消息
消息
平助は豊嶋組の事務所にいた。
黒い革張りのソファーに腰掛け、若い組員の出してくれたコーヒーを飲んでいる。
向かいに座った豊嶋が、クリスタルの灰皿で葉巻をもみ消しながら切り出した。
「先生、および立てして申し訳ありません。わたしらが先生のところへお伺いするのも気が引けましたもので」
「気を使わせましたな、ところで篠塚の居場所が分かったとか」
「はい、篠塚は沖縄におりました」
「沖縄?」
「なんとかうどんでーとかいう武術の達人の内弟子になっているそうです」
「本部御殿手」
「そうそう、そのもとぶうどぅんでぃー」
「よくわかりましたな?」
「奴が止まっていたホテルの支配人から連絡がありました。我々の情報網を甘く見ちゃいけません」
「恐れ入ったな」
「どういたしましょう?」
「それは多分、上原先生の道場じゃ」
「先生ご存知で」
「ああ、沖縄におった頃ちょっとな・・」
「ちょっと?」
「うむ、まあそれはどうでも良い。とにかく上原先生なら間違いはない」
「そんなに立派な先生で?」
「わしが太鼓判を押す、心技とも最高峰じゃ」
「へ〜」
「篠塚がそこにいるのなら心配はないが・・・」そこで平助は言葉を切った。
「何か気がかりな事でも?」
「親分に相談があるのじゃが、聞いてくれるか?」
「何なりと」
「篠塚に恨みを持つものが、近づけんようにして貰いたい」
「お安い御用・・・と言いたいのですが、沖縄は別枠なので。しかし出来る限りの事はさせてもらいますよ」
「よろしく頼む」
「念のために松尾の親分にも手を打ってもらいましょう」
「そちらは儂が今から頼みに行く」
「そうですか」
「では頼みましたぞ」平助はソファーから立ち上がった。
「先生、今度一杯お付き合いください」豊嶋も立ち上がった。
「この老いぼれでよければいつでも・・・」




