…
「魔王様、私、フリーでございます! 私と結婚してください! 女神にしてください!」
エカテリーナの求婚が始まった…
「やだね! 他を当たれ!」
魔王は嫌そうな顔で2人に言った。
「女神は魔王様の妻しかなれないといったじゃないですか?」
アンリが食い下がる。
「俺の妻になり女神になる最低条件は、聖歌姫か聖女王、大勇者になっている事だ! お前達はそのいずれかになっているのか?」
2人とも驚いた顔をしている。
「だいたい、お前達2人は人として嫌いだ! 妻にする事などありえない!」
魔王は2人を毛嫌いしている。
「それでも妻にしてください!」
アンリはしつこい…
「私も妻に… 私はエルザのお姉さんです! 私を妻にするとエルザも喜びますよ?」
扉が開きエルザが顔を出して…
「私も嫌です! エカテリーナさんを妻にする事は絶対に反対です!」
そう言って扉を閉めた… 廊下で聞いていたようだった。
「1つ良い事を教えてやろう… お前達は、美しい姿で永遠に生きたいんだったな?
そこのヨボヨボのジジイ、ヤマトだが神人と言ってな、隣のミーナは妻だ! 既に5000年以上あの姿だ…」
2人の動揺が隠せない。
「女神じゃなくても不老不死なんていくらでもある。
ナオトは大勇者、大魔王となった次は守護者や導者か神人か、そんなところだ…」
魔王は面倒くさそうに説明する。
「じっ、じゃあ、ナオトさんがあと1つランクアップすれば…」
アンリが、ゴクリっ! と、唾を飲み込み。ナオトを見る。
「わっ、私の愛するナオトさんは渡せないわ!」
アンリが豹変した。
「嫌よ! ナオトさんは返してもらうわ!」
エカテリーナも、可能性の無い魔王よりナオト狙いに集中したようだ… 1つ付け加えるなら、神人や導者に出来る事は不老不死程度だ…
女神のように1番綺麗だった姿に戻り、さらに美しく神々しくはならない…
ミーナはハイエルフでもともと人より綺麗で神々しい…
エカテリーナが不老不死になったとしてもオバハンのままだ。アンリもその時の姿のままだ。若い分エカテリーナより願いに近いかも知れない。
さらに言うなら、ナオトがランクアップするには神に頼られる働きをしなければならない。
魔王がいて、ザ、ワン、ナインボール、エイトマン、マーズがいる。ナオトの出番は無いと言っても過言ではなかった…
そんな内情を知らない2人は不毛な戦いを続ける。
ナオトは伏して泣いていた…
そんなナオトをテリーナが慰めていた…
もう喧嘩に慣れてしまったのか? ヨシヒデやヤマト達は酒盛りを再開して盛り上がっていて楽しそうだ。
廊下にいたエルザとカリンを呼び寄せて食事を再開する。
あとは3人の事だと無関心でいた。
食事も酒盛りもひと段落付き部屋に戻ろうとすると…
「解りました! お互い妻という事で手を打ちましょう!」
エカテリーナが言うと…
「細かい取り決めは後ほどという事で」
アンリが手を差し出し、手打ちの握手をして、2人で酒盛りを始めた… そこにナオトの意見は一切なかった…
「魔王…」
泣きながら近寄るナオトに…
「はっきり言わないと鬼畜の仲間入りだぞ? 良いのか?」
そう魔王が言うと…
「言える訳がないだろう? 僕はしばらく身を隠すよ…」
ナオトはそう言いながら転移で消えて行った… ナオトは魔王に似ていた。同じ状況なら魔王も身を隠しただろう…
「なっ、ナオトさんは何処に?」
エカテリーナが転移したナオトの姿を見て驚き、アンリも焦っていた…
「さあ? どっちかの家に帰ったのじゃないか? 疲れていたみたいだから…」
魔王の言葉を聞き2人が出て行った…
「とりあえず終わったわね! おじい様、ナオトさんから連絡があったら私達にも教えてよね! どこかのドラマより面白いわ!」
愛とアコが面白がって喜んでいた…
「なあアコ、メール、お前達も女神になりたかっただけと言う事はないよな…」
魔王はアンリ達を見て疑心暗鬼に囚われていた…
「魔王様! それは酷すぎます! どうして私達だけなのですか?」
アコが抗議をする!
「俺を落とした手口が同じだからだ… アンリも同じ手を使った… ついな…」
魔王は2人を見てため息を吐く…
「わっ、私は愛ちゃんにこうすると、おじい様が喜ぶからと教えてもらって…」
メールが申し訳なさそうに言いうと…
「メールは悪くないの。おじい様が好きだっただけ。私がアコから聞いた方法をやってみなさいと教えただけよ…」
愛の言う言葉に、
「孫がなんて事を友達に教えるんた…」
魔王はガッカリが止まらなかった。愛もバツが悪そうに目を逸らしていた…
「わっ、私も、魔王様が好きだっただけです。けっして、そんなやましい気持ちからではありません… 広めたのは悪かったですけど。疑わないでください…」
アコも、しょんぼりとしていた…
「貴方、アコちゃんも女神です。貴方を愛しているのですよ」
エルザが優しく微笑んでいる。
「エルザ様!」
アコがキラキラした目でエルザを見て拝んでいた。
「そっ、そうだな、凄まじい女の業を見て疑心暗鬼に囚われてしまった。すまなかったアコ、メール…」
魔王は素直に謝る、メールは気にもしていなかった。
「さあ、アコ、おいで…」
アコを連れ部屋にいく。まだ拗ねている…
「ほら、可愛い顔が台無しじゃないか? もう機嫌を直してくれ。可愛い子を産んでくれるんだろう?」
「そっ、そうですね! 魔王様の子が欲しいです… いっぱいしましょうね…」
なんだかんだラブラブだった。いつもより激しく多くヤって2人とも満足した。
翌日は嵐の去った静けさだった。
「あらアコ機嫌が良さそうね。朝から手を繋いでラブラブじゃない」
「そうですよー、私達はラブラブですよー」
アコは上機嫌だった。ショッピングモールに行って買い物をして家に帰る。
「遅いよ魔王!」
ナオトが門の前で体操座りをして待っていた。
「いつからそこに…」
「行くところがなくて、昨日の夜中から…」
「念話でもケータイでも連絡する方法はいくらでもあるだろう!」
「だって、悪いかなとも思ったから…」
ナオトは気遣いが出来る男だった。
ナオトを連れて家に入る。リビングに腰を下ろすと、妻ーズが一斉にナオトを見る! 興味深々だった… ナオトが困った顔をしていた。
「で、どうするんだ? 2人とも妻でいる気だが…」
「わかんないよ… 魔王、どうしたら良いと思う?」
「俺なら、2人と別れる。だがナオトには出来ない… 産まれてくる子も心配だろう? 素直に鬼畜の仲間入りをするしかないだろうな…」
「やっぱりそう思うよね… 何度考えてもその答えしか出てこない…」
ナオトがガックリと項垂れる。
「アンリまで、あんなに欲深いとは思わなかったよ…」
「俺もまさかあそこまでとは思わなかったな…」
ナオトの呟きに、魔王はため息を吐く。
「僕は強欲な女に取り憑かれる運命なんだ…」
ナオトから深い闇が溢れていた…
「そう悲観するな、テリーナが慰めてくれていたじゃないか… 良い娘がいて幸せだろう?」
「違う、テリーナは、この後デートがあるから早く決めて終わらせなさい!って言っていたんだ…」
ナオトには女難の相が出ていた。
「ナオト…」
もう魔王には、かける言葉がなかった。
「ナオトさん、ちょっとゆっくり考えたら? ここには2人のどちらかが探しに来るだろうから。別に住む部屋を用意するわ! 仕事も休めるようにお父さんに言っておくわ!」
愛が助け舟を出す。
「愛ちゃん、すまない… ゆっくり考えさせてもらうよ…」
愛に案内されナオトは出て行き、愛がナオトを置いて戻ってくると、同時にアンリとエカテリーナが尋ねて来た。
「なにか用か! この強欲女ども!」
魔王はかなりムカついていた!
「なぜ魔王様が怒っているのですか!」
アンリだ!
「ナオトは良い奴なんだ! お前達のような悪女が寄生して良い奴じゃない!」
魔王は怒る!
「人聞きの悪い! ナオトさんは私の旦那様です! 探して何が悪いのですか!」
アンリがムッとする!
「そうです! 貴方達には私達の気持ちは解らないのよ! エルザ! 貴方は自分だけ女神になって! 恩人の私も女神にしなさい!」
エカテリーナがエルザにも噛み付く!
「お前! 俺の大事なエルザになんて事を言うんだー!」
2人に魔王の波動を放つ!
「お前ら、魔王の怒りに触れたいのなら! 今すぐ消し去ってやる!」
魔王は立ち上がり、凍てつく目で2人を見て、手を翳していた…
「すっ、すみません… 今すぐ帰ります… もう2度と来ません」
プルプル震えながらエカテリーナが言えば…
「わっ、わかりました、私ももう来ません…」
プルプル震えるアンリもそう言った。
「今回は見逃してやる! だが、次はないぞ! お前達2人に良い事を教えてやる。
ナオトがランクアップする可能性は1%未満だ…
仮にランクアップしたとして、お前達が不老不死になったとしても、その時点の姿で永遠を生きる。
すなわちエカテリーナ! お前はオバハンのままだ!
アンリ、お前だっていつまでも若いままではいられないぞ? 早くランクアップすると良いな!」
魔王は嫌味ったらしく説明してやる!
「なら、やっぱり魔王様の妻に…」
アンリはとてつもない奴だった。
「まだ言うか! このクソ女が! 虫唾が走るわ!」
魔王の怒りに触れ2人がその場から消えた。
「きゃっ!」
エルザが慌てている。
「安心しろ強制転移で跳ばしただけだ…」
魔王は怒った顔で答えた。
「おじい様、どこに跳ばしたの?」
「カティアのところだ…」
「なんで?」
「さあ? ムカついて咄嗟に浮かんだのがカティアだっただけだ… それと、アンリとエカテリーナはデラックス星とガイア星に入星禁止とする。愛、そう通達しろ…」
「わっ、わかったわ…」
愛は驚くが納得していた。
「エルザ、すまんな…」
「もう、エカテリーナさんの事は気にしなくて大丈夫ですから… ほら貴方、怖い顔をしていますよ… 充電しましょうね…」
「俺はエルザから優しさを充電して生きているのかも知れない…」
エルザに充電されながら魔王は呟く…
「だったら、私からは何を充電していますかー」
アコが聞く。
「エロだ… 俺がスケベなのはアコのせいかも知れない…」
「もー!」
アコが怒るが、嫁ーズから笑いが起こり場の雰囲気が落ち着いた。
エカテリーナは訪れる事はなかったが、アンリはガイア星とデラックス星に入星しようとして強制送還となっていた…
「魔王、愛ちゃんに聞いたよ… 2人が押しかけて来たんだって? 迷惑を掛けるね… 2人と会って話てくるよ…」
ナオトは疲れた顔で笑い消えて行った。
「魔王、ダメだよ、アイツら人間じゃない! 亡者だ! どうしたら良いんだよー」
すぐに戻り泣いていた。
「ほらナオト、肉が焼けたぞ? 食え!」
今日はガイアの公園でバーベキューをしている。
「ほら、アモンやフィン、ザマはこういう事に慣れているだろう? 何か助言はないのか?」
アモンは2軒の家を借り2人の妻を持ち交互に会っている。
フィンはルルシュと別れ親友のダーガの元妻のリリーと結婚した。
ザマは、アリと婚姻中にオリ姫と付き合い、アリと別れ、おり姫と結婚した。
フィンが気まずいだろうとダーガは誘わなかった…
「いや、根本的に我々とは違います。そんな悪女、斬り捨ててやればいいじゃないか!」
「そんな事出来る訳がないだろう?」
アモンの過激な意見にナオトは困っていた。
「だいたいナオトさんは心が弱すぎなんです! 女なんてガツンと言ってやれば…」
オリ姫がジト目で見ている事に気づき、ザマの意見は最後まで聞けなかった…
「ほら、フィン、お前も何か言え…」
魔王がフィンに促す。
「あっ、すみません、ナナシュと会うのが久しぶりで楽しくて! で、なんでした?」
「もう良い、ナナシュと話ていろ!」
フィンは役に立たなかった…
「なあ魔王、ランクアップって可能なのか?」
ナオトが聞く。
「無理だな、今、困っている神は、俺かザ、ワン達に頼む。
導者だの神人になるほどの徳を積める仕事がないからだ… それに弱いとは言え、魔神を倒して導者になった。
ヤマトも魔神を封印して神人になった。それぐらいの働きが出来るのか?」
魔王が説明する。
「僕が魔神と戦うなんて無理だよ… じゃ、2人の願いは叶わないんだ。だったら一緒にいても仕方がない。2人とは別れてくるよ…」
ナオトはそう言ってため息を吐いた。
「それが良い… またすぐ可愛い彼女が出来る」
そう声を掛ける。
「もう一、生独身でいいよ! 女なんて懲り懲りだー!」
ナオトの魂の叫びだった…
「魔王様、これをどうぞ」
ナナシュがお花をくれた…
「おお、ありがとう、どうしたんだこれ?」
「はい、花屋さんでバイトを始めました」
「学費も家賃もいらないからバイトしなくても良いだろう? お小遣いが必要なら俺に言えば良い。宇宙船だって買ってやるぞ?」
それは冗談だが… 魔王はナナシュを可愛がっていた。
「はい、でも時間もありますし… 自分で出来る事は、自分でしたいなと思いまして…」
ナナシュは立派な子供だった。
「ナオト、エカテリーナとアンリにナナシュの爪の垢を煎じて飲ませてやれ!」
「本当だよ!」
2人で言っていると…
「しっ、失礼な! ナナシュに爪の垢などありません!」
フィンが怒っていた。
「怒るな! 地球のことわざだ! ナナシュが素晴らしい人間で、悪女達に少しでもナナシュの素晴らしいところをあやからせたいと言う意味だ」
魔王がキレ気味で説明する。
「そっ、そうですか…」
フィンが照れていた…
「魔王様もお立ち寄りください。カフェもありますよ」
ナナシュがバイト先の場所を教えてくれた。
「魔王様も行きたいとは思うんだがなー」
魔王はそう言いながら愛を見る…
「なんで私を見るの! 大丈夫じゃない? ナナシュは、ルルシュが、おじい様の事を好きなのはわかっているし、光源氏はないわよ」
愛の許可が出た。
「今度、バイト終わりにお茶しような」
「はい!」
魔王がそう言うと、ナナシュも嬉しそうだ。
「駄目です!」
フィンがめくじらを立てて怒っている。
「ナナシュ、魔王様に近づいては駄目だ! 魔王様はな、女性を虜にする魔法を振り撒いて歩いているんだ! ナナシュだってタダでは済まない!」
酷い言われようだった…
「世間の連中はそんなふうに俺を見ていたのか…」
魔王はガックリと肩を落として項垂れる…
「魔王様、父がすみません…」
「いや、ナナシュ、俺に近づくと妊娠してしまうぞ… 少し離れた方が良い…」
衝撃のあまり、魔王は自分でも何を言っているのかよく解っていなかった…
「魔王様! 私は、そんなふうに思ってはいません!」
魔王はナナシュに抱きつかれ、フィンをドヤ顔で見る! フィンが歯軋りをしていたのは言うまでもない。
そしてバーベキューが終わり、皆は帰り、ナオトは決意を固めてエカテリーナとアンリに会いに行った。




