7/94
横恋慕
横恋慕
駅へ行く為に剛道館の門を出ると、篠塚が追って来た。
「お嬢さんは最近、妙心館に出入りされているそうですな?」
「あなたには関係のない事です」美希は露骨に嫌な顔をした。
「妙心館は剛道館の敵なのですよ!」
「それも私には関係のない事です」
「あなたの父上は無門平助に敗れた」
「あれは父が悪いのです、私は無門先生を尊敬しています」
「なんですと!」
「父を見舞ってくださった時の無門先生の態度は、とてもご立派でした。父に向かって『君が出ていても結果は同じだっただろう』とおっしゃいました」
「詭弁だ!」
「では、あなたは父が負けていたとおっしゃるのですか?」
「そ、それは・・・」
「無門先生にもご事情がおありだったのです。先生のお弟子さんが飛び入りで大怪我をされて、二度と空手ができない躰になったのですよ」
篠塚は黙った。
「貴方が、剛道館の師範代で、父が貴方を頼りにしている事は知っております」
「ではお嬢さん。今度の試合で私が勝ったら、私の許嫁になってくれますか?」
「話が飛躍し過ぎています、そんなお約束は出来ません。急ぎますのでこれで・・・」
美希は篠塚を無視して駅に向かって歩き出した。




