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ジジイの異世界記  作者: パパちゃん
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50からの人生

日本に生まれ若い頃はやんちゃもしたが、普通に結婚し子供を育て孫も産まれ人並みの幸せを味わった…

職場ではしがない中間管理職、頑固な社長にこき使われ、若い頃、尖っていた心も歳と共に玉砂利のように丸くなった。

ごくごく普通のおっさん… いや孫もいるしジジイだな、50歳だし… そんな感じの男だ。


今日は朝から近所の公園に女房と散歩、最近太ってきたせいもあって夫婦で始めた。

2人で歩いている途中、何気に見かけた鳥の写真を撮ろうと1人森の中へ入った瞬間、強烈な閃光と爆音が響き同時に意識が遠のいていった…


夢を見ていた気がする。雲の上のような場所で白金に輝く剣と真っ黒な剣が不思議なオーラを放って雲に突き刺さって立っていた…

だがそれは夢…

目を覚ますと石造りの部屋の中央に倒れていた…

身体を起こし辺りを見ると…

目の前に中世の王様のような男と鎧を着た騎士が数人、そしてローブを羽織った男が1人いる。

騎士達に抱えられた16歳ぐらいの高校生風の制服を着た男の子も2人いた。

その子達は恐怖で震えているようだ。


王様のような男が俺をみるなり、驚いた顔をして突然怒りだし、ローブの男を怒鳴り散らし始めた!

聞いたことのない言語で何を話しているのかもわからないが…


王様が怒鳴り声をあげ、騎士に何かを命令したようで、1人の騎士が剣を抜く!

ローブの男が危ない!

剣のことは気にもせずローブの男が俺の方を見る。

間髪容れず、彼がぶつぶつと呟き両手を俺に向けて光りを放った!

そして俺は、その光に包まれ意識が薄れる…

そのとき、騎士の剣がローブの男に振り下ろされて斬られるのを見た…


1年後、とある街の片隅にぽつんとある小さな家で男の赤ちゃんが産まれた。

父親は既に他界しており母子の2人暮らし。

母は父親の遺産で目立たない生活をしている。


そして10年の月日が流れた…


ここアルブ街は、アルブ男爵が治める5千人ほどの住民が暮らす小さい街。

その街外れにぽつんとある一軒家、そこに暮らす、マリアと息子ノーブ10歳、母1人子1人での生活だった。

ノーブは小さい頃から落ち着き払った大人しい子だった。

家の手伝いは率先して行い 暇な時には本を読むのが趣味だ。


この世界の平民で本を持っている家は少ない。

本はとても高価な物で貴族でもなければ手に入れることは難しい。

そもそも平民や農民は字すら書けない大人も普通にいる。

そして、平民でありながらも教養のある母から読み書き計算を習い、10歳にして大人の貴族並みの教養をもっていた。


ノーブは冒険者になりたかった。

ノーブが小さい頃、母が良く読んでくれた本…

それは太古の昔、白と黒の選ばれし2人が世界を導く為に戦う話だった。

特に黒が世界を見て回り、さまざまなものと戦い、己を鍛え強くなっていく話しがお気に入りで、自分もいつか旅に出て魔物と戦い、黒のように強くなりたいと思っていた。


「母さん 森に野草を取り行ってくるよ!」


ノーブが母に告げ出掛ける。


「危険な魔物もいるから森の奥には行ってはなりませんよ!」


母がノーブを見送りながら声を掛けた…


ノーブは町の外の森へ向かう。

町には外壁があり門番が出入りのチェックをしている。


「ボーズ、また野草取りか?暗くなる前に帰れよ」


顔なじみの門番が心配して声を掛けていた。


森に入りいつものように野草を探す…

毎日採っているからか、いつもの場所には見当たらない。


「ちょっと奥に探しに行くか…

この辺りで魔物を見た事もないし大丈夫だろう」


そう呟きながら森の奥へ進んで行った。

野草を探しながら30分ぐらい歩いただろうか…

森の中に1人の若者が佇んでいた…


「やあ」


その男に挨拶をされ、


「君はこの街の子かな?」


穏やかな声で話掛けてきた…


「ええ母の手伝いで野草を探しに来ました!」


ノーブは元気に返事をする。


その男は、腰に短剣を持つ程度の軽装だが、アルブの街の者ではないようだ…


男はナオトと名乗り、人探しの旅をしているとノーブに話した。

ノーブは他所の街の人と話すのは初めてで、ナオトとの話に夢中になっていた。


突然、ナオトが何かを察したのか表情が険しくなる。


「僕の後ろに隠れて!」


ナオトがノーブを覆い隠す様に立ちはだかる!

どどどどどっ! と地響きが響き!

物凄い勢いで巨大なオーガが現れた!


(ヤバい! あんな魔物に襲われたら死んでしまう… 約束を破って森の奥に入ったのが行けなかった… ごめんなさい母さん…)


ノーブは、オーガに恐怖し死を覚悟した。

目の前までオーガが迫ったとき、ナオトは、とんっ、と軽く弾んだかと思うと、右足でオーガの頭を蹴り抜いた!


「バンっ!」


激しい音とともに、オーガの頭が砕け!

その巨体がズシーンと後方に倒れた。

ナオトはキック1発でオーガを倒してみせたのだ!

ノーブは恐怖のあまり腰が抜けその場に座り込んでいた…


「大丈夫かい? 魔物は初めて?」


そう聞かれ、ノーブは黙って頷いていた…

ナオトは話しながら、倒したオーガの胸に短剣を突き立て、魔石を取り出す。

そして、少し離れたところから…


「ファイアーボール!」


呪文を唱える。

手の平から放たれた火球がオーガの残骸を焼き尽くす。

驚きながらも食いいるように観ているノーブに…


「魔物退治に興味があるのかい?」


ナオトはそう質問し微笑んた…


「ぼっ、僕は強くなりたいんです!

母を守れるぐらいに!

そしていつか冒険者になって世界中を旅するのが夢なんです!」


ノーブは誰にも言ったことのない胸の内を打ち明けた…


「だったら強くならないとね」


ナオトは優しい声で答え、


「よかったら鍛えてあげようか?」


そう続けた…


「ほんとうですか! でも旅の途中ではないのですか?」


ノーブは鍛えてもらいたいが、旅の途中との事を気にしていた。

ナオトは、じっとノーブの顔を見つめ…


「大丈夫だよ、 急ぐ旅でもないし、探していた人は見つかったから…」


そう言って微笑んでいた。


「明日から魔物と戦えるように鍛えてあげるよ! 小さなおじさん…」


手を差し出され握手をする。


(小さなおじさんってなんのことだろう…)


ノーブは思ったが、何かの冗談だと聞き流していた…


その日はそこで別れて家に帰る…


「今日は野草をあまり採ってこれなくてごめんね…」


家に着き母に謝った…


「いいのよ? 野草が見つからなくても、無理をして探さなくても大丈夫だからね」


母が優しく微笑む。

今日の出来事は母には言えなかった。

約束を破り森の奥に行き魔物に襲われたことなど…

そしてナオトにも会った事は誰にも言わないでと約束をしていた。


翌日もノーブは森の奥に入りナオトに会っていた。


「師匠、よろしくお願いします!」


ノーブは元気に挨拶する。


「やる気まんまんだね。頑張って強くなってね」


ナオトは微笑んでくれた。


まず、基礎体力作り…

毎日走り込み。

そして魔力操作と気の練習…

魔力操作が出来ようになれば魔法も教えてもらえる!

魔法は個人の資質により使える魔法が変わってくる。

だが、ナオトが言うにはノーブには満遍なく資質があるとの事で、特に雷の特性が高いとのことだった。

戦闘といえば剣技!

木剣で師匠のナオトと打ち合う!

そして、格闘術はノーブに合っているようで念入りに習っていた。


母には野草を取りに行くと伝え家を出る。

ナオトと初めて出会った森まで1時間ほど訓練がてらに走って行く。

ノーブが訓練に打ちこめるようにと、野草採りはいつもナオトが済ませてあった。


数日で魔力操作のコツを掴んでからは家でも練習をする。

ノーブはナオトと出会ってから1日も休むことなく鍛え続けていた。

基礎体力上昇の運動も母の手伝いの合間にしていた。

ナオトはノーブに体術と魔法をメインに教えた。

ノーブは基礎体力を上げながら気の操作の指導も受け、身体強化と言うスキルを覚えてパンチやキックで小型の魔物なら一撃で倒せるようになった。

魔法は、ファイアーボール 、エアカッター 、サンダー、ヒールと、初期魔法を次々と覚えていく。

訓練中に魔物と遭遇して戦う事もよくある。

実戦に勝る練習はない。

初めて戦ったのは魔物ではなかったが、突進してくるボアを回し蹴りで倒した。


この日も戦う獲物を探していると、ゴブリン4匹を見つける。


ナオトに…


「1人でやれる?」


そう聞かれ…


「行けます!」


ノーブは即答する。


身体強化をして一気に駆け寄る!

こん棒を振り翳すゴブリンの側頭部にハイキック! 一撃で沈める。

横から掴みかかってきたゴブリンに腹パン!

ゴブリンは衝撃で吹き飛ぶ!

左右から同時に2匹のゴブリンが駆けてくる。

右ゴブリンにサイドキック!

左ゴブリンにサイドエルボー!

一瞬でゴブリン4匹を倒した。

ナオトに借りたナイフで魔石を取り出し、ファイアーボールで死骸を焼却、魔物の死体は放置すると、アンデット化するとの事で焼却するのが常識だと教えられていた…


次に遭遇したのが1匹の巨大なオーク、ノーブの2倍程の身長…

身体強化でジャンプして顔面パンチ!

びくともしない…

不用意にジャンプパンチを放ったせいで、腕を掴まれ投げ飛ばされて木に激突する!

普通の10歳なら即死だが、身体強化されている今なら致命傷にはならない…


「痛っ!」


ノーブは叫んだ!

立ち上がり、覚えたての魔法を使う!


「サンダーアロー!」


一筋の稲妻がオークに向かって飛んでいく!

稲妻の矢はオークに命中しダメージを与えた!

オークが膝をつく。

一気に駆け寄ってジャンプキック! 渾身の一撃が決まってオークを倒した。

倒したオークはナオトが持ち帰る。

ナオトはアイテムボックスといったものが使えてオークぐらいなら何頭でも収納できる。

魔物でも、食用になったり素材になるのは売れる。高額で取り引きされる魔物もいる。

だがゴブリンは素材としてなんの使い道もない、唯一、魔石だけが多少の価値があり売れる。

売れない魔物は、魔石を抜き取り焼却処分としていた。

ナオトはノーブに出会ってから街に家を借りて住み集めた獲物は街の冒険者ギルドで換金して、いつかノーブに渡そうと貯めていた。


ノーブはレベルアップと戦闘練習の為に、一日に数10匹の魔物と戦っていた。

そんな修行の日々が2年ほど続き、体力も付き体術も剣技も上達した。


剣技の練習は刃を落とした鉄の剣と鉄の盾を使う。

師匠のナオトと毎日打ち合い、当然のようにボロボロにされ打ち身でアザだらけ、真剣だったら何度も死んでいたはずだ。

骨が折れたり、ひどい怪我をしても、ヒールの魔法で治るからボロボロにされても心配は無い。

だが、治るとは言え痛い物は痛かった。


ノーブは格闘が得意で、剣技が苦手だったが、剣技の練習を重ね上達していた。

ナオトはノーブにショートソードを与えて剣を使った魔物退治に出かけることにした。

40匹程のゴブリンの集落を見つけノーブ1人で殲滅しに行く。

ナオトは集落の入口でノーブを見送った。

魔物とはいえ殲滅と聞くと無慈悲に思えるかも知れないが、ゴブリンはグループで人を襲い殺し女性を攫い慰み者にしたりする。

ゴブリンの討伐は、冒険者ギルドの討伐依頼には必ずあるものだった。


ノーブは1人で堂々と集落の中へ歩いて入る。

気づいたゴブリン達は仲間を呼び集めノーブの前に立ち並び威嚇し始めていた。

予定より多い、ざっと50匹、ノーブは魔法を放つ!


「サンダーライガー!」


ライガーを模した稲妻が、集落の中を走り、ゴブリン達を感電させる!


「サンダーメイル!」


稲妻を身に纏う!


「超電磁フィールド!」


辺り一面に電磁フィールドが形成され、身にまとった雷と電磁場とのリニア効果で浮き上がり滑走する。

20匹ほど残ったゴブリンを縦横無尽に駆け回りながら剣で切り倒して行く。

10匹ほど斬り倒したところで不意をつかれてゴブリンソードに肩を刺される。


「痛い…」


ノーブは顔を歪めヒールを詠唱し傷を治す。

ゴブリンは残り10匹となり、2匹のゴブリンメイジが魔法の詠唱をはじめた。

それに気づいたノーブも…


「ウィンドカッター!」


一歩早くノーブの魔法が発動する!

2匹のゴブリンメイジと5匹のゴブリンソードは風の刃に首を斬り飛ばされ絶命した!

残すは2匹のゴブリンジェネラルとゴブリンキングのみ。


「ギガサンダー」


魔法を唱える!

ゴブリンどもに雷撃が落ちる!

2匹のゴブリンジェネラルが高温の稲妻に焼かれ灰となる。

ダメージを受けたが、無事だったゴブリンキングが吠えながら突進してくる!

電磁フィールド内を滑走し、突進をかわし、振り向きざまにショートソードを降り首を斬り飛ばす!

ゴブリンとの戦いが終わった。

ノーブの圧勝だった!

大量のゴブリンの魔石を取り出してゴブリンの死体を集めてフレイムで焼き尽くす。


「ゴブリンとはいえ50匹の魔物を簡単に討伐してしまうとは…」


ナオトが少し驚いていた。


「師匠の教えのおかげです!」


ノーブはナオトに感謝していたが…


「剣の練習だったんだけどね…」


ナオトは少し呆れ、魔法を使ったノーブは罰の悪い顔をしていた…


この頃から、ノーブは自分は強くなったと勘違いし始めたのかも知れなかった。

それもそのはず…

最初に出会った魔物、オーガは今戦えば勝てない敵でもなく、ノーブも自身も勝つ自信があった。

それでも鍛錬だけはおごることなく真面目に続けた…


そして1年後、13歳のときに事件はおきた。


いつもの訓練の帰り道…

何者かが近づいてくるのを感じた。

それもかなり強い魔物の気配。

師匠のナオトとは既に別れたあと…

逃げるべきだったのだが、ノーブは自分が強いと思い上がっていた。

魔物の1匹ぐらい簡単に倒せると…

近づいてくる気配に剣を抜き構える。


「ほー、我の気配に気づくも逃げぬか… よほどのアホうよ」


その魔物が凶悪な顔で笑った。


「はっ、話せるのか⁉︎」


ノーブは魔物が喋ったことに驚く!


「我は鬼人王だ… 鬼人族を束ねる者だ。オーガなどと一緒だと思うなよ!」


身長は2mほど、オーガと言うよりツノの生えた人間…

その身体は、まるで甲冑を着ているかの様な外骨格で腰には刀を携えていた。


(これが魔物なのか?)


ノーブは困惑し、明らかに上級と思われる魔物、鬼人王の放つ殺気に恐怖していた…

だが、今更逃げたところで追撃され殺される…

戦うしかないと覚悟を決めた…

身体強化と「サンダーメイル」を唱え「舜動」を発動!

覚悟を決めて一気に鬼人王の懐に踏み込む!

首を斬り落とす勢いで剣を振り、一閃が走る!

鬼人王は右手を上げ籠手でノーブの剣を受け止めガードをした。

バキッっと剣がへし折れる…

ノーブは焦りハイキックを叩き込む!

鬼人王は避ける事すらしなかった。


(ダメージを与えられない⁉︎)


ノーブの顔色が悪くなっていく…

パンチとキックを連打で叩き込むも全く効かない…

鬼人王が、ふんっ! っと、裏拳をノーブに叩き込む!

モロにくらい吹き飛び、5m先の大木に激突。

かろうじて生きてはいるが…

ノーブの右手右足が砕け、あらぬ方向に曲がっている…

骨も数本折れて片肺が潰れていた!


「ヒュー…ヒュー…」


呼吸もままにならず苦しんでいる…


(ここで死ぬ訳にはいかない…)


ノーブは、ありったけの魔力を使い!


「サンダーアロー」「ウィンドカッター」「ファイアーボール」「電撃」……


気力を振り絞り、ノーブが使える攻撃魔法を魔力の続く限りありったけ放った!

50近い魔法の波状攻撃!

ドドドドド… ドカドカドッカーンっ!

けたたましい音と共に爆音が響く。

ゴッゴー!

だが所詮は簡単に発動できる初、中級魔法、爆煙が消えると無傷の鬼人王が現れた…


「それで終わりか?」


鬼人王がニヤリと笑い近づきノーブの目の前でゆっくり刀を抜く…


(駄目だ… 殺される…)


ノーブは恐怖して絶望感の中にいた…

そして、息も絶え絶えで、すでに身体の感覚もない…


「では死ね!」


鬼人王が刀を振り下ろす。


(くそ! 死にたくない!)


ノーブは心の底から死にたくないと願った…

すると突然、ノーブが神々しい光に包まれ輝く!

その光は障壁となり鬼人王の剣を遮る!

カツ! カツ! カキン!

鬼人王が力を込め何度も刀を振り下ろすが、刀は障壁に遮られ弾かれる…

そして、瀕死のノーブはゆっくりと回復していく…

魔力も少しずつ回復していく…

骨が砕けていた手足も徐々に治っていく…

瀕死で身体の感覚も痛みもなかったが、身体が治り始めると激しい激痛が襲ってきた!


「うぁぁぁー!」


ノーブは断末魔の様な叫び声を上げていたが、そのおかげで意識だけははっきりとした!

最後のチャンスだと、左手の指先に全ての魔力を込める。

鬼人王に勝つ事だけを考えて… 小さな鉄の玉を生み出し、指先から筒状に電磁の筒が形成され詠唱が終わる…


「レールカノン!」


ノーブが魔法名を叫ぶと、眩い閃光と稲妻のスパークが鬼人王の頭を貫き消滅させていた…

鬼人王の残された体だけが後方にドサッと倒れる…


「勝った…」


ノーブは呟き気を失う…


(ここは? 夢なのか? 僕は死んだのか?)


ノーブは気がつき辺りを見回す。

そこは、雲の様な白いモヤの上で白金に輝く剣と真っ黒な剣が不思議なオーラを放ちモヤに突き刺さっている。

初めて来た場所なのに何処か懐かしい気がした。

白金に輝く剣のオーラ、鬼人王との戦いでノーブを守った障壁と同じ感じがした。


(あの剣が守ってくれたのか?)


ノーブは剣に近づこうと歩き出すが、どこまで歩いても近づけない…


「ノーブ! ノーブ! しっかりしろ!」


どこからともなくノーブを呼ぶ声がする…

その声に揺り起こされ目を開けるとナオトがいた。

ナオトは家でくつろいでいたが、突然、いつもの森から強大な魔力を感じて不穏に思い確認しに戻ると、ボロボロになったノーブが倒れていた。

意識は朦朧としているが、曲がった手足は普通に戻り体力も若干回復していた。

だが、身体も精神もボロボロで魔力は底をつきノーブは立ち上がれる状態ではなかった。

鬼人王の死骸を見て、大体の事を察したナオトは、あまり多くのことを聞かなかった…

ナオトはノーブにメガヒールの魔法をかけてノーブの傷を治し、ボロボロで血だらけになった服をナオトが持つ予備の服に着替えさせた。

ノーブは傷が治り体力が回復し、魔法で身体も洗い着替えも済ませ、死にかけていた先程とは嘘の様に普段と変わらない姿となっていたが、心のダメージだけは治らなかった…

ノーブはナオトに鬼神王との戦いの全てを話し家まで送ってもらった。


家に入り母の顔を見た途端涙が溢れ、そして声を上げて泣いた。

母は何も聞かずただ頭を撫でた…

その夜は絶対的強者に殺されかけた恐怖で眠ることが出来なかった…


翌日も、いつもの森に向かったが、恐怖で森の中に入れなかった。

ノーブが森を眺めて佇んでいると、森からナオトが現れる…


「怖くて森に入れないのかい?」


ナオトが困った顔で尋ね…


「強い魔物だったが君が勝ったんだ。恐れることはないんだよ…」


そうナオトが続けたが、ノーブは俯き言葉が出なかった…


「そっか… 君の心は折れてしまったんだね…

君も強くなったし 修行はここまでにしよう!」


ナオトは微笑んで告げた。


「えっ…」


ノーブはビックリしてナオトの顔を見る!


「僕もそろそろ旅の続きをしないとね」


ナオトはうんうんと頷き満足していた。


「しっ、師匠! 怖い… 怖いんです!

でも僕はもっと強くなりたいんです!」


ノーブは思いの丈をナオトに伝えた。


「大丈夫! 基本は教えたし、日々の鍛錬でもっともっと強くなれるから」


ナオトはノーブの肩に手を置き、


「もう僕がいなくても大丈夫なはずだよ。

今はゆっくり休んで心の回復に専念してね…」


ナオトはそう言った。


「この中に魔道書や今まで貯めた魔石やお金、防具や剣が入っている。君にあげるよ」


ノーブはマジックバックを手渡される。


「そして僕が借りている家の地下に魔道具で作った特別な部屋がある。

扉に君の魔力を込めるとその空間に繋がる。

特別なゴーレムも置いてあるから戦闘の練習も出来る。

空間魔法で作られた部屋だから上級魔法の練習をしても大丈夫だからね」


そう説明されて家の鍵も渡された。


「君がこの街を出て行くときが来たら、その鍵を折って壊してくれ。

その空間は自動的に消滅するから。

そして、いつかまた君が戦う時がきたらマジックバッグに「力が欲しい」と願い魔力を込めるといい、きっと君の助けになるはずだから!

ノーブ、これでお別れだ、また必ず会おうね」


ナオトは右手をあげ、シュッと消えていった…


「しっ、師匠! まって…」


一方的に告げて去って行くナオトを止めようと、ノーブが声を掛けるが、既にナオトの姿も気配もなかった…


(1人になってしまった…)


ノーブはそう思い寂しげに家に帰って行く…

帰る道すがら、この3年間の師匠との修行の日々を思い出して涙する…


(きっと僕は強くなる! いや必ず強くなってみせる!

そして、その姿を師匠に見てもらう!)


そうノーブは心に誓った!


翌日、ノーブはナオトの家に訪れた。

家はもぬけの殻の状態で何もなかった。

ナオトに教えられた地下の部屋に入る。右の壁には棚があり、ノーブが使えそうな剣や盾、鎧が並んでいる。

その横にはテントなどの冒険用の魔導具が置いてあり、マントやローブ、服なども置いてあった。

左の壁には、ほぼナオトと同じサイズのゴーレムが10体並んで立っていた。


中央にはテーブルがあり、その上に、マジックスクロールが置かれていて、ノーブが触ると、スクロールは開き文字が浮き出て来た。

読んでみると、部屋や魔道具、ゴーレムの使い方が記されていた。


説明の通りに、一体のゴーレムの胸に手の平をあてて魔力を込める。

ゴーレムの目が輝き起動し動き出す!

説明によれば、命令通りに動き、夜営の護衛や戦闘の練習相手になる優れ物だった。


そして、部屋の1番奥にある扉に手を当てて魔力を流す。

扉が開き中に入ると、そこは見たこともない空間だった。

薄暗く、床だけが存在し、天井も壁もない。


試しにレールカノンを放つ!

だが、電磁砲の光りは見えなくなるまで飛んでいき、どこにも着弾しなかった。


ノーブは、魔導具が置いてあった場所で見つけた魔導書を読み込み、広範囲殲滅魔法を試す!


「メテオ!」


ゴー! っと、音を立て直径10mほどの大きな岩が空から降って来る!

それが物凄い勢いで床に落ちるが、その空間はびくともしなかった。


(ここなら、どんな魔法も試せるし、複数のゴーレムとの戦闘訓練も出来る!)


ノーブはこの場所で、鍛え上げ、何もにも負けない強さを手に入れる決意をした。


そして魔導書は、この国の言葉ではない文字で書かれていた⁉︎

だが不思議なことに何故か読めてしまう…

師匠が自分だけに読めるように暗号化した魔法文字か何かだろうと、ノーブは思った。

その文字は何故か? 観ているだけで懐かしさを感じるものでもあった…


その日からノーブは一生懸命に鍛錬を続けた…

だが、鬼人王との戦いがトラウマとなり、今まで倒せた魔物すら怖くなってしまい戦えなくなっていた…

毎日がむしゃらに訓練に打ち込む!

朝、家の手伝いをしてから出かけて夕方まで訓練。

ノーブは母には何も説明していなかった。

だが母は、ノーブが訓練をしている事を知っていたが、黙って見守っていたのだった。


秘密の練習場では…

ゴーレム相手に模擬戦!

1対1で戦ったり複数との対戦で剣術、格闘術、魔術のコンビネーションを覚えて戦闘スキルを上げていく。

身体強化、舜動など以前から出来るスキルに磨きをかけ、気功波などの技も習得した。

パンチやキック、剣での斬撃をも飛ばせるようになり、魔法は、雷は上級 、土と風と火は中級、水は初級、治癒魔法も中級程度覚えていた。

空間魔法や光魔法はまだ覚えられないが、特別な広範囲殲滅魔法も頑張って覚えていた。

そして、ナオトがいなくなって一年以上が経ち、ノーブは15歳になろうとしていた。


そんなある日、朝から街の様子が騒がしい…

突然、ノーブの家に街の警護団がやって来た!


「魔物のスタンピードが迫っている!」


そう1人が叫ぶ!

このままでは、後1日足らずで魔物の大群に街が襲われてしまう。

この街の騎士と冒険者ギルドのメンバーで討伐に向かったようだが、万が一の為にと避難の誘導に来たのだった。


だが、母のマリアは…


「私は理由があってこの家を離れられないのです…」


そう避難を断る…

何度も何度も説得されるが、頑なに断るマリアに負け、警護団の人達は、また後で来るから、と帰って行った…


「母さん何故逃げないのですかっ!」


ノーブは声を荒げてしまった。

長い沈黙のあとマリアが口を開いた…


「ノーブ、よく聞きなさい。母さんは、この家に幽閉されているのです…

この家の敷地から出る事は許されていないのです…」


母に衝撃の事実を打ち明けられた…


(そう言えば母さんが出掛けるところを見たことがない⁉︎

食料や雑貨は、週に一度商人が売りにくる…

それが普通だと思っていた…) 


ノーブは、今まで不自然に感じていた事を思い出していた…


「誰に? 何のために?」


母に訳を問いただすも…


「今は知るときではありません。

いずれ貴方にも話すときがきます。

それまで待っていなさい」


マリアに真剣な顔で言われ、ノーブはそれ以上何も聞けなくなってしまった…


「警護団の人達がもう一度来ます。 

貴方は彼らと一緒に逃げなさい!」


母マリアはノーブに強く言った。


「えっ… 僕も幽閉されているのではないのですか?」


ノーブは母に質問するが…


「貴方は関係ありませんから逃げなさい!」


そう言われるばかりで、何が何だか解らない…


「そんな… 僕だけ逃げられる訳ないじゃないですかっ!」


ノーブは怒り家を飛び出した!


(ああ言ってる以上、母さんは逃げない。

魔物の大群が襲って来れば母さんは死んでしまう…そんなことさせるもんかっ! 母さんを守るんだ!)


そう思い、ノーブはマジックバッグに手を添え魔力を流しながら「僕に力を!」と願う!

すると鎧一式と剣、そしてマジックスクロールが出てきた!

それを読んでから、真っ赤なフルプレートメイルに触れて魔力を流して使用者登録をした。

鎧を着てみると自動調整機能が働きぴったりのサイズになった。

使用者登録したおかげで装着が一瞬で出来、鎧を脱ぐ時も念じれはマジックバッグに収納されて必要なとき瞬時に装着する事が可能となった!


兜はツノの様な飾りがついて、鎧には噴射口が背中に2門と両足の裏にもついている。

炎の魔力を込めると炎が吹き出して飛べる仕組みだ。

両肩にはフレキシブルに動く筒があり、魔力を込めるとカノン砲として使えるし取り外せば魔力剣にもなる。

そして拳には硬質のナックル!

手の甲は少し膨らんでいて穴が開いている。

同じ物が兜のこめかみ部分にも2門あり、気や魔力を込めると特性に応じた弾丸が発射される魔導バルカンがある。

鎧の肘と膝の部分からは、念じればユニコーンのツノの様なニードルが飛び出して突き刺す武器となる。

スネと足の甲の部分は硬い突起がありキックを放てば岩をも簡単に砕ける!

両腰にショートソードが2本 、鞘の隣りには片側4つずつの三角の矢じりのようなものが鳳凰の尾の様にぶら下がっている。

念じれば一枚ずつ分離して思いのままに飛んでいき攻撃し再び戻ってくる。

背中にはバスターソードが装備されていた!

だが今のノーブでは大型のバスターソードは使う事が出来ず外しておく…

これも必要なとき念じれば瞬時に装着される。

鎧の色は魔力を込めれば変えられ、ちょっとした破損や傷は自己修復機能が直す。

凄く高性能な鎧だった!


(赤色は目立ちすぎて恥ずかしいな…)


ノーブはそう思う、説明によると、赤色は3倍の速さを誇ると書いてあるが…


(色でスピードが変わるのか? 後日検証してみるか…)


ノーブは赤い色が3倍速いと言うネタを知らなかった…


まず飛ぶ練習をしてみる。

鎧の背中に炎の魔力を込める。

ボォーっという音と共に赤い炎が出るが飛ばない…

更に魔力を込める。

赤い炎が青色に変わりゴォォーっという音と共に浮き上がる!

そして両足にも魔力を込め、背中の2門、両足、系4門の噴射口から青白い炎が出て一気に加速する!

一瞬で雲を突き破り空を飛ぶ⁉︎


「おおっ!」


ノーブは驚き魔力の制御を乱して一気に落下する‼︎


「ヤバい!」


再び魔力を込め姿勢制御… 魔力の消費が半端ない。一旦地上に降り考える…


「うーん… そうだ! サンダーメイル!」


魔法を唱え稲妻の鎧をまとう…

正確には鎧というより全身にまとった稲妻が障壁の様に防御したり触れたものを感電させる魔法だ。

稲妻をまとっている間は磁力が発生し反作用の効果で空中に浮き上がる事が出来、電磁フィールドと組み合わせて使えばリニア効果でフィールド上を滑るように高速移動が可能となる。

とりあえずサンダーメイルの効果で浮き上がり、炎の推力で移動、空中での静止は雷の磁力。

2つの魔法を駆使すれば意外と魔力を消費せず空を飛ぶ事が出来る様になった。


(やれるかもしれない… 母さんをこの街を守れるかもしれない… いや守ってみせる!

1年半、修行に明け暮れた成果を発揮してみせる!)


ノーブは拳を強く握り決意を固め、魔物のスタンピードが向かって来ている西に向かって飛ぶ!

1時間ほど飛ぶと森の中に大勢の人が見える…


(きっと討伐隊だ! この方向で間違っていない!)


ノーブはそう解釈して、さらに飛んでいく!


一方、森の中では騒然となっていた!

小さくてはっきりとは見えないが…

赤い鎧の戦士が飛んでいる !

向かっているのは魔物がいる方向、しかもその姿は…


「あれは爆炎の勇者じゃないか?」


「あの姿は間違いない!」


「助けに来たんだ!」


討伐隊の中の冒険者達が盛り上がり声をあげる。

ただ騎士団の隊長は渋い顔で空を見上げて…


「男爵様に爆炎の悪魔が現れたと伝えろ」


部下の1人に命じていた…


ノーブは更に飛ぶこと1時間、全方から木々を薙ぎ倒し土煙を上げて大群で進行する魔物の群れを見つけた。

ざっと1000頭… 大型魔獣のサイクロプスや土竜、トロール。

土煙でよく見えないがオークやゴブリンなど無数の魔物の姿に息を呑む…

ノーブは空中で静止して一息つき。


(やるしかない! 僕なら出来る!)


自分を奮い立たせる!

この1年半で覚えた広範囲殲滅魔法の詠唱に入る。

長い詠唱を終え魔物の群れをしっかり見定めありったけの魔力を込め…


「メテオ!」


空高くから成層圏の摩擦で燃えながら落ちてくる無数の巨大な岩が魔物の群れに降り注ぐ!

バッカーン! ドッカーン! ゴーーー! 轟音が響き、地響きと共に砂塵が巻き上がる!

ノーブ自身が驚くほどの威力だった!

どれだけの敵を倒したのだろう…

莫大なレベルアップをした様で身体の底から力が溢れてくる!

マジックバッグから取り出したマジックポーションを飲み干す!

魔力を回復させて砂塵が収まった所に降り立つと、生き残った魔物が襲ってくる…


「サンダーライガー」


雷で作られた10頭のライガーがフィールドを駆け魔物達を蹂躙していく。

ノーブも一気に駆け出す!

腰からぶら下がる矢じりに攻撃する様に念じる!


「いけ、ヤー!」


8個のヤーが縦横無尽に飛び交いゴブリンやオークを次々と切り裂き貫く、そしてノーブは電磁フィールドの上を滑走しツインソードで敵を殲滅していく。


何体倒したのだろう…

オーク、ゴブリン、コボルト、ウルフ…

地竜やサラマンダー見知らぬ魔物…

撃ち漏らしもあるだろうに、既に、この辺りに魔物の気配はない…

だがまだ前方から魔物の群れの気配を感じる。

一息つき、ポーションとマジックポーションで体力と魔力を回復し前方から感じる気配に向かって飛び立つ。

30分ほど飛び、50ほどのオーガの群れを見つける…

後方には小型のドラゴンに乗った鬼人がいる…

ノーブは鬼人の姿を見たとたん、あのトラウマが甦る…


(ここで逃げるか? 残りの魔物は討伐隊に任せても良いんじゃないか…

きっと僕より強い戦士や冒険者が沢山いるはずだから…)


そう弱気になり踵を翻し逃げようとするが…

もし討伐隊がやられてしまったらと思うと逃げるに逃げられなかった…


(さっきの戦いで、大幅にレベルアップした今なら鬼人にも勝てるかもしれない!)


ノーブは奮い立ち再びオーガの群れに立ち向かう!


敵にはまだ気づかれておらず、充分な距離がある。

ここからなら…と、ノーブは、あの鬼人王との戦いで作り出した魔法…


「レールカノン!」


それを、全力で放った!

鬼人王との戦いでは指先一本に収束させて放ったが、今回は両腕を超電磁砲の砲台にして巨大な砲弾を作り出し発射!

甲高い音と電磁がスパークしながらオーガの群れを飲み込み、オーガの群れは消滅した。

後方のドラゴンとそれに乗る鬼人は電磁砲弾をギリギリで躱してノーブに向かって来る!

電磁砲弾は更に進み続け、ドラゴンの後方で大爆発を起こした!


(やるしかない!)


ノーブは覚悟を決め弾丸の様な勢いで飛んでいく!

使う事がないと外していた バスターソードをアイテムボックスから取り出して手に持ち構える!


「大幅にレベルアップしたいまなら使いこなせるはすだ!」


ノーブは呟き、飛ぶスピードを限界まで上げバスターソードで一気にドラゴンの首を斬り落とす!

死んだドラゴンの背中から落ちる鬼人の頭に回し蹴りを叩き込む!

鬼人の頭が派手に吹き飛んだ!

そして、戦闘は終わりをつげる…


少し気になり、電磁砲弾が着弾し、大爆発した場所を見に行ったが、何もかも跡形も無く吹き飛んでいた…


その後は何かの役に立つかもとドラゴンの死骸は丸ごとマジックバッグの中に収容した。

鬼人や大型のサラマンダー、オーガジェネラルやオークジェネラルなとの上位種の魔石だけを回収して、その場を後にする…


ノーブは疲れきり家に帰る。

だが、母のマリアは居なかった…

そして、テーブルの上に手紙と布の袋が置いてある。

その手紙を手に取って読む…


(お話をしなくてはならない事が沢山あったのですが…

危機が迫りつつあるために私は姿を隠します。

ですが心配しないでください。

ノーブ、貴方は旅に出なさい。

もう充分強くなったことは知っています…

広い世界を見て見聞を広めて成長してください…

いつか会う日まで… 母より)


一緒に置いてあった袋には沢山の金貨が入っていた…


(えっ! 何がどうした? 母さんはどこに行った? 僕はどうしたらいいんだ?)


ノーブは訳が解らない…


とりあえず、マジックバッグに手紙と金貨を収納して家の中や周りを探す。

だが母に関する手掛かりは何処にも見当たらない…

途方に暮れていると何かが近づいて来る気配に気づく…

ノーブは咄嗟に茂みの中に隠れる。

馬に乗った10人の騎士と豪華な馬車が一台現れて家に向かう…

隠れながら様子を見守っていると、数名の騎士が鍵を壊して家に侵入して行く、しばらくすると慌てて出て来た。


馬車に騎士が駆け寄り!


「お館様! マリアがいません!」


その報告を聞いたアルブ男爵が…


「くそ! 逃げおったか! 自由にさせておいたばかりに… 探せ! 探せ!」


騎士達に向かって叫び、騎士達は騒然となり馬を走らせ探しに行った…


男爵が残った護衛の騎士と話している…

ノーブは物凄い数の魔物を倒し、レベルがかなり上がり、集中すれば遠くの物が見えたり聞こえたりするようになっていた。

集中して耳を澄ます…


アルブ男爵達は、マリアが消えたのは爆炎の悪魔が現れたせいかもしれない。そう話していた。


(爆炎の悪魔とはなんだ? 飛んで行ったのは僕なんだけど…

魔物との戦闘中、人の気配は無かった…

って事は、僕を見て爆炎の悪魔だと思ったのか?

師匠に貰った鎧を見てそう思ったのか?

その爆炎の悪魔が現れて、男爵達が母さんの所在を確認しに来たのは何故だ?

師匠と母さんは何か関係があるのか?)


考えても考えても謎が深まるばかり…


(とりあえず母さんは何かから逃げ延びたって事か…

しかしこうなった以上、僕もここにはいられない…

母さんと師匠を探しながら旅をしてみるか…)


ノーブはそう決意し、ナオトの家に行き秘密の部屋を整理する。

ゴーレムなどの魔道具、テントや非常食、旅の衣装やローブなど、全てをマジックバッグに収納して部屋を空っぽの状態にした。

そして、部屋を出て鍵をへし折る!

すると、部屋は音もなく消え去った。

ノーブは一般的な服を着てローブを羽織り旅立つ準備をする。

鎧は一瞬で装着出来るので普段は身につけていない…

高性能すぎるのでピンチのときにしか使わないことにした…


そして、師匠の家を後にし、東の方へとノーブは旅立った!



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― 新着の感想 ―
[気になる点] そもそも平民や農民は~ ん?平民と農民は階級が違うのか? 王族>貴族>平民>農民、みたな?
[良い点] 面白いです! [一言] 追ってまいりますので、執筆頑張って下さい!!!
2023/07/09 10:49 退会済み
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