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散りゆく桜の木の下で  作者: 柳沢 玲
2/3

【一】

次の日

死にそびれた私は、いつものように登校した。

家に引きこもって、飲んだくれの父と二人で過ごすよりはいくらかましだと思ったからだ。

私が通う第三中学は、地元の人間しか来ない田舎の公立中学で、地元住民からお山とか沼山と呼ばれている小高い丘の隣にある。昔は第一から第五まであったらしいが、少子化と過疎化の影響により、今は少し発展した地域にある第一と田舎の煮凝りのような立地の第三しか残っていない。

ちなみに、第三中には制服がない。


「よお、杉崎。今日も朝から幽霊みたいな面してんな!」

「おはよう。小島君。今日も元気だね」

彼は隣に住む同級生の小島 健君。町長の息子で、私に唯一絡んでくる…話しかけてくる人だ。

彼は私と家が近いこと、年が近いこと、彼が町長の息子であること、彼が明るい性格であることなどから、私が不登校になったり何か問題を起こしたりしないように、“適度に”話しかけてあげるよう教師や近隣住民から言われているのを、何度か見たことがある。正直、余計なお世話だ。出来ることなら一人にしてほしい。わざわざ見張らなくても、私に逃げ場なんて、ないんだから。

別に周囲に誰がいようと基本構わない私は、現場を見た時、他人事のように大変そうだなー、可哀そうだなーくらいにしか思っていなかったが、彼のいう“適度”の距離が近すぎるのか、私がおかしいのか、“適度”に話しかける頻度及び距離がすごく近い。私からすると、明るすぎて怖い。

そして、デリカシーがない。

「そう言えば、お前、中学卒業したら就職希望なんだってな。何でだ?お前勉強は出来るし、…レベル落とせば奨学金とか取れそうじゃん。」

「…僕の家は貧乏だから、すぐにでも家にお金入れなきゃ持たないんだよ」

「そっかー大変だな」


中学二年生の今、進学先の話は皆の鉄板と化している

私が就職希望なのは、実際にお金がないからというのもあるが、諸事情によりこれまで性別を偽ってきた私が、これから更に学校に通うのが面倒だったし、寮のある高校に進学できたとしても、そこで普通の女子高生らしい学校生活が送れるとも思えないからだ。


「そうだ杉崎、沼山の昔話知ってるか?」

「沼山の昔話?‥あんなところに何かあるの?」

「昨日、三丁目の婆さんに聞いたんだけど、昔、あの山には祠があって、何かの神様を奉ってたらしい」

「あんな鬱蒼とした山の中に?誰も来ないでしょ」

「ああ。今じゃ荒れ放題だけど昔は村があったらしい。その村は日照りが続いて、疫病が流行るようになったらしいんだ。それで村人は人柱をたてて災いを沈めようとしたんだって。」

「……僕はそんな話聞いたことないな‥‥沼山は幽霊が出るって噂だけど、その人柱が原因なの?

それに三丁目の婆さんって結構ボケてたと思ったけど…?」

「俺も初めて聞いたんだけど、婆さん曰く、どうやらそうらしい。で、その人柱はその後山を守ってるんだって。」

「へぇー変わった幽霊がいたもんだね。僕だったら村の人たちを怨んで悪霊にでもなってるよ。」

「俺もそう思う。そんでその人柱、俺らより少し年上なんだって」

「え?そういうのってもっと幼い女の子とかがなるイメージだけど‥‥?それか若い女の人とか」

「‥‥俺はそこまでしか聞いてないからな…そうだ!今日学校終わったら婆さんのとこ行こうぜ!前聞いた時はそこで婆さん力尽きて寝ちゃったから」


面倒だし付き合う義理もなかったので断ろうとしたとき、何処からか風が吹き、何処かで鈴が鳴った。

振り返ると、微動だにしない庭木や落ち葉と、沼山があった。


「‥…お婆さん、結構年だからね…」

お婆さんに無理させちゃいけないから、また今度。そう言おうと思っていたのに、

「うん。良いよ!」

勝手に口が動いた。断んなさいよめんどくさい。今日は一応、やることあるのに…とにかく、怪奇現象である。

とはいえ、珍しく学校が終わってから買い出し以外の用事ができた。


更新遅くてすいません。

不定期更新続きます。

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