おそろい
青空に綿菓子のような白い雲が彩る。空は爽やかに見えるのに暑い真夏の炎天下の中二つの麦藁帽子が動いていた。優太と梓である。二人は青いホースから山田中学の校舎の周囲に植えられた向日葵の花に水をやっているのだ。山田中学の代々の象徴である校章でもある向日葵の花。
昔山田中学がまだこんな過疎地になる前は何十人でやっていた作業。
「ったく代々一年生が向日葵の手入れをやるっていても二人しかいないのに……」
春の向日葵の種植えに始まり、その後の除草や水やりの作業など二人で黙々とこなしていた。我慢に我慢を重ねていた優太はぼそりと呟いた。
その声に楽しそうに向日葵に水遣りをしていた梓が振り返った。ふわりと麦わら帽子の下のツインテールに結わえた長い髪と共にスカートの裾が翻る。
「え?わたし楽しいけど……。優太君はつまらないの?」
そう、梓は春から向日葵の作業をとても楽しそうにしていた。
「え……」
いや梓と一緒だから楽しいとはさすがに恥ずかしくて言えない優太が沈黙すると、梓は
「私前の学校人数多かったからこんな風に友だちとずーっと一緒に居られて何かを育てるって楽しいっ!」
にっこりと本当に天使のように無邪気に唯微笑む梓。
「……そうですか」
がっくりと項垂れる麦わら帽子の優太にぴょこぴょこと飛び跳ねる梓の麦わら帽子。
「うんっ!優太君と一緒で楽しいよ」
ホースで向日葵に水を飛ばしながら愛らしく梓は笑う。
「……」
「それに優太君とお揃いの麦わら帽子で嬉しいし」
梓はぼそっと優太に気づかれないように囁くように呟いた。
これは内緒、まだ優太君に気づかれませんようにと梓はそうっと心の中で呟いた。
「おーいあずさあ!ホース回収するぞー!」
黄色の向日葵畑一面に優太の声が響いた。
「はーい」
梓は優太の声のする方へ走り出した。
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