超魔神編24
「貴方、お疲れ様です。今日はどうでした?」
「ああ、上位魔神10柱を倒してきた…」
「ほんとうに魔神がどんどん増えてきましたね…」
「ああだが、魔神力は必ず吸い取っている。それは俺の力となりいつか役に立つ! 地道に討伐していくさ」
エルザが仕事帰りの魔王を労っている。
「エカテリーナさんは、どうしていますかね…」
「心配か?」
「はい…」
「明日にでも見に行くか… 今日は早くお風呂に入って寝る! 良いだろう?」
「そうですね、可愛がってくださいね…」
仲の良い夫婦だった。
翌日、カティア星に行く。
「エルザー」
エカテリーナがエルザに泣きつく。
「ナオトは?」
魔王がエカテリーナに尋ねる。
「出ていっちゃったわ…」
「カティアの所へか?」
「違う… 薬の効果も切れて、遊ばれていたのが解って別れた…
でも、私のところにも戻らないの… 今は息子と2人暮らしよ…」
「カティアは謝ったか?」
「あのクソ女神、貴方達が魔王様を隠すからいけないのよ? と開き直って笑っていたわ」
カティアはとんでもない性悪女神だった…
「失意の割に痩せていないんだが… さらに大きくなってないか?」
魔王は不思議に思う。
「ストレスで食べちゃうの。痩せて良い女になって見返してやりたいんだけどなかなか… この身体、なんとかなりませんか?」
エカテリーナは、あくまでも他力本願だった…
「転生するか? ホムンクルスに心を移すか? それぐらいしか思い浮かばんな…」
魔王にも出来る事と出来ない事がある。
「それは…」
エカテリーナの落胆ぶりにエルザは声を掛ける事ができなかった… しばらくエカテリーナの愚痴を聞き戻ってきた。
「ナオトさんには会わないのですか?」
エルザが魔王に聞いた。
「今のナオトはフィンのやさぐれていたときと同じだ。
上手くいっている俺が何かを言っても嫌味にしか聞こえないだろう…」
魔王は痴情のもつれに首を突っ込みたくはなかった。
「そうなんですか… それにしてもカティア神は酷いですね…」
慈愛のエルザもカティアのした事は許せないようだった。
数日が経ち愛を家に招いた。
「なんか、ハイハイが異常に早いわね!」
愛が興奮している。
「立ったわ! ゲンキーが立ったわ!」
クララが立ったときのノリだ。
「ええ、最近、立つようになったんですよ…」
愛とエルザがゲンキーをあやしながら話をしている。
「そういえば、エカテリーナ達はどうしている?」
魔王が思い出したように聞く。
「エカテリーナさんは太ったまま。ナオトさんは失踪中よ… カティア神は私には一生懸命言い訳をしていたわ!」
愛が説明した。
「カティアは駄目だ裏の顔が酷すぎる! ナオトはダークサイドに落ちなければ良いがな…」
何の進展もなかった。
「ちぇっ! 呼び出しだ! 少し出掛けてくる…」
孫や息子と遊んでいようがお構いなしにお呼びが掛かる…
「またですか?」
エルザがいちいち心配する。
「マツD、またか?」
魔王は、すぐさまマツDの神殿に転移する。
「ええ、ほんと異常よね! しかも近いわね、上の階層よ!」
マツDも焦っている。
「さて、行ってくるか…」
マツDに座標と魔神の数を聞き転移する。
星々を渡り5柱を倒す。残り3柱… だが、その座標の星に行っても3柱の魔神を見つける事が出来なかった。
「マツD、8柱と聞いていたがどれだけ探しても5柱しか見つからなかったぞ?」
魔王はマツDに報告する。
「ええっ⁉︎ どういうことなの? 上に報告しておくわ」
さっさとエルザと愛の待つ家に帰る…
「貴方、険しい顔をして、何かありました?」
そんな顔をしていたなんてエルザに指摘されるまで、魔王は気づかなかった…
「ああ、3柱の魔神がどれだけ探しても見つからなくてな… 嫌な予感がしてならないんだ…」
「おじい様…」
愛も心配していた…
その後も、魔神討伐に出かけると数が合わない事が多々起こるようになった。
「おとうたん、だれ?」
「ああ、ゲンキー、ジジイだ」
「じじい?」
魔王がゲンキーに教えていると…
「ダメですよ、ソー創造神様と言いなさい」
エルザがゲンキーに注意する。魔王は家族を連れて創造神界に来ていた。
「良い良い、人間の子供は可愛いな。ついでじゃ、もう1人祝福しといてやる」
「貴方!」
エルザが口を押さえ涙を流している。2人目の子供にソーの加護を貰った。
「今日はなんだ?」
魔王がソーに呼ばれた理由を聴く。
「ちょっと解った事があってな… どうもサトは1つの宇宙を創ったようじゃ。巧みに隠蔽されていてどこに存在するかは解らんのじゃがな」
ソーが困った顔で説明する。
「それで、発見できないのか…」
魔王も納得した。
「そこの星にどうやら魔神を集めているようじゃ…
あっちこっちの宇宙で神達を無理矢理魔神化をさせて、命令の聞く魔神だけ連れて行っているようじゃ。
その残り者を、お主が討伐しているという訳じゃて…」
「隠された魔神の宇宙か、厄介だな… それに無理矢理魔神化させる技術、ワン達にも対策が必要か…」
魔神の宇宙は引き続きソーが探すという事だった。
ソーとの話を終え、トップ達のいる天界に転移する。
「まあ、そんな訳だ…」
「そんな宇宙を創るとは、魔神の宇宙、厄介極まりないな…」
トップが言えば…
「もっと厄介なのは強制的に魔神化する技術だな… くそっ! せっかく戦えるようになったのに!」
ワンが悔しがる。トップ達と対策を話ていると…
(主様、カティア神がナオトさんに襲われています)
シンリーが教えた。
事情を説明し、エルザとゲンキーを残し。
マーズと共にカティア星、カティアの城に転移する。そこには、斬り刻まれたカティアと、魔剣を片手に険しい顔で見下ろすナオトがいた。
「ナオト、何をやっている?」
「魔王か、コイツは、コイツだけは許せないんだー!」
ナオトが邪悪な顔で叫ぶ!
「魔王様、お助けください!」
ボロボロのカティアが助けを求める。
「こんな奴を殺したとて、どうしようもないだろ? 俺もコイツは目に余る、お前が望むなら封印してやる」
魔王は提案する。
「魔王、コイツだけは、僕の手でやらないと… もう、抑えられないんだ!」
ナオトは闇に堕ちかけていた…
「ああ、魔族でもない人間が魔王になると言う事は心が闇に堕ちた証だ、カティアをやってしまうと、お前は闇の魔王として覚醒する。
人類の敵になる気か?
心を落ち着けろ、お前なら俺が至った大魔王になれる」
魔王が静かに説明をする。
「駄目だ、僕の心がどうしてもカティアを殺せと叫ぶんだ…」
ナオトが叫んだそのとき!
「ナオトさん、お願い止めて!」
エカテリーナが現れナオトに抱きつく!
「エカテリーナ… こんな太った奴は僕のエカテリーナじゃない!」
ナオトの闇がどんどん深くなる…
「ナオトさん、私、私必ず痩せるから! 約束するから! 明日からバタフライするからー!」
エカテリーナが泣き叫ぶ!
「ほんとうかい? 僕のために痩せてくれるのか?」
2人の茶番劇が始まった…
「ええ、約束よ! 必ず痩せるわ!」
ナオトの闇が晴れていく… 魔王は、ナオトは単純な男だと呆れる。
エカテリーナと抱き合い闇は晴れ、大魔王に覚醒していた。
「さて貴方ね! テステラの事では随分と見逃してきたけれども、人間を騙して魔王まで生み出すとは、呆れてものが言えないわ!
しかもあんな危険な薬を人間に飲ませるなんて、神失格だわ…」
マーズが怒りながらも呆れていた。
「マーズ様、お許しください」
カティアが床に頭を擦りつけて謝っている…
「貴方には、しばらく休んでもらおうかしら」
「魔王様、助けて…」
魔王は黙って首を左右に振る。そしてカティアはマーズによって封印された。
カティア星は仮に面倒をみてくれる神が派遣され。
マーズの気分でカティアの封印を解くそうだ。
千年か1万年かは解らないと笑っていた。
ナオトは謝罪して、エカテリーナとともに帰っていった。
魔王に堕ち神を襲った罪は重罪だが、原因は全てカティアにあり。
今までの功績を考慮して、要注意と観察処分とした。
そして魔王はマーズと共に天界に戻り、エルザに事の顛末を教える。
「エカテリーナさん達は、やり直せて良かったですが、カティアさんは残念でしたね…」
エルザはカティアの事も気遣っていた。
そして神達との会議も滞りなく終わった。
ある日。
「たまには呼んでやるか… 強制転移!」
「おおっ!」ドスンっ!
「いたっ! お尻割れたわ!」
愛がお尻を抑え痛がっている。
「えっ! おじい様、エルちゃん… なっ、なんで?」
そして驚いている。
「強制転移させた! 椅子に座って仕事でもしていたのか?」
「ええそうよ! でも、転移魔法陣とか無かったわ?」
「ああ、魔神を倒しまくって力が上がってな、いろいろ出来る様になった! 今なら、ここからガイアの星ぐらいなら吹っ飛ばせるぞ」
魔王は笑っている。
「ちょっとー、止めてよね!」
愛が焦る。
「そうだ、お前の叔母さんのアンだ!」
「えっ! 赤ちゃん? しばらく会わない間に2人め?」
「ああ、カティア事件のとき妊娠しているのが解ったんだ。ゲンキーとは3つ違いだ」
「もうそんなになるの… 時が経つのが早いわね…」
愛が感慨深そうに言う。
「愛ちゃん、こんにちは」
「あら、ゲンキー、ちょっと見ないうちに大きくなったわね…」
ゲンキーが挨拶すると愛が少し涙ぐんでいる…
「すまんな、ここのところ毎日、魔神討伐に出ていてな、多い日は上位魔神を50柱とか倒している…
なかなか行く暇がなくてな…」
魔王の魔神討伐は激務となっていた…
「そう、おじい様は、いつも何処かで戦っているのね…」
「ああ、そろそろ本格的な戦いが始まりそうな気がしてな… その前に1度会っておこうと思ったんだ…」
「そうなのね… 早く戦いを終わらせて帰って来て…
みんなも待っているし、私も寂しいわ…」
「そうか… まだ、どうなるか解らないが、俺の力も最初にサトと戦ったときからは比べものにならないほど力が上がった! 頑張ってみるさ…
それに、子供は戦いが終わってからと思っていたんだが2人も産まれてしまった… エルザが可愛がってとか言うから…」
「もー! 愛ちゃんの前でそんなこと言わないでください!」
エルザが真っ赤だ。
「エルザと子供達のために死力を尽くして戦い! 世界を守ってみせるさ!」
魔王が宣言する!
「死なないで帰ってきてね…」
愛が心配そうに言う。
「ああ、最善を尽くす! ところでナオト達はどうなった?」
「2人ともカティア星で新しい神の下で働いているわ!
エカテリーナさん少し痩せたのよ? ナオトさんはまだまだ不満みたいだけど努力しているから文句も言わないみたい。前のように仲良く暮らしているわ」
「なら、一安心だな…」
「他に気になる事はないの?」
愛が聞く。
「ああ、アモン、ザマ、ダーガの3人の現在も知りたいかな?」
魔王は部下達の事を気にしていた。
「アモンさんは2軒の家を買って交互に行き来して生活をしているは、でもまだエルフィーさんは許していないみたい。
ザマ君はアリと別れて、オリ姫と一緒になって、ダーガさんはリリーと離婚したわ…それでフィンさん…」
「そうか… フィンの事はいい。まあ、いろいろだな…」
フィンの事は、後ろめたい気持ちもあり… 愛の説明を途中で止めた。
「リリ達の事は聞かないの?」
「ああ知る必要はない… 愛、まだ時間はいいのか?」
「大丈夫よ?」
「なら、エルザが聞きたい様なら教えてやってくれ… また魔神だ30柱ほど出た、1、2時間で帰る!」
「おじい…」
愛が言い終わる前に転移する。
魔神は下手に手懐けられる前に処分しておきたい、時間との戦いだった…
「どうでした?」
「駄目だ10柱連れて行かれた後だった…」
帰って早々にエルザが心配そうに尋ねた…
「どうだ、愛とは楽しく話せたか?」
「ええ、楽しいです。子供達も遊んでもらって嬉しそうですよ」
エルザと話をしていると。
「すっかり夫婦なのね…」
愛が感慨深そうに呟く。
「前から夫婦のつもりだが?」
「あっ、いや、子供が2人いて、夫婦楽しそうに話しているところを見ると、前とは違うんだなーっと思ったのよ…」
「そりゃあ、城を出て4年…5年近くか? ずーっと2人、途中で子供が出来て、これで他人行儀だったらおかしいだろう?」
「そうよね…」
愛が呟くと…
「貴方、私、子供達を見せに、皆さんのところへ行って来ようかと思います。よろしいですか?」
「ああ、楽しんでおいで、帰るとき連絡をくれれば転移させる。愛、良いのか?」
魔王とエルザの会話を聞き、
「エルちゃん、離れていいの?」
愛が驚いている。
「愛ちゃん、大丈夫ですよ。もうすっかり夫婦ですから心配はいりません」
「愛、将達も呼んで子供達を見せてやってくれな」
魔王が頼む。
「わかったわ!」
愛とエルザ、子供達2人をガイアの城に転移させ、家族が留守のうちに、魔王は用事を済ます。
創造神界に行き、ソーと打ち合わせをする。
子供達が一緒じゃない事にガッカリとされ、いろいろ話すも大した進展もなかった…
ザ、ワールドの天界にも行く。
「なんだよー、子供が産まれたんでしょう? 見せてくれたって良いじゃんか!」
最近やたらと人間くさくなったクインがごねている…
「今、エルザがガイアの城に連れて行っている。見たいのなら行ってこい!」
クインが慌てて転移して行った。
トップやワン、マーズ達と襲撃に備えて打ち合わせをする。大して新しい情報も安も無いがコミニケーションは大事だからだ。
エルザ達は1泊し翌日帰って来た。
「楽しかったか?」
「はい、皆さんのお顔が見れて良かったです」
エルザは満足そうだ、魔王が何も聞きたくないのを知っているから、それ以上は語らなかった。
「お父さん、女の人が沢山いて、みんなママって呼んでって言うんだよ? どういう意味?」
「ママってな、年老いた女の人のことだよ」
魔王は適当な事を教える。
「貴方…」
エルザが呆れている。
「ええ、うそだー! お姉さんもいたよ?」
「ママってな、お母さん以外の女の人のことだよ」
「ええー、ならアーシャ達もママなの?」
「ああ、ママって言ってやれ」
そう笑いながらゲンキーに教えていると。エルザが困った顔をしていた。




