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表裏突き
表裏突き
槇草は浮身を会得した。身体内部の感覚を内観する事で、力に頼らず素早く動く事が出来るようになった。
「どうやら間に合ったようじゃな」平助が呟いた。
「何がです?」
「表裏突きじゃよ」
「表裏突き?」
「横払いの“剣”を“拳”に変えるのじゃ」平助は入り身に構えた。「こうやる!」
平助が動いたと思った時には、既に突きは終わっていた。尋常な速さの突きではない。
「なんです今のは!」
「今のが表裏突き、儂の得意技じゃ。『裏を見せ表を見せて散る紅葉』表裏突きの名の由来じゃ。どうじゃ、言い得て妙であろう」平助が自慢げに笑った。
「さあ、やってみよ!」
槇草は入り身に構えた。平助の動きを頭に思い浮かべると、躰が勝手に動き出した。
「できる!」今までに体験した事の無い速さの拳だった。
槇草は居合の稽古に没頭する事で、いつの間にか表裏突きをマスターしていたのだ。
「さあ、大会まであと一月。この技に磨きをかけよ!」
「はい、師匠!」




