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弥勒の拳  作者: 真桑瓜
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三日前


三日前


玄関から美希の声が聞こえた。

槇草が急いで出て行き、美希を道場に招じ入れた。

「こんにちは無門先生、お稽古中失礼致します」美希は早口に言った。

「どうした、慌てておるようじゃが?」

「今度の大会の立会いを、糸涛流の高尾幻斎先生が引き受けてくださいました。これは父からの伝言です」

「高尾先生ならば間違いは無かろう」平助は頷いた。

高尾幻斎は糸涛流の重鎮、名人と謳われた人物だ。

「たまたま熊本に来ておられた先生を、父が訪ねてお願いをしてきたのです。高尾先生ならば、どちらかが危険な目に合う前に試合を止めて下さるだろう、と」

「そうか、しかし何故お父上が?」

「最近の篠塚は、父にも手が付けられないほど狂気を帯びております。もし槇草さんが怪我をするような事になれば申し訳が立たんと」

「槇草、依存はないな?」

「はい、すべておまかせ致します」槇草は篠塚と戦う事以外念頭になかった。

「それからもう一つ、これは槇草さんへの伝言です」美希は槇草に向き直った。

「はい」

「篠塚は、どんな手を使ってでも貴方を徹底的に打ちのめそうとするに違いない。呉々も用心するように、と」美希は真剣な眼で槇草を見た。

剛道館での猛稽古以来、篠塚は行方が分からなくなっていた。篠塚の部屋には「当日は必ず行く」旨の書き置きがあったと言う。

「ご忠告、ありがたく承りましたと観音寺先生にお伝えください」

美希はもう一度槇草に注意を促すと妙心館を後にした。




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