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ジジイの異世界記  作者: パパちゃん
12/546

その12

数日間 、魔王はナオトと鉱物の採掘や魔石集めに奔走していた。

集めた資材はドワーフの街にある巨大な工場に納品する。

その中にはエンジニアチームの研究所がありトシオや将達がいる。

そして、魔王は幾つかの魔道具の製作を頼んであった。

納品のついでに完成した試作品を受け取る。


「父さん、後で感想を聞かせてね」


将に手渡された物はトランシーバーと転移座標を示すマーカーだ。

マーカーは鉄製で小指の先程の円錐形だ。

マーカーとは転移先を示す指針で、それが置いてある所なら行った事がない場所でも転移する事が出来る優れ物だ。

トランシーバーは携帯電話の簡易的な物だ。

ファンタジー物語の定石を見習い、ギガンティスは衣食住、そして、機械製品の無双を始めていた。


マーカーとトランシーバーを受け取った魔王は教会に行く。

教会は既に国の直轄としていて、聖騎士は解体させてギガンティス国の騎士としていた。

魔王の到着を待っていた者達と孤児達の保護作戦を開始する。

前回の話し合いの後、ヤマトが各地に斥候を放ち情報を集めていた。

ヤマトは北の森を守っていたこともあり、優秀な部下を沢山従えている。

今後も国の為に働くことになった。


集めた情報では各国とも深刻な亜人奴隷の減少が著しく、国を挙げての亜人狩りと奴隷術などを強化し対策をとってるが…

それを掻い潜り逃亡する奴隷が後を絶たなくなった。

困り果てた貴族は孤児に目をつけて、攫ったり権力行使で連れ去ったりし始めたということだった。

集めた情報をもとに早急に作戦を実行する。


ギャリソンと、ヤマトの部下 、騎士、神官達、計600名を20人1チームで30小隊にして1グループの中に神官を1人同行させる。

孤児院の院長やシスター達と交渉するためだ。

聖職者同士の方が話が通じやすいのではないかと思いグループ分けをした。


各チームには転移の指針となる魔道具 のマーカーとトランシーバーを持たせた。

トランシーバーは「ケータイ」と名付けた。


「各自、用意はいいか? 絶対に無理強いは駄目だ。

本人や保護者が納得の上で連れてきてくれ!

条件に寄っては院長やシスターも同行してもらっても構わない!

そして、逃げる亜人達を見つけたら保護して欲しい。

希望者はこの国で受け入れる!

トラブルがあった場合はケータイかチムに連絡を入れてくれ、直ぐに駆けつける、以上だ!」


魔王の言葉を聞き。


「「「「「おー!」」」」」


全員、気合が入っていた!


「アリ… お前も行くのか?」


「はい、神官は足りておりません。聖女の名が役立つでしょう…」


「そうか、無理はするなよ?

フィン、絶対に目を離すな!」


「命に代えても護ってみせます!」 


「いや、命に代えるな… 俺を呼べ…」


魔王はフィンの肩に手を置いて呟いた…


「では出発だ! 各方面、俺が転移出来る所まで送る!

まず、ギャリソン達だ!」


「はい!」


返事するギャリソンに…


「皆を頼むな…」


頭を下げる。


「駄目ですな。部下に頭を下げるなんて、威厳がなくなります…」


ギャリソンが笑っている。


「いいんだ。部下じゃなくて友達だろう? 任せたぞ」


20人と馬車5台を転移させて、戻っては次の小隊を転移させてと繰り返して全ての小隊を送った。


見送りに来ていたヤマトとチムに、


「上手くいけばいいが…」


そうこぼしてしまう…


「大丈夫じゃ、何かあれば連絡がくるはずじゃし、ナオトも待機しておる。安心せよ!

そういえば、姫が探しておったぞ。」


ヤマトは心配する魔王を落ち着かせて愛が探している事を教えた…


「まあそうだな、吉報を待つか…」


そう言い残して愛の元に転移する。


愛は建設中の王城の広場に守護獣達といた。

魔王を見ると守護獣達が駆けてくる。

1頭ずつ名を呼び念入りに撫でてやる。


「おじいちゃーん」


手を振り愛が走ってくる。


(天使じゃ! 我が孫は天使じゃ!)


孫バカの魔王は感激のあまり目頭を押さえていた…


「なんだ?」


「あのさ、私も勇者じゃん?」


「まあそうなるな…」


嫌な予感がビンビンする。


「魔法、使いたいじゃん? 転移とか… だからレベルを上げようかと思って…」


愛が言い出した…

魔王はその場で崩れさり産まれたての子鹿のように四つん這いになりプルプルと震えた…


(ついにきたこの日が…)


魔王は好奇心旺盛な愛が戦いたいと言い出すんじゃないかと毎日ヒヤヒヤしていた…


「おじいちゃん、なにそれ、ウケるんですけど!」


「だって危ないじゃん、愛は姫なんだよ… 箸より重い物は持つ必要はないんだよ…」


魔王は動揺して訳の分からない事を言い出した…


「呆れて物が言えないわ!」


「だいたい、お父さんとお母さんには相談したのか?」


魔王は愛が戦いに興味を持つ事が心配でならなかった。


「ええ、おじいちゃんがOKすれば良いって」


(あいつら、俺に丸投げしたな許さん!)


「魔王のイカズチ!」


魔王は静かに魔法を放った!


(あやつらに天罰がくだった! ヒッヒッヒ!)


そうほくそ笑む…


その頃、将とまりんは各々の職場で…


「うぉ⁉︎」「きゃ!」


っと、静電気が指先に走り小さな悲鳴を上げていた。

魔王は… いや、ジジイとして考える!

可愛い孫の安全を…


「愛、魔物を倒すのはグロいぞ! 日本で育ったお前には向いていないと思うが?」


「それでもやるわ!」


「そうか… ならジイちゃんが護衛に付いて行くからな!」


魔王は思いっきり過保護だった…


「はーい」


愛は嬉しそうな顔をしていた。


「じゃあ、守護獣達も連れて行って鍛えるか…」


魔王はボソボソと呟いていた…

まずは、愛の武器と防具だと思い「真理の心」に聞く。


(愛は勇者なのか?)


(加護の影響もあり、ご家族全員が勇者の資格を持っています)


(何故? 魔王の加護で勇者なんだ?)


(主様は勘違いされています。

魔王に対して悪いイメージがあるようですが、勇者と魔王は、それぞれの特性もありますが、対になるもので、ただの称号です。

主様は、勇者と魔王の2つの称号を合わせ持ち新たな称号を得るはずでしたが、闇堕ちしかけたときに自ら無意識のうちに勇者の力を封印したのです。

そのために新たな称号を得られず、残った魔王の称号が現れているといった状態です)


(そうだったのか… 俺はただ単に暗黒面に堕ちたからだと思っていた…)


(発現のきっかけになったのは事実です。

完全に闇堕ちしていたら闇の魔王となり、世界を滅ぼしていたかも知れません)


(そうか、闇堕ちしなくて良かった…

じゃあ何故、聖剣や一部の光魔法が使えない?)


(主様が心の枷を外して勇者の封印が解かれれば使用可能となります。

そして、新たな称号を得るはずです)


(そうか…)


(愛の聖剣はどうすれば顕現する?)


(アイテムボックスの中から出せば使えます)


(はっ? 俺のときはなかったけど…)


(転生させられたときに勇者の力は封印されました)


(そうか… 幼い頃に勇者の力があったら帝国に目をつけられて捕まっていただろうからな…)


(その通りです。それと主様、愛様はテイマー能力が高いです。

守護獣達との主従契約をおすすめします。

契約すれば主様と同じ様に守護獣を従えられます)


(俺はしなくていいのか?)


(大丈夫で御座います)


「真理の心」との話を終える。


「愛、アイテムボックスの存在は解るか?」


目を瞑り静かに感じとっている。

しかめっつらになったり困った顔になったり…

しばらくすると落ち着いた顔に戻る。


「わかったわ!」


そう嬉しそうに答えた。


「中に聖剣があるだろう? 出してみろ」


愛は目を閉じて集中して聖剣を出す!

愛の目の前の地面に聖剣が突き刺さる「聖剣バルキリー」ピンクゴールドのショートソードだ!

聖剣を手に取ると、愛の身体を光の粒子が包み鎧が顕現する。

カラーはピンクゴールドで兜には大きな飾りがあり顔は頬と額まで隠れるが顔は見える。

鎧には大きな翼が付いている。

デザインは豪華でスカートでもドレスの上からでも着ることが出来て違和感がない。

そしてサークル状の盾。


「こっ、これは… 似ている…アテナの…」


魔王は呟きながら魔王になった事を心底後悔していた…


「俺が白金の鎧を纏えれば…

聖闘士シリーズ風で揃ったのに…」


またもや腰から崩れ落ちて四つん這いになっていた…


「エクスカリバー!」


魔王は叫ぶ! だが顕現しない…


「おじいちゃん、何をやっているの?」


「お揃いにしようと聖剣を呼んでみたが、アイテムボックスから取り出せないんだ…」


「おじいちゃん、黒い鎧も似合ってるから良いじゃん」


孫が気を使うと魔王は気を取り直す。


「愛は何を着ても可愛いな」


「えへへ」


愛が笑う。

その笑顔を見て…


「愛、後で将に伝えておきなさい。

大魔王命令である。最優先でカメラとビデオカメラを開発しろと!」


孫バカであった!


「おじいちゃん、馬鹿な事をいわないで…」


愛は、その言葉とは裏腹に、まんざらでもない顔をしていた。


「その姿を将やまりんに見せなさい。きっと俺の気持ちを解ってくれる」


(解ってくれるとも! 解ってくれねば力ずくで解らせる!)


魔王にとって孫の可愛さは絶対だった!

とりあえずヤマトに相談して愛に剣技と魔法の指導が出来る者を探してもらおうと思う。


「先生を見つけて来る! 剣と魔法をしばらく練習しろ。

それから魔物退治に連れてってやる。

あと、魔法が使えるようになったら守護獣達と主従契約をさせるから頑張れな!」


一方的に早口で説明してヤマトのもとに転移する!


「ヤマト、愛がレベルを上げたいと言い出した… 剣術と魔術を教える奴を紹介してくれ」


「それなら丁度良い。姫には護衛をつけようと思っていたのじゃ!」


「護衛?」


「お主やワシは強いが、常に一緒にはいられないじゃろう? 不意を突かれては護れんからのう」


「そうか、そうかもな…」


「戦乙女の2人をつけようかと思っておった。

ワシの部下の中でも上位の実力じゃ!

女だし指導も出来る。うってつけじゃろうて」


ヤマトのドヤ顔は鬱陶しいが…


「ああ、すまない… よろしく頼む」


愛のためと素直にお礼を言った。

翌日、愛と共に戦乙女の2人と会う。


「リリーです。剣技が得意で剣の指導を担当します!」


「アナスタシアです。魔術担当です。よろしく」


「愛です。ご指導をよろしくお願いします」


「ジジイだ。孫を頼む…」


「おじいちゃん、そんな挨拶は失礼でしょう!」


さっそく愛に怒られる…


「魔王のノブだ! 愛の護衛と戦闘の指南を頼む!」


真面目に挨拶すると…


「はっ!」「はーい」


2人は跪き首を垂れる。すると身体が輝く! 唖然とする2人…


「加護を与えた。孫を助ける役に立つだろう」


魔王はキメ顔で渋く告げていた。

その姿を見て愛が呆れている…

そんなとき懐のケータイが鳴る!


「ジリリリリン! ジリリリリン!」


懐かしい黒電話の音だった!


「魔王だ!」


ふざけてケータイに出る魔王を愛がジト目で見る…


「こちら、ブラボー18小隊、要救助者を保護! 至急合流されたし!」


「ラジャー!」


なんとなくふざけた会話だが、3人に…


「行ってくる!」


そう伝えてマーカーを頼りに魔王は転移して消えた。

転移先の森の中に小隊とシスター、そして10人の子供達がいた。

連絡してくれた騎士が頭を下げてシスターを紹介した。

魔王は、そのシスターと話をする…


「セシリーと申します」


25歳ぐらいの美しいシスターだ。


「詳しい話は聞いたか? シスターセシリーも来てくれるのか?」


「はい、一緒に参ります」


「教会に背くことになるかも知れないぞ?」 


「構いません。この子達を見捨てる事は出来ません」


「お前達も構わないのか?」


子供達が頷く…


「では、我が国に招待しよう!」


小隊ごとアルカディアに転移させた。


シスターセシリーには、孤児が集まるまで、ゆっくりして待っていてくれと孤児達と共に出来立ての孤児院に案内した。


そして、小隊は休憩させた後、次の目的地付近に転移で送る。


それから立て続けにケータイが鳴る。

転移しては迎えに行き、連れて来てはまた送る。それがエンドレスで続く…

孤児が1000人を超えた辺りでアリには帰国してもらい聖神国と話合いをしてもらった…


1ヶ月が過ぎて一通りの街や村を回り3000人の孤児と400人のシスターや院長などの教会関係者が集まった。

面倒なので広場に全員を集めて話をする。


「ワシが魔王だ! 逆らう奴は皆殺しだー!」


開口一番、凄く悪い顔で言い放つ!

子供達が泣き出して全員が青い顔をしている。

隣にいた愛に肘鉄をくらい 皆に白い目で見られていた…


「すまん… ジョークだ…」


魔王は穴があったら入れ…いや、入りたいほど恥ずかしかった…


しばらく間を置き…


「我が国に来てもらいありがたく思う。

急な事で戸惑う者もいるだろうが我慢してくれ。

皆も知っての通り各国は奴隷不足に陥った…

よってお前達は狙われている。

実際被害にあった者も少なくない。

原因を作った我にも責任があり、この国で保護させてもらいたい。

孤児は孤児院で生活して学校に通ってもらう。

成人したら、この国で働くなり外の国へ行くなり好きにしてもらって構わない。

シスター達、教団関係者も希望者がいれば、孤児院、または、我が国の教会で務めてもらっても良い」


ひと呼吸つき…


「だが、アリ聖女が聖神国フォーリーンとも話をした。

フォーリーン側は教団職員を帰国させて欲しいと、そして孤児もけ入れたいと申し出た…

だが、我が国に残りたいと希望する者は残ってもらって構わない。

ただ、教団に背く事になるのは覚悟してくれ。

それでも残る者は魔王の庇護の元この国で護ろう。

皆の者よく考えて結論を出すと良い!」


そのあと、聖女アリが挨拶と細かな説明をした…

魔王は…


「俺の演説いらんかったじゃん!」


皆に苦情を言うが…


「おじいちゃんいい加減にして! 何を考えてあんな事を言ったの!」


愛に怒られ…


「あんたバカ!?」


チムにも馬鹿にされた…


そして、その場にいた全員が渋い顔をして魔王を見ている…

ヤマトだけが満面の笑みで魔王の肩を叩いた…


(そういえばヤマトも初対面のとき似た様な事を言っていたな… コイツと同じレベルか…)


「俺は場を和ませたかっただけなんだー!

だけなんだー! だけなんだー!…」


国中に魔王の悲しみの叫びがこだましたとかしなかったとか…


そして、申し出があり、孤児300人と教団職員300人が聖神国に戻る事を決めた。

戻っていく教団職員に、また孤児院に配属されて困ったら孤児を連れて来て構わない、いつでも頼ってくれ。

魔王はそう告げて送り出した。

結果、ギガンティスには2700人の孤児、100人のシスター達が残った。

残った孤児達の中で1割程度はすでに成人していて各々が育った孤児院を手伝っていた。

そんな彼らは、この国の孤児院で勤める事となった。

孤児院の院長にはギャリソンを任命した。

子供好きな奴にはぴったりな仕事で、ギャリソンも嬉しそうに快諾した!


聖神国に向かう一団には騎士達を護衛に付けて送らせた。

神聖国フォーリーンはギガンティスに隣接した国でもあり安全に行くことが出来る。

やるだけの事はやった…

去る者は追わず、それが魔王のモットーだ。


そして更に1ヶ月ほど経ち、

国造りを始めて3ヶ月あまり。

開発は急ピッチで進んでいた!

王都は完成して見事に出来上がる。

街や道は計算されて無駄なく並び造られている。

家や店が建ち並び、城、教会、学校、病院、全て完成した。

王都に住む人々にも家や店が与えられて生活を始めている。

貨幣はギガンティス国のオリジナルとした。

今現在、他国とは付き合いがなく鎖国状態。

自給自足で全ての産業が自国のみで回っている。

他の国に頼る必要もなく貨幣を合わせる必要もなかった。


王都アルカディアから真っ直ぐ北に進む。世界樹の手前には妖精の街があり、世界樹を越えて更に進んだ場所にあるドワーフの街。

世界樹の場所を十字路とし西に獣人街と東にエルフの街があった。

各街の名は種族名が付いてはいるが人間や他の種族も住んでいる。

特にドワーフの街には人族が多く住み、工場では魔道具はもちろん列車や飛行船をドワーフ達と協力して使ってる最中だった。

エルフの街にはトシとケイコが中心となり仲間達と住んで田畑の管理をしている。

そして、国を円周状に回る線路を造った。

もう既に魔道列車が試運転を始めている。

見た目は日本の機関車C62。

魔王が子供の頃好きだったアニメの999号をモチーフに造られていた。

飛行船も同じシリーズの女海賊の船にしたら不評で…

量産モデルはさっぱりしたデザインとなる予定だ…

だが、プロトタイプは魔王好みのデザインで専用の戦闘艦にしていた!


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― 新着の感想 ―
と言うことは3ヶ月以上、自分の中に封印された勇者の力を開放する努力はしなかったってこと?
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