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弥勒の拳  作者: 真桑瓜
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口炊き



口炊き


「さあ、窯口を塞ぐよ!」炭火で燃材に着火し火勢が十分強まった頃、慈恵が気合を入れた。

「窯口の一番下に通風口、その上に炊き口を作って、後をレンガと赤土で塞ぐんだ」

「通風口の大きさは横三十センチ縦十二センチですね?」

「そう、爺さんが書いていただろう?」

「それから通風口の上三十センチのところに、一辺が十八センチの炊き口を作ると書いてあります」

「レンガを積んだことあるかい?」

「いいえ、ありません」

「二段目まで積んで見せるから、あとは自分でやるんだよ」

「わかりました」

「おっ、ラジャーって言わないのかい?」

「だって慈恵さん怒るから」

「あはは、そうだったかねぇ・・・」


慈恵は通風口を確保しながら手際よくレンガと赤土を積み上げていく。

「この要領で窯口を塞いだら、全体を瘡蓋のように赤土で塗りこめる。できそうかい?」

「お爺さんのノートを見ながらやってみます」

「分からなくなったら、いつでも聞きにおいで」

「イエッサー!」

「ふふふふふ」

「えっ、どうしたんですか?気持ち悪いなぁ」

「何でもないよ、じゃあね」


黒田は何度も失敗をしながら、なんとかレンガを積み上げた。

炊き口を作るのが難しかった。

「さあ、次は赤土で壁を作る・・・と」

黒田は赤土を水で捏ねる、練った赤土を団子にして、積み上げたレンガにぶつけていく。

「面白いなぁ、子供の頃を思い出す」

一通り赤土をぶつけたら、コテで丁寧に均していく。

「最後に水箒で表面をなめらかにする・・と」

「フ〜、これでよし」黒田は、通風口と炊き口を残して窯口を密閉し終わった。

「暫くは、上木に延焼させないように気をつけなきゃな」

程なく煙突から褐色の煙が出てきた。

「うわっ!この匂い鼻を刺激するなぁ、これが燻煙というやつか?」

黒田は炭焼きの爺さんのノートを睨みながら独り言を呟いた。

「煙の色が白に変わったら、炊き口から薪を投入しながら二三日待つ・・・か」

黒田は炊き口からずっと火を見ていた。

「この火が、木材を炭に変えるのか・・・」

やがて煙の色は、褐色から白に変わった。

「蒸気乾燥が始まったのだな、白い煙は水蒸気の色か」

『煙の色が白になったら、煙道口を半分塞ぐ』・・・と。

黒田は、板で口を半分塞いだ。

「さて、これから二三日は火の番だ、子供を見守る母親ってこんな気持ちなのかもしれないな」

黒田は窯の前に椅子を持ってきて腰を据えた。






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